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シロアリ被害のある家を売却したい|告知義務と価格への影響

床がぶかぶかする。

柱を叩くと音が軽い。

春先に羽アリが出た。

調べてみるとシロアリの被害らしい、と分かったとき、多くの方が最初に考えるのは「駆除してから売るべきか」ということだと思います。

本記事では、シロアリ被害のある家を売るときの告知義務と、駆除してから売る場合・そのまま売る場合の損得を整理します。

結論を先に言えば、被害があっても売れます

ただし、駆除にお金をかけても告知義務は消えないという点が、この問題をややこしくしています。

シロアリ被害には告知義務がある|黙って売ると責任を問われる

まず前提です。

シロアリ被害は建物の構造材を食い荒らす欠陥であり、買主が知っていれば契約しなかった、あるいは価格の条件を変えたであろう事実にあたります。

売主が知っているのに伝えなければ、引き渡し後に契約不適合責任を問われることになりかねません。

契約不適合とは、引き渡された物が契約の内容に適合していない状態を指します。買主は、修補などの履行の追完(民法第562条)、代金の減額(同第563条)、損害賠償(同第415条)を求めることができ、目的を達成できないほど重大な場合には契約の解除もあり得ます。

実務上は、物件状況等報告書(告知書)という書面に記入する形で告知します。

この書面には「シロアリの被害」という項目があり、現在発見しているか、過去にあったか、発見していないか、を選んで記入します。

過去にあった場合は、いつ・どこが・駆除したかどうかまで書く欄があります。

告知書そのものは法令で義務づけられた書面ではありませんが、国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」において、売主しか分からない事項について告知書を提出してもらい、買主に渡すことで将来の紛争防止に役立てることが望ましい、とされています。

実務では作成されるのが通例です。

告知義務全般の考え方は「事故物件は売れる?告知義務はいつまで必要か」でも扱っています。

駆除してもシロアリ被害の告知義務は消えない

ここが、他のサイトであまり正直に書かれていない点です。

「駆除してから売れば問題ない」という説明を見かけますが、正確ではありません。

駆除が済んでいても、過去にシロアリ被害があったという履歴は告知の対象です。

告知書の「過去にあった」欄は、まさにそのためにあります。

つまり、数十万円かけて駆除しても、買主には「この家は過去にシロアリにやられた家です」と伝えることになります。

駆除費用を払ったうえで、その事実は残る。

ここを理解しないまま「直せば黙っていられる」と考えると、費用だけが出ていくことになります。

告知書におけるシロアリ項目の扱い

状況 告知 書くべき内容
現在被害がある被害箇所・程度・把握している範囲
駆除済み被害箇所・駆除の時期・施工業者・保証の有無
予防施工のみ実施履歴として記載施工時期・保証期間(買主には利点になる)
被害の有無が分からない調査を検討分かる範囲で記入。床下調査で確認するのが安全

出典:国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(不動産の売主等による告知書の提出について)をもとに作成。告知書の書式は仲介会社により異なります。

シロアリを駆除してから売るか、そのまま売るか

判断の分かれ目です。結論から言えば、駆除費用がそのまま売却価格に上乗せされるとは限りません

シロアリ駆除の費用は、床下への薬剤処理(バリア工法)で30坪程度の家なら15万〜30万円前後が一つの目安とされます(複数の防除事業者が公開している料金表を比較した当編集部調べ・2026年7月時点。

公的な統計があるわけではありません)。

ただしこれは駆除だけの金額で、食害された柱や土台の交換が必要になれば、修繕費が別途上乗せされます。

構造材まで及んでいる場合、総額は数十万円から百万円を超えることもあります。

駆除する場合としない場合の比較

駆除・修繕してから売る 現状のまま売る
初期費用駆除15万〜30万円+修繕費不要
告知義務残る(過去の被害として記載)残る
売却価格上がる余地はあるが、費用分を回収できるとは限らない被害分は下がる
向くケース被害が軽微/築浅で建物価値が残っている築古で解体前提/被害が構造材まで及んでいる

