住み替えで不動産売却するときの税金は?特例と申告方法を解説
住み替え先の物件を決めたあと、旧居を売った代金から税金と諸費用が差し引かれ、手元に残る金額が思ったより少なくなるケースがあります。譲渡所得税の税率は所有期間5年超の長期譲渡で20.315%、5年以下の短期譲渡で39.63%と大きく異なり、所有期間によって手取り額が変わります。
住んでいた家を売った場合、譲渡所得から最高3000万円を控除できる特例(租税特別措置法35条)を使えば、税額を大きく抑えられます。ただし適用には、売った年の前年および前々年に同じ特例を受けていないことなどの条件があります(2026年9月時点)。
本記事では、住み替えで不動産売却するときにかかる税金の仕組みと、使える特例、確定申告の方法を解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 住み替え先の購入を決めた50歳で、旧居を売った際にかかる税金と使える特例が分からず確定申告に不安を抱える方
- 売却と購入のタイミングがずれることで税制上の特例が使えなくなるのではと心配し、事前に条件を確認したい方
- 手元資金の計算が住み替え全体の予算に直結するため、税金分を含めた総額を早めに把握したいと考えている方
住み替えで不動産売却するとかかる税金の全体像
住み替えのために今住んでいる家や土地を売却すると、売却代金そのものに税金がかかるわけではなく、売却によって生じた利益(譲渡所得)に対して税金がかかります。譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて計算し、プラスになった場合だけ課税対象になります。
税率は所有期間によって大きく変わり、不動産を売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える長期譲渡は20.315%、5年以下の短期譲渡は39.63%です(所得税・住民税に復興特別所得税を加えた合計)。同じ利益額でも、所有期間が5年を超えているかどうかで税額はおよそ倍の差になります。
税金のほかに、売買契約書に貼る印紙税、抵当権を抹消する登記にかかる登録免許税、不動産会社に支払う仲介手数料も売却時の諸費用としてかかります。これらの費用を含めた全体像は不動産売却にかかる税金と費用の全体像で解説しています。
所有期間は引き渡し日ではなく売った年の1月1日時点で判定するため、契約日が年をまたぐときは注意してください。
不動産売却の税金はいくら引かれる?住み替え時の手取り額シミュレーション
旧居を3000万円でマンション売却し、取得費2000万円、仲介手数料などの譲渡費用100万円、所有期間12年(長期譲渡)という条件で試算します。
譲渡所得は、3000万円から取得費2000万円と譲渡費用100万円を差し引いた900万円です。3000万円特別控除を使わずに長期譲渡の税率20.315%をかけると、税額は約183万円になります。一方、3000万円特別控除を使えば課税譲渡所得は0円になり、税額もかかりません。
| 区分 | 譲渡所得 | 税額(概算) |
|---|---|---|
| 3000万円特別控除を使わない場合 | 900万円 | 約183万円 |
| 3000万円特別控除を使う場合 | 0円 | 0円 |
出典:国税庁「土地や建物を譲渡したときの税金」をもとに作成
この試算をもとに、控除を使わなかった場合の手取りの内訳を図にすると次のようになります。
※3000万円で売却・長期譲渡・控除適用なしの概算例(2026年9月時点)
この図は、3000万円で長期譲渡の物件を売却し特例を使わなかった場合、税金と諸費用を差し引いた約91%が手元に残る概算であることを示しています。特例を使えればこの比率は変わります。
譲渡所得がマイナスになれば税金はかかりませんが、黒字になるかどうかは取得費を証明する書類の有無で変わります。
3000万円特別控除と買換え特例|住み替えで使える税金の特例
3000万円特別控除とは
マイホームを不動産売却した場合、譲渡所得から最高3000万円を控除できる特例があります(租税特別措置法35条)。この特例を使えば、先ほどの試算のように譲渡所得が900万円でも全額控除され、税額は0円になります。
ただし、売った年の前年および前々年に同じ特例を受けていないことが条件です(2026年9月時点)。住み替えで短期間に複数回不動産を売却する場合は、前の売却で同じ控除を使っていないか確認が必要です。
買換え特例との違いと選び方
3000万円特別控除とは別に、特定の居住用財産を買い換えた場合に、譲渡益への課税を将来に繰り延べる特例もあります。所有期間が10年を超えるなど一定の条件を満たす場合に選べますが、3000万円特別控除とは併用できず、どちらか一方しか選べません。税額が抑えられる金額は売却価格や取得費によって変わるため、どちらが有利かは個別の試算が必要で、税理士や税務署への確認が欠かせません。
買換え特例は課税を先送りする制度のため、将来その家をまた売却するときにまとめて課税される点に注意してください。
売却と購入のタイミングがずれるときの特例適用の注意点
住み替えでは、旧居の売却と新居の購入のどちらを先に進めるかで、税金面の注意点が変わります。
売り先行で不動産を売却する場合
