不動産を売却すると住民税は上がる?仕組みと対策をわかりやすく解説
不動産を売却した翌年、住んでいる市区町村から届く住民税の税額決定通知書に、前年より高い金額が記載されるケースがあります。売却益(譲渡所得)には、所有期間が5年を超える長期譲渡所得で住民税5%、5年以下の短期譲渡所得で住民税9%の税率がかかるためです。
住民税は所得税と合わせて計算され、長期譲渡所得の税率は20.315%、短期譲渡所得は39.63%です(2026年9月時点)。
本記事では、不動産売却後に住民税が上がる仕組みと、負担を抑えられる控除・特例、確定申告から住民税への反映までの流れを解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 自宅を売却した翌年に住民税が上がるという話を聞き、確定申告前に仕組みを理解しておきたい50歳の方
- 売却益が出た場合の税負担がどの程度になるのか読めず、手元に残る金額の計算が狂うのを心配している方
- 住民税の増額を軽減する対策があるのか分からず、確定申告の前に知っておきたいと考えている方
不動産売却後に住民税が上がる仕組みとは
住民税は、その年の1月1日時点に住んでいる市区町村が、前年1年間の所得をもとに計算して課税する税金です。不動産を売却して利益(譲渡所得)が出ると、給与所得や事業所得とは別枠で申告分離課税として計算され、翌年度の住民税の課税標準に加算されるため、不動産を売却した年の住民税には影響が出ず、売却した翌年度の住民税から税額が上がります。
多くの自治体では住民税決定通知書が毎年6月ごろに届き、給与から天引きされる特別徴収の場合は6月分の給与から増額分が反映されます。会社員ではなく普通徴収を選んでいる方は、納付書で分割して支払う形になります。
住民税は不動産を売却した年ではなく翌年度に反映されるため、売却直後に税額が変わらなくても油断しないでください。
譲渡所得とは|不動産の売却益と住民税の計算方法
住民税の増額分を見積もるには、まず譲渡所得をどう計算するのかを押さえておく必要があります。
譲渡所得の計算式
譲渡所得は「売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除」で求めます。取得費とは購入時の代金や仲介手数料などの合計で、購入時の書類が残っていない場合は概算取得費として売却価格の5%を使うのが一般的です。譲渡費用には、売却時の仲介手数料や印紙税、建物の取り壊し費用などが含まれます。
住民税率と所得税率の内訳(長期・短期)
譲渡所得にかかる税率は、不動産を所有していた期間が5年を超えるか5年以下かで大きく変わります。
| 区分 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15.315% | 5% | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30.63% | 9% | 39.63% |
出典:国税庁「土地建物を譲渡したときの税金」(2026年9月時点)をもとに作成
所有期間の判定は不動産を売却した年の1月1日時点で数えるため、購入からちょうど5年が経過していても、年をまたぐ前に売ると短期譲渡所得として扱われる場合があります。所有期間の数え方次第で住民税の税率が5%にも9%にもなるため、売却時期は慎重に確認しておきたいところです。
取得費が分からない古い物件は概算取得費(売却価格の5%)になり、譲渡所得が大きく膨らむ点に注意してください。
税金と諸費用の内訳|不動産売却でいくら引かれるか
仮に3,000万円で不動産を売却し、所有期間が5年を超える長期譲渡所得で、居住用財産の特別控除などを使わず、取得費が分からないため概算取得費(売却価格の5%=150万円)を使い、譲渡費用を100万円と仮定すると、譲渡所得は2,750万円になります。この譲渡所得に税率20.315%を掛けると、税金(所得税・住民税の合計)はおよそ560万円になり、これに仲介手数料や印紙税などの諸費用約100万円を加えると、合計でおよそ660万円が差し引かれる計算になります。
※3000万円で売却・長期譲渡・概算取得費(5%)使用・控除適用なしの概算例(2026年9月時点)
赤い帯の「税金」部分には、所得税15.315%と住民税5%の両方が含まれており、住民税だけを取り出すとおよそ138万円(譲渡所得2,750万円の5%相当)が翌年度に差し引かれる計算になります。
仲介手数料や印紙税などの諸費用も、税金とは別に手取りから差し引かれる点を忘れずに計算してください。
住民税を軽減できる特例|不動産売却で使える控除
譲渡所得そのものを圧縮できれば、翌年度の住民税の増額幅も小さくできます。代表的な特例を2つ紹介します。
居住用財産を売ったときの3,000万円特別控除
自分が住んでいたマイホーム(居住用財産)を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。譲渡所得が3,000万円以下であれば、所得税・住民税ともに課税対象がゼロになる計算です。ただし、売った年の前年および前々年に同じ特例や買換え特例を受けていないことが条件で、別荘や投資用物件には使えません。
相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除
