3000万円特別控除とは|マイホーム売却で使える節税制度

マイホームを売って利益が出たら、その分をがっちり税金として持っていかれるのではないか。そんな不安から、売却に踏み出せずにいる方は少なくありません。
ですが実際には、マイホームを売った方の多くが税金をほとんど納めずに手続きを終えています。それを可能にしているのが「3000万円特別控除」という制度です。
この特例を使うと、マイホームの売却で得た利益(譲渡所得)から最高3,000万円を差し引くことができます。
売却にかかる税金と費用の全体像は「不動産売却にかかる税金と費用の全体像|いくら手元に残る?」で解説しています。
売却益が3,000万円以下であれば課税対象はゼロになり、日本の住宅価格帯を考えると、これだけで税金がかからなくなるケースが大半です。
控除の仕組みから適用条件、見落としやすい注意点まで、順を追って見ていきましょう。
3000万円特別控除とは|マイホーム売却の譲渡所得から差し引ける特例
3000万円特別控除とは、正式には「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」と呼ばれる制度で、マイホーム(居住用財産)を売ったときに、所有期間の長短にかかわらず譲渡所得から最高3,000万円まで控除できるものです。
ここで押さえておきたいのは「所有期間を問わない」という点です。
通常、不動産の売却では所有期間5年を境に税率が倍近く変わりますが、この控除自体は買ってすぐ売った場合でも使えます。
つまり、短期間で売却することになった方にとっても、選択肢から外れる制度ではありません。
| 控除なし | 控除あり | |
|---|---|---|
| 譲渡所得 | 1,850万円 | 1,850万円 |
| 特別控除 | - | -3,000万円 |
| 課税される譲渡所得 | 1,850万円 | 0円 |
| 税額(20.315%) | 約375.8万円 | 0円 |
出典:国税庁タックスアンサー No.3302・No.3208 にもとづく試算。控除額が譲渡所得を上回るため課税対象は0円となります。
この例のように、控除額が譲渡所得を上回れば課税対象そのものがなくなります。約376万円もの差が生まれることを考えれば、この特例を知っているかどうかで結果が大きく変わることが分かるのではないでしょうか。
数百万円単位で結果が変わる制度なので、対象になりそうな方は必ず確認してから確定申告を進めてくださいね。
3000万円特別控除の適用要件|4つの条件を確認する
3000万円特別控除を受けるには、国税庁が定める複数の要件を満たす必要があります。大きく分けると、売却物件がマイホームであること、前年・前々年に同じ特例を使っていないこと、特別な関係の人への売却でないこと、控除目的の入居でないことの4つです。
1. 売った物件がマイホームであること
自分が住んでいた家屋、またはその敷地であることが前提です。次のいずれかに該当する必要があります。
| 現住 | 現に自分が住んでいる家屋 |
| 以前住んでいた | 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合 |
| 敷地 | 上記の家屋とともに売る敷地や借地権 |
| 取り壊した場合 | 家屋を取り壊した場合は、取り壊し日から1年以内に譲渡契約を締結し、かつ住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること(貸付等に使っていないこと) |
「以前住んでいた家」も対象になる点は、意外に見落とされがちです。
転勤や住み替えで既に引っ越したあとでも、期限内であれば控除を使えます。
ただしこの3年は「住まなくなった日から3年後の年末まで」であり、単純な3年間ではありません。
期限の数え方を間違えると適用できなくなってしまうため、日付は慎重に確認しておきましょう。
2. 前年・前々年にこの特例を受けていないこと
3000万円特別控除は、原則として3年に1度しか使えません。前年および前々年にこの特例(またはマイホームの譲渡損失の特例など)を受けている場合は、今回は適用できないことになります。
3. 特別な関係の人への売却でないこと
親子や夫婦など「特別の関係がある人」への売却は対象外です。
生計を一にする親族、売却後にその家で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係の法人なども含まれます。
身内に売って控除だけ受けるという使い方は認められていません。
4. 控除目的の入居でないこと
この特例を受けることだけを目的として入居した家屋は対象外です。新築期間中の仮住まいのような一時的な入居や、別荘・アトリエなど居住以外の目的で使っていた家屋も、適用の対象にはなりません。
