SHARE:

買い戻し特約とは?不動産売却時に知っておくべき注意点を詳しく解説

資金を用意するために自宅や実家の売却を進める人のもとには、不動産会社から送られた売買契約書の案が届きます。条項欄に「買戻特約」という一文があり、民法579条に基づく買い戻し特約が付いていると告げられても、何年以内に買い戻せるのか、買い戻すときの金額はどう決まるのかが分からないまま署名を求められる場面があります。

買い戻し特約とは、不動産の売買契約と同時に結ぶことで、売主が支払われた売買代金と契約の費用を返還して契約を解除し、対象の不動産を買い戻せる特約です。特約を結べる期間は民法580条により10年を超えられず、登記をしなければ買主から不動産を取得した第三者に主張できません(民法581条)。

本記事では、買い戻し特約の仕組みと手続きの流れ、契約時に確認すべき注意点を解説します(2026年9月時点の民法の規定に基づく内容です)。

この記事はこんな方に向いています

  • 資金が必要で自宅を一時的に売却したいが、将来買い戻せる特約を付けられるか知らずに契約を進めるのが不安な方
  • 親から譜つ実家を手放す前に、将来の再取得を条件にした売買契約が可能か調べていて内容を理解できずに困っている方
  • 住み替え先の購入資金を確保するため今の家を売るが、買い戻し特約付きの契約書に何を書けばいいか分からず戸惑う方

不動産売却における買い戻し特約とは|民法上の仕組み

買い戻し特約(かいもどしとくやく)は、民法579条に定められた制度です。不動産の売買契約を結ぶのと同時に特約を付けることで、売主が将来その不動産を買い戻せる権利を確保できます。買戻しをするには、売主が買主から受け取った売買代金と契約の費用を買主に返還する必要があります。

この特約は売買契約と同時に結ばなければならず、売却後に単独で付け加えることはできません。将来買い戻す可能性があるなら、不動産の売買契約書を作る段階で不動産会社や司法書士に相談し、特約の条項を契約書に明記しておく必要があります。

買戻し特約は売買契約と同時に結ぶ必要があり、契約後に追加できない点に注意してください。

不動産売却や実家の継承で使う|買い戻し特約が選ばれる場面

資金を確保しながら実家を残したい場合

親から引き継いだ実家を手放す前に、将来買い戻せる条件を付けておけば、手元の資金事情が落ち着いたときに実家を取り戻せる可能性が残ります。完全に手放すことへの抵抗感がある方が、資金確保と実家の保有を両立させる手段として選ぶ場面です。

住み替えや事業資金の調達で一時的に売却する場合

住み替え先の購入資金やまとまった事業資金が必要なとき、今の家を売って資金を作りつつ、将来資金に余裕が出たら買い戻す前提で特約を付けるケースもあります。不動産の売却相場を正しく把握しておくと、買戻金額の目安も立てやすくなります。売却相場を調べる方法は匿名査定・AI査定はどこまで正確?精度の限界と賢い使い方で解説しています。

資金確保が目的でも、将来の買戻金額を見据えて今の売却相場を把握しておくと判断しやすくなります。

不動産売買契約の手続きと流れ|買い戻し特約を付けるとき

買い戻し特約付きの不動産売買契約は、通常の売買契約に加えて特約の条件を取り決め、登記まで済ませる必要があります。契約から買戻しの完了までの流れを図にすると、次のようになります。

1
買戻しの条件を取り決める
買戻しの期間と買戻金額を事前に合意
2
売買契約書に特約を明記する
買戻し特約の条項を契約書本文に記載
3
所有権移転と同時に買戻し特約を登記する
登記を怠ると第三者に主張できない
4
特約期間中に買戻し資金を準備する
最長10年、定めがなければ5年
5
買戻しの意思表示と代金の返還
売買代金と契約費用を買主に返還
6
所有権移転登記で買戻しを完了する
不動産の所有権が売主に戻る

買戻し特約の登記は、売買による所有権移転登記と同時に申請する必要があり(民法581条1項・登記実務先例)、あとからの追加はできない点を示しています。

登記の申請を後回しにすると権利を主張できなくなるため、司法書士への依頼を契約と同時に進めてください。

買戻しの期間と買戻金額の決め方

特約期間は10年以内、伸長できない

買戻しの期間は民法580条により10年を超えて定めることができず、契約で10年より長い期間を定めても10年に短縮されます。期間を定めなかった場合は5年とされます。一度定めた期間は、あとから延長する特約を結んでも効力がありません。

買戻金額の算定方法と実務の工夫

買戻しの代金は、原則として売主が買主から受け取った売買代金と契約の費用です。市場の価格が将来上がっても、買戻金額は契約時に取り決めた金額が基準になるため、買主・売主双方にとって見通しを立てやすい一方、売却相場の変動と買戻金額がかけ離れるリスクもあります。

