SHARE:

リースバックは老後に安心?国が示す注意点と落とし穴

リースバックは老後に安心?国が示す注意点と落とし穴

「テレビでよく見るリースバック、うちも年金だけだと心細いから検討してみようか」「でも、一度契約したら本当にこの家にずっと住み続けられるの?

」「親が一人で契約してしまって、後からトラブルにならないか心配」。

そんな声を、リースバックという言葉を検索した方の多くが心のどこかに抱えています。

その不安は、決して大げさなものではありません。

むしろ自然な警戒心と言えます。

結論から先に言うと、リースバックは使い方によっては有効な手段ですが、「ずっと住み続けられる」ことを保証する契約ではありません。

これは国土交通省自身が、消費者向けの資料の中で明記している事実です。

この記事では、国土交通省と国民生活センターが公表している資料をもとに、リースバックの仕組みと、実際に起きているトラブル、契約前に確かめておくべき点を順を追って整理していきます。

リースバックとは|自宅を売って家賃を払い住み続ける仕組み

リースバックとは、自宅を不動産会社などの事業者に売却して現金を受け取り、その後は買主となった事業者に毎月の賃料を払うことで、同じ家に住み続けられる仕組みです。

国土交通省はこれを「住宅を売却して現金を得て、売却後は毎月賃料を支払うことで、住んでいた住宅に引き続き住むサービス」と定義しています。

売却によって家の所有者は事業者に変わり、これまでの持ち主だったあなたは、その日から借主という立場になります。

ここで注目したいのは、国土交通省がガイドブックに掲載している仕組み図です。

図の中には「そのままずっと住み続けられる保証はない」という注記がはっきりと書き込まれています。

制度を所管する官庁が、消費者向けの解説資料の中でこう明言している事実は、軽く扱ってよいものではないでしょう。

ミカタ株式会社

「住み続けられる」という言葉だけを信じて契約を決めてしまう前に、まずはこの注記の意味を一緒に確認させてくださいね。

リースバックの相談が急増している|国民生活センターへの相談件数

国民生活センターへのリースバックに関する相談件数は、ここ数年で急増しています。令和7年5月21日の報道発表によれば、2019年度に24件だった相談は2024年度には234件となり、5年間で約10倍に増えました。

この発表は「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!-本当に『そのまま"ずっと"住み続けられる』契約ですか?-」という表題で行われています。

タイトルそのものが、現場で何が起きているかを物語っているといえるでしょう。

リースバックに関する相談件数の推移

年度相談件数
2019年度24件
2020年度56件
2021年度85件
2022年度129件
2023年度239件
2024年度234件

出典:国民生活センター(令和7年5月21日報道発表)。PIO-NET登録分(2025年3月31日まで)。

年代別に見ると、契約当事者の約7割が70歳以上を占めます。

最も多いのは80歳代(91件・41.4%)で、90歳以上も13件(5.9%)含まれています。

年金だけで生活費が心もとない、まとまった資金が必要になった、そうした事情を抱えた高齢者が、この相談件数の中心にいるのです。

ミカタ株式会社

ご本人だけでなく、ご家族が「あれ、うちの親も対象では」と気づくきっかけになる数字だと思います。

リースバックのデメリット|実際に起きているトラブル

国民生活センターに実際に寄せられた相談には、家賃が数年で倍近くに跳ね上がった例や、認知症の症状がある高齢者が相場からかけ離れた価格で自宅を売却してしまった例など、深刻な内容が含まれています。いずれも2024年度に受け付けられた相談です。

国民生活センターに寄せられた相談事例

起きたこと内容
家賃が3年後に約2倍
70歳代女性
生活費に困りテレビCMを見て契約。自宅マンションを約1,600万円で売却し「そのまま住み続けられる。家賃は約6万円」と説明された。3年後、家賃が突然約11万円に。「払えないなら早急に退去してほしい」と言われたが、売却代金はすでに生活費で使っていた。
認知症の父が400万円で売却
80歳代男性の家族
父が転倒・入院した際に認知症が判明。父が戸建ての自宅を400万円で売却し、月額家賃4万円のリースバック契約を結んでいたことが発覚。売却額は相場とかけ離れており、父は自分の住所も書けない状態だった。
12時間の勧誘と違約金
80歳代男性
築40年の自宅マンションについて「1,200万円で売却し家賃を払ってそのまま住む契約」と朝10時から夜10時過ぎまで勧誘された。仕方なくサイン。後日親族に売却価格の安さを指摘され解約を申し出ると、手付金50万円の返金に加え違約金50万円を求められた。

出典:国民生活センター「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!

