雨漏りする家を売りたい|修繕せずに売る方法と告知義務
天井にシミがある。
雨のたびに水が垂れてくる。
修繕には数十万円、屋根の葺き替えとなれば百万円を超えることもあります。
売る前に直すべきか、そのまま売れるのか。
結論から言えば、雨漏りする家もそのまま売れます。
ただし条件があり、それは「買主に事実を伝えること」です。
隠して売ると、後で修繕費を請求されることになりかねません。
この記事では、修繕せずに売る方法と、告知義務の考え方を整理します。
雨漏りには告知義務がある|黙って売ると契約不適合責任を問われる
まず押さえるべき点です。雨漏りは建物の物理的な欠陥であり、買主が知っていれば契約しなかった、あるいは条件を変えたであろう事実にあたります。
売主が知っている雨漏りを伝えずに売却すると、引き渡し後に契約不適合責任を問われる可能性があります。買主は修補(直すこと)や代金の減額、損害賠償を求めることができ、目的を達成できないほど重大な場合は契約解除もあり得ます。
「言わなければ分からない」と考えるのは危険です。
雨が降れば分かりますし、天井のシミや床の傷みからも推測されます。
むしろ隠して後から発覚するほうが、話は大きくなります。
告知義務の考え方は「事故物件は売れる?告知義務はいつまで必要か」でも扱っています。
雨漏りを修繕してから売るべきか|費用と価格への影響で判断する
ここが判断の分かれ目です。結論としては、修繕費用を売却価格に上乗せできるとは限らないため、直してから売るのが有利とは限りません。
修繕する場合としない場合の比較
| 修繕してから売る | 現状のまま売る | |
|---|---|---|
| 初期費用 | 数十万〜百万円超 | 不要 |
| 売却価格 | 上がる可能性はあるが、費用分を回収できるとは限らない | その分は下がる |
| 買い手の印象 | 良い | 価格次第で受け入れられる |
| 向くケース | 軽微で安く直せる場合 | 大規模修繕が必要/築古で解体前提 |
※修繕費用は原因や規模により大きく異なります。実際の判断は査定と見積もりを踏まえて行ってください。
特に築年数が古く、買主が解体や大規模リフォームを前提に検討している場合、修繕してもその価値は評価されません。直したところで壊されるからです。
逆に、部分的な補修で数万円程度で直せるなら、直しておいたほうが印象がよくなります。
判断の目安は、修繕費用と、それによる価格上昇分の見込みを比べることです。
まず査定を受け、担当者に相談してみてください。
雨漏りを修繕せずに売る3つの方法
1. 事実を開示して価格を調整する
最も基本的な方法です。雨漏りがあることを重要事項として説明し、その分を織り込んだ価格で売り出します。
買主のなかには、リフォーム前提で安く買いたい人、自分で直せる人もいます。事実を前提に価格が合意されていれば、後からトラブルになることもありません。
2. 契約不適合責任を免責にする
個人間の売買では、契約で契約不適合責任を負わないと定めることも可能です。「現状有姿(げんじょうゆうし)」での引き渡し、という形です。
ただし注意点があります。
売主が知っていながら告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れません(民法第572条)。
つまり「免責にしたから黙っていていい」わけではなく、知っている雨漏りは伝えたうえで免責とする、という順序になります。
3. 買取を利用する
不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。プロが物件の状態を承知のうえで買うため、契約不適合責任が免責されることが多く、後から責任を問われる不安がありません。
価格は市場価格の7〜8割程度になるのが一般的ですが、修繕費をかけずに済み、短期間で手放せます。
「仲介と買取どっちがいい?違いとメリット・デメリット」で比較しています。
雨漏りの契約不適合責任はいつまで問われるか|期間と特約の制限
「売った後、いつまで責任を負うのか」は、売主にとって最も気になる点です。
民法では、買主が契約不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければ、修補や代金減額などを請求できなくなるとされています(民法第566条)。起算点が「引き渡し」ではなく「買主が知った時」である点に注意が必要です。
売主の立場による責任期間の違い
| 売主 | 期間の定め |
|---|---|
| 個人(一般の売主) | 特約で期間を短く定めることが可能。引き渡しから3か月程度とする契約が多い |
| 不動産会社(宅建業者) | 買主が業者でない場合、引き渡しから2年以上とする特約以外は、民法より買主に不利な特約は無効(宅地建物取引業法第40条) |
出典:民法第566条、宅地建物取引業法第40条(担保責任についての特約の制限)。
個人が売主の場合、期間を短く区切る特約や、前述の全部免責の特約を結ぶことができます。
ただし繰り返しになりますが、知っていながら告げなかった雨漏りについては、どの特約を付けても責任を免れません(民法第572条)。
期間の短縮も免責も、事実を伝えたうえで初めて意味を持ちます。
雨漏りの修繕に火災保険は使えるか|経年劣化は原則対象外
「火災保険で直せる」と聞いたことがあるかもしれません。ここは誤解が多く、トラブルも起きている領域なので、分けて説明します。
火災保険で保険金の支払い対象になり得るのは、台風や雹(ひょう)など自然災害による損傷が原因の場合です。
一方、時間の経過による傷み、いわゆる経年劣化は原則として対象外とされています。
古くなった屋根から雨漏りしている、という状況では対象にならないのが通常です。
