相続税路線価と固定資産税路線価の違いは?調べ方も解説
相続した実家の評価額を調べようとすると、相続税路線価と固定資産税路線価という、似た名前の2つの数字に行き当たります。相続税路線価は国税庁が毎年7月に公表する評価額で、公示価格の80%程度を目安に設定されており、相続税や贈与税の申告に使います。固定資産税路線価は市区町村(東京23区は都)が3年に1度見直す評価額で、公示価格の70%程度を目安に、固定資産税や都市計画税、不動産取得税の計算に使われます。
2つの路線価は見た目が似ていても、公表する機関も使う場面もまったく別物です。相続税の申告書に記載する数字と、毎年届く固定資産税の納税通知書の数字を取り違えると、評価額を大きく誤ることにつながります。
本記事では、相続税路線価と固定資産税路線価の違いと、それぞれの調べ方を解説します(2026年9月時点の制度にもとづきます)。
この記事はこんな方に向いています
- 相続した実家の価値を調べる中で、路線価に2種類あることを知り違いが理解できず戸惑っている50歳の方
- 確定申告に向けて評価額を自分で計算したいが、どちらの路線価を使うべきか分からず作業が止まっている方
- 税理士に依頼する前に、公的な調べ方を把握して手元にいくら残るかの目安をつかみたい方
相続税路線価と固定資産税路線価の違い|評価の目的と算定方法
相続税路線価と固定資産税路線価は、どちらも道路に面した土地の1㎡あたりの評価額を示す数字ですが、公表する機関と使う場面が異なります。相続税路線価は国税庁が公表し、相続税や贈与税の財産評価に使う数字で、公示価格の80%程度が目安です。固定資産税路線価は市区町村(東京23区は都)が公表し、固定資産税・都市計画税・不動産取得税・登録免許税の計算に使う数字で、公示価格の70%程度が目安です。どちらも毎年1月1日時点の地価をもとに国土交通省が公表する公示価格が基準になりますが、相続税路線価は毎年7月に更新されるのに対し、固定資産税路線価は3年に1度の評価替えでしか更新されない点も異なります。
| 項目 | 相続税路線価 | 固定資産税路線価 |
|---|---|---|
| 公表機関 | 国税庁 | 市区町村(東京23区は都) |
| 公表時期 | 毎年7月 | 3年に1度(評価替え) |
| 評価水準の目安 | 公示価格の80%程度 | 公示価格の70%程度 |
| 主な用途 | 相続税・贈与税の申告 | 固定資産税・都市計画税・不動産取得税・登録免許税 |
| 調べ方 | 国税庁「財産評価基準書」 | 全国地価マップ・課税明細書 |
出典:国税庁「財産評価基準書」、国土交通省「地価公示」をもとに作成(2026年9月時点)
2つの路線価は似た名前ですが評価水準も更新時期も違うので、取り違えると評価額を大きく誤ります。
家や土地の評価額はどちらの路線価で決まる?場面で分かる使い分け
相続税・贈与税の申告は相続税路線価
相続した家や土地の評価額を相続税の申告書に記載するときは、相続税路線価を使います。路線価が付いている地域では「路線価×土地の面積×各種補正率」で評価額を計算し、申告期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。
固定資産税・都市計画税や不動産取得税は固定資産税路線価
一方、毎年届く固定資産税の納税通知書や、不動産を取得したときにかかる不動産取得税は、固定資産税路線価をもとに算定された固定資産税評価額が基準です。相続した家をそのまま保有する場合、毎年の固定資産税は固定資産税路線価がベースになった評価額で決まるため、相続税の申告額とは別の数字として管理する必要があります。
相続税の申告書の評価額が高く見えても、固定資産税の通知書の評価額とは別物なので混同しないよう注意してください。
国税庁「財産評価基準書」で調べる相続税路線価
相続税路線価は、国税庁のホームページで公開されている「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」で調べられます。都道府県・市区町村・町名を順に選ぶと、道路ごとに価格が記載された路線価図が表示され、対象の土地が面する道路の数字を確認できます。路線価図には1㎡あたりの評価額が千円単位で表示されており、たとえば「300C」と記載されていれば1㎡あたり30万円で、借地権割合がCであることを示します。奥行きが長い土地や、間口が狭い旗竿地(はたざおち、道路に接する間口が狭く奥に敷地が伸びた形の土地)などは、奥行価格補正率や間口狭小補正率、不整形地補正率といった補正を加えて評価額を計算します。旗竿地の売却相場は旗竿地とは?売却相場と整形地との違いで解説しています。
路線価図の記号や補正率の読み方に迷ったら、税理士や不動産会社に確認すると計算ミスを防げます。
全国地価マップと課税明細書で確認する、家の固定資産税路線価
固定資産税路線価は、一般財団法人資産評価システム研究センターが運営する「全国地価マップ」で確認できます。地図上で対象の道路をクリックすると、1㎡あたりの評価額が表示される仕組みで、無料で閲覧できます。すでに相続した家を所有している場合は、毎年春に届く固定資産税の課税明細書にも土地の評価額が記載されているため、そちらで確認する方法もあります。固定資産税路線価は3年に1度しか更新されないため、直近の評価替えから年数が経っている場合は、地価の変動が反映されていない可能性がある点に注意が必要です。
課税明細書を紛失した場合は、市区町村の資産税課で評価証明書を取得すれば確認できます。
路線価が付いていない土地の評価方法|倍率方式
相続税路線価も固定資産税路線価も、主に市街地の道路に設定されており、郊外や農村部など路線価が付いていない土地も多くあります。こうした地域では、相続税の評価は「倍率方式」で計算し、固定資産税評価額に国税庁が定める一定の倍率を掛けて評価額を算出します。倍率は地域ごとに国税庁の財産評価基準書で公表されており、路線価方式より手順はシンプルですが、固定資産税評価額そのものを先に確認しておく必要があります。相続した土地が更地(さらち、建物がなく利用されていない土地)のまま放置されている場合、評価方法だけでなく将来の売却方法も検討しておくと手続きがスムーズです。更地の固定資産税と売却相場の違いは更地とは?固定資産税と売却相場の違いで解説しています。
