住宅ローンが払えない…家を売って完済する方法

来月の返済ができるかどうか分からない。
督促状が届いたけれど、まだ誰にも話せていない。
家族にどう伝えればいいのか分からず、この記事を検索している方も多いのではないでしょうか。
売却の全体の流れは「不動産売却の流れ|査定から引き渡しまでの7ステップ」で解説しています。
収入が減った、ボーナスが出なかった、想定外の出費が続いた。
理由は人それぞれですが、住宅ローンの支払いが厳しくなること自体は、決して珍しいことではありません。
結論から言えば、家を売ることを考える前にやれることがあります。
そして、もし売るとしても、動く時期によって手元に残るお金は大きく変わってきます。
焦って結論を出す前に、まず今どの段階にいるのかを一緒に確認していきましょう。
放置した場合に何が起きるのかから、順を追って見ていきます。
住宅ローンの滞納を放置するとどうなるか|競売までの流れ
住宅ローンを滞納しても、翌月にすぐ家を追い出されるわけではありません。ただし、督促・催告から始まり、期限の利益の喪失、代位弁済、競売の申立てという段階を経るごとに、こちらが選べる手段は着実に減っていきます。
滞納後に起きることの順序
| 段階 | 起きること |
|---|---|
| 督促・催告 | 金融機関から入金の案内、督促状、催告書が届く |
| 期限の利益の喪失 | 分割で払う権利を失う。以後は残債全額の一括請求になる |
| 代位弁済 | 保証会社が残債を金融機関に一括返済。以後の請求相手は保証会社になる |
| 競売の申立て・開始決定 | 裁判所から競売開始決定通知が届き、不動産が差し押さえられる |
| 現況調査 | 裁判所の執行官と評価人が自宅を調査する |
| 期間入札・売却 | 物件情報が公告され、入札により買受人が決まる |
※各段階までの期間は金融機関や事案により異なります。出典:民事執行法、裁判所「売却係の扱う事務について」をもとに整理
なかでも重要なのが、期限の利益の喪失という段階です。
ここを過ぎると「毎月◯万円ずつ返す」という前提そのものが消え、残債を一括で求められる状態に変わります。
数千万円をすぐに用意できる方はほとんどいないため、実質的にはこの段階が分かれ道になると考えてください。
滞納から各段階までにかかる期間は、金融機関や事案によって異なります。ネット上では「滞納3か月で」「6か月で」といった具体的な数字を見かけることもありますが、契約内容や対応の経緯によって幅があるため、自分のケースがどこに当たるのかは、まず金融機関に確認するのが確実な方法です。
通知が届いた時点でどの段階にいるのか、まずそこを確認することが最初の一歩ですよ。日付が古いほど早めの対応が必要になります。
住宅ローンが払えないとき、まず金融機関に相談する|返済条件の変更
住宅ローンが払えないと分かったとき、最初に検討すべきは家を売ることではなく、返済条件そのものを変更できないか金融機関に相談することです。「住宅ローン 払えない」で検索すると任意売却業者の広告が目立ちますが、売却の一歩手前に、この選択肢が残されている場合があります。
住宅金融支援機構(フラット35など)は、返済が困難になった場合の返済方法変更メニューを公開しています。同機構によれば、次のような変更が可能とされています。
住宅金融支援機構の返済方法変更メニュー(主なもの)
| 内容 | 上限など |
|---|---|
| 返済期間の延長 | 最長15年(毎月の返済額を減らす) |
| 元金の支払いを一時休止 | 最長3年(その間は利息のみを支払う) |
| 一定期間の返済額を減額 | 収入減少の状況に応じて設定 |
| ボーナス返済分の見直し | 毎月払いとの内訳を変更 |
出典:住宅金融支援機構「タイプ別返済方法変更メニュー」「返済方法の変更を希望するとき」。機構所定の審査があり、希望に添えない場合もあります。
同機構は、返済方法の変更手続きに手数料はかからないとしています。
ただし、期間を延ばせば毎月の負担は下がる一方で、利息を支払う期間も延びるため、総返済額は増えてしまう点も同機構が明記しています。
万能の解決策というより、状況を立て直すための時間を買う手段だと理解しておくとよいでしょう。
民間の金融機関でも、返済条件の変更に応じる相談窓口が用意されていることがあります。
相談は、滞納が始まる前のほうが選べる選択肢が広く残ります。
すでに滞納が続いている、代位弁済の通知が届いているという段階では、条件変更というより、売却をどう進めるかという話に移っていくのが実情です。
条件変更の相談は、滞納する前に動けるほど選択肢が多く残ります。迷っているうちに時間だけが過ぎてしまうこともあるので、早めに一度相談してみてくださいね。
競売になるといくらで売られるのか|任意売却との価格差
競売では、裁判所が定める売却基準価額の8割に相当する額(買受可能価額)以上であれば入札が成立し得る仕組みになっています(民事執行法第60条)。つまり、通常の市場での売却額よりも低い水準で買い手が決まる可能性がある、ということです。
