兄弟で相続した実家を売却してお金を分ける方法|遺産分割
親の実家を兄弟で相続した。
誰も住む予定はないので売って分けたいけれど、一人が「思い出のある家だから残したい」と言っている。
あるいは、話し合おうにも兄弟と疎遠で連絡すら取りづらい。
不動産は現金と違って分けられません。
だからこそ相続で揉めやすく、その結果として何年も放置されることになります。
この記事では、実家を売って分けるための方法と、話し合いがまとまらない場合の対処法を整理します。
兄弟で相続した実家を分ける4つの方法|換価分割・代償分割ほか
まず選択肢を知ることから始めます。分け方は大きく4つあります。
不動産の分け方4種類
| 方法 | 内容 | 向くケース |
|---|---|---|
| 換価分割 | 売って現金を分ける | 誰も住まない実家。最も公平 |
| 代償分割 | 一人が取得し、他に金銭を払う | 誰かが住み続けたい。資金が要る |
| 現物分割 | 土地を分筆して分ける等 | 広い土地。建物は分けられない |
| 共有分割 | 共有名義のままにする | 先送りになりやすく、注意が必要 |
出典:民法第906条・第907条(遺産の分割)にもとづく一般的な分類。
換価分割|売って分ける
誰も住まない実家であれば、これが最も公平で分かりやすい方法です。
売却して現金化し、持分に応じて分けます。
1円単位まで分けられるため、不公平感が残りにくいのが利点です。
手続きとしては、いったん相続人の誰か(または全員の共有)名義に相続登記をしないと不動産は売れない?義務化と手続きをしてから売却します。
売却代金から諸費用と税金を差し引いた残りを分配します。
売却自体の進め方は「不動産売却の流れ|査定から引き渡しまでの7ステップ」をご覧ください。
代償分割|一人が取得して他に払う
長男が実家に住み続けたい、といった場合の方法です。長男が不動産を取得し、他の兄弟には相当額の金銭を支払います。
問題は資金です。
2,000万円の実家を兄弟2人で分けるなら、取得する側は1,000万円を用意する必要があります。
この資金がなければ成立しません。
共有分割(共有名義)は避けたほうがよい
「決まらないからとりあえず共有で」という選択は、問題の先送りになりがちです。
共有不動産を売るには共有者全員の同意が必要です。
一人でも反対すれば売れません。
さらに時間が経って共有者の誰かが亡くなると、その持分がさらに相続され、権利者が増えていきます。
数十年後には、会ったこともない親戚十数人と協議する事態にもなり得ます。
共有名義の問題は「共有名義の不動産、自分の持分だけ売れる?」で詳しく解説しています。
実家を売ってお金を分けるまでの流れ|換価分割の進め方
| 1 | 査定を受けて価格を把握する 話し合いの前に、いくらになるか全員で共有する |
| 2 | 遺産分割協議で換価分割を決める 売却して分けること、分配割合を書面に残す |
| 3 | 相続登記をする 代表者名義または共有名義に |
| 4 | 売却する 共有名義なら全員が契約に関与(委任状で対応も可) |
| 5 | 代金を分配し、各自が確定申告 譲渡所得は持分に応じて各自が申告 |
先に査定を受けてから話し合う
話し合いが揉める原因の一つは、金額のイメージがバラバラなことです。「あの家なら3,000万円はする」と思っている人と、「せいぜい1,000万円だろう」と思っている人が話しても噛み合いません。
先に査定を受けて、全員が同じ数字を見た状態で話すほうが、議論は具体的になります。公的データにもとづく相場を提示できれば、なおよいでしょう。
協議書に「換価分割」と明記する
遺産分割協議書には、売却して分けること、そのために誰の名義で登記するか、分配割合を明記します。
ここが曖昧だと、後で「代表者が単独で取得した」と扱われ、贈与税の問題が生じることがあります。
書面の作成は司法書士等に依頼するのが安全です。
兄弟の話し合いがまとまらないとき|調停・審判という道
一人が売却に反対している
まず、なぜ反対なのかを聞くことです。「思い出があるから」なのか、「安く売られるのが嫌」なのか、「自分が住みたい」なのかで、対処が変わります。
安く売られることへの懸念なら、複数社の査定を見せて納得してもらう。
住みたいなら代償分割を検討する。
感情面の理由なら、時間をかけて話すしかないこともあります。
連絡が取れない相続人がいる
疎遠な兄弟や、前婚の子など、連絡先が分からない相続人がいる場合、戸籍の附票を取得すれば住所を調べられます。まずは手紙で連絡を試みます。
行方不明で長期間所在が分からない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる、といった手続きが必要になります。
それでもまとまらない場合