倍率方式か路線価方式かは地域によって決まっているため、自分で選ぶことはできません。
相続した不動産を売却したときの税金と手元に残る金額
譲渡所得税の計算と取得費の考え方
相続した家や土地を売却すると、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた譲渡所得に対して譲渡所得税がかかります。相続時には被相続人が取得した当時の取得費を引き継ぐため、購入時の契約書が見つからない場合は、売却価格の5%を概算取得費として計算します。税率は所有期間が5年を超える長期譲渡で20.315%、5年以下の短期譲渡で39.63%で、いずれも復興特別所得税を含む税率です。
相続空き家の3000万円特別控除
相続した家が空き家になっている場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3000万円を控除できる特例があります。2024年1月1日以後の譲渡では、適用を受ける相続人が3人以上いる場合、1人あたりの控除額は2000万円です。この特例は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することが条件のため、複数の相続不動産を順に売却する場合は適用時期にも注意が必要です。
下図は、相続した不動産を3000万円で売却し、長期譲渡で特別控除の適用がなかった場合の手取りイメージです。
※3000万円で売却・長期譲渡・控除適用なしの概算例(2026年9月時点)
この図のとおり、税金と諸費用を差し引いた後に手元へ残る金額は、売却価格よりかなり少なくなるため、売却前に概算を確認しておくことが重要です。実際にいくら手元に残るかは、仲介手数料などの諸費用や適用できる特例によって変わるため、売却前の試算が欠かせません。不動産売却にかかる税金と費用の全体像は不動産売却にかかる税金と費用の全体像で解説しています。
特例の適用には確定申告が必要なので、売却した翌年の申告期限を忘れないようにしてください。
売却を見据えた路線価の使い方|相続税路線価と固定資産税路線価の違いを踏まえて
相続税路線価と固定資産税路線価は、どちらも実際の売却価格を保証する数字ではありません。相続税路線価は公示価格の80%程度、固定資産税路線価は70%程度の目安で設定されているため、実勢価格(取引価格の売却相場)とは差が生じます。相続した家や土地を売却する際は、路線価はあくまで税額を計算するための目安と捉え、実際の売却相場は不動産会社の査定で確認する必要があります。売却の流れや高く売るためのポイントは不動産売却の完全ガイド|流れ・費用・税金と高く売るコツで解説しています。
路線価と実勢価格の差は地域によって大きく異なるので、査定を複数社に依頼して比較することをおすすめします。
よくある質問
相続税路線価と固定資産税路線価、どちらが高い数字になりますか?
一般的に相続税路線価は公示価格の80%程度、固定資産税路線価は70%程度を目安に設定されているため、同じ土地であれば相続税路線価のほうが高くなる傾向があります。
路線価が公表されていない年や地域はどうすればよいですか?
路線価が公表されていない地域では、固定資産税評価額に国税庁が定める倍率を掛ける倍率方式で評価額を計算します。該当するかどうかは、国税庁の財産評価基準書で確認できます。
相続税路線価は毎年変わりますか?
相続税路線価は毎年7月に国税庁から公表され、地価の変動に応じて毎年見直されます。固定資産税路線価は3年に1度の評価替えでしか更新されない点が異なります。
固定資産税路線価が分からないと固定資産税は計算できませんか?
固定資産税は市区町村が算定した固定資産税評価額をもとに計算されるため、路線価を自分で調べなくても毎年の納税通知書で税額を確認できます。路線価は評価額の根拠を知りたいときに参照する数字です。
相続した不動産を売却するときは路線価をもとに価格を決めればよいですか?
路線価は税額の計算に使う目安で、実際の売却価格を決めるものではありません。売却価格は不動産会社の査定を受けて、取引価格の売却相場を踏まえて決める必要があります。
相続税路線価と固定資産税路線価の違いを理解して評価額を確認しよう
相続税路線価と固定資産税路線価は、どちらも道路に面した土地の評価額を示す数字ですが、公表する機関、評価の水準、更新の頻度、使う場面のすべてが異なります。相続税や贈与税の申告には国税庁が公表する相続税路線価を、固定資産税や都市計画税の計算には市区町村が公表する固定資産税路線価を使う、という使い分けを押さえておけば、評価額の計算で迷うことは少なくなります。相続した家や土地を将来売却する予定がある場合は、路線価による評価額だけでなく、実際の売却相場や税負担を踏まえた試算もあわせて進めておくと安心です。ぜひ本記事の相続税路線価と固定資産税路線価の違いを参考に、相続した不動産の評価と今後の手続きを進めてください。
出典
- 国税庁「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」
- 国税庁「相続税の申告のしかた」
- 国税庁「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」
- 国税庁タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
- 国税庁タックスアンサーNo.4604「路線価方式による宅地の評価」
- 国土交通省「地価公示」
- 総務省「固定資産税制度の概要」
- 一般財団法人資産評価システム研究センター「全国地価マップ」