裁判所は評価人の評価に基づいて売却基準価額を定めます(民事執行法第60条第1項)。
そして買受けの申出は、この売却基準価額から10分の2に相当する額を控除した価額(買受可能価額)以上でなければ、適法な入札として認められません(同条第3項)。
売却基準価額そのものも、占有者がいる可能性や内覧できない事情などを織り込んで定められるため、通常の市場での売却額とは前提が異なるのです。
加えて、競売には次のような特徴があります。
競売と通常の売却(仲介)の違い
| 項目 | 競売 | 仲介・任意売却 |
|---|---|---|
| 価格 | 買受可能価額(売却基準価額の8割)以上で入札 | 市場価格をもとに交渉 |
| 売主の意思 | 不要(手続きは進む) | 売主が合意して契約する |
| 情報公開 | 物件情報が公告される | 通常の売り出しと同じ |
| 引渡し時期 | 手続きの進行に従う | 交渉の余地がある |
出典:民事執行法第60条、裁判所「売却係の扱う事務について」をもとに整理
売却額が下がれば、その分だけ残る借金は増えます。競売を避けることに実務上の意味があるのは、まさにこの一点にあります。
競売と仲介・任意売却では価格の前提がまったく違います。同じ家でも結果が変わることがあるので、早い段階で比較しておきたいところですね。
家を売って住宅ローンを完済できるか先に確かめる
売却額がローン残債と諸費用を上回れば、通常の売却として進め、そのまま完済することができます。下回る場合は「オーバーローン」と呼ばれる状態になり、金融機関の同意を得て進める任意売却という手続きが必要になります。
完済できるかどうかの確かめ方
※結果がプラスなら通常の売却で完済可能、マイナスならオーバーローンとして任意売却を検討
売却代金がローン残債と諸費用を上回れば、通常どおり売却して完済できます。
抵当権も抹消でき、手元に現金が残ることもあります。
この場合は「払えないから困っている」という状態から、比較的すっきりと抜け出せます。
問題は、売却額が残債を下回るオーバーローンの場合です。
売っても借金が残るため、金融機関が抵当権の抹消に同意しなければ、そもそも売却自体が成立しません。
この同意を得たうえで進める売却が任意売却です。
まずは残債と売却見込み額を並べてみることが出発点になります。
計算方法は「マンション売却で手元に残る金額の計算方法」、オーバーローン時の具体的な選択肢は「オーバーローンの家は売れる?残債がある場合の売却方法」で詳しく取り上げています。
まずは残債と売却見込み額を紙に並べてみるだけでも、進むべき方向が見えてくると思いますよ。
任意売却と競売の違い|手続き・価格・引っ越し費用
任意売却は、金融機関の同意を得て、通常の売却と同じように市場で売る方法です。競売と違い、売主自身が契約の当事者として交渉に加わることができます。
価格は市場相場をもとに交渉するため、競売より高く売れる可能性があります。
引渡し時期についても、話し合いの余地が残ります。
一方で、金融機関の同意が前提となるため、いつでも選べる方法ではありません。
競売の手続きがある程度進んでしまうと、時間的に間に合わなくなることもあります。
時間の余裕がない場合は、価格は下がるものの短期間で現金化できる買取という選択肢も検討の余地があります(「仲介と買取どっちがいい?違いとメリット・デメリット」)。
ここで注意しておきたいのは、任意売却をしても残った債務が消えるわけではないという点です。
売却後の残債務をどう返していくかは、別途金融機関と協議することになります。
「任意売却すれば借金がなくなる」という説明を見かけることがありますが、これは正確ではありません。
なお、税金の面では救済がある場合もあります。
マイホームを売って譲渡損失が出た場合、一定の要件を満たせば、その損失を他の所得と相殺し、所得税の還付を受けられる特例があります。
任意売却であっても要件を満たせば対象になり得ますが、競売による売却は対象外とされています。
詳しくは「マイホームを売って損したら|譲渡損失の特例と繰越控除」をご覧ください。
任意売却は「借金がゼロになる方法」ではありません。残った債務との向き合い方まで含めて考えておくと、後で戸惑わずに済みますよ。
住宅ローンが払えないときにやってはいけないこと
状況が苦しいときほど、避けておきたい行動があります。代表的なのは、通知を放置すること、他の借入で穴埋めすること、そして親族間での売買で住み続けようとすることです。
もっとも危険なのは、通知を開封せずに放置することです。
督促や催告の段階であればまだ選択肢がありますが、期限の利益を失い、代位弁済まで済んでしまうと、話し合いの相手も内容もそれまでとは変わってしまいます。
書面が届いたら、まずは内容と日付だけでも確認してください。
他の借入でローンの返済を穴埋めするのも避けたい行動です。カードローンや消費者金融からの借入をローンの返済に充ててしまうと、金利の高い債務が新たに積み上がり、状況はむしろ悪化してしまいます。
「親族間で売買して住み続ける」という案を持ちかけられることもありますが、税制上の特例は特別の関係がある人への売却には使えません。
