不動産査定は複数社に頼むべき?金額より根拠を見る

「1社だけの査定額を、そのまま信じていいのだろうか」「複数の会社に頼んでみたら、金額が数百万円も違っていて、どれを基準にすればいいのか分からなくなった」——不動産の査定を受けた方から、こうした声をよく聞きます。
結論から言えば、査定額に差が出ること自体は不思議なことではありません。
会社によって参考にする事例や評価の方針が違うため、数字が割れるのは自然な現象です。
匿名査定を提供しているサービスの一覧と選び方は「匿名で不動産査定ができるサービス9選まとめ|利用時の注意点」で解説しています。
大切なのは、金額の大小に一喜一憂することではなく、その数字の裏にある根拠を比べることです。
そして根拠を説明することは、不動産会社に課された法律上の義務でもあります。
ここから、査定額が分かれる理由、根拠を確認するための質問、依頼すべき社数、一括査定サイトの注意点、そして担当者の見極め方まで、順を追って見ていきます。
不動産査定額が会社によって違う理由
同じ物件でも、査定額がA社3,000万円、B社3,400万円、C社2,800万円と数百万円単位で分かれることがあります。これは会社ごとに参考にする取引事例や評価の方針が異なるために起きる、ごく自然な現象です。
| 理由 | 中身 |
|---|---|
| 参考にした事例が違う | どの取引を「似た物件」とみるかで結果が変わる |
| 得意分野が違う | その地域・その種類の物件を扱った実績の差 |
| 買主を抱えているか | 具体的な買い手の心当たりがあれば高く出せる |
| 建物の評価方針が違う | 築古を機械的にゼロとみるか、状態を見て評価するか |
| 売却期間の想定が違う | 3か月で売る前提か、1年かける前提か |
つまり、金額の差そのものは異常ではありません。
問題になるのは、その差にきちんとした説明がつくかどうかです。
ここを見極める視点さえ持てれば、複数社の査定額を前にしても迷わずに済むはずです。
査定額の差に驚いてご連絡くださる方は多いのですが、まずは理由を落ち着いて聞いてみることをおすすめしています。
査定額の根拠を示すのは不動産会社の義務|宅建業法34条の2
宅地建物取引業法第34条の2第2項は、宅地建物取引業者が宅地または建物を売買すべき価額や評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。つまり、査定額を提示した会社には、その数字の裏付けを説明する責任があるということです。
「明らかにしなければならない」という文言は、努力目標ではなく義務を示すものです。査定を受けた側としては、この点を知っているかどうかで、査定への向き合い方がずいぶん変わってきます。
では、法律が求める「根拠」とは具体的に何を指すのでしょうか。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、次のように示しています。
| 価格査定マニュアル((公財)不動産流通推進センターが作成した価格査定マニュアル又はこれに準じた価格査定マニュアル)や、同種の取引事例等他に合理的な説明がつくもの |
出典:国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(平成13年1月6日 国土交通省総動発第3号)第34条の2関係4「媒介価額に関する意見の根拠の明示義務について」。
逆に言えば、「勘です」「長年の経験からこのくらいです」といった説明は、根拠として認められるものではありません。
求められているのは、価格査定マニュアルや同種の取引事例など、他人が聞いても納得できる合理的な説明です。
査定額を受け取ったら、遠慮せずに「この金額の根拠を教えてください」と尋ねてみてください。
それは決してわがままな要求ではなく、売主として当然持っている権利です。
根拠を尋ねるのを遠慮される方も多いのですが、これは法律で定められた義務ですので、どうぞ気兼ねなく聞いてくださいね。
複数社に査定を依頼したら何を聞けばいいか
査定額を受け取ったら、参考にした取引事例、そこからの増減の理由、想定している売却期間、売れなかった場合の対応、地域での取引実績の5点を確認するとよいでしょう。この質問に具体的に答えられるかどうかで、担当者の力量が見えてきます。
| 質問 | 何が分かるか |
|---|---|
| どの取引事例を参考にしましたか | 似た物件の選び方が妥当か。事例が古すぎないか |
| その事例と比べて、どこを増減しましたか | 駅距離・築年数・角地などの調整が説明できるか |
| この価格で何か月で売れる想定ですか | 高い査定額が「時間をかければ」の話かどうか |
