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火事・浸水履歴のある物件は売れる?告知義務

過去に床上浸水したことがある。

ボヤを出したことがある。

そんな家を売るとき、「言わなければ分からないのでは」という考えが頭をよぎるかもしれません。

あるいは逆に、「正直に話したら売れなくなるのでは」と不安になるかもしれません。

本記事では、火災や浸水の履歴がある物件の売却を整理します。

先に結論を言うと、過去の被災歴は伝える必要があります

そして意外に見落とされているのが、ハザードマップの説明義務と、過去の被災歴の告知はまったく別の話だという点です。

ここが混同されがちなので、最初に切り分けます。

ハザードマップの説明義務と浸水履歴の告知義務は別物

2020年8月28日から、不動産取引時に水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を説明することが義務化されました。宅地建物取引業法施行規則の改正により、重要事項説明の対象項目に追加されたためです。

ここで注意すべきは、この義務が「将来のリスク」に関するものだという点です。ハザードマップは、洪水・雨水出水(内水)・高潮が起きたらどこが浸水しうるかを示した地図であり、その家が過去に浸水したかどうかは載っていません

混同されやすい2つの話

ハザードマップ被災歴(過去の事実)
性質将来の浸水想定実際に起きたこと
誰が調べるか宅建業者(公開情報)売主しか知らない
根拠宅建業法35条・施行規則
(2020年8月28日施行)
契約不適合責任(民法)等
区域外なら安心か国土交通省は「対象物件が浸水想定区域に該当しないことをもって、水害リスクがないと相手方が誤認することのないよう配慮すること」としている

出典:国土交通省「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化」(2020年7月17日報道発表)

つまり、ハザードマップ上は白い(想定区域外)けれど、実際には過去に浸水したという物件があり得ます。

国土交通省自身が「区域外=リスクなしと誤認させないよう配慮せよ」と明記しているとおりです。

そして、その事実を知っているのは売主だけです。

浸水・火災の被災歴に専用のガイドラインはない|判断の基準

ここは正直に書いておきます。

心理的瑕疵については、2021年10月に国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました。

ただしこのガイドラインは「人の死」に関する事案が対象です。

火災で人が亡くなった場合はこのガイドラインの検討対象になりますが、建物が燃えたという事実そのものや、浸水したという履歴には、専用の基準がありません

基準がないから伝えなくてよい、とはなりません。逆です。判断の拠り所は民法の一般原則、つまり契約不適合責任になります。

浸水履歴を隠して売るとどうなるか|契約不適合責任を問われる

売主が知っている事実を告げずに売却すると、引き渡し後に契約不適合責任を問われる可能性があります。買主は修補や代金の減額、損害賠償を求めることができ、契約の目的を達成できないほど重大な場合は解除もあり得ます。

そして決定的なのが、免責特約を結んでいても、知っていて告げなかった事実については責任を免れないという点です(民法第572条)。「現状有姿で、契約不適合責任は負わない」と契約書に書いても、隠していた被災歴には効きません。

加えて、被災歴は隠し通せる性質のものではありません

被災歴が後から判明する経路

近隣住民が知っている(水害は地域一帯で起きる)
り災証明書、消防の記録、自治体の被害記録が残っている
リフォーム履歴・修繕記録から推測される
床下や小屋裏の痕跡(水位の跡、焼け焦げ、金物の腐食)
当時の報道やインターネット上の記録

特に水害は、その家だけが浸かるということはまずありません。

地域一帯で起きるため、近所の誰かが覚えているものです。

入居後に隣人から聞かされる、というのが典型的なトラブルの形です。

売主は浸水・火災の履歴として何を伝えればよいか

実務では、媒介契約を結ぶ際に不動産会社から告知書(物件状況等報告書)への記入を求められます。ここに事実を書きます。

告知書に書くべき内容

項目具体的に
いつ発生年月(「令和元年台風第19号のとき」など災害名でも可)
どの範囲床上浸水か床下浸水か、浸水の高さ。火災なら焼損の範囲
どう直したか修繕の内容と時期、施工業者。柱・土台など構造部分に手を入れたか
現在の状態残っている不具合があるか(傾き、カビ、臭い、腐食など)

ポイントは、「直した」という事実を具体的に示すことです。

被災歴そのものは変えられませんが、どう対処したかは示せます。

修繕の記録や写真、り災証明書、保険金の支払明細——手元にある資料を整理して出せば、買主が判断できる材料になります。

「浸水しました」だけでは買主は不安になります。

「令和元年に床上30cmの浸水。

床材と壁の下地を全面交換し、土台の防腐処理を実施。

以後、不具合なし」まで示せれば、話は変わります。

浸水・火事の履歴がある家は売れるのか|価格への影響

売れます。ただし、価格には影響します。

買主の懸念は「また起きるのではないか」という将来リスクと、「見えない部分が傷んでいるのではないか」という建物の状態です。前者はハザードマップで示され、後者は建物の調査で示せます。

