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リースバックは老後に安心?国が示す注意点と落とし穴

「自宅を売っても、そのまま住み続けられます」。

テレビCMやチラシで見たことがあるかもしれません。

年金だけでは心もとない、まとまった資金が要る、でも住み慣れた家を離れたくない。

その願いに応えるのがリースバックだと説明されます。

本記事では、老後資金の確保を目的としたリースバックについて、公的機関が公表している注意喚起をもとに整理します。

結論を先に言えば、リースバックは使い方によって有効な手段ですが、「ずっと住み続けられる」契約ではありません

この点は国土交通省自身が明記しています。

まずはそこから説明します。

リースバックとは|自宅を売って家賃を払い住み続ける仕組み

国土交通省は、リースバックを「住宅を売却して現金を得て、売却後は毎月賃料を支払うことで、住んでいた住宅に引き続き住むサービス」と定義しています。

自宅を事業者に売却して代金を受け取り、同時に賃貸借契約を結んで家賃を払いながら住み続ける。

所有者は事業者に変わり、あなたは借主になります。

注目すべきは、国土交通省がガイドブックに掲載している仕組み図です。

図の中に「そのままずっと住み続けられる保証はない」という注記が入っています。

制度を所管する官庁が消費者向けの解説資料にこう書いている事実は、重く受け止める必要があります。

リースバックの相談が急増している|国民生活センターへの相談件数

国民生活センターは令和7年5月21日、「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!-本当に『そのまま"ずっと"住み続けられる』契約ですか?-」という報道発表を行いました。

示された数字が現状を端的に表しています。

リースバックに関する相談件数の推移

年度相談件数
2019年度24件
2020年度56件
2021年度85件
2022年度129件
2023年度239件
2024年度234件

出典:国民生活センター(令和7年5月21日報道発表)。PIO-NET登録分(2025年3月31日まで)。

2019年度の24件から2024年度は234件。

5年で約10倍です。

年代別では契約当事者の約7割が70歳以上で、最多は80歳代(91件・41.4%)

90歳以上も13件(5.9%)含まれます。

リースバックのデメリット|実際に起きているトラブル

国民生活センターが公表した相談事例です。いずれも実際に寄せられたものです。

国民生活センターに寄せられた相談事例

起きたこと内容
家賃が3年後に約2倍
70歳代女性
生活費に困りテレビCMを見て契約。自宅マンションを約1,600万円で売却し「そのまま住み続けられる。家賃は約6万円」と説明された。3年後、家賃が突然約11万円に。「払えないなら早急に退去してほしい」と言われたが、売却代金はすでに生活費で使っていた。
認知症の父が400万円で売却
80歳代男性の家族
父が転倒・入院した際に認知症が判明。父が戸建ての自宅を400万円で売却し、月額家賃4万円のリースバック契約を結んでいたことが発覚。売却額は相場とかけ離れており、父は自分の住所も書けない状態だった。
12時間の勧誘と違約金
80歳代男性
築40年の自宅マンションについて「1,200万円で売却し家賃を払ってそのまま住む契約」と朝10時から夜10時過ぎまで勧誘された。仕方なくサイン。後日親族に売却価格の安さを指摘され解約を申し出ると、手付金50万円の返金に加え違約金50万円を求められた。

出典:国民生活センター「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!

」(令和7年5月21日報道発表)。

いずれも2024年度に受け付けられた相談。

国民生活センターは、これらの事例から4つの問題点を挙げています。

相談事例からみる問題点

長時間の勧誘や強引な勧誘によって、消費者が望まない契約をしてしまう
リースバックの契約内容について、消費者に適切に理解させていない
「自宅に住み続けたい」という消費者のニーズに合致していない契約がなされている
判断能力が低下した高齢者がトラブルにあっている

出典:国民生活センター(令和7年5月21日報道発表)

リースバックはクーリング・オフができない

国民生活センターは「消費者が不動産業者に自宅を売却する場合には、宅地建物取引業法に定めるクーリング・オフが適用されない」と明記しています。売買契約が成立すると、無条件では解除できません。

