相続税の非課税枠とは?控除額と計算方法を解説
相続税の基礎控除について調べると、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式だけが並び、自分の家の場合でいくらになるのかが分からないまま検索結果を眺める時間が続きます。
基礎控除は相続財産の総額からそのまま差し引かれる非課税枠で、これ以外にも生命保険金・死亡退職金には500万円×法定相続人の数、自宅の土地には小規模宅地等の特例による評価額の最大80%減額という別枠の非課税措置があります(2026年9月時点)。
本記事では相続税の非課税枠の仕組みと控除額の計算方法、実家を相続した場合の具体的な金額例を解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 自宅の売却を決意した50歳で、相続予定の実家にどこまで非課税枠が使えるのか把握できず確定申告への不安が募る方
- 税理士に頼む前に自分で控除額の計算方法を理解し、手元にいくら残るのか見通しを立てたいと考えている方
- 3000万円を超える資産を相続する見込みがあり、非課税枠を使い切れるかどうかで納税額が大きく変わることに気づいた方
相続税の非課税枠とは|実家の相続にかかわる基礎控除の仕組み
相続税は、相続財産の総額全体にかかる税金ではなく、基礎控除を超えた部分にだけ課税される仕組みです。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出し、実家の土地・建物、預貯金、株式などすべての相続財産を合計した金額がこの基礎控除以下であれば、相続税はかからず原則として申告も不要です。
法定相続人が1人なら基礎控除は3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円と、法定相続人の人数が増えるほど非課税枠は広がります。実家の相続で最初に確認すべきなのは、相続財産の総額と法定相続人の人数の2つです。
基礎控除は相続財産の総額に対する控除なので、実家の評価額だけで判断せず預貯金や株式もすべて合計して確認してください。
実家の相続で基礎控除額を計算する方法
法定相続人が配偶者と子1人の合計2人の場合、基礎控除は「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」になります。相続財産の総額(実家の土地・建物の相続税評価額+預貯金など)がこの4,200万円を超えた分にだけ、相続税がかかります。
実家の土地・建物は、市場での売却価格(時価)ではなく、相続税評価額という別の基準で金額が決まります。相続税評価額の調べ方は相続税評価額とは?土地の調べ方と遺産分割の注意点で解説しています。実際の売却価格の目安を別に知りたい場合は、匿名査定の仕組みと精度についても匿名査定・AI査定はどこまで正確?精度の限界と賢い使い方で解説しています。
相続税評価額は市場の売却価格と一致しないため、両方の金額を別々に確認しておくと手取りの見通しが立てやすくなります。
法定相続人の数え方で変わる相続税の非課税枠
基礎控除額は法定相続人の人数に比例して増えるため、法定相続人の数え方を誤ると非課税枠そのものを過小に見積もってしまいます。実務で混乱が起きやすい2つの場面を確認します。
養子の数の制限
実子がいる場合は養子を1人まで、実子がいない場合は養子を2人まで、基礎控除の計算に含められます。養子を増やして非課税枠を無制限に広げることはできません。
相続放棄した人の扱い
相続放棄をした人がいても、基礎控除の計算上は法定相続人の数に変わらず含めます。実際に遺産を受け取らない人がいても、基礎控除額自体は減りません。相続財産の評価と遺産分割の基準が別物であることも含め、相続税評価と遺産分割の評価は別物|基準の選び方で解説しています。
相続放棄をしても法定相続人の数には含まれる点を見落とすと、基礎控除額を誤って少なく計算してしまうので注意してください。
生命保険金・死亡退職金にもある相続税の非課税枠
基礎控除とは別に、生命保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられています。死亡退職金にも同様に「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が別枠で用意されています。
法定相続人が2人の場合、生命保険金のうち1,000万円までが非課税になります。基礎控除4,200万円と合わせると、実質的に5,200万円までは相続税の対象から外れる計算になります。実家の評価額に加えてこうした別枠の非課税枠を見落とすと、相続財産の総額を実際より高く見積もってしまいます。
生命保険金の非課税枠は基礎控除とは別枠なので、保険金の受取人や契約形態も合わせて確認しておくと計算漏れを防げます。
自宅の土地を守る小規模宅地等の特例
実家の土地(特定居住用住宅地等)については、小規模宅地等の特例によって330㎡までの部分の評価額を80%減額できます。配偶者が相続する場合は無条件で適用され、子が相続する場合は同居していたことや、相続開始前に持ち家がなかったことなどの条件が付きます。
実家がマンションの場合、建物部分の評価は区分所有の仕組みにより戸建てとは異なる計算になります。相続したマンションの評価方法は相続したマンションの評価と分け方|時価と相続税評価額の違いで解説しています。
小規模宅地等の特例は申告期限内に申告してはじめて適用される制度なので、評価額が下がると分かっていても申告を忘れないでください。
