土地の買取とは?仲介との違いと売却の流れ
親から引き継いだ土地に借地権や共有名義が残り、誰に相談すればよいか分からないまま、固定資産税の納税通知書だけが毎年届いている方は少なくありません。土地の売却には、不動産会社自身が買主になる「買取」と、不動産会社に買主を探してもらう「仲介」という2つの方法があり、宅地建物取引業法で定められた媒介契約を結ぶかどうかがこの2つを分ける境目です。
買取は不動産会社が直接購入するため売却までの期間が短くなりやすく、仲介は個人の買主を探す分だけ時間がかかる代わりに売却価格が市場価格に近づきやすいという違いがあります。借地権や共有名義、境界未確定といった権利関係が複雑な土地は買主を見つけにくいため、買取を選べるかどうかが大きな分かれ目になります。
本記事では、土地の買取と仲介の違い、借地権や共有名義がある土地の扱い、境界未確定の土地に関わる法律用語、買取の流れと必要書類、相談先の選び方までを解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 親から引き継いだ土地に借地権や共有名義が絡み、専門家に頼む前に土地買取の基礎的な流れを自分で理解したい方
- 境界が未確定の土地を相続し、仲介と買取のどちらを選ぶべきか法律用語が分からず戸惑っている62歳の方
- 複雑な権利関係を持つ土地を手放す前に、まず買取と仲介の違いを把握して次の相談先を決めたい方
土地の買取とは|不動産会社が直接の買主になる売却方法
土地の買取とは、不動産会社自身が土地の買主となり、個人の買主を探すことなく直接購入する売却方法です。土地の所有者と不動産会社が売買契約を結ぶだけで取引が完結するため、仲介に比べて手続きが単純になります。
買取を選ぶかどうかは、売却を急ぐ事情があるか、借地権や共有名義といった権利関係の複雑さが買主探しの妨げになっていないかによって変わります。まず仲介との違いを比較すると、買取に向いている土地の条件が分かります。
権利関係が複雑な土地ほど、まず買取が可能かどうかを不動産会社に確認するところから始めてください。
仲介との違い|価格・期間・契約の仕組みを比較
売却価格の違い
買取は不動産会社が再販や活用を見込んで購入するため、買取価格は仲介で成立する価格より低くなる傾向があります。一方の仲介は、広く買主を募って市場価格に近い水準で成約を目指す方法です。
売却までの期間と契約の違い
仲介では、宅地建物取引業法で定められた一般媒介・専任媒介・専属専任媒介のいずれかの媒介契約を不動産会社と結び、買主が見つかるまで活動を続けます。買主探しが長引くと売却までの期間も延びるため、権利関係が複雑な土地では買取のほうが短い期間で現金化しやすくなります。買取と仲介それぞれのメリット・デメリットは、不動産売却の仲介と買取どっちがいい?で解説しています。
価格と期間のどちらを優先するかで答えは変わるため、両方の見積もりを取ってから比べることをおすすめします。
| 買取 | 仲介 | |
|---|---|---|
| 買主 | 不動産会社 | 個人や法人の買主 |
| 売却価格 | 仲介に比べて低くなる傾向 | 市場価格に近づきやすい |
| 売却までの期間 | 比較的短い | 買主が見つかるまで変動する |
| 仲介手数料 | かからない | 宅地建物取引業法の上限内でかかる |
| 権利関係が複雑な土地 | 対応してもらえる場合がある | 買主が見つかりにくい |
出典:国土交通省「宅地建物取引業法」をもとに作成
借地権や共有名義がある土地は買取してもらえるのか
借地権付きの土地の場合
借地権(しゃくちけん、他人の土地を借りて建物を建てる権利)が設定された土地は、土地そのものの所有権と建物の所有者が分かれているため、個人の買主を仲介で探しにくい傾向があります。不動産会社の中には、借地権付きの土地を買取の対象として受け付けているところもあり、地主との交渉を含めて進めてもらえる場合があります。
共有名義の土地の場合
相続した土地が兄弟姉妹など複数人の共有名義になっている場合、土地全体を売却するには共有者全員の同意が必要です。自分の持分だけを売却することは法律上可能ですが、買取価格は土地全体を売却する場合より低くなりやすく、買い取る不動産会社も限られます。共有名義の土地の売却については、共有名義の不動産、自分の持分だけ売れる?で解説しています。
他の相続人の持分
自分の持分
共有名義の土地は、自分の持分だけを単独で動かせる範囲と、共有者の同意がなければ動かせない範囲があることを示しています。
共有者と連絡が取りにくい場合でも、持分だけの買取に応じる不動産会社があるか先に確認してください。
境界未確定の土地とは|筆界・地役権・囲繞地の基礎知識
相続した土地では、隣地との境界線が書類上はっきりしないまま残っていることがあります。筆界(ひっかい、登記上の土地の境界線)が不明な土地は、測量と隣地所有者の立ち会いによる境界確認を経なければ正確な面積が確定しません。境界が分からないまま調停が難しい場合は、法務局の筆界特定制度を利用して筆界の位置を特定してもらう方法もあります。