「3000万円特別控除とは|マイホーム売却で使える節税制度」の要件にも、親子や夫婦など特別の関係がある人に売ったものでないことが挙げられています。
資金計画も含めて、慎重な検討が必要です。
返済が難しいと分かった段階で、まず金融機関に相談すること。これが、選択肢を最も多く残す行動になります。
つらい状況でも、通知を確認して早めに相談することが、結局は一番自分を守る行動になりますよ。
住宅ローンが払えないときのよくある質問
Q 1回でも滞納したら、すぐ競売になりますか。
A すぐには競売になりません。
まず督促や催告があり、期限の利益の喪失、代位弁済を経て競売の申立てという順序をたどります。
ただし段階が進むほど選べる手段は減っていきます。
特に期限の利益を失うと残債の一括請求になるため、その前に金融機関へ相談することが重要です。
Q 返済が苦しいのですが、家を売るしかありませんか。
A 売却の前に、返済条件の変更を相談する道があります。
住宅金融支援機構は返済期間の延長(最長15年)や元金の支払いを一時休止する期間の設定(最長3年)などのメニューを公開しており、手続きに手数料はかからないとしています。
ただし審査があり、希望に添えない場合もあります。
民間の金融機関でも相談窓口があることが多いので、まず問い合わせてみてください。
Q 返済期間を延ばせば得になりますか。
A 毎月の負担は下がりますが、その分だけ総返済額は増えます。
返済期間が延びる分、利息を支払う期間も長くなるためです。
住宅金融支援機構もこの点を明記しています。
あくまで当面の資金繰りを立て直すための手段であり、余裕ができた段階で期間を短縮し直すことも検討できます。
Q 競売だと、どのくらいの価格になりますか。
A 売却基準価額の8割の水準から入札が成立し得ます。
裁判所が評価人の評価に基づいて売却基準価額を定め、入札はその額から10分の2を控除した買受可能価額以上で行われるためです(民事執行法第60条)。
実際の落札額は物件や競争状況によって異なりますが、通常の市場での売却とは前提が異なる点は変わりません。
Q 任意売却すれば、借金はなくなりますか。
A なくなりません。
売却代金で返しきれなかった残債務は残り、その返済方法を金融機関と協議することになります。
任意売却の利点は、競売より高く売れる可能性があることと、引渡し時期などに交渉の余地が残ることです。
残債務が自動的に消える制度ではない点には注意してください。
Q 売って損が出た場合、税金の救済はありますか。
A 要件を満たせば、所得税の還付を受けられる特例があります。
マイホームの売却で譲渡損失が出た場合、一定の要件を満たすことで、その損失を給与など他の所得と相殺できる仕組みです。
任意売却でも要件を満たせば対象になり得ますが、競売による売却や特別の関係がある人への売却は対象外です。
適用には確定申告が必要になります。
まとめ|住宅ローンが払えないなら競売の前に動く
住宅ローンが払えないと気づいたら、そこからどう動くかが結果を左右します。
滞納を放置すると期限の利益を失い、残債の一括請求に変わってしまいます。
そこから代位弁済、競売へと進むにつれて、選べる手段は少しずつ減っていきます。
売却を考える前に、まず返済条件の変更が可能かを金融機関に相談してみてください。
住宅金融支援機構は返済期間の延長や元金据置のメニューを公開しており、手数料はかからないとしています。
総返済額は増えるため万能な解決策ではありませんが、立て直すための時間を作ることはできます。
売る場合も、競売と任意売却では価格の前提が違います。
競売の入札は売却基準価額の8割の水準から成立し得る一方、任意売却なら市場相場をもとに交渉できます。
売却額が下がるほど残る借金は増えるため、動くのが早いほど傷は浅くなると言えるでしょう。
まずは残債と売却見込み額を並べて、完済できるのかどうかという事実を確かめるところから始めてみてください。
一人で抱え込まず、まずは今の状況を数字で整理してみることから始めてみてくださいね。私たちにできる範囲のご相談にも対応しています。
出典・参考情報
- 住宅金融支援機構「タイプ別返済方法変更メニュー」(返済期間の延長は最長15年、元金支払いの一時休止は最長3年)
- 住宅金融支援機構「返済方法の変更を希望するとき」(手続きに手数料はかからない)
- 裁判所(東京地方裁判所民事第21部)「売却係の扱う事務について」(売却基準価額・買受可能価額の定義)
- 民事執行法 第60条(売却基準価額の決定。買受可能価額は売却基準価額から10分の2に相当する額を控除した価額)、第62条(物件明細書)、第63条(無剰余取消)
※滞納から各手続きに至るまでの期間や、返済条件変更の可否は、金融機関・保証会社・事案により異なります。
返済方法の変更には所定の審査があります。
税制の適用可否は個別の事情により異なり、適用には確定申告が必要です。
個別の対応については、ご返済中の金融機関、または弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。