」(令和7年5月21日報道発表)。

いずれも2024年度に受け付けられた相談。

国民生活センターは、これらの事例を踏まえて4つの問題点を指摘しています。長時間・強引な勧誘によって望まない契約をしてしまうこと、契約内容が消費者に十分理解されていないこと、そして「自宅に住み続けたい」というそもそものニーズと合致しない契約が結ばれていること、判断能力が低下した高齢者が狙われやすいことです。

相談事例からみる問題点

長時間の勧誘や強引な勧誘によって、消費者が望まない契約をしてしまう
リースバックの契約内容について、消費者に適切に理解させていない
「自宅に住み続けたい」という消費者のニーズに合致していない契約がなされている
判断能力が低下した高齢者がトラブルにあっている

出典:国民生活センター(令和7年5月21日報道発表)

ミカタ株式会社

「まさか自分の親が」と思っても、実際にはこうしたケースが少なくありません。契約書を見かけたら、一度だけでも一緒に確認してあげてくださいね。

リースバックはクーリング・オフができない

リースバックの契約には、クーリング・オフが適用されません。

国民生活センターは「消費者が不動産業者に自宅を売却する場合には、宅地建物取引業法に定めるクーリング・オフが適用されない」と明記しています。

売買契約が成立してしまえば、無条件で解除することはできないのです。

クーリング・オフは、もともと宅建業者が「売主」、消費者が「買主」となる場合を想定した制度です。リースバックではこの立場が逆になり、消費者が売主、宅建業者が買主になるため、制度の対象から外れてしまいます。

契約を解除する場合は、手付金の倍額を買主に支払う「手付倍返し」が必要になりますし、手付解除ができる期間を過ぎてしまうと、多くの場合は契約条項に基づく違約金を求められます。

不動産は取引額が大きいため、違約金の額も相応に高額になり得ます。

先ほど紹介した事例では50万円でしたが、国土交通省のガイドブックが紹介する事例の中には、約400万円という金額が示されているものもあります。

「とりあえず契約して、後で考え直せばいい」という発想は、リースバックには通用しません。

ミカタ株式会社

契約書に署名する前の数分間が、実はいちばん大事な時間です。焦って決めず、必ず一度持ち帰って検討してくださいね。

定期借家契約だと期間満了で退去になる|住み続けられない場合

リースバックの賃貸借契約が定期借家契約になっている場合、契約期間が満了すると、そのまま住み続けられなくなる可能性があります。

国土交通省は定期借家契約について「借主が契約の継続を希望しても、貸主が更新に応じなくても良いもの」と説明しています。

定めた期間が満了すれば契約は終了し、双方が合意すれば再契約できますが、貸主が再契約を拒めば退去する必要があります。

さらに国土交通省は、こんな指摘もしています。

リースバック事業者が「将来再契約の予定がある」という意向を表明していたとしても、それはあくまで意向にすぎないこと。

そして、再契約の前に事業者が住宅を第三者に売却して貸主が変わってしまい、新たな貸主から再契約を拒絶される可能性もあるということです。

契約した相手が「大丈夫ですよ」と言っていたとしても、その相手が家を転売してしまえば、話は振り出しに戻ってしまいます。

「将来買い戻せます」という説明も、広告でよく見かける言葉です。

しかし国土交通省は、買戻しは「当然の権利」ではなく、一度家を買った事業者が「条件次第で、もう一度自分に家を売る」という約束ごとにすぎないと説明しています。

条件や価格によっては買い戻せない可能性があるため、「いつまでに」「いくらで」買い戻せるのかが口約束ではなく契約書にきちんと記載されているかを、必ず確認しておく必要があります。

定期借家契約で住み続けられなくなる流れ

1
契約期間の満了
定めた期間が来ると、定期借家契約は自動的に終了する
2
再契約の判断
貸主が拒否すれば再契約は成立しない。事業者が住宅を転売していれば新たな貸主が判断する
✓
退去、または再契約
合意できれば再契約、できなければ退去となる

※再契約の可否は貸主側の判断に委ねられ、借主の希望だけでは決まりません。

ミカタ株式会社

「将来また買い戻せる」という言葉は、契約書に条件が書かれていて初めて意味を持ちます。口約束だけでは、いざという時に守られないこともありますよ。

リースバックの売却額と家賃の総額を自分で計算する

リースバックを検討する際は、売却で受け取る金額と、住み続ける期間にわたって支払う家賃の総額を自分で計算し、比較しておくことが欠かせません。国土交通省がガイドブックの中でも、最も実務的なポイントとして挙げているのがこの点です。

