不動産を自分で査定する方法|相場の調べ方と限界

「不動産会社に査定を頼んだら、しつこく営業されるのでは」「まだ売ると決めていないのに、個人情報を渡すのは気が引ける」——そう感じて、まずは自分でおおよその価格を知っておきたいという方は少なくありません。
その気持ちはごく自然なものです。
結論から言えば、公的なデータを使えば、個人情報を一切出さずに相場の見当をつけることはできます。
匿名査定を提供しているサービスの一覧と選び方は「匿名で不動産査定ができるサービス9選まとめ|利用時の注意点」で解説しています。
ただし、自分で出せるのはあくまで「目安」であって、実際に売れる価格そのものではありません。
一物五価と呼ばれる価格の仕組みから、実際に使える公的データの見方、そして自分で調べる方法の限界まで、順を追って見ていきます。
不動産には5つの価格がある|一物五価と相場の関係
不動産の価格は1つではありません。
目的によって5種類の価格が存在し、これを一物五価と呼びます。
このうち、売却の目安として意味を持つのは実勢価格だけです。
| 価格 | 決める主体 | 目的・水準 |
|---|---|---|
| 実勢価格 | 市場(当事者) | 実際に取引される価格。売却の目安になるのはこれ |
| 公示地価 | 国土交通省 | 毎年1月1日時点の標準地の価格。取引の指標 |
| 基準地価 | 都道府県 | 毎年7月1日時点。公示地価を補完する |
| 相続税路線価 | 国税庁 | 相続税・贈与税の算定用。公示地価の80%程度が目途 |
| 固定資産税評価額 | 市区町村 | 固定資産税等の算定用。3年に1度評価 |
出典:国税庁「令和7年分の路線価等について」(路線価は地価公示価格等の80%程度を目途に定める旨)、国土交通省の公的土地評価に関する情報。
ここで注意したいのは、相続税路線価や固定資産税評価額を見て「これが売値だ」と思い込んでしまうケースです。
路線価は公示地価の8割程度が目途とされているため、そのまま売却価格の参考にすると、実際の市場水準より大きく安く見積もってしまいます。
売却の目安にすべきは、あくまで市場で実際に取引される実勢価格です。
路線価や固定資産税評価額を見て「うちはこんなに安いのか」とがっかりされる方、実は多いんですよ。まずは実勢価格を確認してみてくださいね。
不動産の相場を自分で調べる方法|不動産情報ライブラリで実勢価格を見る
実際に取引された実勢価格を調べる一次情報源は、国土交通省が運営する不動産情報ライブラリです。個人情報の入力は不要で、誰でも無料で利用できます。
| 情報 | 中身 |
|---|---|
| 不動産取引価格情報 | 国土交通省が取引当事者へのアンケートをもとに集めた実際の取引価格 |
| 成約価格情報 | 指定流通機構(レインズ)保有の情報を、国土交通省が個別の取引を特定できないよう加工して公表したもの |
| 地価公示・地価調査 | 標準地・基準地の公的価格 |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」(令和6年4月1日運用開始)。
使い方はシンプルです。
エリアと物件種別(土地・戸建て・マンション)を指定すると、その地域で過去に成約した事例が、面積・築年数・価格とともに一覧で表示されます。
自分の物件と条件が近い事例をいくつか探し出し、面積あたりの単価を掴んでみてください。
不動産情報ライブラリを使った目安の出し方
エリア・種別を指定し、条件が近い成約事例を絞り込む
成約価格を面積で割り、㎡単価・坪単価を確認する
単価に自分の面積を掛け、おおまかな目安を得る
※あくまで目安であり、建物の状態や個別事情は反映されない
検索条件を絞りすぎると事例が出てこないこともあります。まずは広めのエリアで探してみるのがおすすめです。
戸建て・マンションの相場の目安を自分で出す方法
物件の種類によって、目安の立て方は少しずつ異なります。マンションは類似事例が見つかりやすく、土地は面積換算、戸建ては土地と建物を分けて考える必要があります。
| 種別 | 目安の立て方 |
|---|---|
| マンション | 同じ建物・近隣の類似物件の成約単価(1㎡あたり)を、自分の専有面積に掛ける。比較的つかみやすい |
| 土地 | 近隣の取引の坪単価・㎡単価に、自分の土地面積を掛ける。形状や接道で調整が要る |
| 戸建て | 土地の価格に、建物の価値を上乗せする。ただし築古では建物価値がほぼ乗らないこともある |
