不動産売却の完全ガイド|流れ・費用・税金と高く売るコツ
転勤が決まり、10年住んだ自宅マンションを初めて売ることになった会社員が、何から始めればいいか分からないまま検索を続けています。不動産売却は「査定→媒介契約→販売活動→売買契約→引き渡し」の順に進み、仲介手数料は宅地建物取引業法に基づく国土交通省告示により、売却価格×3%+6万円(税別)が上限と定められています。
不動産会社に査定を依頼しても、媒介契約を結ぶ義務はなく、売却自体を断ることもできます。手元に残る金額は、売却価格から仲介手数料・税金・諸費用を引いた額で決まります。
本記事では不動産売却の流れ・費用・税金、高く売るコツを解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 介護のため実家近くに移る必要が出てきた45歳会社員が、売却の流れと費用の全体像を初めて把握したい方
- 仲介手数料や税金がいくらかかるか分からず、手元に残る金額を事前に計算しておきたい方
- 査定に出したら売却を断れなくなる気がして身構えつつも、高く売るコツを一通り知っておきたい方
不動産売却とは|仲介と買取の違い
不動産売却とは、マンションや戸建て、土地などの不動産を第三者に売って代金を受け取ることです。「不動産 売却」で検索すると不動産会社の広告が並びますが、売り方には大きく2つの方法があります。
1つは不動産会社が買い手を探す「仲介」で、もう1つは不動産会社が直接買い取る「買取」です。仲介は売却価格が市場の取引価格に近くなりやすい一方、買い手が見つかるまでの期間が読みにくいという特徴があります。買取は不動産会社が買主になるため短期間で現金化できますが、売却価格が仲介で売る場合より低くなる傾向があります。
引き渡しの時期が決まっている場合は、仲介で売却活動を始めつつ、一定期間で売れなければ買取に切り替える、という進め方を検討する方もいます。不動産売却の流れ全体は不動産売却の流れ|査定から引き渡しまでの7ステップで解説しています。
仲介と買取のどちらが合うかは、売却までに使える時間で変わります。急ぐ事情があるなら早めに不動産会社へ相談してください。
査定から引き渡しまで|不動産売却の流れ7ステップ
不動産売却は、大きく「不動産会社を選ぶ段階」と「買い手を見つけて引き渡す段階」の2つに分かれます。
査定の申し込みから媒介契約まで
複数の不動産会社にマンションや戸建ての査定を依頼し、提示された売却価格と対応内容を比較します。依頼先を1社に決めたら、媒介契約を結んで販売活動を任せます。媒介契約には種類があり、どれを選ぶかで後述するレインズへの登録義務も変わります。
販売活動から売買契約・引き渡しまで
不動産会社はポータルサイトへの掲載や内覧対応を進め、購入希望者が現れると価格交渉を経て売買契約を結びます。その後、買主のローン審査が通れば引き渡しと所有権移転登記を行って売却が完了します。売却までの期間は、立地や価格設定によって数ヶ月から1年以上と差があります。
査定から引き渡しまでは複数の不動産会社とのやり取りが発生します。スケジュールに余裕を持って動き出すと安心です。
手元に残る金額はいくら?不動産売却の費用と税金
不動産売却では、売却価格のすべてが手元に残るわけではありません。仲介手数料と税金を差し引いた額が、実際に受け取れる金額になります。
仲介手数料と売却時にかかる諸費用
仲介手数料の上限は、国土交通省の告示によって売却価格の帯ごとに決められています。
| 売却価格 | 仲介手数料の上限(税別) |
|---|---|
| 200万円以下の場合 | 取引価格全体に×5% |
| 200万円超400万円以下の場合 | 取引価格全体に×4%+2万円 |
| 400万円超の場合 | 取引価格全体に×3%+6万円 |
出典:国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることのできる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号)をもとに作成
このほか、抵当権抹消登記にかかる費用や、売買契約書に貼る印紙代なども必要になります。
譲渡所得税と特別控除の有無
売却益(譲渡所得)が出ると、譲渡した年の1月1日時点で所有期間5年以下の短期譲渡は39.63%、5年超の長期譲渡は20.315%の税率で所得税・住民税が課されます(2026年9月時点)。ただし、自宅として住んでいたマンションや戸建てを売る場合は「居住用財産を売ったときの3000万円の特別控除」が使えれば、譲渡益3000万円までは課税されません。適用条件は細かく定められているため、最新の条件は国税庁か税理士に確認してください。
以下は、3000万円で売却した場合の手元に残る金額の概算イメージです。
※3000万円で売却・長期譲渡・控除適用なしの概算例(2026年9月時点)
特別控除が使えない場合、売却益の約2割が税金として差し引かれる計算になります。費用と税金の全体像は不動産売却にかかる税金と費用の全体像|いくら手元に残る?で解説しています。
仲介手数料や税金は売却価格が確定してから正確に計算できます。概算でも早めに不動産会社へ見積もりを依頼してください。
マンション・戸建て・土地を高く売るコツ
マンション・戸建て・土地のどれを売る場合でも、価格が決まる仕組みは共通しています。不動産会社が付ける売却価格は、周辺の取引価格の相場と物件の状態から算出されます。
- 複数の不動産会社に査定を依頼し、売却相場の幅を把握する
- 内覧前に水回りと玄関を中心に清掃し、第一印象を整える
