机上査定と訪問査定の違い|どっちを選ぶべき?

不動産会社に査定を申し込もうとしたら、「机上査定」と「訪問査定」のどちらかを選ぶよう言われた。名前を見ても違いがよく分からず、なんとなく簡単そうな机上査定を選んでしまった――という方は少なくありません。
どちらを選んでも間違いというわけではありませんが、目的によって向き不向きがあります。
結論から言えば、売ると決めているなら訪問査定、まだ迷っている段階なら机上査定が向いています。
匿名査定を提供しているサービスの一覧と選び方は「匿名で不動産査定ができるサービス9選まとめ|利用時の注意点」で解説しています。
ただ、この使い分けには理由があり、そこを理解しておかないと、出てきた査定額に振り回されてしまいます。
ここでは、2つの査定の違いから、現地を見なければ分からない評価のポイント、査定額と実際の売却価格の関係まで、順を追って整理していきます。
机上査定と訪問査定の違い|精度・時間・手間を比較
机上査定は現地を見ずにデータだけで算出する簡易的な査定、訪問査定は担当者が実際に物件を訪れて確認したうえで算出する査定です。両者の違いは、現地を見るかどうかと、それによって生まれる精度の差にあります。
| 机上査定 (簡易査定) | 訪問査定 (詳細査定) | |
|---|---|---|
| 現地を見るか | 見ない | 見る |
| 使う情報 | 所在地・面積・築年数・間取りなどの数字 | 数字+建物の状態・日当たり・眺望・周辺環境・権利関係 |
| かかる時間 | 数時間〜数日 | 訪問30分〜1時間、結果は数日〜1週間程度 |
| 立ち会い | 不要 | 必要 |
| 精度 | おおまかな目安 | 売り出し価格の根拠になる |
| 費用 | 無料が一般的 | 無料が一般的 |
※所要日数や運用は不動産会社により異なります。
机上査定は、データだけで「このあたりの似た物件はこのくらいで売れている」と当てはめる作業です。それだけに結果が出るのは速いのですが、その分あなたの家の個別事情は反映されていません。
まずは机上査定でおおまかな感覚をつかみ、そのうえで訪問査定を検討する、という順番で進める方が多いですよ。
机上査定では分からないこと|現地を見て変わる評価
机上査定では、雨漏りやシロアリ被害といった建物の状態、日当たりや土地の形、境界や再建築の可否といった権利関係までは分かりません。これらは現地を見なければ判断できず、しかも価格を大きく動かす要素です。
不動産の価格は、同じ面積・同じ築年数でも大きく変わります。机上査定で拾えない要素を挙げます。
| 分類 | 具体例 |
|---|---|
| 建物の状態 | 雨漏り、シロアリ被害、傾き、水回りの劣化、リフォーム履歴 |
| 日当たり・風通し | 隣に高い建物がある、南向きでも影になる |
| 土地の形・接道 | 旗竿地、高低差、擁壁、私道の状況、境界標の有無 |
| 周辺環境 | 前面道路の交通量、騒音、におい、嫌悪施設 |
| 権利・法規制 | 再建築の可否、越境物、共有者の有無 |
これらは価格を数百万円単位で動かします。
たとえば同じ土地面積でも、旗竿地なら整形地より下がります(「旗竿地は売れる?路地の幅で決まる価格と条例の規制」)。
境界が確定していなければ、その分も評価に影響します(「境界が確定していない土地は売れる?測量と筆界特定」)。
雨漏りのような不具合も、現地で初めて分かる要素です(「雨漏りする家を売りたい|修繕せずに売る方法と告知義務」)。
机上査定の数字は、これらを知らないまま出された数字にすぎません。目安としては役立ちますが、それ以上のものではないと考えておいたほうがよいでしょう。
「安めに出た」「高めに出た」と一喜一憂する前に、まずは現地を見てもらってから判断することをおすすめしています。
机上査定と訪問査定はどっちを選ぶ|使い分けの基準
売却の時期が決まっているなら訪問査定、まだ売るかどうか迷っている段階なら机上査定を選ぶのが基本の目安です。目的によって、どちらが適しているかは変わります。
| 状況 | 向くのは |
|---|---|
| 売ると決めていて、時期も決まっている | 訪問査定 |
| 住み替え先の資金計画を立てたい | 訪問査定 |
| ローン残債と比べたい | 訪問査定 |
| 遺産分割の話し合いに使う | 訪問査定 |