国民生活センターは、「保険金を使って自己負担なく住宅修理ができる」と勧誘する事業者に関する相談が増えているとして、注意を呼びかけています。同センターの発表資料によると、相談件数は2010年度の111件から2019年度には2,684件まで増加しました。
相談件数の推移(国民生活センター)
| 年度 | 件数 |
|---|---|
| 2010年度 | 111件 |
| 2015年度 | 817件 |
| 2018年度 | 1,759件 |
| 2019年度 | 2,684件 |
出典:国民生活センター「『保険金を使って自己負担なく住宅修理ができる』と勧誘されてもすぐに契約しないようにしましょう!」(2020年10月1日公表)。
問題は手口です。
自己負担がないことを強調しながら手数料や違約金の説明が不十分だったり、経年劣化が原因なのに自然災害によるものとして請求するよう勧められたりする例が報告されています。
事実と異なる理由での請求に応じてはいけません。
売却を控えている場合、保険が使えるかどうかは加入している損害保険会社に自分で確認するのが確実です。仮に保険金が下りて修繕したとしても、雨漏りがあった事実そのものは告知の対象である点は変わりません。
雨漏りを放置するとどうなるか|躯体まで傷むと修繕費が膨らむ
売却を先送りする場合の話です。雨漏りは時間とともに被害が広がります。
木材が濡れ続ければ腐朽が進み、構造材にまで達すると耐久性に影響します。
湿気はシロアリを呼び込み、カビも発生します。
当初は屋根の部分補修で済んだものが、数年後には構造から直す大工事になる、ということも起こり得ます。
建物の価値が下がれば、売却価格も下がります。
売るつもりがあるなら、早めに動いたほうが有利になることが多いでしょう。
シロアリ被害については「シロアリ被害のある家を売却したい|告知義務と価格への影響」もご覧ください。
雨漏りの有無を調べるインスペクションという選択肢
建物状況調査(インスペクション)を受けておくと、建物の状態が客観的に示されます。専門家が構造や雨漏りの状況を調査し、報告書を作成するものです。
費用は数万円程度かかりますが、買主にとっては安心材料になり、売主にとっては「開示すべき事実を把握したうえで売った」という証拠になります。
トラブルを避けるという意味で、検討する価値があります。
売却全体の流れは「不動産売却の流れ|査定から引き渡しまでの7ステップ」をご覧ください。
雨漏りする家の売却でよくある質問
Q. 過去に雨漏りして直した場合も告知が必要ですか?
修繕済みであっても、雨漏りの履歴は買主の判断に影響する情報です。
いつ、どこが、どのように雨漏りし、どう修繕したかを伝えておくほうが安全です。
修繕の記録や領収書が残っていれば、あわせて示すと信頼につながります。
Q. 雨漏りしているか分からない場合は?
天井や壁のシミ、押入れのカビ、屋根裏の湿りなどが手がかりになります。
判断に迷う場合はインスペクションを受けると、状態が明らかになります。
「知らなかった」で済ませるより、調べておくほうがトラブルを避けられます。
Q. 契約不適合責任はいつまで問われますか?
買主が不適合を知った時から1年以内に通知する必要があります。
ただし個人間売買では、契約で期間を短く定めることが一般的で、引き渡しから3か月程度とすることが多くあります。
契約内容によるため、売買契約書で確認してください。
Q. 修繕費用はどのくらいかかりますか?
原因と規模によって大きく異なります。
コーキングの打ち直しのような部分補修なら数万円、屋根の葺き替えとなれば百万円を超えることもあります。
まず原因を特定してもらい、見積もりを取ってから判断してください。
Q. 解体して土地として売るほうがいいですか?
築年数が古く建物に価値がない場合、その選択もあります。
ただし解体費用がかかり、更地にすると固定資産税の住宅用地特例が外れて税額が上がる点に注意が必要です。
「築40年・築50年の古い家は売れる?解体すべきか判断基準」で解説しています。
Q. まず何をすべきですか?
雨漏りの事実を伝えたうえで査定を受けることです。
現状のままいくらで売れるか、修繕した場合どうなるかを聞けば、判断材料になります。
事実を伏せて査定を受けても、後で価格が変わるだけです。
まとめ|雨漏りは告知したうえで売る方法がある
雨漏りする家も、事実を開示すれば売却できます。
修繕費用を売却価格に上乗せできるとは限らないため、直してから売るのが有利とは限りません。
特に築古で解体前提の買主なら、修繕は評価されません。
大切なのは、知っている雨漏りを隠さないことです。
契約不適合責任の免責特約を付けても、知っていて告げなかった事実については責任を免れません。
伝えたうえで価格を調整する、というのが基本の進め方になります。
放置すれば被害は広がり、建物の価値はさらに下がります。売るつもりがあるなら、まず事実を伝えて査定を受け、修繕すべきかどうかを含めて相談してみてください。
出典・参考情報
- 民法 第562条〜第566条(契約不適合責任・買主が知った時から1年以内の通知)、第572条(担保責任を負わない旨の特約)
- 宅地建物取引業法 第35条(重要事項の説明等)、第40条(担保責任についての特約の制限。引き渡しから2年以上とする特約以外は無効)
- 国民生活センター「「保険金を使って自己負担なく住宅修理ができる」と勧誘されてもすぐに契約しないようにしましょう!」(2020年10月1日公表。相談件数2010年度111件→2019年度2,684件)
- 国土交通省「既存住宅流通について(建物状況調査(インスペクション)活用に向けて)」
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」
※修繕費用の目安は原因・規模により異なります。個別の契約内容や責任の範囲については、不動産会社または弁護士にご確認ください。
