築40年・築50年の古い家は売れる?解体すべきか判断基準
築40年、築50年の実家。
「こんな古い家、価値なんてないでしょう」と言われ、解体してから売るべきか迷っている。
あるいは不動産会社に「建物の値段はつきません」と言われて、納得できないまま話が進んでいる。
本記事では、築古住宅を売るときの判断材料を整理します。
結論を先に言えば、「築20〜25年で建物価値がゼロ」は法律で決まったことではなく、業界の慣行です。
しかも国土交通省は、この慣行を問題だと指摘しています。
まずはそこから説明します。
築40年の家に価値がないと言われる理由|「築20〜25年でゼロ」は慣行にすぎない
国土交通省は平成26年3月31日、「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を策定しました。その報道発表資料に、こう書かれています。
「現在、我が国の中古戸建て住宅については、取引時に、個別の住宅の状態にかかわらず一律に築後20〜25年で建物の市場価値をゼロとされる慣行があり、中古住宅流通市場活性化の阻害要因となっています」
制度を所管する官庁が、この慣行を「阻害要因」と名指ししているわけです。
法律で「築25年で価値ゼロ」と決まっているわけではありません。
単に、そういう慣行がある。
そしてそれは改善すべきものだ、というのが国の立場です。
指針では、評価の改善に向けて次の考え方が示されました。
国土交通省が示した建物評価改善の考え方
| 住宅を基礎・躯体と内外装・設備に大きく分類して評価する |
| 基礎・躯体については性能に応じて20年より長い耐用年数を設定し、例えば長期優良住宅であれば100年超の耐用年数とすることを許容する |
| 基礎・躯体部分の機能が維持されている限り、リフォームを行った場合は価値が回復・向上するととらえて評価に反映する |
出典:国土交通省「『中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針』の策定について」(平成26年3月31日報道発表)
「古いから価値ゼロ」ではなく、躯体がしっかりしていて手入れされていれば評価されるべきだという考え方です。
木造の耐用年数22年は「寿命」ではない|減価償却の計算期間
「木造住宅の寿命は22年」と聞いたことがあるかもしれません。これも誤解です。
国土交通省の指針は、評価実務の背景をこう説明しています。中古戸建ての評価では原価法が中心に用いられ、その際に法人税法上の耐用年数(木造住宅は22年)などを参考にして、住宅の状態にかかわらず一律に築後20〜25年程度で市場価値がゼロとされる取扱いが一般的である、と。
つまり22年という数字は、税務上の減価償却の計算期間です。
建物が22年で壊れるという意味ではありません。
会計上の耐用年数が、なぜか市場価格の判断に流用されている。
国交省が問題視しているのは、まさにこの点です。
実際、指針は「近年の中古戸建て住宅市場をみると、築30年以上の物件が流通する割合が増加している」とも指摘しています。
築40年の家に価格がつきにくい理由|建物の評価が進まない実務の事情
ここは正直に書きます。国の指針が出てからも、実務では築古の建物に値段がつきにくいのが現状です。理由はいくつかあります。
評価の根拠が乏しい。
指針自体が、建物価値を適切に反映した土地・建物一体の取引事例がほとんど存在しないことを、原価法が中心になる理由として挙げています。
比較できる事例がないと、評価する側も慣行に頼らざるを得ません。
買主が住宅ローンを組みにくい。
金融機関の担保評価も同じ慣行の影響を受けます。
買主が借りられなければ、買える人が減り、価格は下がります。
買主が解体費用を織り込む。「どうせ壊す」前提で検討する買主は、解体費用の分を差し引いた金額で考えます。
だからこそ、売主側が判断材料を持っておく意味があります。「古いから仕方ない」と受け入れる前に、確認できることがあります。
築40年の家は解体してから売るべきか|更地にする前に確かめること
築古住宅の売却で最も多い迷いが、これです。結論から言うと、解体を急ぐ判断には落とし穴があります。
土地の固定資産税には住宅用地の特例があります。地方税法により、住宅の敷地として使われている土地は課税標準額が軽減されます。
住宅用地の特例(課税標準額の軽減)
| 区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地 住宅1戸あたり200㎡以下の部分 | 価格の6分の1 | 価格の3分の1 |
