不動産査定は複数社に頼むべき?金額より根拠を見る
不動産の査定を1社だけに頼んで、その金額を信じていませんか。あるいは複数社に頼んだものの、金額がバラバラで、どれを信じればいいのか分からなくなっていませんか。
本記事では、複数社に査定を依頼する意味と、査定額の比べ方を整理します。
要点は金額の大小ではなく、根拠を比べることです。
そして根拠を示すことは、不動産会社の法律上の義務です。
ここを知っているかどうかで、査定の受け方が変わります。
不動産査定額が会社によって違う理由
同じ家なのに、A社は3,000万円、B社は3,400万円、C社は2,800万円。おかしいと思うかもしれませんが、これは起こり得ることです。
査定額が分かれる理由
| 理由 | 中身 |
|---|---|
| 参考にした事例が違う | どの取引を「似た物件」とみるかで結果が変わる |
| 得意分野が違う | その地域・その種類の物件を扱った実績の差 |
| 買主を抱えているか | 具体的な買い手の心当たりがあれば高く出せる |
| 建物の評価方針が違う | 築古を機械的にゼロとみるか、状態を見て評価するか |
| 売却期間の想定が違う | 3か月で売る前提か、1年かける前提か |
つまり、金額の差そのものは異常ではありません。問題は、その差に説明がつくかどうかです。
査定額の根拠を示すのは不動産会社の義務|宅建業法34条の2
ここが本記事で最も重要な部分です。
宅地建物取引業法第34条の2第2項は、こう定めています。宅地建物取引業者は、宅地又は建物を売買すべき価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。
「明らかにしなければならない」——これは努力目標ではなく、義務です。査定額を出した会社には、その根拠を説明する責任があります。
では「根拠」とは何を指すのか。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、こう示しています。
「意見の根拠」として認められるもの
| 価格査定マニュアル((公財)不動産流通推進センターが作成した価格査定マニュアル又はこれに準じた価格査定マニュアル)や、同種の取引事例等他に合理的な説明がつくもの |
出典:国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(平成13年1月6日 国土交通省総動発第3号)第34条の2関係4「媒介価額に関する意見の根拠の明示義務について」。
逆に言えば、「勘です」「経験上このくらいです」は根拠になりません。合理的な説明がつくものが求められています。
だから、遠慮せずに聞いてください。「この金額の根拠を教えてください」と。それは売主の権利です。
複数社に査定を依頼したら何を聞けばいいか
査定額を受け取ったら聞くこと
| 質問 | 何が分かるか |
|---|---|
| どの取引事例を参考にしましたか | 似た物件の選び方が妥当か。事例が古すぎないか |
| その事例と比べて、どこを増減しましたか | 駅距離・築年数・角地などの調整が説明できるか |
| この価格で何か月で売れる想定ですか | 高い査定額が「時間をかければ」の話かどうか |
| 売れなかった場合、どうしますか | 値下げ前提か、戦略があるか |
| この地域での取引実績はありますか | 相場観の裏付けがあるか |
これらに具体的に答えられる担当者は、根拠を持って値付けしています。答えが曖昧な会社は、金額が高くても信用できません。
不動産査定は何社に依頼すればいいか
目安は3社前後です。
1社では比較できません。
かといって10社に頼めば、対応と連絡だけで疲弊します。
3社あれば、金額のばらつきと、その理由の違いが見えてきます。
実務的な進め方としては、机上査定で数社から目安をもらい、そのうち2〜3社に訪問査定を依頼する形が負担が少なくて済みます(「机上査定と訪問査定の違い|どっちを選ぶべき?」)。
選ぶ際は、大手だけ、地元だけに偏らせないでください。
大手は買主のネットワークが広く、地元業者はその地域の事情に詳しい。
性格が違うので、両方を含めると比較になります。
一括査定サイトを使うときの注意点|営業電話が集中する
複数社にまとめて依頼できるサービスがあります。手間は省けますが、押さえておくべき点があります。
登録した瞬間に複数社から連絡が来ます。
電話が集中して驚く人がいます。
連絡手段や時間帯を指定できるサイトもあるので、申込時に確認してください。
掲載されている会社がその地域のすべてではありません。
サイトに加盟していない優良な地元業者もいます。
一括査定はあくまで入口の一つです。
個人情報の扱いを確認してください。
どこまでの情報が誰に渡るのかは、申し込む前に見ておく必要があります(「不動産査定で個人情報はどこまで必要?」)。
一番高い査定額に飛びつかない|売れる価格とは限らない
3社の中で最も高い金額を出した会社を選ぶ——これが最も多い失敗です。
査定額は売却を保証するものではありません。媒介契約を取りたいがために高めの金額を提示し、契約後に「反響がないので値下げしましょう」となる例があります。