マンションは、同じ建物や近隣で似た間取りの成約事例が見つかりやすいため、種別のなかでは最も目安を立てやすいと言えます。一方、戸建ては土地と建物を分けて考える必要があり、建物の評価そのものが難しいため、目安のぶれ幅は大きくなりがちです。
戸建ての場合は、土地だけの目安と建物込みの目安、両方を出しておくと差を実感しやすいですよ。
売り出し価格ではなく成約価格を見る
セルフ査定でよくある失敗は、不動産ポータルサイトに載っている価格をそのまま相場と思い込んでしまうことです。ポータルサイトの価格は、あくまで売主が「この値段で売りたい」と希望する売り出し価格であり、実際の成約価格とは異なります。
売り出し価格は、実際にはそこから下がって成約することが多く、これを基準にすると相場を高く見積もってしまう恐れがあります。
目安を立てるなら、実際に取引が成立した成約価格を見るべきです。
不動産情報ライブラリのデータは成約ベースで公表されているため、この点で信頼できます。
「近所の物件が高く出ていたから、うちも同じくらいで売れるはず」というご相談はよくいただきますが、実際の成約価格とは差があることが多いので注意してくださいね。
相続税路線価から相場を逆算する方法
近隣に取引事例が少ない地域では、相続税路線価から公示地価の水準を逆算するという方法もあります。路線価は公示地価の80%程度が目途とされているため、路線価を0.8で割り戻すと公示地価に近い水準が得られます。
路線価から公示地価水準を逆算する目安
※水準はあくまで目途であり、実際の取引価格は需要と供給、立地、個別事情で上下する
ここからさらに市場の状況を加味して調整しますが、これはあくまで概算にとどまります。
実際の取引価格は需要と供給、立地、個別事情によって上下するため、路線価からの逆算はあくまで参考の一つと考えてください。
路線価そのものは、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で確認できます。
路線価からの逆算は、取引事例が少ない地域で「当たりをつける」ための方法です。過信せず、あくまで参考程度にとどめておいてくださいね。
自分で査定する限界|個別事情は反映できない
セルフ査定で出せる数字には、はっきりした限界があります。建物の状態、土地の個別事情、権利関係、そして「いま買いたい人がいるか」といった要素は、公的データだけでは反映できません。
セルフ査定では反映しきれない要素
| 建物の状態 雨漏り、傾き、リフォーム履歴。同じ築年数でも価値が変わる |
| 土地の個別事情 旗竿地、高低差、接道、境界の未確定 |
| 権利関係 再建築の可否、借地・共有、越境 |
| いま買いたい人がいるか 具体的な買い手の有無は、業者しか把握できない |
| 市況の細かな動き 直近の金利や需要の変化 |
これらの要素は、価格を数百万円単位で動かすことがあります。
たとえば同じ土地でも、旗竿地であれば整形地より価格は下がります(「旗竿地は売れる?路地の幅で決まる価格と条例の規制」)。
再建築ができるかどうかも、大きな差を生む要因です(「再建築不可の土地は売れる?接道義務と43条の落とし穴」)。
こうした個別事情は、データだけを眺めていても見えてきません。
つまり、セルフ査定で得られるのは「相場の見当をつける」ためのものであり、それ以上の精度を求めるなら、不動産会社による現地査定が必要になります。
「うちの土地は形が悪いから、相場より安くなるかも」と気になる方は、遠慮せずプロに直接聞いてみるのが早いですよ。
自分で相場を調べておくと何の役に立つのか
限界があるからといって、セルフ査定に意味がないわけではありません。相場感を持っておくことには、はっきりした使い道があります。
査定額の物差しになることが、最大の利点です。
自分で相場感を持っていれば、不動産会社が出してきた査定額が妥当かどうかを判断できます。
相場を知らないまま査定を受けると、高すぎる金額にも安すぎる金額にも気づけません(「査定額が高すぎる会社は危険?高額査定の裏側」)。
個人情報を出さずに済むのも大きな利点です。
まだ売ると決めていない段階であれば、営業を受けることなく相場だけを知ることができます(「不動産査定で個人情報はどこまで必要?」)。
売るかどうかの判断材料にもなります。おおよその価格が分かれば、住み替えやローン返済の計画を、具体的に立て始めることができるでしょう。
相場感をつかんだうえで売却を具体的に進めるなら、複数の不動産会社に査定を依頼してみてください(「不動産査定は複数社に頼むべき?金額より根拠を見る」)。