「以前住んでいた家」の3年の期限は特に間違えやすいので、住まなくなった日をはっきり控えておくと安心です。
10年超所有なら軽減税率と併用できる|長期譲渡より低い税率
所有期間が10年を超えるマイホームであれば、3000万円特別控除で控除しきれなかった売却益に対して「軽減税率の特例」を併用できます。通常の長期譲渡所得より低い税率が適用されるため、控除だけでは税金がゼロにならない場合でも、税負担をさらに抑えられます。
| 控除後の課税譲渡所得 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 6,000万円以下の部分 | 10.21% | 4% | 14.21% |
| 6,000万円超の部分 | 15.315% | 5% | 20.315% |
出典:国税庁タックスアンサー No.3305「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
※所有期間は売った年の1月1日時点で判定。所得税率には復興特別所得税を含みます。
3000万円特別控除と軽減税率の特例は重ねて適用できます。まず3,000万円を控除し、残った部分に軽減税率をかけるという順序です。
控除と軽減税率を併用する順序
売却益から取得費・譲渡費用を差し引く
譲渡所得から最高3,000万円を差し引く
10年超所有なら6,000万円以下の部分は14.21%
所有期間の判定は譲渡所得税と同じく「売った年の1月1日時点」で行われます。10年を少し超えるかどうかの微妙な時期であれば、売却時期を少しずらすだけで税額が変わる可能性があるため、検討しておく価値があるでしょう。
10年の判定日は「売った年の1月1日」なので、あと少しで10年に届く場合は売却時期を相談してみてくださいね。
3000万円特別控除の注意点|住宅ローン控除とは併用できない
3000万円特別控除は、住宅ローン控除と同時に使うことはできません。特例を適用した年の前後2年間(合計5年間)は、新居で住宅ローン控除を受けられなくなります。
住宅ローン控除とは併用できない
具体的には、3000万円特別控除を適用した年の前後2年間(合計5年間)は、新居で住宅ローン控除を受けられません。逆に住宅ローン控除を受けている場合は、その入居年の前後2年間、3000万円特別控除を使えないことになります。
住み替えでは、これが判断の分かれ目になります。
売却益が3,000万円以下であれば控除で税金をゼロにできますが、その代わり新居の住宅ローン控除を諦めることになるかもしれません。
どちらが有利かは、売却益の大きさと新居のローン残高によって変わるため、金額を出して比較してみるのが確実な方法です。
住宅ローン控除との比較検討の流れ
3000万円特別控除でゼロになる税額を確認
住宅ローン控除で得られる金額を見積もる
両方を金額で比較して判断する
税額がゼロでも確定申告は必要
特例を適用して納税額がゼロになる場合でも、確定申告は必要です。
申告をしなければ、この特例は適用されません。
「税金がかからないから何もしなくていい」という誤解が多い部分なので、注意しておきましょう。
手続きは「不動産を売った後の確定申告のやり方|必要書類と期限」で解説しています。
共有名義なら1人ずつ3000万円まで控除できる
夫婦共有名義のマイホームを売った場合、居住していた共有者がそれぞれ要件を満たせば、各自が3,000万円まで控除できます。
夫婦2人であれば、合計6,000万円まで控除できる計算になります。
共有名義の不動産の扱いについては「共有名義の不動産、自分の持分だけ売れる?」もご参照ください。
住み替えを検討している方は、控除と住宅ローン控除のどちらが得か、実際の金額で一度比較してみることをおすすめします。
相続した空き家の3000万円特別控除|マイホーム版との違い
親から相続した実家など、自分が住んでいない家を売る場合、マイホーム版の3000万円特別控除は原則として使えません。ただし、一定要件を満たす相続空き家には、別枠で最高3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」があります。
こちらの要件は決して緩やかではありません。
昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることなどが定められており、対象になるかどうかは事前にしっかり確認しておく必要があります。
相続不動産の売却については「相続した不動産を売却する流れ|手続き・税金・注意点」もあわせてご覧ください。
実家を相続された方は、マイホーム版とは別制度になるので、まずどちらの特例に当たるのかを見極めるところから始めましょう。
3000万円特別控除のよくある質問
Q 単身赴任中の家を売る場合も対象になりますか?