| 売るかどうか迷っている段階 | 机上査定 |
| 数年先の参考に相場を知りたい | 机上査定 |
| 遠方にあり、立ち会いが難しい | 机上査定から始める |
実務的には、机上査定で数社に絞り、そのうち数社に訪問査定を頼むという進め方が多くなります。いきなり全社に訪問してもらうのは、時間的にも負担が大きいためです。
査定から依頼先決定までの進め方
複数社にまとめて依頼し、おおまかな目安をつかむ
提示額や説明の丁寧さを比較して候補を絞る
絞った数社に現地を見てもらい、精度の高い査定額を出してもらう
根拠の説明を比較し、媒介契約を結ぶかどうか判断する
迷っている段階から全社に訪問査定を頼む必要はありません。まず机上査定で候補を絞ることから始めてみてくださいね。
訪問査定で見られること|当日の流れと準備
訪問査定で担当者が確認するのは、買主が気にするポイントです。水回りの状態、壁や床の傷み、収納の量、日当たり、眺望、騒音の有無に加え、境界標の位置や隣地との関係、接道の状況といった外回りも見ます。
「家の中を見られるのが嫌だ」という理由で、机上査定を選んでしまう人もいます。ただ、実際に何を見るのかを知っておくと、その抵抗は少し和らぐはずです。
掃除は必要ですが、リフォームは不要です。
むしろ「直してから査定を受けよう」と考えると時間を失います。
かけた費用を回収できるとは限りません。
現状のまま見てもらい、担当者と相談してから判断してください。
気になる箇所は、隠さずそのまま担当者に見てもらうほうが、結果的に話が早く進むことが多いですよ。
査定額は売れる価格ではない|売出価格・成約価格との違い
査定額は、不動産会社が「この価格なら売れるだろう」と見込んだ数字であり、売却価格を保証するものではありません。実際の売り出し価格は査定額を踏まえて売主が決め、最終的な成約価格は買主との交渉で決まります。
訪問査定でも、この構造は変わりません。
現地を見ることで精度は上がりますが、それでも見込みであることに変わりはないのです。
そして査定額がそのまま手元に残るわけでもありません(「マンション売却で手元に残る金額の計算方法」)。
だからこそ、査定額の根拠を聞くことが大切です。
どの取引事例を参考にしたのか、なぜその価格になったのか。
それを説明できる担当者は、根拠を持って値付けしていると考えてよいでしょう。
「なぜこの価格なのか」を質問して、しっかり答えてくれる担当者かどうかを見極めてみてください。
査定を受ける前に自分でも相場を調べておく
提示された査定額が妥当かどうかを判断するには、自分なりの物差しが必要です。国土交通省が公開しているデータを使えば、実際の取引価格を自分で確認できます。
| 情報 | 中身 |
|---|---|
| 不動産取引価格情報 | 国土交通省が取引当事者へのアンケートをもとに公開している実際の取引価格 |
| 成約価格情報 | 指定流通機構(レインズ)保有の情報を、国土交通省が個別の不動産取引を特定できないよう加工し、レインズ・マーケット・インフォメーション(RMI)で公表しているもの |
| 地価公示・都道府県地価調査 | 土地の公的な価格指標 |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」(令和6年4月1日運用開始)。
これらは国土交通省の不動産情報ライブラリで見られます。価格だけでなく、洪水浸水想定区域、用途地域、周辺施設なども地図上で重ねて確認できます。
なお、かつて価格情報を提供していた「土地総合情報システム」は役割を終え、現在はこのライブラリに集約されています。古い案内が残っている情報源もあるので、その点は注意しておいてください。
相場のイメージを自分で持っておくと、査定額を聞いたときに落ち着いて話を聞けるようになりますよ。
売り出し中の価格と成約価格を混同しない
ポータルサイトに表示されている価格は、実際に取引が成立した成約価格ではなく、あくまで売り出し価格です。「売主がこの値段で売りたい」という希望であり、実際にはそこから下がって成約することが多くあります。
相場を掴むなら、実際に取引が成立した価格を見てください。売り出し価格だけを見ていると、相場を高く誤認してしまいます。
気になる物件の売り出し価格を見て一喜一憂する前に、成約価格の情報も併せて確認してみてくださいね。
