残置物があっても家は売れる?処分費用と現状渡しの注意点

実家の売却が決まったのに、家の中には家具も家電もそのまま残っている。仏壇や布団まで残っていて、片付けに何日かかるのか、業者に頼んだらいくら請求されるのか、見当もつかない――そんな状態のまま、本当にこのまま売りに出していいのだろうかと不安になる方は少なくありません。
結論から言えば、残置物を残したままでも不動産は売却できます。
ただし「業者に頼めばいい」というほど単純な話でもありません。
依頼先を間違えると、売主自身が思わぬ形で責任を問われることさえあります。
ここでは、残置物を残したまま売る方法と、自分で処分する場合にかかる費用の目安、そして業者選びで見落とされがちな注意点を、順を追って整理していきます。
残置物とは|家に残したまま売れるものと売れないもの
残置物とは、売却する不動産にそのまま残された家具・家電・生活用品などを指します。エアコンや照明のように建物に付帯しているものから、タンスや冷蔵庫のような可動の家財、仏壇や遺品といった扱いに気を遣うものまで、その範囲は幅広く含まれます。
売買契約では、何を残し何を撤去するのかを、付帯設備表という書面であらかじめ整理しておきます。
買主が「もらえるものだ」と思い込んでいた設備を売主が撤去してしまったり、逆に「撤去してくれるはず」と考えていたものがそのまま残っていたり――こうした食い違いは、実際の取引の現場でしばしば起こります。
書面で確認しておく意味は、まさにここにあります。
原則として、売主は引き渡しまでに残置物を撤去しておくのが基本です。
とはいえ、当事者どうしが合意すれば、残したまま引き渡すことも可能です。
この方法は現状有姿(げんじょうゆうし)での引き渡しと呼ばれています。
付帯設備表に「残す」「撤去する」を一つずつ書き出しておくと、引き渡し後のトラブルを防ぎやすくなりますよ。
残置物の処分は一般廃棄物の扱い|業者選びを間違えない
家庭から出る残置物は、法律上、一般廃棄物に分類されます。これを収集・運搬するには、廃棄物の処理及び清掃に関する法律にもとづき、物件のある市区町村から一般廃棄物収集運搬業の許可を受けている必要があり、産業廃棄物の許可や古物商の許可だけでは回収できません。
ここが、本記事でもっとも伝えたい点です。他の解説では「不用品回収業者に頼めば早い」「産廃業者に依頼すればいい」と書かれていることがありますが、正確ではありません。
環境省および各自治体は、産業廃棄物収集運搬業の許可や古物商の許可では、家庭から出る不用品を回収できないと明示しています。
産業廃棄物処理業の許可は工場や企業の廃棄物を処理するためのものであり、古物商の許可は中古品の売買を行うためのものです。
どちらも、家庭ごみの回収を認める許可ではありません。
| 許可の種類 | 回収の可否 | 本来の対象 |
|---|---|---|
| 一般廃棄物収集運搬業 | 回収できる | 家庭から出る廃棄物。市区町村が許可を出す |
| 産業廃棄物収集運搬業 | 回収できない | 工場や企業から出る廃棄物 |
| 古物商 | 回収できない | 中古品の売買(買取は可) |
| 許可なし | 回収できない | 「無料回収」を掲げるトラックなど |
出典:環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」、東京都環境局「ご家庭から出るごみの出し方についての注意」をもとに作成。
業者に依頼する前に確認したいステップ
一般廃棄物収集運搬業の許可番号を確認する
市区町村が公表する許可業者一覧と名前を突き合わせる
金額と内訳を確認してから依頼する
無許可業者に頼むと売主も責任を問われることがある
「業者が違法なら、それは業者の問題では」と思われるかもしれません。しかし、そう単純には割り切れないのです。
環境省および自治体は、無許可の回収業者による不適正な処理が生じた場合、排出者(ごみを出した側)が罪に問われたり、廃棄物の撤去費用を請求されたりする場合があると注意を呼びかけています。渡した先が不法投棄をすれば、渡した側の責任も問われかねないということです。
見分け方として、東京都環境局は次の点を挙げています。
「リサイクルするから許可はいらない」と説明する業者がいますが、料金を取って家庭の不用品を回収する行為はごみの収集にあたります。
また「無料回収」と謳っていても、運送費や手数料の名目で支払いが発生するなら、それは実質的にごみの回収です。
産業廃棄物収集運搬業の許可番号を掲げている業者であっても、家庭の不用品は回収できません。
依頼先を選ぶ際は、物件のある市区町村が交付した一般廃棄物収集運搬業の許可を持っているかを確認してください。許可は市区町村ごとに交付されるもので、多くの自治体が許可業者の一覧を公表しています。
「無料回収」の看板を見ても、その場で契約せず、まずは市区町村の許可業者一覧で名前を確認する習慣をつけてくださいね。
残置物の処分費用の相場|1立方メートルあたりの目安と戸建て1軒分の総額
自分で処分業者に依頼する場合、撤去費用は1立方メートルあたり3,000円〜15,000円程度が一つの目安とされ、戸建て1軒分では総額15万〜30万円程度になることが多いようです。ただしこれは複数事業者の公開料金を比較した当編集部調べ(2026年7月時点)であり、公的な統計にもとづくものではありません。
費用の内訳は、人件費、運搬費、処分費、資材費などです。
