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共有名義の不動産、自分の持分だけ売れる?

相続で実家が兄弟の共有名義になった。

離婚したが家は夫婦の共有のまま。

売りたいと言っても他の共有者が首を縦に振らない——。

本記事では、共有名義の不動産について、自分の持分だけを売れるのかを整理します。

結論から言えば売れます

これは法務省も明記している点です。

ただし、売れることと、それが得策かどうかは別の話です。

両方を書きます。

共有持分だけの売却に他の共有者の同意は要らない

まず、共有物についてできることを整理します。民法は、行為の性質によって必要な同意を分けています。

共有物に対する行為と必要な同意

行為必要な同意
変更(軽微でないもの)不動産全体の売却、建物の取壊し、農地を宅地に造成共有者全員
軽微な変更形状・効用の著しい変更を伴わない工事持分の価格の過半数
管理使用者を決める、短期の賃貸借持分の価格の過半数
保存修繕、不法占拠者への明渡し請求各共有者が単独で可
自分の持分の処分持分の売却・贈与単独で可(同意不要)

出典:民法第251条(共有物の変更)、第252条(共有物の管理・保存)等。令和5年4月1日施行の改正内容を含む。

最下段が要点です。

共有物全体を売るには全員の同意が必要ですが、自分の持分を売ることは単独でできます

持分は自分の財産だからです。

法務省も、相続時に土地を手放す方法の比較の中で、民間売買のメリットとして「共有者がいる場合でも、自分の持分のみ売却可能」と明記しています(相続土地国庫帰属制度が共有者全員での申請を要するのと対比する形で示されています)。

共有持分の売却はトラブルになりやすい|最後の手段にする理由

ここから正直に書きます。法律上できることと、実際にやるべきことは違います。

買い手がほとんどいません

持分だけを買っても、その不動産を自由に使えるわけではないからです。

買主は他の共有者と共有関係に入るだけです。

住むにも、貸すにも、他の共有者との調整が要ります。

価格が大きく下がります

3分の1の持分だから価格も3分の1、とはなりません。

使えない権利には、それ以上の割引がかかります。

買うのは専門業者が中心になります

共有持分を買い取る業者が存在します。

彼らは買った後、他の共有者に持分の買い取りを打診したり、共有物分割請求をしたりして利益を得ます。

つまり、あなたが持分を売ると、残された共有者は見知らぬ業者と共有関係になります

親族間の話し合いだったものが、業者との交渉に変わる。

これは相手にとって重い出来事です。

共有持分を売る前に検討すべき3つの方法

持分売却に進む前に、試すべきことがあります。

1. 全員で売って現金を分ける

最も高く売れて、最も公平な方法です。

共有物全体を市場で売却し、代金を持分に応じて分けます。

持分だけを売るのと違い、通常の不動産として売れるため価格が下がりません。

相続の場面での進め方は「兄弟で相続した実家を売却してお金を分ける方法|遺産分割」で扱っています。

2. 他の共有者に持分を買ってもらう

他の共有者にとって、持分を集約できるのは利益になります。

単独所有になれば自由に使えるからです。

第三者に売るより高く買ってもらえる可能性があります。

まずここに打診してください。

3. 共有物分割請求をする

話し合いがまとまらない場合、裁判所に共有物の分割を求めることができます。分割の方法は次のとおりです。

裁判による共有物分割の方法

方法内容
現物分割土地を分筆して分ける。建物には使いにくい
賠償分割共有者の一人(または複数)の所有とし、取得した者が他の共有者に代償金を支払う。令和3年改正で明文化された
競売分割競売にかけて代金を分ける。市場価格より安くなりやすい

出典:民法第258条(裁判による共有物の分割)。令和3年民法改正により賠償分割が明文化された。

時間と費用はかかりますが、共有関係を法的に解消できます。

共有者の所在が分からない場合の売却方法

「連絡が取れない共有者がいるから何もできない」——これは令和5年4月1日施行の改正で変わりました。

法務省の説明によれば、所在等が不明な共有者がいる場合、他の共有者は地方裁判所に申し立て、その決定を得て、次のことができます。

所在等不明の共有者がいる場合(令和5年4月1日施行)

残りの共有者の持分の過半数で、管理行為ができる(例:共有者の中から使用者を1人に決める)
残りの共有者全員の同意で、変更行為ができる(例:農地を宅地に造成する)
所在等が不明な共有者の持分を取得したり、その持分を含めて不動産全体を第三者に譲渡したりできる

出典:法務省「所有者不明土地の解消に向けて、不動産に関するルールが大きく変わりました」(民法第251条・第252条・第262条の2・第262条の3等)。裁判所において、持分に応じた時価相当額の金銭の供託が必要になります。

ただし、裁判所において、持分に応じた時価相当額の金銭の供託が必要です。

あらかじめ相当額を納めておく必要があるということです。

連絡が取れないというだけで諦める必要はなくなりましたが、手続と費用は要ります。

共有名義のまま放置する危険|相続で持分がさらに増える

「面倒だから、そのままにしておく」という判断が、最も問題を大きくします。

共有者の一人が亡くなれば、その持分は相続人に引き継がれます。

子が3人いれば、共有者は1人増えるのではなく3人増えます。

これが繰り返されると、共有者は10人、20人と膨れ上がり、全員の同意を得ることが現実的に不可能になります。

離婚時に共有名義を清算せずに残した場合も同じ問題が起きます(「離婚で家を売るには?財産分与の税金と住宅ローンの注意点」)。

法務省は、相続が発生してから遺産分割がされないまま長期間放置されると、相続が繰り返されて多数の相続人による遺産共有状態となり、遺産の管理・処分が困難になると指摘しています。