机上査定・訪問査定のよくある質問
Q 机上査定と訪問査定で、金額はどのくらい違いますか。
A 物件によって差は変わり、一概には言えません。
建物の状態が良く、土地も整形地で特殊事情がなければ差は小さくなります。
逆に、雨漏りがある、旗竿地である、境界が未確定といった事情があれば、訪問査定で下がることがあります。
良い方向に動く場合もあり、リフォーム済みや眺望が良いといった要素は現地を見て初めて評価されます。
Q 査定は無料ですか。
A 不動産会社が売却の依頼を受けることを見込んで行う査定は、机上・訪問とも無料が一般的です。
一方、不動産鑑定士による鑑定評価は有料で、相続や裁判など公的な証明が必要な場面で使われます。
目的が違うものなので、混同しないようにしてください。
Q 訪問査定を受けたら、その会社と契約しなければいけませんか。
A 義務はありません。
査定を受けることと媒介契約を結ぶことは別の話です。
複数社の査定を比べたうえで、依頼先を選んでください。
断りにくさを感じる場合は、最初に「複数社に依頼しています」と伝えておくと話が早くなります。
Q 査定前にリフォームや掃除をすべきですか。
A 掃除はしておくとよいですが、リフォームは急がないでください。
かけた費用を売却価格に上乗せできるとは限らず、買主が自分好みに直したいと考えている場合もあります。
現状のまま査定を受け、担当者と相談してから判断するほうが安全です。
Q 訪問査定にはどのくらい時間がかかりますか。
A 現地の確認は30分から1時間程度が目安です。
査定結果が出るまでは数日から1週間程度かかることが一般的です。
近隣の取引事例を調べ、登記や法規制を確認する時間が必要なためで、所要日数は不動産会社により異なります。
Q 遠方の実家を相続しました。行かないと査定できませんか。
A 机上査定であれば、現地に行かずに目安が分かります。
ただし売却を進めるなら、いずれ訪問査定が必要になります。
売主本人が立ち会えない場合、鍵を預けて対応してもらう、親族に立ち会ってもらうといった方法をとる会社もあります。
まず机上査定で数社に絞り、対応方法を相談してみてください。
Q 机上査定の結果だけで、売り出し価格を決めてもいいですか。
A 机上査定の数字だけで売り出し価格を決めるのはおすすめできません。
机上査定は建物の状態や境界、権利関係といった要素を反映していないため、実際の価値とずれている可能性があります。
売却の意思が固まった段階で訪問査定を受け、現地を踏まえた根拠のある価格を確認してから決めるほうが安心です。
まとめ|机上査定で絞り訪問査定で決める
机上査定はデータだけの目安、訪問査定は現地を見たうえでの見込みです。建物の状態、日当たり、土地の形、境界、権利関係――価格を大きく動かす要素は、現地を見なければ分かりません。
売ると決めているなら訪問査定を選んでください。
迷っている段階なら机上査定で十分ですが、その数字を「売れる価格」だと思い込まないようにしましょう。
査定額はどちらも見込みであって、保証ではありません。
そして査定を受ける前に、国土交通省の不動産情報ライブラリで相場を調べておいてください。
物差しを持っていれば、提示された数字が妥当かどうかを自分で判断できます。
売却の全体の流れは「不動産売却の流れ|査定から引き渡しまでの7ステップ」で整理しています。
まずは机上査定で気軽に相場感をつかみ、それから訪問査定に進む――この順番で考えていただくと、無理なく進められると思いますよ。
出典・参考情報
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(不動産取引価格情報、成約価格情報、地価公示、都道府県地価調査、防災情報、都市計画情報等)
- 国土交通省「「不動産情報ライブラリ」の運用を開始します」(令和6年3月1日報道発表。令和6年4月1日運用開始、成約価格情報は指定流通機構〈レインズ〉保有の情報を国土交通省が個別の不動産取引を特定できないよう加工しRMIで公表しているものである旨)
- 宅地建物取引業法(媒介契約、価格の意見を述べるときの根拠の明示)
※査定の手順や所要日数、対応方法は不動産会社により異なります。
査定額は売却を保証するものではありません。
個別の判断については、不動産会社にご相談ください。


