相続放棄とは?不動産売却との関係と期限

借金を含めた財産をいっさい引き継がないと家庭裁判所へ申し出る手続きです。相続を知った日から原則3か月以内に申述します。放棄した人は不動産を売ることもできません。
親が亡くなり、多額の借金が見つかって「この不動産をどうすればいいのか」と迷う場面で出てくるのが相続放棄です。
借金も不動産もいっさい引き継がないと家庭裁判所に申し出る手続きで、放棄した人は不動産を売る側に立つことができなくなります。
本記事では、相続放棄が家の売却や土地の売却にどう関わるかを解説します。
相続放棄の意味と読み方
「相続放棄」は「そうぞくほうき」と読みます。
民法が定める制度で、亡くなった人の財産と借金のすべてを受け継がないと家庭裁判所に申し出る手続きです。
預貯金や不動産などの資産だけを選んで引き継ぐことはできず、ローンや借金などの負債もまとめて放棄する形になります。
申述先は亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で、相続を知った日から原則3か月以内に手続きを行います(2026年9月時点)。
相続放棄はこんな場面で出てきます
相続された空き家ですが、査定の前にお兄様が相続放棄をされたと伺いました。
はい、兄が借金を心配して家庭裁判所に相続放棄を申述しました。
そうなると、お兄様は売主にはなれませんので、残ったご家族で売却の手続きを進める形になりますね。
兄名義の分は法定相続分としてどうなるんでしょうか。
相続放棄をした方は最初から相続人でなかったことになるので、法定相続分もなくなります。今いらっしゃる相続人だけで売却を進められますよ。
分かりました。相続登記の手続きも兄は関係ないんですね。
そうですね、相続登記も残ったご家族名義で進めていきます。
相続放棄と遺産分割協議での「放棄」の違い
相続放棄とよく似た言い方に、遺産分割協議の中で自分の相続分を主張しないという意味の「放棄」があります。この2つは手続き先も効果もまったく違います。
相続放棄と遺産分割協議での放棄の違い
| 項目 | 相続放棄 | 遺産分割協議での放棄 |
|---|---|---|
| 手続き先 | 家庭裁判所 | 相続人同士の話し合い |
| 借金の扱い | 負わない | 負う可能性が残る |
| 不動産の相続 | 最初から相続人でなくなる | 他の相続人に譲る形になる |
不動産の売却に相続放棄がどう関わるか
相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかったものとして扱われます。
そのため、放棄した人は実家の家や土地の売主になることができません。
売却の手続きを進めるのは、放棄していない他の相続人です。
相続人が複数いて一人だけが放棄した場合は、残った相続人の間で法定相続分が変わり、その人たちが遺産分割協議を行って売却の窓口を決める形になります。
相続人全員が相続放棄をした場合は、その不動産を売却できる人がいなくなり、空き家のまま長く放置されるおそれがあります。
借金を理由に相続放棄を検討している場合でも、不動産にどのくらいの価値があるかを先に把握しておくと、放棄すべきかどうかの判断材料になります。
相続放棄の期限と手続きの流れ
相続放棄は、相続を知った日から原則3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
この期間内に、不動産の状況や借金の額をある程度把握しておかないと、放棄すべきかどうかの判断がつかないまま期限を迎えてしまいます。
家庭裁判所に受理された相続放棄は、原則として取り消すことができません。
借金の有無や不動産の価値の見立てによって判断が変わるため、迷う場合は司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
相続放棄後の不動産の管理責任
相続放棄をしても、次に相続人になる人が実際に管理を始めるまでは、放棄した人が空き家の状態を保つ責任を問われる場合があります。
特に、雨漏りや老朽化で近隣に迷惑がかかるような空き家では注意が必要です。
相続放棄をした不動産をどのように引き継ぐか、売却できる状態に戻せるかについては、「相続放棄した家はどうなる?」で解説しています。
放棄を検討している段階でも、不動産の価値を知っておきたい場合は「相続放棄を検討中でも価値を調べる方法」で解説しています。
相続放棄についてよくある質問
Q 相続放棄をした後に不動産を売りたくなったらどうすればいいですか
A 相続放棄をした人は不動産の売主になれません。
他の相続人がいる場合はその人たちが売却の窓口になり、相続人が誰もいない場合は別の対応が必要になります。
詳しくは「相続放棄した家はどうなる?」で解説しています。
Q 相続放棄をすると法定相続分はどうなりますか
A 放棄した人は最初から相続人でなかったことになるため、法定相続分もなくなり、他の相続人の取り分が増えます。
Q 相続放棄をした不動産に相続登記は必要ですか
A 放棄した人の名義にする相続登記は不要です。残った相続人が引き継ぐ場合は、その相続人の名義で相続登記を行います。
Q 相続放棄をするか迷っている間に不動産の価値を調べてもいいですか
A 問題ありません。借金の額と不動産の価値を比べることで、放棄すべきかどうかの判断がしやすくなります。
相続放棄のまとめ
相続放棄は借金と不動産をまとめて引き継がないと家庭裁判所に申し出る手続きで、放棄した人は家や土地の売却に関わることができなくなります。
期限は原則3か月以内で、いったん受理されると取り消せません。
ぜひ本記事の内容を参考に、家の売却や土地の売却に向けた判断を進めてください。