出典:駆除費用の目安は、しろあり防除施工を手がける複数事業者が公開している料金表を比較した当編集部調べ(2026年7月時点)。工法・面積・被害の程度により大きく異なるため、実際の判断は査定と見積もりを踏まえて行ってください。

築年数が古く、買主が解体や大規模リフォームを前提に検討しているなら、駆除しても評価されにくいのが実情です。

壊す建物にかけた費用は戻ってきません。

築40年・築50年の古い家は売れる?解体すべきか判断基準」もあわせてご覧ください。

逆に築浅で建物に価値が残っている場合は、駆除して保証書を付けたほうが、買い手の不安が減って話が進みやすくなります。

駆除の保証は5年が標準

駆除してから売る場合に知っておきたい点です。

シロアリ防除工事の保証期間は、5年が標準とされています。

これは公益社団法人日本しろあり対策協会が認定する薬剤の有効期間が5年であることに由来します。

薬剤の効果は施工直後から徐々に落ちていくもので、5年を過ぎた瞬間に消えるわけではありません。ただ、以前は10年保証が主流だった時期もあり、環境や健康への配慮から薬剤の効力が抑えられた結果、現在は5年が一般的になったという経緯があります。

売却時には、この保証書が残っていれば買主に引き継げるかを施工業者に確認してください。

保証が残っている状態で引き渡せるなら、それは買主にとって明確な安心材料になります。

逆に保証期間が切れている場合、「駆除済み」と言っても効力は限定的です。

シロアリ被害のある家をそのまま売る3つの方法

1. 事実を開示して価格を調整する

最も基本的な方法です。

被害の状況を告知書に記載し、その分を織り込んだ価格で売り出します。

買主のなかには、リフォーム前提で安く買いたい人、土地として使いたい人もいます。

事実を前提に価格が合意されていれば、後からもめることもありません。

2. 契約不適合責任を免責にする

個人間の売買では、契約で契約不適合責任を負わないと定めることも可能です。現状有姿(げんじょうゆうし)での引き渡し、という形です。

ただし重要な例外があります。

売主が知っていながら告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れません(民法第572条)。

免責にしたから黙っていていい、という話ではなく、知っている被害は伝えたうえで免責とする、という順序です。

なお、売主が宅建業者の場合は、宅地建物取引業法第40条により、通知期間を引き渡しから2年未満とする特約は無効です。

ただしこれは業者が売主のときの規制であり、個人が売主の場合には適用されません。

個人間売買では引き渡しから3か月程度とする例が多く見られます。

3. 買取を利用する

不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。プロが被害を承知のうえで買うため、契約不適合責任が免責されることが多く、後から責任を問われる不安がありません。

価格は市場価格の7〜8割程度になるのが一般的です。

駆除費をかけずに済み、短期間で手放せる一方、手取りは仲介より下がります。

仲介と買取どっちがいい?違いとメリット・デメリット」で数字を出して比較しています。

床下調査という選択肢|被害の範囲を先に確かめる

被害の有無や範囲がはっきりしない場合、シロアリ業者の床下調査を受けておくと状況が把握できます。多くの業者が無料で対応しています。

建物全体の状態を客観的に示したいなら、建物状況調査(インスペクション)という手段もあります。

建築士などの専門家が構造や劣化の状況を調査し、報告書を作成するものです。

費用は数万円程度ですが、買主にとっては安心材料になり、売主にとっては「把握したうえで開示して売った」という記録が残ります。

ただしインスペクションは非破壊調査であるため、壁の内部など見えない部分の被害まで判明するとは限らない点は理解しておいてください。

まず何から始めるか

被害の程度が分からないまま駆除を申し込むと、必要以上の工事を勧められることもあります。順序としては、まず被害の範囲を把握し、次に査定を受け、それから駆除するかどうかを決めるのが合理的です。