家庭裁判所の遺産分割調停を申し立てる方法があります。調停委員が間に入って話し合いを進め、それでも合意できなければ審判に移行し、裁判所が分割方法を決めます。
時間はかかりますが、当事者同士では感情的になって進まない話も、第三者が入ることで整理されることがあります。
相続した実家の売却は期限に注意|相続登記と特例の期限
話し合いが長引いても、期限のある手続きは待ってくれません。
相続税の申告は10か月以内。
遺産分割が未了でも、いったん法定相続分で申告・納税する必要があります。
相続登記は取得を知った日から3年以内で、過去の相続は2027年3月31日が期限。
まとまらない場合は相続人申告登記で暫定的に義務を果たせますが、その状態では売却できません。
取得費加算の特例を使うなら、相続税の申告期限の翌日から3年以内(相続開始から3年10か月以内)の売却が条件です。揉めているうちにこの期限を過ぎると、使えたはずの特例を失います。
換価分割の税金は各自が申告する|持分ごとの譲渡所得
換価分割で売却した場合、譲渡所得は持分に応じて各相続人が個別に申告します。代表者がまとめて申告するわけではありません。
取得費と所有期間は亡くなった方から引き継ぐため、長期譲渡所得(20.315%)になることが多くなります。
詳しくは「相続した不動産を売却する流れ|手続き・税金・注意点」と「不動産を売ると税金はいくら?譲渡所得税の計算方法」をご覧ください。
兄弟で相続した実家の売却でよくある質問
Q. 法定相続分はどうなっていますか?
配偶者と子が相続人なら、配偶者2分の1、子が残り2分の1を人数で等分します。
子だけなら人数で等分。
ただし遺産分割協議で全員が合意すれば、法定相続分と異なる分け方も可能です。
法定相続分はあくまで目安と考えてください。
Q. 実家に住んでいた兄弟がいる場合は?
売却するなら退去してもらう必要があり、感情的な対立になりやすい場面です。
その兄弟が住み続けたいなら代償分割、資金がなければ売却して転居先を探すことになります。
介護をしていた場合は寄与分が認められる可能性もあるため、専門家に相談してください。
Q. 誰の名義で登記して売るのがよいですか?
代表者1名の名義にする方法と、共有名義にする方法があります。
代表者名義は手続きが簡便ですが、協議書に換価分割である旨と分配割合を明記しないと贈与とみなされるおそれがあります。
共有名義は全員が売買契約に関与しますが、委任状で対応することも可能です。
司法書士に相談して決めるのが安全です。
Q. 売却代金から諸費用を引いて分けるのですか?
一般的には、仲介手数料や登記費用などを差し引いた残額を持分に応じて分配します。
この点も協議書で明確にしておくと、後の争いを防げます。
費用の内訳は「不動産売却にかかる税金と費用の全体像|いくら手元に残る?」をご覧ください。
Q. 遺言書があった場合はどうなりますか?
原則として遺言の内容が優先されます。
ただし相続人全員が合意すれば、遺言と異なる分割も可能です。
また遺留分(一定の相続人に保障された最低限の取り分)を侵害している場合、侵害額の請求ができます。
自筆の遺言は家庭裁判所の検認が必要な場合があります。
Q. 話し合いの前にできることは?
査定を受けて、実家がいくらになるかを把握することです。
数字が分かれば、感情論から具体的な話に移りやすくなります。
「まだ売ると決めたわけではないが、いくらか知りたい」という段階でも査定は受けられます。
まとめ|兄弟で相続した実家は換価分割が最ももめにくい
誰も住まない実家なら、売って現金を分ける換価分割が最も公平です。
誰かが住み続けるなら代償分割ですが、取得する側に資金が必要になります。
共有名義のままにする選択は、将来さらに権利者が増えて収拾がつかなくなるため、避けたほうが無難です。
話し合いを進めるうえで有効なのは、先に査定を受けて全員が同じ数字を見ることです。金額のイメージがバラバラなままでは、議論が噛み合いません。
そして期限があります。
相続税の申告は10か月、相続登記は3年(過去の相続は2027年3月31日)、取得費加算を使うなら3年10か月以内の売却。
揉めている間に期限を過ぎると、使えたはずの特例を失うこともあります。
出典・参考情報
- 民法 第900条(法定相続分)、第906条・第907条(遺産の分割)、第1042条(遺留分)
- 裁判所「遺産分割調停」
- 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
- 国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」
- 法務省「相続登記の申請義務化特設ページ」
※個別の遺産分割については、弁護士・司法書士・税理士等の専門家にご相談ください。