エアコンの取り外しや金庫のような重量物、危険物がある場合には、追加費用が発生することもあります。
量が極端に多い場合は、目安の上限をさらに超えることも珍しくありません。
見積もりは複数社から取り、内容を比べたうえで選ぶことをおすすめします。
家電4品目は別枠でリサイクル料金がかかる
エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目は、家電リサイクル法の対象で、自治体の粗大ごみとしては出せません。リサイクル料金と収集運搬料金をあわせて支払い、引き取ってもらう仕組みになっています。
注意したいのは、このリサイクル料金がメーカーごとに異なる点です。「エアコンは990円」といった単一の金額で説明されることがありますが、実際にはメーカーによって差があります。
| 品目 | 例:パナソニック | 例:ニトリ | 差額 |
|---|---|---|---|
| エアコン | 550円 | 2,000円 | 3.6倍 |
| 薄型テレビ(大) | 2,970円 | 3,700円 | 730円 |
| 冷蔵庫(大) | 4,730円 | 5,600円 | 870円 |
| 洗濯機 | 2,530円 | 3,300円 | 770円 |
| 4品目の合計 | 10,780円 | 14,600円 | 3,820円 |
出典:一般財団法人家電製品協会 家電リサイクル券センター「再商品化等料金一覧」より抜粋(税込)。
料金はメーカー・品目・サイズで異なり、改定されることがあります。
上記のほかに収集運搬料金が1台ごとに別途かかります(金額は小売業者が設定)。
エアコンで見ると差がもっとも大きく、550円のメーカーもあれば2,000円のメーカーもあります。
事業者によってはさらに高い設定のところもあるでしょう。
処分する前に、本体の型番ラベルや保証書でメーカー名を確認しておくと安心です。
正確な金額は、家電リサイクル券センターのサイトで品目とメーカー名から調べられます。
家電のリサイクル料金は数百円〜数千円の差が出ることもあるので、処分前に一度センターのサイトで調べてみることをおすすめします。
残置物を残したまま売る3つの方法
残置物を残したまま売るには、大きく分けて3つの方法があります。買主と合意して現状有姿で引き渡す方法、不動産会社の買取を利用する方法、そして解体を前提に土地として売る方法です。
1. 買主と合意して現状有姿で引き渡す
買主が「自分で片付けるので、その分安くしてほしい」と考えているなら、残置物を残したまま引き渡すことができます。撤去費用にあたる金額を、価格から差し引く形です。
ただし、口頭だけの了解は後の争いのもとになります。何を残すのかを付帯設備表や契約書に明記し、書面としてきちんと残しておきましょう。
2. 買取を利用する
不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。残置物の撤去費用を織り込んだ価格が提示されるため、片付けをせずに手放すことができます。
価格は市場価格の7〜8割程度になるのが一般的です。
撤去の手間と時間を省ける一方、手取りは仲介より少なくなります。
撤去費用が20万円で、買取による価格差がそれを大きく上回るようなら、自分で片付けたほうが手元に残る金額は増えるでしょう。
「仲介と買取どっちがいい?違いとメリット・デメリット」で具体的な数字を出して比較していますので、あわせてご覧ください。
3. 解体前提で売る
築年数が古く、建物を解体して土地として売る場合、残置物は解体工事とあわせて処分されることがあります。
この場合も、廃材とは別に一般廃棄物として扱われる部分があるため、見積もりの内訳は確認しておいたほうがよいでしょう。
「築40年・築50年の古い家は売れる?解体すべきか判断基準」もあわせてご覧ください。
撤去費用と価格差、どちらが得かは物件ごとに変わるので、先に査定を受けてから比較するのがおすすめですよ。
相続した家の残置物は処分の前に確認を|遺品と貴重品
相続した実家を片付ける場合、処分の順序を誤ると不利になることがあります。遺産分割が終わらないうちに家財を処分すると、単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があるためです。
借金の有無がはっきりしないうちに家財を処分するのは避けたほうが安全です。
「相続放棄した家はどうなる?売却できるのか」で詳しく解説しています。
また、権利証や通帳、契約書といった書類が家財に紛れていることも珍しくありません。
処分を急ぐと、後の手続きで必要な書類を失ってしまうことになりかねません。
相続不動産の売却全体の流れは「相続した不動産を売却する流れ|手続き・税金・注意点」で確認できます。
残置物の処分費用を抑える方法
まだ使えるものは、リサイクルショップに買い取ってもらえば処分量そのものを減らせます。
中古品の買取は古物商の許可を持つ業者が扱う領域で、廃棄物の回収とは別の話です。
自治体の粗大ごみ収集を使えば費用は業者依頼より抑えられますが、量が多いと回収日程の確保に時間がかかることもあります。
売却のスケジュールと相談しながら決めてください。
遺品の中に大切な書類が紛れていることもあるので、片付けは焦らず、一つひとつ確認しながら進めてくださいね。
残置物の処分でよくある質問
Q 残置物があると売れませんか?