A 個別の判断になりますが、対象になる場合があります。
本人が単身赴任などで一時的に離れていても、配偶者などの生計を一にする親族が引き続き住んでいて、赴任が解消されたら再び一緒に住むと認められる場合は、その家屋を「自分が住んでいる家屋」として扱えます。
詳細は税務署にご確認ください。
Q 家を取り壊して更地で売る場合も使えますか?
A 条件を満たせば使えます。
取り壊した日から1年以内に譲渡契約を締結し、かつ住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが必要です。
さらに、取り壊してから売るまでの間、その土地を駐車場などに貸していないことも条件になります。
更地にしてから時間が経つと適用できなくなるおそれがあるため、解体のタイミングは慎重に判断してください。
Q 店舗兼住宅の場合はどうなりますか?
A 居住用として使っていた部分についてのみ、控除の対象になります。建物全体のうち居住部分の割合に応じて按分して計算しますが、居住用部分がおおむね90%以上であれば、全体を居住用として扱える場合があります。
Q 売却益が3,000万円を超えた場合はどうなりますか?
A 超えた部分に対して課税されます。
所有期間が10年を超えていれば軽減税率の特例を併用できるため、6,000万円以下の部分は14.21%に軽減されます。
税額の計算方法は「不動産を売ると税金はいくら?譲渡所得税の計算方法」をご覧ください。
Q 買い換える場合の特例とは選べますか?
A 3000万円特別控除とは選択適用になり、併用はできません。
マイホームを買い換える場合には「特定居住用財産の買換えの特例」という別の制度があり、こちらは課税を将来に繰り延べる仕組みで、免除されるわけではない点に違いがあります。
どちらが有利かは個別事情によるため、税理士にご相談ください。
Q 売却損が出た場合はどうすればいいですか?
A 利益が出ていない以上、3000万円特別控除の出番はありません。
ただしマイホームの売却で損失が出た場合は、他の所得と相殺できる特例が別に用意されています。
詳しくは「マイホームを売って損したら|譲渡損失の特例と繰越控除」をご覧ください。
まとめ|3000万円特別控除は確定申告をして初めて使える
3000万円特別控除は、マイホーム売却の税負担を大きく減らせる制度です。
所有期間を問わず使えるうえ、多くのケースでこの控除だけで税金がゼロになります。
所有期間が10年を超える場合は、軽減税率もあわせて併用できます。
一方で、以前住んでいた家には「住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期限があり、住宅ローン控除とは同時に使えないという制約もあります。住み替えを考えている場合は、どちらが有利かを実際の金額で比較してから判断してください。
そして、控除で税額がゼロになる場合でも確定申告は必要です。ここを見落とすと、特例そのものが適用されなくなってしまいます。
まずはご自身の不動産がいくらで売れそうかを把握し、売却益がどのくらいになりそうかの見当をつけるところから始めてみてください。
控除の要件は細かい日付の計算が絡むので、不安な点があれば早めに税務署や税理士に確認しておくと安心です。
出典・参考情報
- 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
- 国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
- 国税庁「No.3314 過去に居住していたマイホームを売ったとき」
- 国税庁「No.3308 共有のマイホームを売ったとき」
- 国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
- 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」
※本記事の制度内容は、上記の国税庁公表資料(令和7年4月1日現在法令等)にもとづいています。税制は改正される場合があるため、最新の情報は国税庁ホームページをご確認ください。


