不動産査定で個人情報はどこまで必要?
不動産の一括査定を申し込もうとしたら、氏名・住所・電話番号・メールアドレスまで入力を求められた。
査定額を知りたいだけなのに、そこまで必要なのか。
入力した瞬間に営業電話が鳴り止まなくなるのでは——。
本記事では、不動産査定における個人情報を整理します。
要点は2つ。
査定に本当に必要な情報は物件の情報であって、あなた個人の情報ではないこと。
そして、集めた情報の使い道には法律のルールがあることです。
不動産査定に必要なのは物件の情報|個人情報はどこまで要るか
不動産の価格は、物件の条件で決まります。
あなたが何歳か、年収がいくらかは、価格そのものには関係ありません。
査定に必要な情報を分けて整理します。
査定に必要な情報/連絡のための情報
| 分類 | 具体例 |
|---|---|
| 価格の算定に必要 (物件の情報) | 所在地、土地・建物の面積、間取り、築年数、構造、階数、方位 |
| 結果を伝えるために必要 (連絡先) | 氏名、連絡手段(メールまたは電話) |
| 売却の相談を進めるなら必要 | 住所の特定、登記情報、ローン残高、売却希望時期 |
机上査定の段階なら、物件情報と連絡先があれば足ります。
年収、勤務先、家族構成などは、査定額の算定には不要です。
これらを必須項目として求められたら、何のために使うのかを確認してよい場面です。
訪問査定に進むと、より詳しい情報が必要になります。
境界の状況、登記の内容、ローンの残高などです。
ただしこれも、売却を具体的に進めるための情報であって、査定額を出すためだけのものではありません。
集めた個人情報の使い道にはルールがある|個人情報保護法
不動産会社は事業として個人情報を扱うため、個人情報保護法の規律を受けます。売主が知っておくと役立つ点を挙げます。
査定に関わる個人情報保護法の主なルール
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第17条第1項 | 利用目的をできる限り特定しなければならない |
| 第21条第1項 | 取得したときは利用目的を本人に通知するか、公表しなければならない |
| 第27条第1項 | あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない(法令に基づく場合等を除く) |
出典:個人情報の保護に関する法律 第17条・第21条・第27条、個人情報保護委員会ガイドライン(通則編)。
利用目的を特定して知らせる義務がある
個人情報保護法第17条第1項は、個人情報を取り扱うにあたって利用目的をできる限り特定しなければならないと定めています。そして第21条第1項により、取得したときは利用目的を本人に通知するか、公表しなければなりません。
「できる限り特定する」とは何を指すのか。
個人情報保護委員会は、本人が、自らの個人情報がどのような目的で利用されるのかを一般的かつ合理的に予測・想定できる程度に特定することだと説明しています。
抽象的な書き方では足りず、具体的な利用目的が分かるように示す必要があるとされています。
つまり、査定を申し込むときは、その会社のプライバシーポリシーで利用目的を確認できるということです。
「査定のため」なのか、「提携先への情報提供を含む」のか。
ここを見ておくと、後で驚かずに済みます。
第三者に渡すには原則として同意が要る
個人情報保護法第27条第1項は、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならないと定めています(法令に基づく場合など、一定の例外を除きます)。
これが一括査定で特に関わります。
一括査定サイトは、あなたの情報を複数の不動産会社に渡す仕組みです。
どの会社に渡るのか、渡ることに同意する形になっているのかを、申込画面で確認してください。
一括査定で営業電話が集中する理由|情報が複数社に渡る仕組み
一括査定を申し込むと、複数社からいっせいに連絡が来ます。
これは仕組み上、当然に起こります。
あなたの情報が複数社に渡り、各社が「うちに依頼してほしい」と営業するためです。
対策があります。
連絡の集中を抑える工夫
| 連絡手段をメールに指定する 電話より落ち着いて比較できる。指定欄があるサイトを選ぶ |
| 連絡可能な時間帯を書いておく 備考欄に希望を記載できることがある |
| 依頼する会社数を絞る 全社に送らず、選べるサイトもある |
| 個別に申し込む 一括にこだわらず、気になる会社に直接依頼する手もある |
一括査定は便利ですが、入口の一つにすぎません。
複数社を比べる目的なら、自分で数社を選んで個別に申し込む方法でも達成できます(「不動産査定は複数社に頼むべき?金額より根拠を見る」)。
正確に伝えるべき情報と慎重に扱う情報
「営業を避けたいから、住所をぼかして申し込む」という人がいます。しかし、査定の精度は情報の正確さに比例します。
物件の所在地や面積を曖昧にすると、査定額もいい加減になります。
相場の目安がほしいだけなら、自分で公的データを調べる方法もあります。
国土交通省の不動産情報ライブラリで、近隣の取引価格を確認できます(「机上査定と訪問査定の違い|どっちを選ぶべき?」)。
個人情報を渡さずに相場感をつかみたいなら、まずこれを使ってください。
一方、慎重に扱いたいのが、売却の事情です。
離婚、相続争い、返済の行き詰まりといった事情は、価格交渉で不利に働くことがあります。