そして遺産分割には期限のルールが入りました

被相続人の死亡から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として、具体的相続分を考慮せず、法定相続分または指定相続分によって画一的に行うこととされました。

生前贈与や療養看護といった個別事情を主張したいなら、10年以内に動く必要があります。

この10年ルールは、令和5年4月1日より前に相続が開始した場合にも適用されます。ただし令和5年4月1日の時点で既に相続開始から5年を超える期間が経過していた場合は、令和10年3月31日までの猶予期間が設けられています。

共有持分を売るときの税金|控除は持分ごとに判定する

持分を売って利益が出れば、譲渡所得として課税されます。

計算は通常の不動産売却と同じで、取得費と譲渡費用を差し引いて求めます(「不動産を売ると税金はいくら?譲渡所得税の計算方法」)。

共有者それぞれが自分の持分について申告します。

3000万円特別控除も、要件を満たせば共有者ごとに適用できる可能性があります。

ただし、それぞれが要件を満たし、それぞれが確定申告をする必要があります(「3000万円特別控除とは|マイホーム売却で使える節税制度」)。

共有持分を売る前に相続登記が済んでいるか確認する

相続した不動産が共有になっている場合、相続登記が済んでいるかを確認してください。

2024年4月から相続登記は義務化されており、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。

正当な理由なく違反すると10万円以下の過料が科される可能性があります(「相続登記をしないと不動産は売れない?義務化と手続き」)。

共有持分の売却でよくある質問

Q. 他の共有者が反対していても、自分の持分を売れますか。

売れます。

共有物全体の売却には共有者全員の同意が必要ですが、自分の持分の処分は単独でできます。

法務省も、民間売買の特徴として「共有者がいる場合でも、自分の持分のみ売却可能」としています。

ただし買い手が限られ、価格は大きく下がります。

Q. 持分3分の1なら、売却価格も全体の3分の1ですか。

なりません。

それより大きく下がるのが通常です。

持分だけを買っても不動産を自由に使えず、他の共有者との調整が必要になるため、買主が限られるからです。

全員で売って代金を分けるほうが、手取りは大きくなるのが一般的です。

Q. 持分を売ると、他の共有者に迷惑がかかりますか。

影響はあります。

買主が共有者として加わるため、他の共有者は見知らぬ相手と共有関係になります。

買い取った業者が持分の買い取りを打診したり、共有物分割請求をしたりすることもあります。

法的には自由にできる行為ですが、関係者への影響を踏まえて判断してください。

Q. 共有者の一人と連絡が取れません。もう売れませんか。

令和5年4月1日施行の改正により、所在等が不明な共有者がいる場合でも、他の共有者が地方裁判所に申し立てて決定を得れば、その持分を取得したり、その持分を含めて不動産全体を第三者に譲渡したりできるようになりました。ただし、裁判所において持分に応じた時価相当額の金銭の供託が必要です。

Q. 共有のまま放置するとどうなりますか。

共有者が亡くなるたびに持分が相続され、共有者の数が増えていきます。

子が3人いれば1人が3人になります。

これが繰り返されると全員の同意を得ることが事実上できなくなります。

法務省も、長期間放置されると相続が繰り返されて遺産の管理・処分が困難になると指摘しています。

Q. 遺産分割に期限はありますか。

被相続人の死亡から10年を経過した後の遺産分割は、原則として具体的相続分を考慮せず、法定相続分または指定相続分によって画一的に行うこととされました。

生前贈与や療養看護などの個別事情を考慮してもらうには、10年以内に家庭裁判所へ遺産分割の請求(調停や審判の申立て)をする必要があります。

なお10年経過後も、相続人全員が合意すれば具体的相続分による分割は可能です。

まとめ|共有持分は単独で売れるが全員での売却を先に検討する

自分の持分だけを売ることは、他の共有者の同意なしにできます。

法務省も民間売買の特徴として明記しています。

ただし買い手は限られ、価格は持分割合以上に下がり、残された共有者は見知らぬ相手と共有関係になります。

まず試すべきは、全員で売って代金を分けること、次に他の共有者に買ってもらうこと。

それでも進まなければ共有物分割請求という手段があります。

所在不明の共有者がいる場合も、令和5年4月の改正で裁判所を通じた解決の道ができました。

最も避けるべきは放置です。

共有者が亡くなるたびに関係者が増え、遺産分割は10年で具体的相続分を考慮しない扱いに変わります。

今が最も共有者が少ない状態だと考えて、動き出してください。

出典・参考情報

  • 法務省「所有者不明土地の解消に向けて、不動産に関するルールが大きく変わりました」(民間売買は「共有者がいる場合でも、自分の持分のみ売却可能」、共有制度の見直し〈令和5年4月1日施行〉、所在等不明共有者の持分取得・譲渡と供託、遺産分割の10年ルールと令和10年3月31日までの猶予期間、相続登記の義務化)
  • 民法 第251条(共有物の変更)、第252条(共有物の管理・保存)、第258条(裁判による共有物の分割)、第262条の2(所在等不明共有者の持分の取得)、第262条の3(所在等不明共有者の持分の譲渡)、第904条の3(期間経過後の遺産の分割における相続分)
  • 民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)

※裁判所の手続の要否や必要書類は個別の事案により異なります。

税制の適用可否も個別の事情によって異なり、特例の適用には確定申告が必要です。

個別の判断については、弁護士、司法書士、税務署または税理士、不動産会社にご相談ください。

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