期間は10年を超えられないため、資金を用意できる見込みを契約前に具体的に確認してください。

登記と対抗力|買い戻し特約を第三者に主張するには

買戻しの特約は、売買契約による所有権移転登記と同時に登記をしなければ、買主から不動産を取得した第三者に対抗できません。登記をしておけば、買主がその不動産を別の第三者に転売しても、売主は買戻しの権利を主張できます。反対に登記を省略すると、買主が不動産を売却したり抵当権(ていとうけん)を設定したりした場合、売主が買い戻せなくなる可能性があります。

登記簿を確認すれば買戻し特約の有無が分かるため、購入を検討する側も必ず確認してください。

売却後も買い戻せる|不動産売却でのメリットと注意点

売主側のメリット

買い戻し特約を使う最大のメリットは、不動産を手放して資金を確保しながら、将来同じ不動産を取り戻す道を残せる点です。実家や思い入れのある自宅を完全に失わずに資金を用意できます。

買主が見つかりにくいという注意点

買主の立場では、将来売主に買い戻される可能性がある不動産を購入することになるため、通常の売買より買主を見つけにくくなります。金融機関によっては買戻し特約付きの不動産を担保にしたローンの審査が厳しくなる場合もあり、不動産会社に相談しながら特約の条件を調整する必要があります。離婚に伴う不動産売却で買戻し特約を検討する場合は、売却相場を示す査定書が必要になることもあります。詳しくは離婚で不動産の査定書が必要なときの取り方と注意点で解説しています。

買主探しに時間がかかりやすいため、不動産会社には買戻し特約付きである点を早めに伝えてください。

買い戻し特約が使えないときの代わりの選択肢

買戻し特約を結んでくれる買主が見つからない場合、同じような目的を実現する方法として、売却後も住み続けられるリースバックや、将来買い戻す内容を別の契約として結ぶ再売買の予約があります。再売買の予約は買戻し特約と違って登記の方法や期間の制限が異なるため、司法書士や不動産会社に仕組みの違いを確認してから選ぶ必要があります。売却相場を把握せずに契約を進めると、買戻金額や売却価格の妥当性を判断できなくなるため、匿名査定を使う場合もその限界を理解しておく必要があります。査定の精度や注意点は匿名査定のデメリットと注意点|メリットと上手な使い方も解説で解説しています。

リースバックと再売買の予約は仕組みが異なるため、条件を比較してから契約内容を決めてください。

よくある質問

買い戻し特約は契約後に追加できますか?

買い戻し特約は売買契約と同時に結ぶ必要があり、契約後に追加することはできません。将来買い戻す可能性があるなら、売買契約書を作成する段階で特約の条項を入れておく必要があります。

買戻しの期間が過ぎたらどうなりますか?

民法が定める期間(最長10年、定めがなければ5年)を過ぎると買戻しの権利は消滅し、売主は買い戻せなくなります。期間内に資金を用意できる見込みを事前に確認しておく必要があります。

買戻金額は売却時の価格より高くなりますか?

買戻金額は原則として契約時に売主が受け取った売買代金と契約の費用です。契約時に取り決めた金額が基準になるため、市場価格が上がっても下がっても、原則としてその金額通りに買い戻します。

買い戻し特約付きの不動産は売れにくいのですか?

将来売主に買い戻される可能性がある分、通常の売買より購入を避ける方もおり、買主を見つけにくくなる傾向があります。ローンの審査が厳しくなる場合もあるため、不動産会社に相談しながら条件を調整する必要があります。

買戻し特約と再売買の予約はどう違いますか?

買戻し特約は民法579条に基づく制度で登記や期間の定めが明確な一方、再売買の予約は別の契約として将来の売買を取り決める方法で、登記の方法や期間の制限が異なります。どちらを選ぶかは司法書士や不動産会社に確認する必要があります。

買い戻し特約とは何かを理解して不動産売却を進めるために

買い戻し特約は、資金を確保しながら将来不動産を取り戻せる可能性を残す制度ですが、期間は最長10年、金額は契約時の取り決めが基準になるなど、民法上の制約があります。登記を怠れば第三者に主張できず、買主が見つかりにくいという現実もあるため、不動産会社や司法書士と条件をすり合わせてから契約を結ぶ必要があります。ぜひ本記事の手続きの流れと注意点を参考に、買戻し特約を付けるかどうかを慎重に検討してください。

出典

  • e-Gov法令検索「民法」(第579条、第580条、第581条)
  • 法務省「不動産登記の手続きについて」
  • e-Gov法令検索「不動産登記法」第96条、登記研究690号カウンター相談163
あなたへのおすすめ