| 一般住宅用地 200㎡を超える部分 | 価格の3分の1 | 価格の3分の2 |
出典:地方税法第349条の3の2(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例)等。一般住宅用地は家屋の床面積の10倍までが限度。
この特例は「住宅が建っている土地」に対するものです。
建物を解体して更地にすると、特例の対象から外れます。
賦課期日は1月1日なので、年内に解体すると翌年度から土地の税額が上がることになります。
売れる見込みが立たないまま先に解体すると、解体費用を払ったうえに固定資産税も上がった状態で、売れるまで持ち続けることになります。
順序としては、買主の目処が立ってから解体を判断するほうが安全です。
買主が自分で解体したい場合もあります。
一方で、放置し続けるのも危険です。
空家等対策の推進に関する特別措置法により、特定空家等や管理不全空家等と認定され、市区町村から勧告を受けると、住宅用地特例の対象から除外されます。
建物を残していても特例が外れるということです。
相続した築古の実家には期限のある特例がある|空き家の3000万円特別控除
相続で取得した築古の実家を売る場合、税制上の特例が使える可能性があります。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例、いわゆる空き家の3000万円特別控除です。昭和56年5月31日以前に建築された家屋が対象という要件があるため、まさに築古の実家が該当します。
この特例には期限があり、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、という制約があります。
要件は細かく、区分所有建物(マンション)は対象外です。
詳しくは「旧耐震の家は売れる?耐震補強せずに売る方法と3000万円控除」で扱っています。
相続した不動産を売る手順全般は「相続した不動産を売却する流れ|手続き・税金・注意点」、登記の問題は「相続登記をしないと不動産は売れない?義務化と手続き」をご覧ください。
築40年・築50年の家を売るためにできること
慣行を変えることはできませんが、判断材料を増やすことはできます。
建物の状態を客観的に示す。
国交省の指針は、基礎・躯体の状態が評価されるべきだという立場です。
インスペクション(建物状況調査)を受ければ、劣化の有無を第三者の目で示せます。
宅建業者は媒介契約時にインスペクション業者のあっせんの可否を示すことになっており、希望すれば紹介を受けられます。
維持管理の記録を出す。
指針は、点検や補修など日常的な維持管理の有無が評価に反映されるとしています。
屋根の葺き替え、外壁塗装、給排水管の更新——記録があれば示してください。
「古家付き土地」として売る選択肢を検討する。
建物に値段がつかなくても、解体せずに土地として売り出す方法があります。
買主が解体費用を負担する前提で価格を調整する形です。
売主が先に解体費用を出す必要がありません。
複数社に査定を依頼する。
慣行に沿って機械的に「建物ゼロ」とする会社もあれば、リフォーム前提の買主を抱えている会社もあります。
築古は会社によって評価が割れやすい物件です。
買主が見つかりにくい場合、買取という選択肢もあります。
価格は仲介より下がりますが、現状のまま短期間で手放せます(「仲介と買取どっちがいい?違いとメリット・デメリット」)。
築古でも告知義務は発生する|築年数を理由に免責されない
築古だからといって、不具合を黙って売ってよいわけではありません。
売主には契約不適合責任があり、雨漏りやシロアリ被害など、知っている不具合は買主に伝える必要があります。
「古い家だから当然」とはなりません。
詳しくは「雨漏りする家を売りたい|修繕せずに売る方法と告知義務」で扱っています。
ただし、契約書に「現状有姿」「契約不適合責任を負わない」といった特約を入れることは可能です。
個人間売買では一定の範囲で認められています。
知っていて告げなかった事実については免責されないため、伝えるべきことは伝えたうえで特約を検討する形になります。
築40年・築50年の家の売却でよくある質問
Q. 築25年を過ぎたら、建物の価値は法律上ゼロですか。
法律で決まっているわけではありません。