急いで売りたいと分かれば、買主は強気に値切ってきます。
査定の段階で、聞かれるまま何もかも話す必要はありません。
相続した物件の査定で個人情報に気をつけること
相続した不動産を査定に出す場合、名義がまだ被相続人のままだと、査定は受けられても売却の話は進みません。
相続登記を済ませておく必要があります(「相続登記をしないと不動産は売れない?義務化と手続き」)。
また、共有になっている場合、査定を申し込む段階では単独でできますが、実際に売るには共有者の同意が要ります。
査定額を材料に話し合いを進めるのは有効ですが、他の共有者の個人情報を無断で会社に伝えることは避けてください(「共有名義の不動産、自分の持分だけ売れる?」)。
個人情報が漏れたと感じたときの相談先
個人情報保護法では、一定の要件を満たす漏えい等が発生した場合、事業者は個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務づけられています。もし査定後に不審な連絡が増えた、身に覚えのない業者から接触があったと感じたら、まずその会社に問い合わせてください。
対応に納得できない場合は、個人情報保護委員会の相談窓口があります。
困ったときの公的な相談先として知っておくとよいでしょう。
査定を経て依頼先を決めたら、媒介契約に進みます(「媒介契約の種類|専属専任・専任・一般の違いと選び方」)。
不動産査定と個人情報のよくある質問
Q. 査定に年収や勤務先は必要ですか。
価格の算定には不要です。
不動産の価格は物件の条件で決まるためです。
これらを必須項目として求められた場合は、利用目的を確認してよい場面です。
売却後の住み替えでローンを組む相談まで含むなら別ですが、査定額を知るだけなら物件情報と連絡先で足ります。
Q. 入力した情報は、どこまで使われますか。
個人情報保護法第17条第1項により、事業者は利用目的をできる限り特定しなければならず、第21条第1項により取得時に本人へ通知または公表する必要があります。
その会社のプライバシーポリシーを見れば、何に使うのかを確認できます。
「査定のため」なのか「提携先への提供を含む」のかを、申し込む前に見ておいてください。
Q. 一括査定で情報が複数社に渡るのは問題ないのですか。
個人情報保護法第27条第1項により、個人データを第三者に提供するには原則として本人の同意が必要です。
一括査定サイトは、申し込みの時点で複数社への提供に同意する形になっているのが通常です。
どの範囲の会社に渡るのかを、申込画面や規約で確認してください。
Q. 営業電話を減らす方法はありますか。
連絡手段をメールに指定する、連絡可能な時間帯を書いておく、依頼する会社数を絞る、といった方法があります。
指定できるかはサイトによります。
電話が集中するのが不安なら、一括査定を使わず、気になる会社に個別に申し込む方法もあります。
Q. 個人情報を渡さずに相場を知る方法はありますか。
あります。
国土交通省の不動産情報ライブラリで、近隣の取引価格や成約価格情報を自分で確認できます。
個人情報の入力は不要です。
おおまかな相場をつかんでから査定を申し込めば、提示された金額が妥当かを判断する物差しにもなります。
Q. 売却の事情は正直に話すべきですか。
物件の状態や不具合は正確に伝えてください。
告知義務に関わるためです。
一方、離婚や返済の行き詰まりといった売り急ぐ事情は、価格交渉で不利に働くことがあります。
査定の段階で、聞かれるまま何もかも話す必要はありません。
伝えるべき事実と、伝えるタイミングを選べる事情は分けて考えてください。
まとめ|査定で渡す個人情報は目的と範囲を確かめる
査定に必要なのは、物件の情報と、結果を伝えるための連絡先です。
年収や勤務先は価格の算定には要りません。
必須項目として求められたら、利用目的を確認してよい場面です。
集めた情報の使い道には法律のルールがあります。
個人情報保護法により、事業者は利用目的をできる限り特定して知らせなければならず、第三者への提供には原則として本人の同意が必要です。
査定を申し込む前に、その会社が情報を何に使うのかを確認してください。
営業電話が不安なら、連絡手段の指定や、個別申し込みという方法があります。
相場を知るだけなら、個人情報を渡さずに国土交通省の不動産情報ライブラリで調べられます。
情報は正確に、しかし渡す範囲は自分で選ぶ。
この姿勢で臨んでください。
出典・参考情報
- 個人情報保護委員会「利用目的の特定・通知又は公表について」(法第17条第1項の「できる限り」特定するとは、本人が自らの個人情報の利用目的を一般的かつ合理的に予測・想定できる程度に特定すること。抽象的な記載のみでは足りない旨)
- 個人情報の保護に関する法律 第17条第1項(利用目的の特定)、第21条第1項(取得に際しての利用目的の通知等)、第27条第1項(第三者提供の制限)
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(第三者提供の制限、漏えい等が発生した場合の対応等)
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(不動産取引価格情報、成約価格情報等)
※個人情報の取扱いは事業者により異なります。
具体的な取扱いは各社のプライバシーポリシーをご確認ください。
個人情報に関する相談は、個人情報保護委員会の相談窓口をご利用いただけます。