相続した空き家を一定の要件を満たして売却した場合にも、最大3,000万円の特別控除が使えます。2024年1月1日以後の譲渡では、適用を受ける相続人が3人以上いる場合、1人あたりの控除額は2,000万円です。相続した不動産を売却する流れや注意点は相続した不動産を売却する流れ|手続き・税金・注意点で解説しています。
特例の適用には確定申告が必須で、申告しないと控除は受けられません。期限内の申告を忘れないでください。
確定申告から住民税に反映されるまでの流れ
不動産を売却して譲渡所得が出た場合、売却した年の翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行います。税務署に提出した確定申告の内容は、住んでいる市区町村にも情報が連携され、その情報をもとに6月ごろ住民税の税額が決定します。
特別徴収を選んでいる会社員であれば6月分の給与から増額後の住民税が天引きされ、普通徴収であれば6月・8月・10月・翌年1月の4期に分けて納付書が届きます。確定申告をしないまま放置すると、無申告加算税や延滞税が追加される可能性があるうえ、特別控除などの特例も適用されません。不動産売却にかかる税金と費用の全体像は不動産売却にかかる税金と費用の全体像|いくら手元に残る?で解説しています。
住民税決定通知書は毎年6月ごろに届きます。金額に誤りがないか、内訳まで確認しておいてください。
ふるさと納税や国民健康保険料にも及ぶ住民税アップの影響
不動産売却による譲渡所得は、住民税の税額を直接押し上げるだけでなく、合計所得金額として扱われるため、周辺の制度にも波及します。ふるさと納税の控除上限額は寄附を行う年(売却した年)の所得をもとに算出され、翌年度の住民税に反映されるため、譲渡所得が生じた年に寄付をすると、その年の控除上限額が一時的に上がります。逆に言えば、売却した年の所得をもとに計算した上限額で寄付をすると、翌年は上限額が元の水準に戻る点に注意が必要です。
国民健康保険に加入している方は、保険料の所得割部分が、総所得金額等から基礎控除を差し引いた「旧ただし書き所得」をもとに算定されるため、譲渡所得が出た翌年度は保険料も上がる可能性があります。配偶者控除や扶養控除の判定にも合計所得金額が使われるため、家族の税負担にまで影響が及ぶケースもあります。
国民健康保険の保険料は住民税額をもとに計算する自治体が多いため、上がり幅を事前に試算しておくと安心です。
相談先は誰?不動産売却の税金・住民税サポート
特別控除の要件確認や確定申告の実務は税理士に相談するのが確実です。一方で、売却価格そのものの見積もりや、特例の対象になる物件かどうかの初期確認は、不動産会社に相談すると話が早く進みます。不動産売却全体の流れや費用、税金の基本は不動産売却の完全ガイド|流れ・費用・税金と高く売るコツで解説しています。
特例の要件確認は税理士、売却自体や査定は不動産会社と、役割を分けて相談すると話がスムーズです。
よくある質問
不動産を売却した住民税はいつから上がりますか
不動産を売却した年ではなく、売却した翌年度の住民税から上がります。確定申告の内容が市区町村に連携され、翌年6月ごろに届く住民税決定通知書から新しい税額が反映されます。
住民税は一括で支払うのですか
給与天引きの特別徴収であれば6月から翌年5月までの12回に分けて徴収され、普通徴収であれば6月・8月・10月・翌年1月の4期に分けて納付書で支払います。一括で一度に全額を請求されるわけではありません。
3,000万円特別控除を使えば住民税はゼロになりますか
譲渡所得が3,000万円以下であれば、控除を適用した結果の課税対象がゼロになり、住民税も所得税もかかりません。ただし、マイホームの売却であることや、前年・前々年に同じ特例を受けていないことなど、要件を満たしていない場合は使えません。
住民税が上がると扶養から外れることがありますか
譲渡所得は合計所得金額に算入されるため、配偶者控除や扶養控除の判定基準を超えると、扶養から外れて家族側の税負担が増えるケースがあります。家族に扶養されている方が不動産を売却する場合は、事前に確認しておくと安心です。
確定申告をしないとどうなりますか
譲渡所得が出ているのに確定申告をしないと、無申告加算税や延滞税が追加で科される可能性があります。3,000万円特別控除などの特例も、確定申告をしなければ適用されません。
不動産売却で住民税が上がる仕組みを理解して備える
不動産売却による住民税の増額は、売却した翌年度にまとめて反映され、長期譲渡所得で5%、短期譲渡所得で9%の税率が譲渡所得にかかります。居住用財産の3,000万円特別控除などの特例を使えるかどうかで、増額幅は大きく変わります。ぜひ本記事の計算例と特例の要件を参考に、確定申告前に手元に残る金額を見積もってください。
出典
- 国税庁「土地建物を譲渡したときの税金」
- 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
- 国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
- 総務省「個人住民税のしくみ」
- 総務省 ふるさと納税ポータルサイト「寄附金控除について」
- 岡崎市・岐阜市・中野区等「国民健康保険料(税)の算定方法(旧ただし書き方式)」