| 売れなかった場合、どうしますか | 値下げ前提か、戦略があるか |
| この地域での取引実績はありますか | 相場観の裏付けがあるか |
これらの質問に具体的に答えられる担当者は、根拠を持って値付けをしていると考えてよいでしょう。反対に、答えが曖昧なまま高い金額だけを提示してくる会社は、金額の高さにかかわらず慎重に見たほうがよさそうです。
この5つの質問は、査定を受ける際にメモしておいて、その場で一つずつ聞いてみるとよいですよ。
不動産査定は何社に依頼すればいいか
不動産査定を依頼する社数の目安は、3社前後です。1社だけでは比較のしようがありませんが、かといって10社に依頼すると、連絡や対応だけで疲れてしまいます。
3社程度であれば、金額のばらつきと、その理由の違いが見えてきます。
実務的には、まず机上査定で数社から目安を受け取り、そのうち2〜3社に訪問査定を依頼する進め方が負担も少なくて済むでしょう(「机上査定と訪問査定の違い|どっちを選ぶべき?」)。
査定依頼の進め方
数社に依頼し、おおまかな価格帯を把握する
実際の物件を見てもらい、根拠を確認する
金額ではなく説明の質で依頼先を決める
会社を選ぶ際は、大手だけ、あるいは地元の会社だけに偏らせないほうがよいでしょう。
大手は買主のネットワークが広く、地元業者はその地域の事情に詳しいという、それぞれ違った強みを持っています。
両方を含めて比較すると、判断材料が厚くなります。
机上査定で数社を絞り込んでから訪問査定に進むと、時間も気持ちの余裕も持ちやすいと思います。
一括査定サイトを使うときの注意点|営業電話が集中する
一括査定サイトを使うと複数社にまとめて依頼できて便利ですが、登録した直後に複数社から連絡が集中する、掲載会社がその地域のすべてではない、個人情報の扱いを事前に確認する必要がある、という3つの点は押さえておいたほうがよいでしょう。
登録した瞬間に複数社から電話がかかってきて、驚いてしまう方も少なくありません。連絡手段や時間帯を指定できるサイトもあるので、申込時に確認しておくと安心です。
また、サイトに掲載されている会社が、その地域のすべての不動産会社というわけではありません。サイトに加盟していない優良な地元業者もいるため、一括査定はあくまで比較のための入口の一つと考えておくとよいでしょう。
申し込む前には、個人情報がどこまで、誰に渡るのかも確認しておいてください(「不動産査定で個人情報はどこまで必要?」)。
電話が集中して困った、というお声はよくいただきます。連絡方法を指定できるかどうか、申込前にチェックしてみてくださいね。
一番高い査定額に飛びつかない|売れる価格とは限らない
複数社の査定額の中から、最も高い金額を出した会社をそのまま選んでしまうのは、よくある失敗のひとつです。査定額はあくまで意見であり、その金額での売却を保証するものではありません。
媒介契約を取りたいがために、あえて高めの金額を提示し、契約後になって「反響がないので値下げしましょう」と持ちかけてくる例もあります。相場からかけ離れた高値で売り出せば売れ残りやすく、売れ残った物件は買主から「何か問題があるのでは」と見られてしまい、結果的に相場より安く売ることになりかねません。
高すぎる査定額の見分け方については「査定額が高すぎる会社は危険?高額査定の裏側」で詳しく扱っています。
高い金額を提示されると嬉しくなるお気持ちはよく分かりますが、まずは根拠を確認してからご判断いただければと思います。
複数社の比較は金額だけではない|担当者と販売戦略を見る
複数社を比較する際は、金額だけでなく、根拠を説明できるか、デメリットも正直に話すか、販売の方法を具体的に示せるか、連絡の速さ、免許番号の有無という5点を見ておくとよいでしょう。
| 根拠を説明できるか 法律上の義務であり、最も重要な判断材料 |
| デメリットも言うか 良いことしか言わない担当者は、買主にもそうしている可能性がある |
| 販売の方法を示せるか どこにどう広告を出し、どんな買主を想定しているか |
| 連絡が速いか 売却中は何度もやり取りします。ここが遅い会社は後で困ります |
| 免許番号があるか 宅地建物取引業の免許を受けているか。査定書や名刺で確認できます |
売却は数か月にわたって続いていきます。
金額が数十万円高いことよりも、最後まで信頼して任せられるかどうかのほうが、結果に効いてくることは珍しくありません。
なお、仲介ではなく買取を選ぶ場合は、査定の見方そのものが変わってきます(「仲介と買取どっちがいい?違いとメリット・デメリット」)。