セルフ査定は、その前段階の準備運動として位置づけると、ちょうどよいバランスになります。
セルフ査定で相場観をつかんでから査定を受けると、根拠のある説明をしてくれる会社かどうか、見分けやすくなりますよ。
不動産の相場を自分で調べるときのよくある質問
Q 自分で調べた価格で売り出してもいいですか。
A おすすめできません。
セルフ査定で出せるのは相場の目安であり、建物の状態や土地の個別事情、いま買いたい人がいるかといった要素は反映されていないためです。
売り出し価格を決める際は、不動産会社の査定と、その根拠を踏まえて判断してください。
セルフ査定は、その査定額が妥当かどうかを見る物差しとして使うのが適切です。
Q 路線価を見れば売却価格が分かりますか。
A 分かりません。
相続税路線価は相続税・贈与税の算定用の価格で、国税庁は地価公示価格等の80%程度を目途に定めるとしています。
そのままでは市場価格より低いのが通常です。
目安として使うなら0.8で割り戻して公示地価の水準に近づけ、さらに市況を加味しますが、あくまで概算にとどまります。
Q ポータルサイトの価格を見れば相場が分かりますか。
A ポータルサイトに載っているのは売り出し価格であり、成約価格ではありません。
実際にはそこから下がって成約することが多いため、売り出し価格を基準にすると相場を高く見積もってしまいます。
国土交通省の不動産情報ライブラリで、成約ベースの価格を確認してください。
Q 一番簡単に目安を出せるのはどの物件ですか。
A マンションです。
同じ建物や近隣で似た間取りの成約事例が見つかりやすく、専有面積に単価を掛けるだけで目安を立てやすいためです。
戸建ては土地と建物を分けて考える必要があり、建物の評価が難しいため、目安のぶれ幅が大きくなります。
Q 固定資産税評価額から売却価格は分かりますか。
A そのままでは分かりません。
固定資産税評価額は固定資産税等の算定用の価格で、公示地価の70%程度が目安とされ、3年に1度評価が行われます。
売却価格とは目的も水準も異なるため、そのままでは目安になりません。
売却の目安を知りたいなら、実勢価格(成約価格)を確認してください。
Q セルフ査定をしたら、もう不動産会社の査定は要りませんか。
A 売却を進めるのであれば必要です。
セルフ査定では反映できない建物の状態、土地の個別事情、権利関係、買い手の有無を、不動産会社は現地を見たうえで評価します。
セルフ査定は相場の見当をつけ、会社の査定額が妥当かを判断する物差しとして使うのが、もっとも役立つ使い方です。
まとめ|相場は自分で調べられるが査定の代わりにはならない
不動産には一物五価があり、売却の目安になるのは実勢価格です。相続税路線価や固定資産税評価額をそのまま売値と考えてしまうと、実際より安く見積もってしまいます。
実勢価格は、国土交通省の不動産情報ライブラリで成約ベースの取引価格を調べることができ、個人情報の入力も必要ありません。
マンションは目安を立てやすい一方、戸建ては土地と建物を分けて考える必要があるため、ぶれ幅が大きくなりがちです。
ポータルサイトの売り出し価格を相場と混同しないよう注意してください。
ただし、セルフ査定で出せるのはあくまで目安です。
建物の状態、土地の個別事情、権利関係、いま買いたい人がいるか——これらはデータだけでは反映できません。
セルフ査定は、不動産会社が示した査定額が妥当かどうかを判断する物差しとして使うのが、もっとも価値のある使い方だと言えるでしょう。
相場観を持ったうえで査定を受けると、会社選びの精度もぐっと上がります。まずは気軽に調べてみてくださいね。
出典・参考情報
- 国税庁「令和7年分の路線価等について」(路線価等は1月1日を評価時点とし、地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定める旨、路線価図・評価倍率表で閲覧できる旨)
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(不動産取引価格情報、成約価格情報、地価公示、都道府県地価調査等)
- 国税庁「No.4602 土地家屋の評価」(相続税における土地・家屋の評価方法)
※各価格の水準(80%程度、70%程度など)は目安であり、地域や土地の特性により異なります。
セルフ査定で算出できるのは相場の目安であり、実際の売却価格を保証するものではありません。
個別の判断については、不動産会社にご相談ください。


