市街化調整区域の家は売れる?建て替えの可否と許可

相続した実家が市街化調整区域にあると分かり、不動産会社に相談したら「建て替えができないので、買い手が限られます」と言われた。近所には普通に家が建っているのに、なぜうちだけこんな扱いを受けるのか——そんな戸惑いを抱えている方は少なくありません。
結論から言えば、市街化調整区域の不動産も売れます。
ただし、この区域には見落としやすい落とし穴があります。
それは、「今建っている家がある」ことと「次も建てられる」ことは別だという点です。
ここを理解しておくかどうかで、売却の進め方も買主への説明の仕方も大きく変わってきます。
順を追って整理していきましょう。
市街化調整区域とは|市街化を抑制する区域で建築が制限される
市街化調整区域とは、都市計画法に基づき「市街化を抑制すべき区域」と定められたエリアのことです。行政が「この地域は積極的に街として整備しない」と判断した区域であるため、新たな建築行為には制限がかかります。
都市計画法は、都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に区分しています。
これを「線引き」と呼びます。
国土交通省は、開発許可制度の趣旨について「市街化区域及び市街化調整区域の区域区分(いわゆる『線引き制度』)を担保し、良好かつ安全な市街地の形成と無秩序な市街化の防止を目的としています」と説明しています。
相続した実家がこの区域にあると知ったとき、「なぜここだけ」という戸惑いを覚えるのは自然なことです。ですが、それはあなたの家に固有の問題ではなく、地域全体の位置づけによるものだと理解しておくと、この先の対応も落ち着いて進められるはずです。
市街化調整区域だからといって特別なことをしたわけではありません。まずは冷静に、区域の位置づけを確認していきましょう。
市街化調整区域で建てられない理由|都市計画法の2つの条文
市街化調整区域で建築が制限される理由は、都市計画法の2つの条文にあります。開発許可を定める29条・34条と、建築等の制限を定める43条です。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 法29条・34条 開発許可 | 土地の区画形質の変更を伴う場合に必要。34条は市街化調整区域にのみ適用される立地基準で、許可できる開発行為の類型を限定している |
| 法43条 建築等の制限 | 市街化調整区域のうち開発許可を受けた土地以外の土地では、開発許可権者の許可を受けなければ一定の建築行為をしてはならない |
出典:国土交通省「開発許可制度の概要」、都市計画法。
ここで重要なのは、造成を伴わない建て替えであっても、43条の許可が必要になるという点です。「土地はいじらないのだから問題ないだろう」と考えたくなりますが、それは通用しません。
建て替えは土地に手を加えないから大丈夫、と思われがちですが、43条の許可は別途必要になります。ここは特に見落とされやすいポイントですよ。
「既存宅地なら建て替えできる」は過去の話|制度は廃止されている
「既存宅地だから届出だけで建て替えができる」という情報は、平成12年の都市計画法改正で廃止された既存宅地制度の話であり、現在は通用しません。古い情報が今も残っている部分なので、注意が必要です。
かつて都市計画法には既存宅地制度がありました。
線引き前から宅地だった土地について、届出をすれば建築を認めるという仕組みです。
この制度は平成12年の都市計画法改正により廃止されました(経過措置期間を経て終了しています)。
現在は、線引き前から宅地であった土地であっても、34条各号(または43条の立地基準)に該当することを個別に確認する必要があります。多くの自治体は条例や開発審査会基準でこれに対応していますが、その内容は自治体ごとに異なります。
「昔は建てられたから、今も大丈夫だろう」という思い込みは、思わぬところで足をすくわれる原因になります。まずは自治体の窓口で、現在の取扱いを確認してください。
「既存宅地だから大丈夫」という話は、今も根強く残っていますが、制度としてはすでに廃止されています。思い込みで動く前に、必ず窓口で確認してくださいね。
建築が認められる主な類型|都市計画法34条
都市計画法34条は、市街化調整区域で例外的に建築が認められる開発行為の類型を列挙しており、国土交通省はその立地基準を複数の号にわたって例示しています。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 第1号 | 周辺居住者の利用の用に供する公益上必要な施設、日用品店舗等の日常生活に必要な施設 |
| 第4号 | 農林水産物の処理、貯蔵、加工のための施設 |
| 第10号 | 地区計画等の内容に適合する開発 |
| 第11号 | 市街化区域に近隣接する一定の地域のうち、条例で指定する区域における、条例で定める周辺環境の保全上支障がある用途に該当しない建築物 |
| 第12号 | 市街化を促進するおそれがなく、市街化区域で行うことが困難または著しく不適当と認められる開発行為として、条例で区域・目的等を限り定めたもの |
| 第14号 | 同様の要件で、あらかじめ開発審査会の議を経たもの |
出典:国土交通省「開発許可制度の概要」(法第34条の例示)。号の一部を抜粋。
売却の場面で鍵になるのは11号・12号・14号です。