相場からかけ離れた高値で売り出すと、売れ残ります。そして売れ残った物件は、買主から「何か問題があるのでは」と見られ、結果的に相場より安く売ることになりかねません。
高すぎる査定額の見分け方は「査定額が高すぎる会社は危険?高額査定の裏側」で詳しく扱っています。
複数社の比較は金額だけではない|担当者と販売戦略を見る
査定を受けながら見るべきこと
| 根拠を説明できるか 法律上の義務であり、最も重要な判断材料 |
| デメリットも言うか 良いことしか言わない担当者は、買主にもそうしている可能性がある |
| 販売の方法を示せるか どこにどう広告を出し、どんな買主を想定しているか |
| 連絡が速いか 売却中は何度もやり取りします。ここが遅い会社は後で困ります |
| 免許番号があるか 宅地建物取引業の免許を受けているか。査定書や名刺で確認できます |
売却は数か月続きます。
金額が数十万円高いことより、信頼して任せられるかのほうが、結果に効くことがあります。
なお、仲介ではなく買取を選ぶ場合は、査定の見方そのものが変わります(「仲介と買取どっちがいい?違いとメリット・デメリット」)。
依頼先を決めたら、媒介契約を結びます。契約の種類によってルールが変わるので、こちらもあわせて確認してください(「媒介契約の種類|専属専任・専任・一般の違いと選び方」)。
複数社への不動産査定でよくある質問
Q. 査定額の根拠を聞いてもいいのですか。
聞いてください。
宅地建物取引業法第34条の2第2項により、宅地建物取引業者は価額または評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定められています。
根拠を尋ねることは売主の当然の行為であり、答えられない会社のほうが問題です。
Q. 「根拠」として何が示されれば納得していいですか。
国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、意見の根拠として、価格査定マニュアル(公益財団法人不動産流通推進センターが作成したもの又はこれに準じたもの)や、同種の取引事例等、他に合理的な説明がつくものとされています。具体的な事例や算定の道筋が示されるかを見てください。
Q. 何社に査定を頼むのが適切ですか。
3社前後が目安です。
1社では比較できず、多すぎると対応の負担が大きくなります。
大手と地元業者の両方を含めると、性格の違う視点が得られます。
机上査定で数社から目安をもらい、そのうち2〜3社に訪問査定を頼む形が現実的です。
Q. 査定額に大きな差があるのは、どこかがおかしいのですか。
差があること自体は起こり得ます。
参考にした取引事例、得意分野、買主の心当たり、建物の評価方針、売却期間の想定が会社ごとに違うためです。
問題はその差に説明がつくかどうかで、説明を求めれば判断できます。
Q. 一番高い査定額を出した会社に頼めばいいですか。
おすすめしません。
査定額は売却を保証するものではないためです。
媒介契約を取るために高めの金額を提示し、契約後に値下げを求める例があります。
相場からかけ離れた価格で売り出すと売れ残り、買主から敬遠されて結果的に安く売ることになりかねません。
根拠を比べて選んでください。
Q. 複数社に頼んでいることを伝えるべきですか。
伝えて問題ありません。
むしろ最初に伝えておくと、断りにくさを感じずに済みます。
会社側も比較されることを前提に、根拠を丁寧に説明するようになります。
隠す必要はありません。
まとめ|不動産査定は複数社に頼み根拠で比べる
査定を複数社に頼む目的は、高い金額を見つけることではありません。根拠を比べることです。
宅地建物取引業法第34条の2第2項により、業者は価額について意見を述べるときはその根拠を明らかにしなければなりません。
国土交通省の解釈・運用の考え方でも、根拠とは価格査定マニュアルや同種の取引事例等、合理的な説明がつくものとされています。
「勘」は根拠ではありません。
3社前後に頼み、どの事例を参考にしたのか、どこを増減したのか、何か月で売る想定かを聞いてください。
答えられる会社が、信頼できる会社です。
金額の高さは、選ぶ理由になりません。
出典・参考情報
- 宅地建物取引業法 第34条の2第2項(価額又は評価額について意見を述べるときの根拠の明示義務)
- 国土交通省「価格査定マニュアルの改訂経緯」(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方〈平成13年1月6日 国土交通省総動発第3号〉第34条の2関係4「媒介価額に関する意見の根拠の明示義務について」、価格査定マニュアルの概要と改訂経緯)
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(不動産取引価格情報、成約価格情報等)
※査定の手法や所要日数は不動産会社により異なります。
査定額は売却を保証するものではありません。
個別の判断については、不動産会社にご相談ください。