クーリング・オフは宅建業者が「売主」、消費者が「買主」の場合の制度です。リースバックはこれが逆で、消費者が売主、宅建業者が買主になるため適用されません。

解除する場合は手付金の倍額を買主に支払う「手付倍返し」となり、手付解除ができる期間を過ぎると、多くの場合は契約条項に基づく違約金が必要になります。

不動産は高額な取引なので、違約金の額も高くなります

先ほどの事例で50万円、国交省のガイドブックが紹介する事例では約400万円というケースもあります。

「とりあえず契約して、後で考え直せばいい」が通用しないということです。

定期借家契約だと期間満了で退去になる|住み続けられない場合

賃貸借契約には普通借家契約定期借家契約があります。

国土交通省は、定期借家契約について「借主が契約の継続を希望しても、貸主が更新に応じなくても良いもの」と説明しています。

契約で定めた期間が満了すれば契約は終了し、双方が合意すれば再契約できますが、貸主が再契約を拒めば退去する必要があります

さらに国土交通省は、こうも指摘しています。リースバック事業者が「将来再契約の予定がある」との意向を表明しているに過ぎない場合や、再契約前に事業者が住宅を第三者に売却して貸主が変わった結果、新たな貸主から再契約を拒絶される可能性もあります。

つまり、契約した相手が「大丈夫ですよ」と言っていても、その相手が家を転売してしまえば、話は振り出しに戻るということです。

「将来買い戻せます」という説明も、広告でよく見かけます。

しかし国土交通省は、買戻しは「当然の権利」ではなく、一度家を買った事業者が「条件次第で、もう一度自分に家を売る」という約束ごとだと説明しています。

条件や価格によっては買い戻せない可能性があり、望むなら「いつまでに」「いくらで」買い戻せるのかが口約束ではなく契約書に記載されているか確認する必要があります。

リースバックの売却額と家賃の総額を自分で計算する

国土交通省がガイドブックで挙げるポイントのうち、最も実務的なのがこれです。「売却で受け取る金額」と「数年かけて賃料として支払う金額」の、どちらが高いかを自分で計算して比較すること。

ガイドブックが紹介する事例では、築30年以上のマンションを約2,000万円で売却し、家賃が約20万円というケースが挙げられています。10年住めば家賃総額は売却代金を上回る計算です。

契約前に自分で計算すべきこと

確認すること見るべき点
売却価格は相場から外れていないか複数の事業者に意見を聞く。通常の売却なら引渡し時期を調整できることもある
家賃を払い続けられるか住み続ける期間にわたって、貯蓄・収入と支出のバランスを計算する
家賃の総額と売却額はどちらが大きいか住みたい年数分の家賃を合計して、売却代金と比べる
賃貸借契約の種類と期間普通借家か定期借家か。更新・再契約の条件が契約書にどう書かれているか
家賃の値上げ条件何年後に、どういう条件で上がり得るのかが契約書に記載されているか

出典:国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」(令和4年6月発行)のポイントをもとに整理

リースバックと他の方法を比較する|リバースモーゲージとの違い

国土交通省は、検討の際に他の手法とも比較することを求めています。住み慣れた自宅に住みながら一括の資金を受け取る方法は、リースバックだけではありません。

資金確保の主な選択肢

方法特徴
通常の売却市場価格で売れる。決済・引渡し時期を買主と調整し、一定期間住み続けられる場合もある
リースバック住み続けながら一括で資金を得られる。所有権を失い、家賃が発生する
リバースモーゲージ自宅を担保に融資を受け、契約者の死亡時等に自宅を売却して一括返済する仕組み
不動産担保ローン自宅を担保に借入。返済できなくなれば担保にした不動産を失う

出典:国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」、国民生活センター(令和7年5月21日報道発表)の注記をもとに整理

通常の売却なら市場価格で売れます。

売却額が大きくなれば、賃貸へ移っても資金の余裕は生まれます。

まずは今の家がいくらで売れるのかを知ることが比較の出発点です。

手取り額の計算は「マンション売却で手元に残る金額の計算方法」、仲介と買取の違いは「仲介と買取どっちがいい?違いとメリット・デメリット」、売却益が出た場合の節税は「3000万円特別控除とは|マイホーム売却で使える節税制度」で扱っています(リースバックでの売却も売買である以上、税の扱いは同じです)。