いずれも「条例で指定する区域」「条例で定めたもの」「開発審査会の議を経たもの」となっており、自治体の裁量が大きく反映される部分です。
同じ市街化調整区域であっても、市町村が違えば結論が変わることがあります。
11号・12号・14号は自治体ごとの運用差が大きく出るところです。「隣の市はできたのに」という比較は、あまり参考にならないことが多いですよ。
市街化調整区域の売却で最大の壁は「属人性」|買主が住めないことがある
市街化調整区域の売却で最大の壁になるのが「属人性」です。これは、許可が特定の人の事情に基づいて出されているため、その人が住めることと、買主が住めることが別の話になってしまう性質を指します。
典型例が「分家住宅」です。農家の後継者が親の家の近くに住むために許可されたもので、その人だからこそ許可された、という性格を持っています。
この属人性がある場合、あなたが住めることと買主が住めることは別問題です。買主が同じ要件を満たさなければ、建て替えどころか、その建物に住むための用途変更の許可すら下りない可能性があります。
| 確認事項 | なぜ必要か |
|---|---|
| 線引きの日はいつか | その前から宅地だったかの判断基準になる |
| 建物はどの許可で建ったか | 34条の何号か、開発審査会基準か。属人性の有無に直結 |
| 11号・12号の条例指定区域に入るか | 入っていれば買主の幅が大きく広がる |
| 買主に求められる要件は何か | 親族要件・居住年数要件などがあるか |
| 用途変更の許可は必要か | 住宅から店舗等への変更にも許可が要る |
これらは市区町村の開発指導担当窓口で確認できます。曖昧なまま売り出してしまうと、買主が現れてから「許可が下りない」と判明し、そこまでの話が一気に壊れてしまうこともあります。
属人性の確認は少し手間に感じるかもしれませんが、ここを飛ばして売り出すのが一番危険です。早めに窓口で確認しておきましょう。
市街化調整区域の売却を有利にする材料|許可の可否を先に確かめる
市街化調整区域だからといって、売却が不利になるとは限りません。条例指定区域への該当、用途変更の可能性、税制の低さ、環境の良さなど、買主に伝えられる材料は複数あります。
条例指定区域に入っていないか確認する
11号・12号の条例で指定された区域であれば、一定の要件で住宅を建てられます。50戸以上の建築物が連なる地域(いわゆる50戸連たん)を対象にする例が多く、該当すれば買主の幅が大きく広がります。
用途変更の可能性を調べる
国土交通省は、市街化調整区域でも人口減少・高齢化に伴い空き家が多数生じ、地域コミュニティ力の低下等の課題が生じていることを踏まえ、空き家となった古民家や住宅などを地域資源ととらえ、既存建築物を活用した地域再生の取組に対して許可の運用を弾力化する方針を示し、開発許可制度運用指針を改正しています。自治体によっては、住宅から店舗への用途変更を認める条例もあります。
固定資産税の低さを伝える
市街化調整区域では、原則として都市計画税がかかりません。市街化区域と比べた維持費の低さは、買主にとって一つの利点になり得ます。
環境の良さを伝える
周囲が農地や緑地に囲まれ、静かで敷地が広いことも少なくありません。こうした環境そのものに価値を見出す買主は、実際にいます。
「調整区域だから安くしか売れない」と決めつけず、まずは伝えられる材料が何かを一つずつ確認してみてください。
市街化調整区域の買い手の探し方|資格のある買主を見つける
市街化調整区域の物件は買主が限られるからこそ、誰に売るかを最初に考えることが効果的です。
隣接地の所有者
農地を持つ人にとって、隣の土地は使い道があります。
農地そのものの売却については「農地は売れる?農地法の許可と転用のハードル」で扱っています。
地元の人
11号・12号の条例には居住年数や親族の要件が定められていることがあり、地元に縁のある人であれば、その要件を満たす可能性があります。
買取業者
仲介より価格は下がりますが、市街化調整区域を扱える買取業者も存在します。
仲介と買取の違いは「仲介と買取どっちがいい?違いとメリット・デメリット」で整理しています。
売却全体の流れについては「不動産売却の流れ|査定から引き渡しまでの7ステップ」でまとめています。
買主を広く探すよりも、要件に合う相手にどう届けるかを考えたほうが、話がまとまりやすいことも多いですよ。
市街化調整区域の家は解体を慎重に|更地にすると建てられなくなる
市街化調整区域の家は、解体して更地にすると、建物が建っている状態よりも建築の許可が下りにくくなることがあるため、解体は慎重に判断すべきです。
建物があるうちは「従前の建築物の建て替え」として扱われる余地がありますが、更地にしてしまうと新規の開発行為・建築行為として審査されることになります。この違いは、売却の成否を大きく左右します。
解体前に確認しておきたい流れ
解体後も建築できるかを事前に問い合わせる
従前建築物としての扱いが受けられるかを確認する
建築可否と税負担の両方を踏まえて決める
加えて、更地にすると住宅用地の特例が外れ、土地の固定資産税の課税標準が上がります(「築40年・築50年の古い家は売れる?解体すべきか判断基準」)。
解体前には、必ず自治体へ確認しておいてください。
「壊してから考えよう」と先に解体してしまうと、後戻りができなくなるケースもあります。解体は最後の手段として考えてくださいね。
