査定額が高すぎる会社は危険?高額査定の裏側

複数の不動産会社に査定を依頼したら、1社だけ他より数百万円も高い金額を提示してきた。「せっかくならこの会社に任せたい」——そう思うのは、ごく自然な反応です。
ですが、その高い数字がそのまま手元に残る金額になるとは限りません。
結論から言えば、複数社の査定額のうち最も高い金額を出した会社を選ぶことは、不動産売却でもっとも多い失敗のひとつです。
匿名査定を提供しているサービスの一覧と選び方は「匿名で不動産査定ができるサービス9選まとめ|利用時の注意点」で解説しています。
なぜ会社が相場より高い金額を出すことがあるのか、その裏側の力学を知っておけば、目先の数字に振り回されずに会社を選べるようになります。
順を追って見ていきましょう。
査定額が高すぎる理由|媒介契約を取るための高額査定
不動産会社が相場より高い査定額を提示するのは、多くの場合、媒介契約を獲得するためです。査定は会社にとって売主との最初の接点であり、契約を結んでもらえなければ、その後の売却活動そのものが始まりません。
ここに、ある種の力学が働きます。
複数社が競合している場面で高い金額を出せば、売主の気持ちを引き寄せやすくなるのです。
「A社は3,000万円と言ったが、うちなら3,400万円で売れます」——そう言われれば、心が動かない人のほうが少ないでしょう。
問題は、その金額に根拠があるかどうかです。
査定額は、あくまで会社が算出した見込みの数字であって、その価格で売れることを保証するものではありません。
契約を取るためだけに積み上げられた高値だとしたら、売り出したあとに厳しい現実と向き合うことになりかねません。
高い数字を見せられると期待してしまうのは当然のことです。だからこそ、その場ですぐ決めずに、一呼吸置いてくださいね。
高すぎる価格で売り出すと何が起きるか|売れ残りと値下げ
相場からかけ離れた高い価格で売り出すと、多くの場合、決まった経過をたどります。反響が得られないまま時間だけが過ぎ、最終的には当初の相場より安い金額でしか売れなくなることも珍しくありません。
| 段階 | 起きること |
|---|---|
| 売り出し直後 | 相場より高いため、問い合わせも内見も入らない |
| 数週間〜数か月 | 反響がないことを理由に、値下げを提案される |
| 売れ残り | 掲載期間が長引き、買主から「売れ残り物件」と見られる |
| 最終的に | 相場より安い価格でしか売れなくなることがある |
ここに皮肉なところがあります。
高く売りたくて高値の会社を選んだはずなのに、結果的には相場より安く売ることになりかねないのです。
売却は査定額だけで完結するものではなく、売り出しから引き渡しまでの流れ全体を踏まえて価格を考える必要があります(「不動産売却の流れ|査定から引き渡しまでの7ステップ」)。
不動産市場には、「売り出し期間が長い物件は、何か問題があるのではないか」と見られる傾向があります。
長く売れ残るほど買主は強気に値切ってくるようになり、値下げの圧力も強まっていきます。
むしろ最初から相場に見合った価格で出したほうが、結果的に高く早く売れるケースは少なくありません。
「高く売りたい」という気持ちがあるほど、高値査定に飛びつきたくなるものです。でも焦らず、売り出し後の展開まで想像してみてくださいね。
高すぎる査定額を見分ける方法|根拠を確かめる
高い査定額が「根拠のある高値」なのか「契約目当ての高値」なのかを見分ける最も確実な方法は、その金額の根拠を会社に説明してもらうことです。
これは売主に認められた権利でもあります。
宅地建物取引業法第34条の2第2項は、宅地建物取引業者が価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。
査定額を提示した以上、会社にはそれを説明する義務があるのです。
| 質問 | 危険なサイン |
|---|---|
| この金額の根拠は何ですか | 具体的な取引事例を示せない |
| 何か月で売れる想定ですか | 「長く待てば」が前提になっている |
| 売れなかったらどうしますか | 「そのときは値下げしましょう」しか言わない |
| 他社より高い理由は何ですか | 説明が曖昧、または他社を一方的に否定する |
高値査定と向き合う3ステップ
他社との差が大きい場合は特に注意する
取引事例・売却までの期間・説明の具体性を確認する
根拠に納得できるかで会社を選ぶ
根拠を求めたときに、具体的な取引事例や算定の道筋を示せる会社は信頼できます。
一方で「経験上」「うちのネットワークなら」といった抽象的な答えしか返ってこないなら、その高値は疑ってかかったほうがよいでしょう。
