オーバーローンの家は売れる?残債がある場合の売却方法

査定を受けてみたら、ローンの残債より安い金額を提示された。
このまま売っても、手元に借金だけが残ってしまう——。
転勤、離婚、住み替え、返済の負担。
売却の全体の流れは「不動産売却の流れ|査定から引き渡しまでの7ステップ」で解説しています。
理由は人それぞれでも、この壁にぶつかると「そもそも売れるのだろうか」という疑問が真っ先に浮かびます。
結論から言えば、オーバーローンの家でも売却は可能です。
ただし、通常の売却とは進め方が異なり、話の鍵を握るのは金融機関になります。
まずは、なぜ普通のやり方では売れないのか、その仕組みから順を追って見ていきましょう。
オーバーローンだと家が売れない理由|抵当権が外せない
オーバーローンとは、売却価格がローンの残債を下回ってしまう状態のことです。
この状態で家が売れなくなる直接の原因は、資金が足りないことそのものではありません。
抵当権を抹消できないことにあります。
住宅ローンを借りるとき、金融機関はその不動産に抵当権を設定します。
返済が滞った場合に競売にかけて回収するための権利です。
買主の立場から見れば、抵当権が付いたままの家を買うのは、いつ競売にかけられるか分からない物件を抱え込むのと同じことになります。
そのため実務上は、引き渡しと同時に抵当権を抹消することが売買の前提として扱われます。
抵当権を外すには、原則としてローンを完済しなければなりません。
売却代金だけで足りなければ、差額を自分で用意する必要が出てきます。
この差額を用意できない限り、金融機関は抵当権の抹消に応じてくれません。
売却の話は、ここで行き詰まってしまうのです。
| 確認するもの | 入手先 |
|---|---|
| ローン残債(今の残高) | 返済予定表、金融機関の残高証明書、ネットバンキング |
| 売却見込み額 | 不動産会社の査定(複数社で確認) |
| 諸費用(仲介手数料・登記費用など) | 不動産会社に試算を依頼 |
※売却見込み額から諸費用を引いた額が、返済に回せる金額になります。
ここで見落とされがちなのが諸費用です。
売却価格がそのまま返済に回るわけではなく、仲介手数料などを差し引いた残りが返済の原資になります。
「ぎりぎり足りるはず」と思っていたのに、諸費用の分だけ足りなくなる、ということが実際に起こります。
具体的な計算方法は「マンション売却で手元に残る金額の計算方法」で整理していますので、あわせて確認してみてください。
返済に回せる金額の計算
査定額と残債だけでなく、諸費用まで含めて計算しておくと、後になって「足りない」と慌てずに済みますよ。
オーバーローンの不足分を埋める4つの方法
オーバーローンの不足分を埋める方法は、大きく分けて4つあります。
自己資金を足す、住み替えローンを使う、親族から借りる、そして金融機関の同意を得て任意売却を行う、のいずれかです。
どの方法を選べるかは、手元資金や新居の計画、そして返済状況によって変わってきます。
オーバーローン解消までの基本フロー
残債・査定額・諸費用を確認する
自己資金・住み替えローン・親族からの借入・任意売却
引き渡しへ進む
1. 自己資金を足す
いちばん分かりやすいのは、貯金から不足分を補う方法です。
完済さえできれば通常の売却として進められるため、抵当権の抹消も問題なく行えますし、買主にとっても普通の中古住宅の取引になります。
売り出し価格を自由に決められる点も、この方法の利点です。
2. 住み替えローンを使う
新しい家を買う場合には、残った債務を新居のローンに上乗せして借りる住み替えローンという方法もあります。
ただし借入額が担保価値を超えることになるため、審査は厳しくなりがちで、収入や勤続年数の条件も問われます。
取り扱いの有無は金融機関によって異なるため、事前の相談が欠かせません。
3. 親族などから借りる
不足分を親族から借りて完済する方法もあります。
ただし、返済の実態がない「借入」は贈与とみなされる可能性があるため注意が必要です。
借用書を作成し、実際に返済する形をきちんと整えておくことが求められます。
4. 任意売却
これらのいずれも難しい場合に残るのが、任意売却という選択肢です。金融機関の同意を得たうえで抵当権を抹消してもらい、売却を進める方法になります。
住み替えローンや親族からの借入は、審査や書類の準備に時間がかかることもあるので、早めに動き始めることをおすすめします。
任意売却という選択肢|残債があっても売れる仕組み
任意売却とは、返済が困難な状況において、金融機関が抵当権の抹消に同意したうえで行う売却のことです。
返済が苦しい中で売却を検討すること自体は、後ろめたく思う必要のあることではありません。
同じような事情を抱えて任意売却を選ぶ方は、決して珍しくないのです。
ここで押さえておきたいのは、金融機関の同意が前提になるという点です。
「オーバーローンだから任意売却しよう」と自分の判断だけで進められるものではありません。
返済を続けられる状況であれば、金融機関があえて同意する理由もないためです。
実務上は、返済が滞っている、あるいは近いうちに滞ることが避けられない状況で検討されるケースがほとんどです。
任意売却の利点は、競売と比較したときにはっきり見えてきます。
競売では、裁判所が評価人の評価に基づいて売却基準価額を定め、入札はそこから10分の2を控除した買受可能価額以上で行われます(民事執行法第60条)。