査定の際は、シロアリの事実を伝えたうえで受けてください。

伏せて査定を受けても、後で価格が変わるだけです。

「現状のままいくらか」「駆除したらいくらになるか」の両方を聞けば、駆除費用と価格差を比べて判断できます。

売却全体の進み方は「不動産売却の流れ|査定から引き渡しまでの7ステップ」で確認できます。

シロアリ被害を放置するとどうなるか|耐震性への影響

売却を先送りする場合の話です。シロアリは時間とともに食害範囲を広げます

土台や柱といった主要構造材が空洞化すれば、建物の耐久性や耐震性に影響します。

当初は床下の薬剤処理だけで済んだものが、数年後には構造材の交換を伴う工事になる、ということも起こり得ます。

建物の価値が下がれば、売却価格も下がります。

湿気はシロアリを呼び込む要因になるため、雨漏りとシロアリはしばしば同時に起こります。

雨漏りする家を売りたい|修繕せずに売る方法と告知義務」もあわせてご覧ください。

売るつもりがあるなら、早めに動いたほうが有利になることが多いでしょう。

シロアリ被害のある家の売却でよくある質問

Q. 駆除済みなら告知しなくてもいいですか?

駆除済みでも、過去に被害があった履歴は買主の判断に影響する情報です。

告知書にも「過去にあった」を選ぶ欄があり、時期や箇所、駆除の内容を記入します。

駆除の記録や保証書が残っていれば、あわせて示すと信頼につながります。

Q. シロアリ被害があるか分かりません。調べるべきですか?

床がたわむ、柱を叩くと音が軽い、春から初夏に羽アリが出た、といった点が手がかりになります。

多くのシロアリ業者が無料の床下調査に対応しているため、心当たりがあれば受けておくと状況が分かります。

知らないまま売るより、把握して開示するほうがトラブルを避けられます。

Q. 気づかなかった被害でも責任を問われますか?

2020年4月施行の改正民法により、契約不適合責任は売主の認識の有無を問わず生じ得るものとされました。

知らなかった被害でも責任が及ぶ可能性があります。

だからこそ、免責特約の有無や責任の期間を契約でどう定めるかが重要になります。

契約内容は仲介会社とよく確認してください。

Q. 契約不適合責任はいつまで問われますか?

民法上は、買主が不適合を知った時から1年以内に通知する必要があります(第566条)。

個人間売買では契約で期間を短く定めるのが一般的で、引き渡しから3か月程度とする例が多くあります。

売主が宅建業者の場合は2年未満とする特約が無効となります。

Q. 駆除費用は売却価格に上乗せできますか?

上乗せできるとは限りません。

特に築古で解体前提の買主にとって、駆除は価値になりません。

築浅で建物価値が残っている場合は評価される余地がありますが、まず査定で「駆除した場合いくらになるか」を聞き、費用と比べて判断してください。

Q. 更地にして土地として売るほうがいいですか?

被害が構造材まで及び、建物に価値がない場合はその選択もあります。

ただし解体費用がかかり、更地にすると固定資産税の住宅用地特例が外れて税額が上がる点に注意が必要です。

売却にかかる費用全体は「不動産売却にかかる税金と費用の全体像|いくら手元に残る?」で整理しています。

まとめ|シロアリは告知したうえで売る方法を選ぶ

シロアリ被害のある家も、事実を開示すれば売却できます。被害は物件状況等報告書(告知書)に記載し、買主に伝えたうえで価格を調整する、というのが基本の進め方です。

押さえておきたいのは、駆除しても告知義務は消えないという点です。

数十万円かけて駆除しても、過去に被害があった履歴は買主に伝えることになります。

駆除費用が価格に上乗せされるとは限らないため、築古で解体前提の買主が想定されるなら、駆除せずに価格を調整するほうが手元に残る金額は大きくなることもあります。

知っている被害を隠さないことが最も重要です。

契約不適合責任の免責特約を付けても、知っていて告げなかった事実については責任を免れません(民法第572条)。

伝えないまま売れば、後から修繕費を請求される可能性が残ります。

放置すれば食害は広がり、建物の価値はさらに下がります。まずは床下調査で状況を把握し、事実を伝えたうえで査定を受けて、駆除すべきかどうかを含めて相談してみてください。

出典・参考情報

※駆除費用の目安は法令や公的統計にもとづくものではなく、複数の防除事業者が公開する料金表を比較した当編集部調べです(2026年7月時点)。

保証期間の目安は施工業者や工法により異なります。

個別の契約内容や責任の範囲については、不動産会社または弁護士にご確認ください。

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