査定額の根拠の確認については「不動産査定は複数社に頼むべき?金額より根拠を見る」でも詳しく扱っています。
根拠を尋ねるのは失礼なことではありません。むしろ、きちんと答えてくれる会社かどうかを見極める良い機会になりますよ。
自分でも相場を持っておく|査定額を判断する物差し
会社が示す査定額の妥当性を判断するには、自分自身であらかじめ相場のおおよその水準をつかんでおくことが有効です。物差しがなければ、提示された金額が高いのか妥当なのか、判断のしようがありません。
国土交通省の不動産情報ライブラリでは、近隣の成約価格を調べることができます。
個人情報の入力も不要です(「不動産を自分で査定する方法|相場の調べ方と限界」)。
おおよその相場を把握したうえで査定を受ければ、飛び抜けて高い金額に対しても「これは何を根拠にしているのか」と冷静に問いかけられるようになります。
相場を事前に調べておくだけで、査定の場での心の余裕がだいぶ違いますよ。難しく考えず、まずは一度検索してみてください。
高額査定の会社と契約した後に注意すること
高値査定に惹かれて媒介契約を結んでしまった場合でも、まだ打てる手はあります。
専任媒介契約・専属専任媒介契約の有効期間は、宅地建物取引業法により最長3か月と定められており、これを超える契約はできず、自動更新も認められていません。
つまり、成果が出なければ、期間満了時に別の会社へ切り替えることができます。
また、これらの契約では会社にレインズへの登録義務があり、売主はレインズの売主専用画面で自分の物件の取引状況を確認できます。
令和7年1月からは、宅建業者から交付される登録証明書に二次元コードが記載されるようになり、専用画面にアクセスしやすくなりました。
反響がないと言われたときも、本当に適切に売り出されているかを自分の目で確かめられます。
| 公開中 |
| 書面による購入申込みあり |
| 売主都合で一時紹介停止中 |
出典:国土交通省「レインズの機能強化について」(令和6年12月24日)。覚えのない「売主都合で一時紹介停止中」は囲い込みのサインとなり得る。
契約後に確認しておきたい3ステップ
専任媒介契約・専属専任媒介契約は最長3か月
取引状況が「公開中」になっているかを見る
反響がなければ会社に確認し、期間満了後は別会社も検討する
なお、故意に物件の紹介を止める「囲い込み」という問題もあります。
国土交通省は、これを自社の利益のために売主の意向に反して物件の紹介を行わない行為と説明しており、令和7年1月からステータス管理機能の登録が義務化され、防止が図られています。
契約の種類とあわせて「媒介契約の種類|専属専任・専任・一般の違いと選び方」で確認してみてください。
「反響がない」と言われて不安になったら、まずは売主専用画面を見てみましょう。ご自身で確認できるのは心強いことですよ。
安すぎる査定額にも注意が必要な理由
極端に安い査定額にも注意が必要です。早く売り切りたい会社が、あえて売れやすい低めの価格を提示することがあるためです。
相場を知らないまま安い金額で売り出してしまうと、本来もっと高く売れたはずの物件を安く手放すことになりかねません。
なお、買取の場合は市場価格より安くなるのが通常ですが、これは早く売れることの対価であり、囲い込みや不当な安値とは別の話です(「仲介と買取どっちがいい?違いとメリット・デメリット」)。
仲介での査定が相場から大きく外れて安い場合には、その根拠を確認するようにしてください。
高すぎる査定にも、安すぎる査定にも、それぞれ理由があります。どちらの場合も「なぜその金額なのか」を聞くことが基本になりますよ。
結局どの不動産会社を選ぶか|金額ではなく根拠で選ぶ
不動産会社を選ぶ基準は、査定額の高さではありません。その金額の根拠を具体的に説明できるか、そしてその価格で売るまでの見通しを示せるかどうかです。
| 査定額の根拠を具体的に説明できるか |
| その価格で何か月で売る想定かを示せるか |
| デメリットや売れなかった場合の対応も話すか |
| その地域・その種類の物件の取引実績があるか |
| 販売の方法を具体的に示せるか |
高い数字を提示されると、どうしても心が動きます。
ですが、その数字はあなたの手取り額を保証するものではありません。
根拠のある価格を、根拠を持って説明できる会社に任せることが、結果的に高く早く売る近道になります。
最終的に信頼できるのは、金額の大きさではなく説明の丁寧さです。迷ったら、根拠を聞いた際の受け答えを思い出してみてくださいね。
査定額が高すぎるときのよくある質問
Q なぜ会社によって査定額に大きな差が出るのですか。