依頼先が決まったら、いよいよ媒介契約を結ぶ段階に進みます。契約の種類によってルールが異なるため、こちらもあわせて確認しておいてください(「媒介契約の種類|専属専任・専任・一般の違いと選び方」)。
金額の差だけで決めずに、担当者とのやり取りのしやすさもぜひ判断材料にしてみてください。
まとめ|不動産査定は複数社に頼み根拠で比べる
複数社に査定を依頼する目的は、いちばん高い金額を見つけることではありません。それぞれの査定額の根拠を比べることです。
宅地建物取引業法第34条の2第2項により、業者は価額について意見を述べるときはその根拠を明らかにしなければならないと定められています。
国土交通省の解釈・運用の考え方でも、根拠とは価格査定マニュアルや同種の取引事例など、合理的な説明がつくものとされています。
「勘」は根拠にはなりません。
3社前後に依頼し、どの事例を参考にしたのか、どこを増減したのか、何か月で売る想定なのかを聞いてみてください。
それに具体的に答えられる会社が、信頼できる会社です。
金額の高さそのものは、選ぶ理由にはなりません。
迷ったときは、金額よりも「説明の分かりやすさ」を基準にしてみると、選びやすくなると思いますよ。
複数社への不動産査定でよくある質問
Q 査定額の根拠を聞いてもいいのですか。
A 聞いて構いません。
宅地建物取引業法第34条の2第2項により、宅地建物取引業者は価額または評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定められています。
根拠を尋ねることは売主として当然の行為であり、むしろ答えられない会社のほうに問題があると考えてよいでしょう。
Q 「根拠」として何が示されれば納得していいですか。
A 国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」が示す基準に当てはまるかどうかで判断できます。
具体的には、価格査定マニュアル(公益財団法人不動産流通推進センターが作成したもの又はこれに準じたもの)や、同種の取引事例等、他に合理的な説明がつくものが根拠として認められます。
具体的な事例や算定の道筋が示されているかを確認してください。
Q 何社に査定を頼むのが適切ですか。
A 3社前後が目安です。
1社では比較のしようがなく、10社近くになると対応の負担が大きくなってしまいます。
大手と地元業者の両方を含めると、性格の違う視点が得られます。
まず机上査定で数社から目安を受け取り、そのうち2〜3社に訪問査定を頼む形が現実的でしょう。
Q 査定額に大きな差があるのは、どこかがおかしいのですか。
A 差があること自体は、特におかしなことではありません。
参考にした取引事例、得意分野、買主の心当たり、建物の評価方針、売却期間の想定が会社ごとに違うために生じるものです。
大事なのはその差に説明がつくかどうかであり、説明を求めればおのずと判断できるようになります。
Q 一番高い査定額を出した会社に頼めばいいですか。
A おすすめはできません。
査定額は売却を保証するものではないためです。
媒介契約を取るために高めの金額を提示し、契約後に値下げを求めてくる例もあります。
相場からかけ離れた価格で売り出すと売れ残りやすく、買主から敬遠されて結果的に安く売ることになりかねません。
根拠を比べたうえで選んでください。
Q 複数社に頼んでいることを伝えるべきですか。
A 伝えて問題ありません。
むしろ最初に伝えておくと、後になって断りにくさを感じずに済みます。
会社側も比較されることを前提にするため、根拠をより丁寧に説明してくれるようになるはずです。
隠しておく必要はありません。
Q 机上査定と訪問査定は、どちらを先に頼むべきですか。
A まず机上査定で数社から目安を受け取り、そのうち2〜3社に絞って訪問査定を依頼する順番がおすすめです。この進め方であれば、対応の負担を抑えながら複数社の根拠を比較できます。
出典・参考情報
- 宅地建物取引業法 第34条の2第2項(価額又は評価額について意見を述べるときの根拠の明示義務)
- 国土交通省「価格査定マニュアルの改訂経緯」(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方〈平成13年1月6日 国土交通省総動発第3号〉第34条の2関係4「媒介価額に関する意見の根拠の明示義務について」、価格査定マニュアルの概要と改訂経緯)
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(不動産取引価格情報、成約価格情報等)
※査定の手法や所要日数は不動産会社により異なります。
査定額は売却を保証するものではありません。
個別の判断については、不動産会社にご相談ください。