リースバックのメリットが生きる場面

リースバックが適した場面もあります。

国土交通省のガイドブックは活用例として、高齢者施設への住み替え待ち(入居予定の施設が満室で、入居可能になるまで生活環境を変えたくない。

2年間の定期借家契約とし、借主から中途解約できる条項を入れた例)と、実家の建て替え資金の捻出(建て替え期間中も住み続けたい。

完成までの1年を期間とする定期借家契約とした例)を紹介しています。

共通しているのは、住む期間が最初から決まっている点です。

「あと2年」「あと1年」とゴールが見えていて、その間の住まいと資金を同時に確保したい。

この使い方なら、家賃の値上げも再契約の拒絶も問題になりません。

なお、施設への住み替えなどで通常の売却を選ぶ場合、査定から引き渡しまでの手順は「不動産売却の流れ|査定から引き渡しまでの7ステップ」で整理しています。空き家のまま残す判断をした場合、将来の相続では「相続した不動産を売却する流れ|手続き・税金・注意点」の論点が関わってきます。

逆に「この先ずっとここに住みたい」「老後の生活費に充てたい」という目的とは相性が良くありません。国民生活センターも、生活費や借金返済のために契約すると収支バランスが悪化し、家賃が払えず住み続けられなくなるリスクを指摘しています。

リースバックのよくある質問

Q. リースバックなら、ずっと自宅に住み続けられますか。

保証されていません。

国土交通省はガイドブックの仕組み図に「そのままずっと住み続けられる保証はない」と明記しています。

定期借家契約なら期間満了で契約は終了し、貸主が再契約を拒めば退去することになります。

家賃が払えなくなった場合も同様です。

Q. 契約したあとで、クーリング・オフできますか。

できません。

消費者が不動産業者に自宅を売却する場合、クーリング・オフは適用されないと国民生活センターが明記しています。

解除には手付倍返しや違約金が必要で、額は高額になり得ます。

契約前に家族や信頼できる方に相談してください。

Q. 家賃は途中で上がることがありますか。

あり得ます。

国民生活センターの事例では、約6万円の家賃が3年後に約11万円になり、払えないなら退去してほしいと言われたケースが報告されています。

何年後にどういう条件で上がり得るのか、契約書の記載を確認してください。

Q. 「あとで買い戻せる」と言われました。安心してよいですか。

当然の権利ではありません。

国土交通省は買戻しを「条件次第で、もう一度自分に家を売る」という約束ごとだと説明しています。

条件や価格によっては買い戻せません。

「いつまでに」「いくらで」買い戻せるのかが口約束ではなく契約書に記載されているか確認してください。

Q. 親が勝手にリースバック契約をしていました。どうすればよいですか。

国民生活センターは、消費生活センター等への相談は家族やホームヘルパー、地域包括支援センターの職員からでも可能だとしています。

消費者ホットライン「188」で最寄りの窓口を案内してもらえます。

判断能力が低下した高齢者のトラブルは本人に自覚がなく潜在化しやすいため、早めに相談してください。

Q. しつこい勧誘の電話が来ます。断ってもよいのですか。

断ってください。

国民生活センターは、消費者が断ったにもかかわらず勧誘を続けることや長時間の勧誘は法律で禁止されていると明記しています。

「自宅は売りません」と明確に伝えましょう。

知らない番号の電話に出ない、通話録音装置を使うといった対策も挙げられています。

まとめ|リースバックは契約の種類と総額を確かめてから決める

リースバックは、住み慣れた家に住みながら一括で資金を受け取れる方法です。高齢者施設の入居待ちや建て替え期間中など、住む期間が決まっている場面では有効に働きます。

一方で、「ずっと住み続けられる」契約ではありません。

国土交通省が仕組み図にその旨を明記しているとおりです。

定期借家契約なら期間満了で退去になり得ますし、家賃は値上げされることがあり、買戻しも当然の権利ではありません。

宅建業者への売却にクーリング・オフは適用されず、解約には高額な違約金がかかることもあります。

相談件数は5年で約10倍に増え、契約当事者の約7割が70歳以上です。長時間の勧誘や、相場からかけ離れた価格での契約が現実に起きています。

検討するなら、まず通常の売却ならいくらになるのかを複数の事業者に確認し、住みたい年数分の家賃総額と売却額を並べて計算してください。

そのうえで家族に相談してから決める。

急かされても、その場でサインしないことです。

不安があれば消費者ホットライン「188」で最寄りの消費生活センターに相談できます。

出典・参考情報

※契約条件は事業者により異なります。

個別の契約内容については、契約書を確認のうえ、不動産会社や消費生活センター、弁護士等の専門家にご相談ください。

消費者ホットライン「188」で最寄りの消費生活センター等を案内しています。

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