相続した市街化調整区域の土地を売る手順
相続した実家が市街化調整区域にある場合は、まず相続登記を済ませ、そのうえで自治体に建築の可否を確認するのが基本の進め方です。
相続した調整区域の土地を売るまでの流れ
2024年4月から義務化されている
属人性や条例指定区域への該当を確認する
特例の活用可否も含めて検討する
相続登記は2024年4月から義務化されています(「相続登記をしないと不動産は売れない?義務化と手続き」)。
そのうえで、空き家の3000万円特別控除が使える可能性もあります(「旧耐震の家は売れる?耐震補強せずに売る方法と3000万円控除」)。
相続した実家をどう扱うかで悩む方は多いですが、登記と自治体確認さえ済ませれば、進め方はぐっと明確になりますよ。
市街化調整区域の売却でよくある質問
Q 今家が建っているのに、なぜ建て替えられないのですか。
A 今建っている家があることと、次も建てられることは別だからです。
市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域とされ、都市計画法43条により、開発許可を受けた土地以外の土地では、開発許可権者の許可を受けなければ一定の建築行為ができません。
既存の建物が違法というわけではなく、建てられた当時の制度や許可に基づいているにすぎません。
建て替えの段階になって、あらためて現行の基準に照らして許可の可否が判断されます。
Q 既存宅地だから届出だけで建てられると聞きました。
A その情報は、平成12年の都市計画法改正で廃止された既存宅地制度の話です。
現在は、線引き前から宅地であった土地でも、34条各号や自治体の条例・開発審査会基準に該当するかを個別に確認する必要があります。
古い情報が今も残りやすい部分なので、自治体の窓口で現在の取扱いを確認してください。
Q 自分は住めているのに、買主は住めないことがあるのですか。
A あります。
分家住宅のように、許可が特定の人の事情に基づいて出されている場合があるためです。
この属人性があると、買主が同じ要件を満たさない限り許可が下りない可能性があります。
売る前に、その建物がどの許可で建ったのかを自治体で確認してください。
Q 隣の家は建て替えているのに、なぜうちはできないのですか。
A 同じ区域内でも、建物が建てられた経緯や適用される号が違えば結論は変わるためです。
条例指定区域の境界の内外という違いもあり得ます。
34条11号・12号は条例で区域を指定する仕組みなので、道一本で扱いが分かれることもあります。
自分の土地については、個別に確認するほかありません。
Q 市街化調整区域に良い点はありますか。
A あります。
原則として都市計画税がかからないため、維持費が抑えられます。
周囲に農地や緑地が広がり、静かで敷地が広い物件も多くあります。
国土交通省も、空き家となった古民家などを地域資源ととらえ、活用のために許可の運用を弾力化する方針を示しています。
Q 解体して更地にしたほうが売りやすいですか。
A 一概には言えず、慎重な判断が必要です。
市街化調整区域では、建物があるうちは従前の建築物の建て替えとして扱われる余地がありますが、更地にすると新規の建築として審査されることがあります。
更地にすると住宅用地の特例も外れ、土地の固定資産税の課税標準が上がります。
解体前には自治体へ確認してください。
まとめ|市街化調整区域は建築の可否を確かめてから売る
市街化調整区域の不動産は売れます。
ただし、市街化を抑制すべき区域という性格から、都市計画法43条により建築行為には許可が必要で、34条の立地基準は許可できる類型を限定しています。
造成を伴わない建て替えであっても、許可が必要になる点は変わりません。
「既存宅地だから届出で建てられる」というのは、平成12年改正で廃止された制度の話です。そして最も注意すべきは属人性で、あなたが住めることと買主が住めることは別の話だと理解しておく必要があります。
やるべきことは一つです。
市区町村の開発指導担当窓口で、自分の土地について確認することです。
どの許可で建ったのか、条例指定区域に入るのか、買主にどんな要件が課されるのか。
ここが分かれば、誰に売れるのかが見えてきます。
曖曖なまま売り出すのが、最も危険な選択です。
難しく感じるかもしれませんが、確認すべきことは限られています。一つずつ窓口で確かめていけば、必ず前に進めますよ。
出典・参考情報
- 国土交通省「開発許可制度の概要」(線引き制度の担保という制度趣旨、開発行為の定義〈法4条12項〉、許可権者〈法29条〉、立地基準〈法34条〉は市街化調整区域にのみ適用され許可できる類型を限定、建築等の制限〈法43条〉)
- 国土交通省「開発許可制度」(開発許可制度運用指針。地方自治法245条の4に基づく技術的助言であり、地域の実情等に即して合理的な運用が尊重されるべきもので、許可権限を拘束するものではない旨)
- 都市計画法 第4条第12項、第29条、第33条、第34条、第43条
- 地方税法 第349条の3の2(住宅用地の特例)、第702条(都市計画税)
※34条11号・12号の条例指定区域や開発審査会基準は、自治体ごとに内容が大きく異なります。
本記事は制度の考え方を示すものであり、個別の土地に適用される基準については、その土地を管轄する市区町村・都道府県の開発指導担当窓口にご確認ください。
税制の適用可否も個別の事情により異なります。


