査定額が高すぎる会社は危険?高額査定の裏側
複数社に査定を頼んだら、1社だけ飛び抜けて高い金額を出してきた。
うれしくなって、その会社に任せたくなる——。
その気持ちは自然です。
しかし、ちょっと待ってください。
本記事では、高すぎる査定額の危険を整理します。
結論から言えば、最も高い査定額を出した会社を選ぶのは、最も多い失敗です。
なぜ会社が高い金額を出すのか、その裏側を知れば、金額に振り回されずに済みます。
査定額が高すぎる理由|媒介契約を取るための高額査定
不動産会社にとって、査定は媒介契約を取るための入口です。媒介契約を結んでもらえなければ、その会社に売却の依頼は来ません。
ここに力学が働きます。
複数社が競っている場面で、高い金額を出せば売主の気を引けます。
「A社は3,000万円と言ったが、うちなら3,400万円で売れます」——こう言われれば、売主はB社に傾きます。
問題は、その金額に根拠があるかどうかです。
査定額は売却を保証するものではありません。
契約を取るためだけの高値なら、売り出してから現実に直面します。
高すぎる価格で売り出すと何が起きるか|売れ残りと値下げ
相場からかけ離れた高い価格で売り出すと、決まった経過をたどりがちです。
高すぎる価格で売り出した場合の典型的な経過
| 段階 | 起きること |
|---|---|
| 売り出し直後 | 相場より高いため、問い合わせも内見も入らない |
| 数週間〜数か月 | 反響がないことを理由に、値下げを提案される |
| 売れ残り | 掲載期間が長引き、買主から「売れ残り物件」と見られる |
| 最終的に | 相場より安い価格でしか売れなくなることがある |
ここが皮肉なところです。
高く売りたくて高値の会社を選んだのに、結果的に相場より安く売ることになりかねないのです。
売却の流れ全体を踏まえて価格を考えることが大切です(「不動産売却の流れ|査定から引き渡しまでの7ステップ」)。
不動産には「売り出してからの期間が長い物件は、何か問題があるのでは」と見られる傾向があります。
長く売れ残るほど、買主は強気に値切ってきます。
最初から相場に見合った価格で出したほうが、結果的に高く早く売れることは珍しくありません。
高すぎる査定額を見分ける方法|根拠を確かめる
では、高い査定額が「根拠のある高値」なのか「契約目当ての高値」なのか、どう見分けるか。
方法は一つです。
根拠を聞くことです。
これは売主の権利です。
宅地建物取引業法第34条の2第2項は、宅地建物取引業者が価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。
査定額を出した以上、会社にはそれを説明する義務があります。
高値査定を見分ける質問
| 質問 | 危険なサイン |
|---|---|
| この金額の根拠は何ですか | 具体的な取引事例を示せない |
| 何か月で売れる想定ですか | 「長く待てば」が前提になっている |
| 売れなかったらどうしますか | 「そのときは値下げしましょう」しか言わない |
| 他社より高い理由は何ですか | 説明が曖昧、または他社を一方的に否定する |
根拠を求めたとき、具体的な取引事例や算定の道筋を示せる会社は信頼できます。逆に、「経験上」「うちのネットワークなら」といった抽象的な答えしか返ってこないなら、その高値は疑ってかかるべきです。
査定額の根拠の確認については「不動産査定は複数社に頼むべき?金額より根拠を見る」でも詳しく扱っています。
自分でも相場を持っておく|査定額を判断する物差し
会社の説明を評価するには、自分でも相場の見当を持っておくことが有効です。物差しがなければ、高いのか妥当なのか判断できません。
国土交通省の不動産情報ライブラリで、近隣の成約価格を調べられます。
個人情報の入力は不要です(「不動産を自分で査定する方法|相場の調べ方と限界」)。
おおよその相場を把握してから査定を受ければ、飛び抜けて高い金額に対して「これは何を根拠にしているのか」と冷静に問えます。
高額査定の会社と契約した後に注意すること
高値査定で媒介契約を結んでしまった場合でも、打てる手はあります。
専任媒介契約・専属専任媒介契約の有効期間は、宅地建物取引業法により最長3か月と定められています。
これを超える契約はできず、自動更新も認められていません。
つまり、成果が出なければ、期間満了時に別の会社に切り替えられます。
また、これらの契約では会社にレインズへの登録義務があり、売主はレインズの売主専用画面で自分の物件の取引状況を確認できます。
令和7年1月からは、宅建業者から交付される登録証明書に二次元コードが記載され、専用画面にアクセスしやすくなりました。
反響がないと言われたとき、本当に適切に売り出されているかを、自分で確かめられます。
レインズ売主専用画面で確認できる取引状況(3種類)
| 公開中 |
| 書面による購入申込みあり |
| 売主都合で一時紹介停止中 |
出典:国土交通省「レインズの機能強化について」(令和6年12月24日)。覚えのない「売主都合で一時紹介停止中」は囲い込みのサインとなり得る。
なお、故意に物件の紹介を止める「囲い込み」という問題もあります。
国土交通省は、これを自社の利益のために売主の意向に反して物件の紹介を行わない行為と説明しており、令和7年1月からステータス管理機能の登録が義務化され、防止が図られています。
契約の種類とあわせて「媒介契約の種類|専属専任・専任・一般の違いと選び方」で確認してください。