土地にまつわる権利としては、ほかに地役権(ちえきけん、自分の土地のために他人の土地を利用できる権利)や、囲繞地(いにょうち、他の土地を囲んでいる周囲の土地)という言葉もよく出てきます。通行のために設定された地役権や、袋地(ふくろち、他の土地に囲まれて公道に出られない土地)であることによる囲繞地通行権が登記簿や権利証に記載されていないか、早めに確認しておくと買取の交渉がスムーズになります。
境界未確定の土地は測量に時間がかかるため、買取を検討するならできるだけ早く土地家屋調査士に相談してください。
土地買取の流れと必要書類
土地の買取は、不動産会社への査定の申し込みから始まり、登記簿や測量図の確認、買取価格の提示、売買契約の締結、決済と引き渡しという順で進みます。仲介のように買主を探す期間がない分、仲介より早い段階で契約条件が固まります。
必要書類には、登記識別情報(登記済権利証に代わる書類)、固定資産税納税通知書、境界確認書類、印鑑証明書などがあり、相続した土地の場合は相続登記が済んでいることも前提になります。2024年4月から相続登記の申請が義務化され、正当な理由なく相続登記を怠ると10万円以下の過料の対象になるため、買取を検討する前に登記の状況を確認しておく必要があります。
相続登記が済んでいないと買取の契約に進めないため、書類をそろえる段階で登記の有無を必ず確認してください。
買取にかかる費用と税金の注意点
買取は不動産会社が直接の買主になるため、仲介のときに発生する仲介手数料がかかりません。その代わり、抵当権の抹消登記費用や境界確定のための測量費用は、買取であっても所有者側で負担するのが一般的です。
土地売却によって利益が出た場合は譲渡所得税の対象になり、相続した土地であれば取得費の計算に注意が必要です。また、売却しようとしている土地が農地にあたる場合は、農地法の許可を受けなければ所有権を移転できないことがあります。農地の売却条件については、農地は売れる?農地法の許可と転用のハードルで解説しています。
税金の計算は土地の取得時期や相続の経緯で変わるため、売却前に税理士へ確認しておくと安心です。
買取の相談先|不動産会社と専門家の役割分担
土地の買取を進めるうえで、不動産会社は買取価格の提示と契約手続きを担います。境界確定が必要な土地は土地家屋調査士が測量と隣地の立ち会いを行い、相続登記や名義変更は司法書士が担当するというように、専門家の役割が分かれています。
最初の相場感をつかむ段階では、一度に複数の不動産会社へ依頼する一括査定と、連絡先を伏せたまま概算を知る匿名査定という選択肢もあります。それぞれの使い分けは、匿名査定と一括査定の違い|営業電話なしで相場を知る使い分けで解説しています。
権利関係が複雑な土地ほど、不動産会社だけでなく司法書士や土地家屋調査士との連携が必要になります。
よくある質問
借地権が設定された土地でも買取してもらえますか
借地権付きの土地を買取の対象にしている不動産会社はあり、地主との交渉を含めて進めてもらえる場合があります。ただし借地契約の内容によって対応できるかどうかが変わるため、個別に確認が必要です。
共有名義の土地は自分だけの判断で売却できますか
土地全体の売却には共有者全員の同意が必要ですが、自分の持分だけを売却することは法律上可能です。持分だけの買取価格は土地全体を売却する場合より低くなりやすい点に注意してください。
境界が未確定でも買取してもらえますか
境界が未確定のまま買取に応じる不動産会社もありますが、売却後の価格調整や測量費用の負担を求められることがあります。先に筆界特定制度や土地家屋調査士への相談で境界を確定させておくと、交渉がスムーズになります。
買取価格はどのくらい安くなりますか
買取価格は不動産会社が再販や活用を見込んで提示するため、仲介で成立する価格より低くなる傾向があります。土地の条件や権利関係によって差が大きいため、具体的な金額は複数の不動産会社に査定を依頼して比較する必要があります。
相続登記が済んでいない土地でも買取の相談はできますか
相談自体は可能ですが、売買契約を結ぶには相続登記を済ませておく必要があります。2024年4月以降は相続登記の申請が義務化されているため、早めに司法書士へ相談しておくことをおすすめします。
土地の買取りを検討するときに押さえておきたいポイント
土地の買取は、不動産会社が直接買主になることで売却までの期間を短くできる一方、仲介に比べて売却価格が低くなりやすい方法です。借地権や共有名義、境界未確定といった権利関係が複雑な土地ほど、買主を仲介で探しにくいため買取が選択肢になりやすく、筆界や地役権、囲繞地といった言葉の意味を理解しておくと専門家との相談もスムーズに進みます。ぜひ本記事の土地の買取りに関する内容を参考に、自分の土地が置かれている権利関係を整理したうえで、不動産会社や司法書士、土地家屋調査士への相談を進めてください。
出典
- 国土交通省「宅地建物取引業法」
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 法務省「筆界特定制度」
- 農林水産省「農地法」
- 三菱UFJ不動産販売 不動産用語集「囲繞地通行権」(民法第210条)