ガイドブックが紹介する事例では、築30年以上のマンションを約2,000万円で売却し、家賃が約20万円というケースが取り上げられています。

この条件では、10年住めば家賃総額が売却代金を上回る計算になります。

目の前の現金だけを見て判断すると、後になって「思っていたより負担が大きかった」と感じることになりかねません。

契約前に確かめる3つのステップ

1
通常売却の相場を確認する
複数の事業者に、市場価格で売った場合の見込み額を聞いてみる
2
住みたい年数分の家賃総額を計算する
月々の家賃に、住み続けたい年数分をかけて総額を出す
✓
売却額と家賃総額を並べて比べる
どちらが大きいかを自分の目で確認したうえで判断する

契約前に自分で計算すべきこと

確認すること見るべき点
売却価格は相場から外れていないか複数の事業者に意見を聞く。通常の売却なら引渡し時期を調整できることもある
家賃を払い続けられるか住み続ける期間にわたって、貯蓄・収入と支出のバランスを計算する
家賃の総額と売却額はどちらが大きいか住みたい年数分の家賃を合計して、売却代金と比べる
賃貸借契約の種類と期間普通借家か定期借家か。更新・再契約の条件が契約書にどう書かれているか
家賃の値上げ条件何年後に、どういう条件で上がり得るのかが契約書に記載されているか

出典:国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」(令和4年6月発行)のポイントをもとに整理

ミカタ株式会社

計算そのものは難しいものではありません。紙に書き出して並べるだけでも、判断の材料がぐっと見えやすくなりますよ。

リースバックと他の方法を比較する|リバースモーゲージとの違い

住み慣れた自宅に住みながら資金を確保する方法は、リースバックだけではありません。国土交通省も、検討する際は他の手法とも比較することを求めています。

資金確保の主な選択肢

方法特徴
通常の売却市場価格で売れる。決済・引渡し時期を買主と調整し、一定期間住み続けられる場合もある
リースバック住み続けながら一括で資金を得られる。所有権を失い、家賃が発生する
リバースモーゲージ自宅を担保に融資を受け、契約者の死亡時等に自宅を売却して一括返済する仕組み
不動産担保ローン自宅を担保に借入。返済できなくなれば担保にした不動産を失う

出典:国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」、国民生活センター(令和7年5月21日報道発表)の注記をもとに整理

通常の売却であれば市場価格で売ることができ、売却額が大きくなれば、その後賃貸へ移っても資金に余裕が生まれることがあります。

比較の出発点になるのは、まず今の家がいくらで売れるのかを知ることです。

手取り額の計算は「マンション売却で手元に残る金額の計算方法」、仲介と買取の違いは「仲介と買取どっちがいい?違いとメリット・デメリット」、売却益が出た場合の節税は「3000万円特別控除とは|マイホーム売却で使える節税制度」で扱っています(リースバックでの売却も売買である以上、税の扱いは同じです)。

ミカタ株式会社

「本当にリースバックしかないのか」を一度確かめてみるだけでも、選択の幅が広がることがありますよ。

リースバックのメリットが生きる場面

リースバックが向いているのは、住む期間があらかじめ決まっている場合です。国土交通省のガイドブックは、活用例として高齢者施設への住み替え待ちと、実家の建て替え資金の捻出という2つのケースを紹介しています。

ひとつは、入居予定の施設が満室で、入居可能になるまで生活環境を変えたくないという事例です。

2年間の定期借家契約とし、借主から中途解約できる条項を入れて対応しています。

もうひとつは、建て替え期間中も自宅に住み続けたいという事例で、完成までの1年を期間とする定期借家契約としています。

この2つに共通しているのは、「あと2年」「あと1年」とゴールがはっきり見えている点です。

期間が最初から決まっているなら、家賃の値上げも再契約の拒絶も、そもそも問題になりません。

住まいと資金を同時に確保したいという目的に、うまく合致するケースといえます。

施設への住み替えなどで、あえて通常の売却を選ぶ場合には、査定から引き渡しまでの手順を「不動産売却の流れ|査定から引き渡しまでの7ステップ」で整理しています。空き家のまま残す判断をした場合は、将来の相続で「相続した不動産を売却する流れ|手続き・税金・注意点」の論点が関わってきます。

一方で、「この先ずっとここに住みたい」「老後の生活費に充てたい」という目的とは相性が良くないと言えるでしょう。国民生活センターも、生活費や借金返済のために契約すると収支のバランスが悪化し、家賃が払えず住み続けられなくなるリスクを指摘しています。