インスペクション(建物状況調査)を受けておくと、構造部分の劣化や傾きの有無を第三者の目で示せます。

宅建業者は媒介契約時にインスペクション業者のあっせんの可否を示すことになっており、希望すれば紹介を受けられます。

「被災したが、現状はこうだ」と客観的に示せれば、価格の下げ幅を抑えられる可能性があります。

建物に値段がつかない場合、古家付き土地として売る方法もあります(「築40年・築50年の古い家は売れる?解体すべきか判断基準」)。

買主が見つかりにくいときは買取という選択肢もありますが、価格は仲介より下がります(「仲介と買取どっちがいい?違いとメリット・デメリット」)。

火事があった家を売る場合の追加論点|構造への影響

火災には、浸水とは別の論点があります。

人が亡くなっている場合は、心理的瑕疵の問題が重なります。

国土交通省のガイドラインは人の死に関する事案を対象としており、告知の要否についての考え方が示されています。

ただし、事案の存在を買主から問われた場合や、社会的影響の大きい事案については、期間の経過にかかわらず告げる必要があるとされています。

この点は「事故物件は売れる?告知義務はいつまで必要か」で詳しく扱っています。

建て替えの制約も確認が必要です。

全焼して建物を取り壊した場合、その土地に再建築できるかどうかは接道条件などによります。

古い家が建っている土地には、現行の基準では建て替えられないケースがあります。

構造への影響も見えにくい部分です。

表面を張り替えても、柱や梁が高温にさらされて強度が落ちていることがあります。

修繕の範囲がどこまで及んだのかを記録で示せると、買主の判断材料になります。

災害で損失が出たときの税制|譲渡損失の特例と3000万円特別控除

売却で損失が出た場合、マイホームなら譲渡損失の特例で他の所得と通算できる可能性があります(「マイホームを売って損したら|譲渡損失の特例と繰越控除」)。

また、3000万円特別控除には災害に関する規定があります。

家屋が災害により滅失した場合、その敷地は、災害があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば特例の対象になり得ます(現に住んでいた家屋の敷地の場合)。

以前に住んでいた家屋の敷地なら、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。

要件は「3000万円特別控除とは|マイホーム売却で使える節税制度」で扱っています。

浸水・火事の履歴と告知義務のよくある質問

Q. 過去の浸水は、何年経てば伝えなくてよくなりますか。

明確な年数の基準はありません。

人の死に関する告知にはガイドラインがありますが、浸水や火災の履歴そのものを対象とした基準はなく、契約不適合責任の考え方によることになります。

年数が経てば買主の判断に影響しなくなるとは限らないため、告知書には事実を記載し、修繕内容とあわせて示すのが実務的です。

Q. ハザードマップの区域外なら、浸水歴は伝えなくてよいですか。

別の話です。

ハザードマップは将来の浸水想定を示す地図で、過去の被災歴は載っていません。

国土交通省も、浸水想定区域に該当しないことをもって水害リスクがないと誤認させないよう配慮すべきだとしています。

区域外であっても、実際に浸水した事実があるなら伝える必要があります。

Q. 「現状有姿」の特約を入れれば、被災歴を伝えなくても大丈夫ですか。

大丈夫ではありません。

民法第572条により、売主が知っていながら告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れないと解されています。

特約は「知らなかったこと」に対する備えであって、隠した事実には効きません。

Q. 床下浸水も伝える必要がありますか。

床上・床下にかかわらず、事実として記載するのが安全です。

床下浸水でも、土台や基礎に影響が及んでいる可能性があり、買主の判断に影響し得ます。

浸水の高さと、床下の状態を確認・修繕したかどうかまで示せると、買主が判断しやすくなります。

Q. 前の所有者のときに被災していた場合はどうですか。

知っている事実は伝える必要があります。

相続や購入で取得した物件でも、被災歴を知っているなら告知書に記載してください。

知らない場合は「知らない」と正直に書きます。

事実と異なることを書くことが問題になります。

Q. 火事で全焼した家を取り壊しました。土地は普通に売れますか。

土地として売ること自体は可能ですが、確認すべき点があります。

接道条件などにより再建築できない土地では、買主が住宅ローンを組みにくくなります。

また火災で人が亡くなっている場合は、心理的瑕疵として告知の問題が生じ得ます。

更地にすると住宅用地の特例が外れ、土地の固定資産税の課税標準が上がる点にも注意が必要です。

まとめ|被災歴は記録を添えて伝えるほうが売りやすい

火災や浸水の履歴がある家は売れます。

ただし、隠して売ることはできません。

売主が知っている事実を告げずに売却すると契約不適合責任を問われる可能性があり、免責特約を結んでいても、知っていて告げなかった事実には効きません。

混同しやすい点として、ハザードマップの説明義務と被災歴の告知は別物です。

ハザードマップは将来の浸水想定を示すもので、その家が過去に浸水したかは載っていません。

国土交通省も、想定区域外であることをもって水害リスクがないと誤認させないよう配慮すべきだとしています。

過去の事実を知っているのは売主だけです。

被災歴のある物件で価格を左右するのは、「何が起きたか」よりも「どう直したか」を示せるかどうかです。

修繕の記録、り災証明書、インスペクションの結果——手元の資料を整理して、買主が判断できる材料を揃えてください。

事実を示したうえで納得して買ってもらうほうが、後から揉めるよりも結果的に損が小さくなります。

出典・参考情報

※告知の要否や範囲は個別の事情により異なります。

税制の適用可否も個別の事情によって異なり、適用には確定申告が必要です。

個別の判断については、不動産会社、税務署または税理士、弁護士等の専門家にご相談ください。

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