つまり、売却基準価額の8割程度の水準から入札が成立し得る仕組みです。
これに対して任意売却であれば、市場相場をもとに交渉できるため、より高く売れる可能性が広がります。
一方で注意しておきたいのが、任意売却をしても残債務が消えるわけではないという点です。
売却代金で返しきれなかった分は残り、その後の返済方法を金融機関と協議していくことになります。
「任意売却で借金が帳消しになる」という説明は正確ではありません。
返済が苦しくて売却を考え始めた段階であれば、売る前に返済条件の変更を相談するという道もあります。詳しくは「住宅ローンが払えない…家を売って完済する方法」で扱っていますので、参考にしてみてください。
なお、任意売却であっても買主を探す作業自体は通常の売却と変わりません。
時間の制約が厳しい場合には買取業者に売る方法もありますが、価格は仲介より下がる傾向があり、その分オーバーローンの不足額は大きくなります。
両者の違いは「仲介と買取どっちがいい?違いとメリット・デメリット」で整理しています。
任意売却は一人で抱え込まず、なるべく早い段階で金融機関や不動産会社に相談することが、選べる選択肢を広げるコツですよ。
オーバーローンで売って損が出たときの税金の救済
住宅ローンのあるマイホームを、ローン残高を下回る価額で売却して譲渡損失が生じた場合、一定の要件を満たせば、その損失を他の所得から控除できる特例があります。知らずに見過ごしてしまうと、本来受けられるはずの還付を逃してしまう部分でもあります。
この特例では、ローン残高を下回る価額で売却して譲渡損失が生じたとき、一定の要件を満たせば、その損失を給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)できます。控除しきれなかった分は、譲渡の年の翌年以後3年間繰り越して控除することが可能です(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)。
この特例は、新しいマイホームを取得しない場合でも適用できます。つまり、買い換えずに賃貸へ移る場合でも使える制度だということです。
ここで重要になるのが限度額の考え方です。損益通算できる金額は、無制限ではありません。
| 売買契約日の前日の住宅ローン残高 - 売却価額 = 損益通算の限度額 |
出典:国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき」
つまり、譲渡損失の全額が対象になるわけではなく、オーバーローンの不足分が上限になるということです。ここを誤解して還付額を大きく見積もってしまうと、実際の申告時に想定が外れてしまいます。
主な要件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所有期間 | 売った年の1月1日において、家屋・敷地ともに5年を超えること |
| ローンの要件 | 売買契約日の前日において、償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること |
| 価額の要件 | 譲渡価額がそのローン残高を下回っていること |
| 売却相手 | 親子や夫婦など「特別の関係がある人」への売却でないこと |
| 繰越控除の所得要件 | 合計所得金額が3,000万円を超える年は、その年のみ繰越控除を適用できない(損益通算のみなら所得要件なし) |
出典:国税庁「No.3390」(措法41の5の2)。適用期限は令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)により2年延長されています。
この特例は住宅ローン控除と併用することも可能です。
買い換えて新居でローン控除を受けながら、旧居の損失を通算するという形も成り立ちます。
ただし適用を受けるには確定申告が必要です。
要件の詳細や具体的な計算例は「マイホームを売って損したら|譲渡損失の特例と繰越控除」で扱っています。
損益通算の限度額は誤解しやすいポイントなので、確定申告の前に一度、税務署や税理士に確認しておくと安心ですよ。
離婚でオーバーローンの家を売るときの注意点
離婚に伴う売却では、通常のオーバーローン売却にはない論点が加わります。特に注意したいのが、特例の適用対象と、連帯保証・連帯債務の扱いです。
まず、先ほどの特例は特別の関係がある人への売却では使えません。配偶者はこれに該当するため、離婚が成立する前に相手へ家を渡す形にしてしまうと、特例の対象外になってしまいます。
また、連帯保証や連帯債務がある場合、売却をしても残債務の責任がなくなるわけではありません。
離婚協議書に「ローンは相手が払う」と書いたとしても、金融機関に対してその取り決めを主張することはできない点に注意が必要です。
詳しくは「離婚で家を売るには?財産分与の税金と住宅ローンの注意点」をご覧ください。
離婚に伴う売却は税金面と債務の面が絡み合うので、動き出す前に整理しておくと後々のトラブルを防ぎやすくなります。
オーバーローンで売る以外の選択肢
状況によっては、今すぐ売らずに様子を見るという判断もあり得ます。特に返済を続けられる余裕があるなら、時間を味方につける選択肢も検討する価値があります。
高齢の方が自宅に住み続けたい場合には「リースバックは老後に安心?国が示す注意点と落とし穴」も選択肢の一つになりますが、こちらにも注意しておきたい点があります。