A 残置物があっても売却は可能です。
買主と合意すれば残したまま引き渡せますし、買取であれば撤去費用を織り込んだ価格が提示されます。
ただし内覧では物が多いほど部屋が狭く見えやすいため、仲介で高く売りたい場合は片付けたほうが有利になりやすい面はあります。
Q 「無料回収」のトラックに頼んでもいいですか?
A おすすめできません。
無料と謳っていても、運送費や手数料の名目で請求されることがあり、実質はごみの回収にあたります。
無許可業者が不法投棄をした場合、渡した側が撤去費用を請求される可能性もあるため、市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可を持つ業者かどうかを確認してください。
Q 産業廃棄物の許可がある業者なら問題ないですか?
A 問題があります。
産業廃棄物収集運搬業の許可では、家庭から出る不用品は回収できません。
産廃の許可は工場や企業の廃棄物を対象としたものであり、許可番号が掲示されていても、それが産廃のものであれば家庭の残置物の回収根拠にはならないのです。
Q エアコンや照明は残しても構いませんか?
A 買主が使いたいと希望すれば、残しても構いません。
付帯設備表に「引き渡す」と記載し、動作状況もあわせて伝えておきましょう。
故障している設備を「使える」と伝えて引き渡すと、後で修理費を求められることがあります。
Q 仏壇や遺品はどう扱えばいいですか?
A 遺品整理業者のなかには、仕分けや供養、形見分けまで対応してくれるところがあります。
この場合も、廃棄物の運搬を伴うのであれば一般廃棄物収集運搬業の許可が必要です。
許可の有無と、供養への対応範囲の両方を確認しておくと安心です。
Q 片付ける前に査定を受けてもいいですか?
A 問題ありません。
むしろ先に査定を受けたほうが、片付けるべきか残したまま売るべきかを判断しやすくなります。
撤去費用と価格差を比べてから決めるほうが合理的です。
売却の進み方は「不動産売却の流れ|査定から引き渡しまでの7ステップ」をご覧ください。
Q 家電のリサイクル料金はどこで確認できますか?
A 家電リサイクル券センターのウェブサイトで、品目とメーカー名を入力すれば確認できます。同じ品目でもメーカーによって数百円〜数千円の差があるため、処分前に一度調べておくと見積もりの妥当性を判断しやすくなります。
まとめ|残置物は費用を把握したうえで現状渡しも検討する
残置物があっても、不動産は売却できます。
買主と合意して現状有姿で引き渡すか、買取を利用するか、自分で片付けてから売るか。
撤去費用と価格差を比べて決めるのが合理的で、そのためにはまず査定を受けておくのが早道です。
なお、物が大量にあり生活に支障が出ている状態であれば、「ゴミ屋敷を売却したい|片付けずに売る方法と行政の限界」もあわせてご覧ください。
自分で処分する場合に押さえておきたいのは、家庭の残置物が一般廃棄物であるという点です。
回収には市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可が必要で、産業廃棄物の許可や古物商の許可では回収できません。
無許可業者に渡して不法投棄されれば、出した側が撤去費用を請求される場合もあります。
「無料回収」の呼び込みに頼らず、自治体が公表している許可業者の一覧を確認するようにしてください。
家電4品目のリサイクル料金はメーカーによって差があり、エアコンでは550円と2,000円のように3倍を超える開きが見られます。型番ラベルでメーカーを確認し、家電リサイクル券センターで実額を調べてから手配すると、見積もりの妥当性を判断しやすくなるでしょう。
相続した家の場合は、片付ける前に相続の状況を確認しておいてください。
遺産分割前に家財を処分すると単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。
まずは現状のまま査定を受け、順序を決めてから動くことをおすすめします。
焦って片付けを進める前に、一度査定を受けて全体の見通しを立てると、無駄な出費を防ぎやすくなりますよ。
出典・参考情報
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第7条(一般廃棄物処理業の許可)、第14条(産業廃棄物処理業の許可)
- 環境省「廃棄物の処分に「無許可」の回収業者を利用しないでください!」
- 東京都環境局「ご家庭から出るごみ(粗大ごみ・廃家電など)の出し方についての注意」
- 経済産業省「家電リサイクル法の仕組み」
- 一般財団法人家電製品協会 家電リサイクル券センター「再商品化等料金一覧(家電リサイクル料金)」
- 民法 第921条(法定単純承認)
※撤去費用の目安は法令や公的統計にもとづくものではなく、複数の撤去事業者が公開する料金表を比較した当編集部調べです(2026年7月時点)。
量・品目・地域により異なります。
家電リサイクル料金は改定される場合があるため、最新の金額は家電リサイクル券センターでご確認ください。