- 売却相場より高い価格設定は、売却期間が延びるリスクがあることを理解しておく
- 大きなリフォームをする前に、不動産会社に費用対効果を相談する
土地の場合は、境界確定の有無や接道の状況が価格に影響しやすく、戸建ての場合は建物の修繕履歴が購入希望者の判断材料になります。
内覧の印象は成約価格に影響しやすいポイントです。清掃と整理整頓だけでも効果が見込めます。
媒介契約とレインズ登録|不動産会社の選び方
不動産会社を選ぶ段階では、媒介契約の種類と、レインズへの登録義務を知っておくと判断がしやすくなります。
媒介契約の3種類と向いている人
媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。一般媒介契約は複数の不動産会社に同時に依頼できますが、各社の対応が手薄になりやすい面があります。専任媒介契約と専属専任媒介契約は1社に絞る代わりに、販売活動に力を入れてもらいやすくなります。契約期間は宅地建物取引業法により3ヶ月以内と定められています。
レインズ登録の義務と確認方法
専任媒介契約・専属専任媒介契約を結んだ場合、不動産会社は一定期間内にレインズ(不動産流通機構が運営する物件情報システム)へ登録する義務があります。専任媒介契約は契約から7日以内、専属専任媒介契約は5日以内が期限で、登録後に発行される登録証明書を受け取って確認することができます。レインズの仕組みはレインズとは?不動産売却での登録義務で解説しています。
媒介契約の種類によってレインズ登録の期限が変わります。契約書を結ぶ前に登録予定日を確認してください。
相続した不動産を売却するときの注意点
相続した不動産を売却する前には、まず相続登記を済ませておく必要があります。2024年4月から相続登記は義務化され、相続を知った日から3年以内に登記しないと罰則の対象になる場合があります。相続登記の手続きは相続登記とは?期限と不動産売却の関係で解説しています。
相続人が複数いて不動産をそのまま分けられない場合、売却代金を相続人同士で分配する「換価分割(かんかぶんかつ)」という方法が使われることがあります。換価分割の税金や手続きは換価分割とは?不動産売却の税金と手続きで解説しています。
相続した不動産に多額の負債が付いている場合など、相続放棄という選択肢を検討する方もいます。相続放棄は相続の開始を知った時から3ヶ月以内に申し出る必要があり、申し出た後はその不動産を売却する権利も失われます。詳しい期限は相続放棄とは?不動産売却との関係と期限で解説しています。
相続登記が済んでいないと売却活動を始められません。相続が発生したら早めに法務局や専門家へ相談してください。
査定に出しても売却は断れる?よくある誤解
不動産会社に査定を依頼しただけの段階では、売却を進める義務も媒介契約を結ぶ義務もありません。不動産の査定はあくまで不動産会社による価格の見積もりで、法的な拘束力はありません。
媒介契約を結んだ後でも、専任媒介契約・専属専任媒介契約は契約期間が3ヶ月以内と定められているため、満了時に更新しない選択も可能です。不動産売却の進め方に迷ったら、複数の不動産会社から説明を受けたうえで判断することができます。
不動産の査定を受けたあとに断っても問題はありません。納得できないまま媒介契約を進める必要はありません。
よくある質問
査定を受けたら必ず売却しないといけませんか?
いいえ、査定は価格の見積もりにとどまり、法的な拘束力はありません。査定後に媒介契約を結ぶかどうかは依頼者が決められ、断ることもできます。
仲介と買取はどちらがいいですか?
時間をかけて市場の取引価格に近い金額で売りたい場合は仲介、短期間で確実に現金化したい事情がある場合は買取が選ばれやすい傾向があります。両方の見積もりを比較して判断する方法もあります。
不動産売却にかかる期間はどれくらいですか?
立地や価格設定によって差があり、数ヶ月で成約する場合もあれば、1年以上かかる場合もあります。不動産売却を急ぐ事情がある場合は、早めに不動産会社へ相談しておくと計画が立てやすくなります。
売却後に住宅ローンが残ったらどうなりますか?
売却代金で住宅ローンを完済できない場合、抵当権を抹消できず引き渡しが進められません。自己資金での補てんや、任意売却など別の方法を検討する必要があります。早い段階で金融機関や不動産会社に相談することが大切です。
相続した不動産を売却する場合も同じ流れですか?
基本的な売却の流れは同じですが、売却の前に相続登記を済ませておく必要があります。相続人が複数いる場合は、売却代金の分配方法についても事前に話し合っておく必要があります。
不動産売却の流れと費用を把握してから進めましょう
不動産売却は、不動産会社を選ぶ段階と、買い手を見つけて引き渡す段階の2つに分けて考えると全体像がつかみやすくなります。仲介手数料や税金の目安を先に把握しておけば、手元に残る金額の見通しも立てやすくなります。ぜひ本記事の流れと費用の目安を参考に、不動産売却の準備を進めてください。
出典
- 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることのできる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」
- 国税庁「No.3235 譲渡所得の特別控除」
- 国税庁「土地や建物を売ったとき(譲渡所得の税率)」
- 国税庁タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