返済を続けられる状況であれば、時間の経過とともに残債が減り、オーバーローンが自然に解消されていく可能性もあります。
相場が上向けば、その差はさらに縮まるでしょう。
急いで売る理由がないのであれば、繰り上げ返済で残債を減らしてから売り出すほうが、選べる選択肢は広がります。
賃貸に出すという案もありますが、住宅ローンはあくまで自己居住を前提とした商品です。
無断で賃貸に出してしまうと契約違反となり、一括返済を求められることがあります。
転勤などやむを得ない事情がある場合には、まず金融機関に相談してください。
「今は売らない」という選択も立派な戦略です。返済状況に余裕があるなら、焦って動く必要はありませんよ。
オーバーローンの売却でよくある質問
Q オーバーローンでも家は売れますか。
A 売れます。
ただし抵当権を抹消する必要があるため、不足分を自己資金で補うか、住み替えローンを使うか、金融機関の同意を得て任意売却するかのいずれかの方法をとることになります。
抵当権を残したまま売ることは実務上できません。
Q 任意売却は自分で決められますか。
A 自分の判断だけでは決められません。
金融機関が抵当権の抹消に同意することが前提になるためです。
返済を続けられる状況では、金融機関があえて同意する理由もありません。
実務上は、返済が滞っている、あるいは近いうちに滞ることが避けられない状況で検討されます。
Q 損失が2,000万円出たら、2,000万円分の控除を受けられますか。
A 受けられるとは限りません。
損益通算の限度額は「売買契約日の前日の住宅ローン残高から売却価額を差し引いた金額」です。
譲渡損失の全額ではなく、オーバーローンの不足分が上限になります。
Q 買い換えないと、譲渡損失の特例は使えませんか。
A 使えます。
この特例は新たなマイホーム(買換資産)を取得しない場合でも適用できます。
賃貸に移る場合でも、他の要件を満たせば損益通算と繰越控除の対象になり得ます。
Q 新居の住宅ローン控除とは併用できますか。
A 併用できます。
国税庁もこの特例と住宅借入金等特別控除は併用できると明記しています。
ただし譲渡損失の特例の適用には、所定の書類を添えた確定申告が必要です。
Q 残債が減るまで待ったほうがいいですか。
A 急ぐ理由がなければ、その判断もあり得ます。
返済を続ければ残債は減り、オーバーローンの差は縮まります。
ただし譲渡損失の特例には適用期限があり、建物の価値も年々下がっていく点は踏まえておく必要があります。
売る理由と時期の制約を照らし合わせて判断してください。
Q 連帯保証人や連帯債務者がいる場合、売却すれば責任はなくなりますか。
A なくなりません。
売却をしても残債務についての責任は残ります。
離婚協議書などに「ローンは相手が払う」と記載しても、その取り決めを金融機関に対抗することはできません。
Q 住宅ローンが残ったまま賃貸に出すことはできますか。
A 原則としてできません。
住宅ローンは自己居住を前提とした商品のため、無断で賃貸に出すと契約違反となり、一括返済を求められることがあります。
転勤などやむを得ない事情がある場合は、金融機関に相談してください。
まとめ|オーバーローンでも残債を埋める方法から検討する
オーバーローンでも、家を売ること自体はできます。
売れない原因は資金不足そのものではなく、抵当権が抹消できないことにあるからです。
不足分を自己資金や住み替えローンで埋めるか、金融機関の同意を得て任意売却するか、そこが選択の分かれ道になります。
税制上の手当ても用意されています。
ローン残高を下回る価額で売って損失が出た場合、一定の要件を満たせば損失を他の所得と通算でき、控除しきれない分は3年間繰り越せます。
買い換えなくても使える制度で、新居の住宅ローン控除とも併用できます。
ただし通算できるのは「ローン残高-売却価額」が上限になる点は忘れないでください。
まずは残債と査定額、諸費用を並べて、いくら足りないのかを具体的な数字にしてみてください。不足額さえ分かれば、自分にどの方法が使えるのか、おのずと見えてくるはずです。
一人で計算に悩むより、不動産会社や金融機関に早めに相談したほうが、選べる方法の幅が広がりますよ。
出典・参考情報
- 国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」(措法41の5の2)
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日閣議決定。住宅・土地税制〔延長・拡充等〕(8)特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の適用期限を2年延長)
- 裁判所(東京地方裁判所民事第21部)「売却係の扱う事務について」(売却基準価額・買受可能価額の定義)
- 民事執行法 第60条(売却基準価額の決定。買受可能価額は売却基準価額から10分の2に相当する額を控除した価額)
※税制の適用可否は個別の事情により異なり、適用には確定申告が必要です。
国税庁タックスアンサーには税制改正が反映されるまで時間差が生じる場合があるため、適用期限は最新情報をご確認ください。
任意売却の可否、住み替えローンの取扱いは金融機関により異なります。
個別の判断については、税務署または税理士、ご返済中の金融機関、不動産会社にご相談ください。