旧居を先に売却してから新居を購入する売り先行の場合、売却した年のうちに3000万円特別控除を使えるかどうかを確認します。控除の条件は、売った年の前年・前々年に同じ特例を受けていないことであり、新居で住宅ローン控除を受ける場合は、3000万円特別控除と住宅ローン控除は入居年とその前2年・翌年以後3年の計6年間は併用できないため、新居への入居時期によっては住宅ローン控除が使えなくなる点にも注意が必要です。
買い先行で住み替える場合
新居を先に購入してから旧居を売却する買い先行の場合、新居の住宅ローン控除を受けながら、旧居の売却益に3000万円特別控除を使えるかを確認します。3000万円特別控除は住宅ローン控除の入居年およびその前2年・後3年の計6年間は併用できないため、単に決済年をずらすだけでは解消しない場合が多い点に注意し、どちらの特例を優先するかを事前に試算しておく必要があります。資金計画の面では住み替えローンの仕組みも合わせて確認しておくと、決済のタイミングを組みやすくなります。
特例の適用年をずらすだけで税額が大きく変わることもあるため、契約を結ぶ前に試算しておくと安心です。
不動産売却後に必要な確定申告の流れと書類
不動産を売却して譲渡所得が出た場合や、3000万円特別控除などの特例を使う場合は、売却した翌年の2月16日から3月15日までに確定申告が必要です。特例を使うこと自体が申告を条件としているため、譲渡所得がマイナスの場合は3000万円特別控除の対象外だが、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を使う場合は申告が必要です。
申告に必要な書類は、譲渡所得の内訳書、売買契約書の写し、取得費が分かる購入時の契約書や領収書、仲介手数料などの領収書、登記事項証明書などです。取得費の書類が見つからない場合、売却価格の5%を取得費とみなす概算取得費で計算することになり、税額が大きくなりやすい点に注意します。
売却から引き渡しまでの全体の流れは不動産売却の流れ|査定から引き渡しまでの7ステップで解説しています。
取得費の領収書は紛失しているケースが多く、見つからない場合は早めに概算取得費での試算もしておくと安心です。
確定申告を自分でする?税理士に依頼する判断基準
確定申告は国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、画面の案内に沿って自分で作成できます。譲渡所得の計算がシンプルで、特例の適用条件もはっきりしている場合は、自分で申告する方も少なくありません。
一方、3000万円特別控除と買換え特例のどちらが有利か判断が難しい場合や、取得費の資料が一部しか残っていない場合、複数の不動産を同じ年に売却した場合は、税理士に相談したほうが計算の誤りや控除の取りこぼしを防げます。税理士への依頼費用は申告内容の複雑さによって変わるため、相談前に見積もりを確認しておくと安心です。
税務署の無料相談窓口でも一般的な質問には答えてもらえるため、迷ったら申告期間が始まる前に相談しておくと良いでしょう。
よくある質問
住み替えで売却と購入の年をずらせば、特例は両方使えますか?
3000万円特別控除と住宅ローン控除は、入居年とその前2年・翌年以後3年の計6年間は併用できないため、年をずらすだけでは解消できない場合が多く、どちらを優先するか試算して選ぶ必要があります。
譲渡所得がマイナスなら確定申告は不要ですか?
税金が発生しない場合は申告義務はありませんが、特例を使う場合や譲渡損失の特例で損益通算をする場合は申告が必要です。
取得費が分からない場合はどうなりますか?
購入時の契約書や領収書が見つからない場合、売却価格の5%を取得費とみなす概算取得費で計算することになり、譲渡所得が大きくなりやすくなります。
3000万円特別控除は何度でも使えますか?
売った年の前年および前々年に同じ特例を受けていなければ使えますが、短期間での連続適用はできません。
確定申告を忘れるとどうなりますか?
申告期限(売却した翌年の2月16日から3月15日)を過ぎると、特例の適用を受けられなくなったり、延滞税や無申告加算税が課されたりする可能性があります。
住み替えで不動産売却するときの税金を見積もるために
住み替えでかかる税金は、譲渡所得の額と所有期間、そして3000万円特別控除や買換え特例を使えるかどうかで大きく変わります。不動産売却と購入のタイミング次第で住宅ローン控除との併用可否も変わるため、契約前の試算が手取り額の見通しを左右します。ぜひ本記事の計算例と特例の条件を参考に、確定申告の準備を早めに進めてください。
出典
- 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
- 国税庁「土地や建物を譲渡したときの税金」
- 国税庁「確定申告期間」
- 国税庁タックスアンサー「住宅借入金等特別控除と居住用財産の譲渡所得の特別控除等の重複適用の制限」
- 国税庁「No.1212 一定期間内に居住用財産の買換え特例等の適用を受けている場合の住宅借入金等特別控除の適用関係」
- 租税特別措置法第41条(住宅借入金等特別控除の重複適用制限)
- 国税庁「No.3370 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」
- 国税庁「No.3390 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」
- 国土交通省「宅地建物取引不動産会社が受け取ることのできる報酬の額」