配偶者が相続する場合の相続税の税額軽減
配偶者が相続する場合、1億6,000万円または配偶者の法定相続分のいずれか多い金額まで相続税がかかりません。これは基礎控除や各種の非課税枠とは別に用意された、配偶者だけが使える軽減制度です。
配偶者の税額軽減を最大限使って一次相続の税額を抑えると、配偶者が亡くなったあとの二次相続で子の負担が増えるケースもあります。実家を含めた資産全体をどう分けるかによって税負担が変わるため、長期的な見通しを持って検討することになります。
配偶者の税額軽減で一次相続の税額を抑えすぎると、二次相続で子の負担が増える場合があるので、長期的な見通しも含めて検討してください。
相続財産5,000万円を想定した控除額と相続税額の計算例
実家の土地・建物の相続税評価額3,500万円と預貯金1,500万円を合わせた相続財産5,000万円、法定相続人が配偶者と子1人の合計2人というケースで計算します。基礎控除は「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」、課税対象額は「5,000万円-4,200万円=800万円」になります。相続税の税率は取得金額に応じて10%〜55%の段階で決まり、課税対象額800万円を法定相続分で配偶者・子にそれぞれ400万円ずつ分配してから、各取得金額に応じた税率表を適用して合計すると、相続税の総額はおよそ80万円です。
この内訳を帯で示すと、非課税枠がどれだけの割合を占めるかが分かります。
※相続財産5,000万円・法定相続人2人・特例適用なしの概算例です(2026年9月時点)。
帯の大部分が非課税枠で占められ、相続税として納める金額は全体のごく一部にとどまることが分かります。
実家を相続した後に売却する場合、相続開始から3年10ヶ月以内に売却すれば、支払った相続税額の一部を取得費に加算できる特例を使える場合があります。適用条件は相続税の取得費加算の特例|相続不動産を売るなら3年10ヶ月以内で解説しています。
相続税額は取得金額や特例の適用状況で変わるため、この計算例はあくまで概算としてとらえてください。
相続税の申告期限と専門家への相談タイミング
申告期限は10ヶ月以内
相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。この期間内に申告書を提出し、相続税を納付する必要があります。相続財産の総額が基礎控除以下で相続税がかからない場合でも、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使って非課税にする場合は、申告期限内の申告が適用の条件になります。
税理士への相談を検討したいケース
相続財産に実家の土地・建物が含まれ評価額の算定が複雑な場合、法定相続人の数え方に養子や相続放棄が絡む場合、配偶者の税額軽減と二次相続のバランスまで見据えた対策が必要な場合は、税理士への相談を検討する場面になります。
非課税枠の範囲内で相続税がゼロになる場合でも、特例を使うために申告書の提出が必要になるケースがあるので期限を確認してください。
よくある質問
相続税の非課税枠は誰でも使えますか?
基礎控除は相続財産を受け取るすべての人に適用される仕組みで、申告の有無にかかわらず相続財産の総額から差し引かれます。ただし小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減は、適用を受けるための申告書の提出が条件になる場合があります。
法定相続人に未成年者がいる場合、非課税枠の計算は変わりますか?
基礎控除の計算に使う法定相続人の数自体は、未成年者であっても1人として数えます。ただし未成年者が相続する場合は法定代理人を立てて手続きを進める必要があります。
相続財産が基礎控除以下なら、何もしなくていいですか?
相続財産の総額が基礎控除以下であれば相続税はかからず、原則として申告も不要です。ただし小規模宅地等の特例を使った結果として基礎控除以下になった場合は、申告書の提出が必要になります。
実家を相続してすぐ売却した場合、非課税枠以外に使える制度はありますか?
相続開始から3年10ヶ月以内に実家を売却すると、相続税額の一部を取得費に加算できる取得費加算の特例を使える場合があります。
非課税枠の計算を間違えるとどうなりますか?
法定相続人の数や相続税評価額を誤って計算すると、相続税額が過不足になり、後から税務署の指摘を受けて追加の納税や修正申告が必要になることがあります。
相続税の非課税枠を正しく計算して実家の相続に備える
相続税の非課税枠は、基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に加え、生命保険金・死亡退職金の500万円×法定相続人の数、小規模宅地等の特例による評価額の最大80%減額、配偶者の税額軽減という複数の制度で成り立っています。どの非課税枠を使えるかによって、実家を相続したときの納税額と手元に残る金額は大きく変わります。ぜひ本記事の控除額の計算方法と非課税枠の種類を参考に、実家の相続に向けた準備を進めてください。
出典
- 国税庁「相続税の仕組み」
- 国税庁「相続税の計算」
- 国税庁「相続税の税率」
- 国税庁「相続人の中に養子がいるとき」
- 国税庁「小規模宅地等の特例」
- 国税庁「配偶者の税額の軽減」
- 国税庁「相続税の申告書の提出が必要な場合」
- 国税庁「取得費に加算される相続税」