安すぎる査定額にも注意が必要な理由
逆の落とし穴もあります。極端に安い査定額です。
早く売り切りたい会社が、売れやすい低めの価格を提示することがあります。相場を知らないまま安い金額で売り出すと、本来もっと高く売れたはずの物件を安く手放すことになります。
買取の場合は、市場価格より安くなるのが通常です。
ただしこれは早く売れることの対価であり、囲い込みや不当な安値とは別の話です(「仲介と買取どっちがいい?違いとメリット・デメリット」)。
仲介での査定が相場から大きく外れて安い場合は、その根拠を確認してください。
結局どの不動産会社を選ぶか|金額ではなく根拠で選ぶ
金額の高さは、選ぶ基準になりません。見るべきは次の点です。
依頼先を選ぶ基準
| 査定額の根拠を具体的に説明できるか |
| その価格で何か月で売る想定かを示せるか |
| デメリットや売れなかった場合の対応も話すか |
| その地域・その種類の物件の取引実績があるか |
| 販売の方法を具体的に示せるか |
高い数字を提示されると心が動きます。
しかしその数字は、あなたの手取りを保証するものではありません。
根拠のある価格を、根拠を持って説明できる会社に任せる。
これが結果的に、高く早く売る近道です。
査定額が高すぎるときのよくある質問
Q. なぜ会社によって査定額に大きな差が出るのですか。
参考にした取引事例、得意分野、買主の心当たり、建物の評価方針などが会社ごとに違うためです。
差があること自体は起こり得ます。
ただし、媒介契約を取るために意図的に高い金額を提示する会社もあります。
差の理由を説明してもらえば、根拠のある高値か、契約目当ての高値かを判断できます。
Q. 高い査定額を出す会社は、信用できないのですか。
そうとは限りません。
具体的な取引事例や買主の心当たりに基づく高値なら、根拠のある金額です。
問題は根拠を説明できるかどうかです。
宅地建物取引業法第34条の2第2項により、業者は価額の根拠を明らかにする義務があります。
根拠を尋ね、納得できるかで判断してください。
Q. 高値で売り出すと、なぜ結局安くなるのですか。
相場より高い価格では問い合わせや内見が入らず、売れ残ります。
掲載期間が長引くと、買主から「売れ残り物件」と見られ、値切られやすくなります。
その結果、相場より安い価格でしか売れなくなることがあります。
最初から相場に見合った価格で出すほうが、高く早く売れる場合が多くあります。
Q. 高値査定で契約してしまいました。どうすればいいですか。
専任媒介契約・専属専任媒介契約の有効期間は宅地建物取引業法により最長3か月で、自動更新も認められていません。
成果が出なければ、期間満了時に別の会社へ切り替えられます。
また、レインズの売主専用画面で物件が適切に売り出されているかを確認できます。
反響がないと言われたら、まず状況を自分で確かめてください。
Q. 反響がないと言われますが、本当か確認できますか。
専任媒介契約・専属専任媒介契約では、会社にレインズへの登録義務があり、売主専用画面で取引状況を確認できます。
令和7年1月から登録証明書に二次元コードが記載され、アクセスしやすくなりました。
取引状況が「公開中」になっているか、覚えのない「一時紹介停止中」になっていないかを確認できます。
Q. 安すぎる査定にも注意が必要ですか。
必要です。
早く売り切りたい会社が、売れやすい低めの価格を出すことがあります。
相場を知らないまま安く売り出すと、本来もっと高く売れた物件を安く手放すことになります。
自分で相場の見当を持ち、安い査定にも根拠を確認してください。
買取の場合に市場価格より安くなるのは、早く売れることの対価で、別の話です。
まとめ|査定額の高さではなく根拠で会社を選ぶ
最も高い査定額を出した会社を選ぶのは、最も多い失敗です。
査定は媒介契約を取るための入口であり、契約目当てに高値を提示する会社があるためです。
相場からかけ離れた高値で売り出すと、売れ残り、結果的に安く売ることになりかねません。
見分ける方法は、根拠を聞くことです。
宅地建物取引業法第34条の2第2項により、業者には価額の根拠を明らかにする義務があります。
具体的な取引事例と、何か月で売る想定かを示せる会社が信頼できます。
自分でも相場の見当を持ち、契約後はレインズの売主専用画面で状況を確認する。
専任媒介契約は最長3か月なので、成果が出なければ切り替えられます。
数字の高さではなく、根拠の確かさで選んでください。
出典・参考情報
- 宅地建物取引業法 第34条の2(媒介契約。第2項=価額又は評価額について意見を述べるときの根拠の明示義務、専任媒介契約等の有効期間は最長3か月・自動更新の禁止、指定流通機構〈レインズ〉への登録義務)
- 国土交通省「レインズの機能強化について、物件の売主向けのリーフレットを作成しました」(令和6年12月24日。ステータス管理機能、令和7年1月1日からの取引状況の登録義務化、登録証明書への二次元コード記載、囲い込みの定義と防止、取引状況の登録項目は「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3種類)
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(成約価格情報等)
※査定額は売却を保証するものではありません。
会社の対応や販売方針は個別に異なります。
個別の判断については、不動産会社にご相談ください。