ミカタ株式会社

「期間が決まっている」かどうかは、リースバックが合うかどうかを見分ける一番シンプルな目印になりますよ。

リースバックのよくある質問

Q リースバックなら、ずっと自宅に住み続けられますか。


A 保証されていません。

国土交通省はガイドブックの仕組み図に「そのままずっと住み続けられる保証はない」と明記しています。

定期借家契約であれば期間満了で契約は終了し、貸主が再契約を拒めば退去することになります。

家賃が払えなくなった場合も同様です。

Q 契約したあとで、クーリング・オフできますか。


A できません。

消費者が不動産業者に自宅を売却する場合、クーリング・オフは適用されないと国民生活センターが明記しています。

解除には手付倍返しや違約金が必要で、額は高額になり得ます。

契約前に、家族や信頼できる方に相談することをおすすめします。

Q 家賃は途中で上がることがありますか。


A あり得ます。

国民生活センターの事例では、約6万円だった家賃が3年後に約11万円になり、払えないなら退去してほしいと言われたケースが報告されています。

何年後にどういう条件で上がり得るのか、契約書の記載を必ず確認してください。

Q 「あとで買い戻せる」と言われました。安心してよいですか。


A 当然の権利ではないため、注意が必要です。

国土交通省は買戻しを「条件次第で、もう一度自分に家を売る」という約束ごとだと説明しています。

条件や価格によっては買い戻せない可能性があります。

「いつまでに」「いくらで」買い戻せるのかが、口約束ではなく契約書に記載されているかを確認してください。

Q 親が勝手にリースバック契約をしていました。どうすればよいですか。


A 早めに消費生活センターへ相談してください。

国民生活センターは、消費生活センター等への相談は家族やホームヘルパー、地域包括支援センターの職員からでも可能だとしています。

消費者ホットライン「188」で最寄りの窓口を案内してもらえます。

判断能力が低下した高齢者のトラブルは本人に自覚がなく潜在化しやすいため、早めの相談が望ましいでしょう。

Q しつこい勧誘の電話が来ます。断ってもよいのですか。


A 断って構いません。

国民生活センターは、消費者が断ったにもかかわらず勧誘を続けることや長時間の勧誘は法律で禁止されていると明記しています。

「自宅は売りません」と明確に伝えましょう。

知らない番号の電話に出ない、通話録音装置を使うといった対策も挙げられています。

Q リースバックと通常の売却、どちらを選ぶべきですか。


A 住む期間が決まっているかどうかで判断の軸が変わります。施設入居待ちや建て替え期間中のように、あと何年住むかがはっきりしている場合はリースバックが向いていますが、「ずっと住みたい」「生活費に充てたい」という目的なら、まず通常売却でいくらになるかを確認し、リバースモーゲージなど他の選択肢とも比較したほうがよいでしょう。

まとめ|リースバックは契約の種類と総額を確かめてから決める

リースバックは、住み慣れた家に住みながら一括で資金を受け取れる方法です。高齢者施設の入居待ちや建て替え期間中など、住む期間が決まっている場面では有効に働くでしょう。

一方で、「ずっと住み続けられる」契約ではありません。

国土交通省が仕組み図にその旨を明記しているとおりです。

定期借家契約なら期間満了で退去になり得ますし、家賃は値上げされることがあり、買戻しも当然の権利ではありません。

宅建業者への売却にクーリング・オフは適用されず、解約には高額な違約金がかかることもあります。

相談件数は5年で約10倍に増え、契約当事者の約7割が70歳以上を占めています。長時間の勧誘や、相場からかけ離れた価格での契約が、実際に起きている事実として報告されています。

検討するなら、まず通常の売却ならいくらになるのかを複数の事業者に確認し、住みたい年数分の家賃総額と売却額を並べて計算してみてください。

そのうえで家族に相談してから決める。

急かされても、その場でサインしないことが大切です。

不安があれば、消費者ホットライン「188」で最寄りの消費生活センターに相談できます。

ミカタ株式会社

迷ったら、一人で決めずに一度誰かに相談する。それだけで、後悔する契約を避けられることが多いですよ。

出典・参考情報

※契約条件は事業者により異なります。

個別の契約内容については、契約書を確認のうえ、不動産会社や消費生活センター、弁護士等の専門家にご相談ください。

消費者ホットライン「188」で最寄りの消費生活センター等を案内しています。

関連記事

あなたへのおすすめ