A 参考にした取引事例、得意分野、買主の心当たり、建物の評価方針などが会社ごとに異なるためです。
差があること自体は自然に起こり得ます。
ただし、媒介契約を取るために意図的に高い金額を提示する会社もあるため、差の理由を説明してもらうことで、根拠のある高値か契約目当ての高値かを判断できます。
Q 高い査定額を出す会社は、信用できないのですか。
A そうとは限りません。
具体的な取引事例や買主の心当たりに基づく高値であれば、根拠のある金額です。
問題は根拠を説明できるかどうかにあります。
宅地建物取引業法第34条の2第2項により、業者は価額の根拠を明らかにする義務を負っています。
根拠を尋ね、その説明に納得できるかどうかで判断してください。
Q 高値で売り出すと、なぜ結局安くなるのですか。
A 相場より高い価格では問い合わせや内見が入らず、売れ残ってしまうためです。
掲載期間が長引くと、買主から「売れ残り物件」と見られやすくなり、値切られる可能性も高まります。
その結果、相場より安い価格でしか売れなくなることがあります。
最初から相場に見合った価格で出すほうが、高く早く売れる場合が多いでしょう。
Q 高値査定で契約してしまいました。どうすればいいですか。
A まず、契約期間が最長3か月であることを思い出してください。
専任媒介契約・専属専任媒介契約の有効期間は宅地建物取引業法により最長3か月と定められており、自動更新も認められていません。
成果が出なければ、期間満了時に別の会社へ切り替えられます。
あわせて、レインズの売主専用画面で物件が適切に売り出されているかを確認しておくとよいでしょう。
Q 反響がないと言われますが、本当か確認できますか。
A 専任媒介契約・専属専任媒介契約であれば確認できます。
会社にはレインズへの登録義務があり、売主専用画面で取引状況を確認できるためです。
令和7年1月からは登録証明書に二次元コードが記載され、アクセスしやすくなりました。
取引状況が「公開中」になっているか、覚えのない「一時紹介停止中」になっていないかを見てみてください。
Q 安すぎる査定にも注意が必要ですか。
A 必要です。
早く売り切りたい会社が、あえて売れやすい低めの価格を提示することがあるためです。
相場を知らないまま安い金額で売り出すと、本来もっと高く売れたはずの物件を安く手放すことになります。
自分でも相場の見当をつけたうえで、安い査定にも根拠を確認するようにしてください。
なお、買取の場合に市場価格より安くなるのは早く売れることの対価であり、これとは別の話です。
まとめ|査定額の高さではなく根拠で会社を選ぶ
複数社の査定額の中で最も高い金額を出した会社を選ぶことは、不動産売却でもっとも多い失敗のひとつです。
査定は媒介契約を取るための入口であり、契約を目的として高値を提示する会社が存在するためです。
相場からかけ離れた高値で売り出すと売れ残りが生じ、結果的には相場より安く売ることになりかねません。
見分ける方法はシンプルで、根拠を聞くことに尽きます。
宅地建物取引業法第34条の2第2項により、業者には価額の根拠を明らかにする義務があります。
具体的な取引事例と、何か月で売る想定かを示せる会社は、信頼して任せられるでしょう。
自分でも相場の見当を持ち、契約後はレインズの売主専用画面で状況を確認する。
専任媒介契約は最長3か月なので、成果が出なければ切り替えることもできます。
数字の高さではなく、根拠の確かさで会社を選んでください。
高い数字に一喜一憂する気持ちは、誰にでもあります。それでも最後は、根拠を丁寧に説明してくれる会社を選んでいただきたいです。
出典・参考情報
- 宅地建物取引業法 第34条の2(媒介契約。第2項=価額又は評価額について意見を述べるときの根拠の明示義務、専任媒介契約等の有効期間は最長3か月・自動更新の禁止、指定流通機構〈レインズ〉への登録義務)
- 国土交通省「レインズの機能強化について、物件の売主向けのリーフレットを作成しました」(令和6年12月24日。ステータス管理機能、令和7年1月1日からの取引状況の登録義務化、登録証明書への二次元コード記載、囲い込みの定義と防止、取引状況の登録項目は「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3種類)
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(成約価格情報等)
※査定額は売却を保証するものではありません。
会社の対応や販売方針は個別に異なります。
個別の判断については、不動産会社にご相談ください。