国土交通省は、住宅の状態にかかわらず一律に築後20〜25年で市場価値をゼロとする「慣行」があるとし、これを中古住宅流通市場活性化の阻害要因だと指摘しています。
指針では、基礎・躯体の性能に応じて20年より長い耐用年数を設定し、長期優良住宅なら100年超とすることも許容されています。
Q. 木造住宅の寿命は22年ではないのですか。
22年は法人税法上の耐用年数、つまり減価償却の計算期間です。
建物が22年で使えなくなるという意味ではありません。
国土交通省の指針も、他に根拠がないためこの数字が参考にされていると説明しており、築30年以上の物件が流通する割合は増加しているとしています。
Q. 解体してから売ったほうが高く売れますか。
状況によります。
更地のほうが買主は見つけやすい一方、解体すると住宅用地の特例が外れ、土地の固定資産税の課税標準が上がります(小規模住宅用地なら6分の1の軽減がなくなります)。
売れないまま持ち続けると負担が増えるため、買主の目処が立ってから判断するほうが安全です。
買主が自分で解体したいケースもあります。
Q. 空き家のまま放置していても、固定資産税は安いままですか。
とは限りません。
空家等対策の推進に関する特別措置法により、特定空家等や管理不全空家等と認定され、市区町村から勧告を受けると、住宅用地の特例が解除されます。
建物が建っていても特例が外れるということです。
Q. 不動産会社に「建物は値段がつかない」と言われました。
慣行に沿った説明としては珍しくありませんが、それが唯一の評価とは限りません。
インスペクションで躯体の状態を示す、維持管理の記録を提示する、複数社に査定を依頼するといった方法があります。
築古はリフォーム前提の買主を抱える会社かどうかで評価が割れやすい物件です。
Q. 古い家の不具合は、伝えなくてもよいですか。
伝える必要があります。
築年数にかかわらず、知っている不具合は買主に告げなければなりません。
「現状有姿」「契約不適合責任を負わない」といった特約を結ぶことは可能ですが、知っていて告げなかった事実については免責されないと解されています。
まとめ|築40年でも売る方法はある・解体を急がない
「築20〜25年で建物価値はゼロ」は、法律ではなく業界の慣行です。
国土交通省はこれを中古住宅流通市場活性化の阻害要因だと指摘し、基礎・躯体の性能に応じて長い耐用年数を設定すべきだという指針を出しています。
木造22年という数字も、税務上の減価償却期間であって寿命ではありません。
とはいえ、実務で築古の建物に値段がつきにくいのも事実です。だからこそ、インスペクションで躯体の状態を示す、維持管理の記録を出す、複数社に査定を依頼するといった手を打つ意味があります。
解体は急がないでください。
更地にすると住宅用地の特例が外れ、土地の固定資産税の課税標準が上がります。
売れる目処が立つ前に解体すると、費用と税負担を抱えたまま待つことになります。
古家付き土地として売り出す方法もあります。
まずは今の状態で、いくらの値がつくのかを複数社に聞いてみてください。そのうえで、解体するかどうかを判断しても遅くありません。
出典・参考情報
- 国土交通省「「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」の策定について」(平成26年3月31日報道発表。築後20〜25年で建物価値をゼロとする慣行が阻害要因である旨、基礎・躯体と内外装・設備の分類、長期優良住宅で100年超の耐用年数)
- 国土交通省「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針(本文)」(法人税法上の耐用年数22年が参考にされている旨、築30年以上の物件の流通割合の増加)
- 地方税法 第349条の3の2(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例)、第702条の3(都市計画税)
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(特定空家等・管理不全空家等への勧告と住宅用地特例の解除)
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること等)
※固定資産税・都市計画税の税率や運用は市町村により異なります。
税制の適用可否は個別の事情により異なり、特例の適用には確定申告が必要です。
個別の判断については、お住まいの市区町村、税務署または税理士、不動産会社にご確認ください。
