不動産の名義変更を自分でする際の必要書類まとめ
相続した実家や離婚の財産分与で受け取った自宅の名義が、亡くなった親や元配偶者のままになっているケースは珍しくありません。2024年4月1日からは相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に名義変更の申請をしないと10万円以下の過料が科される可能性があります。
不動産の名義変更に必要な書類は、相続・財産分与・売買・贈与といった原因ごとに異なり、法務局へ提出する組み合わせも変わります。戸籍謄本や印鑑証明書、固定資産評価証明書など自分で集められる書類がほとんどですが、取得先や有効期限を間違えると申請が受理されません。
本記事では、不動産の名義変更を自分で行う際に必要な書類をケース別に解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 相続した自宅の名義変更を専門家に頼まず自分で済ませたく、必要書類の一覧を確認したい45歳会社員の方
- 離婚に伴う自宅の名義変更手続きを自分で進めたいが、法務局に何を提出すべきか分からず不安な方
- 住み替えのため自宅を売却する前に名義変更が必要と知り、費用を抑えて自分で対応したい方
不動産の名義変更が必要になる主なケースと基礎知識
不動産の名義変更とは、法務局が管理する登記簿に記録された所有者の情報を、新しい所有者の名前に書き換える手続きです。登記簿上の名義がそのままだと、その不動産を売却することも、担保に入れることもできません。
名義変更が必要になる主な原因は、相続・離婚の財産分与・売買・贈与の4つです。原因によって必要書類も登録免許税の税率も変わるため、まず自分のケースがどれに当たるかを確認してから書類を集めます。
- 相続:親などの死亡によって不動産を受け継ぐ場合
- 財産分与:離婚に伴い夫婦の一方が不動産を受け取る場合
- 売買:不動産を購入・売却する場合
- 贈与:生前に不動産を無償で譲り受ける場合
不動産の名義変更は、旧所有者から新しい名義人へ、必要書類を法務局に提出することで完了します。次の図は、その関係を示したものです。
被相続人・元配偶者など
登記完了後の所有者
この図のとおり、法務局は旧所有者と新しい名義人の間に立って書類を審査し、登記簿を書き換える役割を担っています。
相続による名義変更(相続登記)は、2024年4月1日の不動産登記法改正によって義務化されました。相続の開始と不動産の取得を知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になります。
自分のケースが相続・財産分与・売買・贈与のどれに当たるか迷ったら、登記原因になる出来事を先に特定してください。
相続による不動産の名義変更で必要書類一覧
相続登記で法務局に提出する必要書類は、誰がどのように相続するかで一部変わりますが、共通して集める書類は、被相続人の戸籍謄本や住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本・住民票、固定資産評価証明書、登記申請書です。
| 書類 | 取得先 | 目安費用 |
|---|---|---|
| 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの連続したもの) | 本籍地の市区町村役場 | 450円〜750円 |
| 被相続人の住民票の除票 | 最後の住所地の市区町村役場 | 300円程度 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 | 450円 |
| 相続人全員の住民票 | 各相続人の住所地の市区町村役場 | 300円程度 |
| 固定資産評価証明書 | 不動産所在地の市区町村役場(東京23区は都税事務所) | 300円程度 |
| 登記申請書 | 法務局ホームページの様式を利用 | 無料 |
出典:法務省・各市区町村窓口案内(2026年9月時点)をもとに作成
法定相続分で相続する場合の必要書類
相続人全員が民法で決まった割合(法定相続分)のまま不動産を共有する場合は、遺産分割協議書は不要です。上記の共通書類に加えて相続関係を示す相続関係説明図を添付すると、戸籍謄本の原本還付(げんぽんかんぷ、提出した原本を返してもらう手続き)がスムーズになります。
遺産分割協議で相続する場合の必要書類
相続人の話し合いで特定の1人が不動産を相続する場合は、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書が追加で必要になります。遺産分割協議書には相続人全員の実印を押し、不動産を取得する人の氏名・住所を明記します。
戸籍謄本は本籍地を転々としていると複数の役場に請求が必要になるため、早めに取りかかってください。
離婚の財産分与による不動産名義変更の必要書類
離婚に伴う財産分与で不動産を受け取る場合、登記簿上の原因は「財産分与」として登記され、提出する必要書類には財産分与契約書や登記原因証明情報などがあります。
- 財産分与契約書(離婚協議書に財産分与の条項を含めたものでも可)
- 登記原因証明情報(財産分与契約書を兼ねることが多い)
- 不動産を渡す側(元の名義人)の登記識別情報(権利証)
- 不動産を渡す側の印鑑証明書(発行から3カ月以内)
- 固定資産評価証明書
- 新しい名義人の住民票
- 登記申請書
財産分与を理由に不動産を請求できる権利は、離婚が成立した日から5年で時効消滅します(民法768条2項)。名義変更の手続き自体に期限はありませんが、請求権が消える前に財産分与契約書を取り交わしておく必要があります。
元配偶者の協力が得られないまま期限が近づいている場合は、先に弁護士や司法書士へ相談してください。
売買・贈与で不動産の名義変更をする際の必要書類
不動産を売買または贈与で取得した場合も、名義変更には固有の必要書類があります。
売買で名義変更する場合の必要書類
- 売買契約書
- 売主の登記識別情報(権利証)
- 売主の印鑑証明書(発行から3カ月以内)
- 固定資産評価証明書
- 買主の住民票
- 本人確認書類(運転免許証など)
贈与で名義変更する場合の必要書類
- 贈与契約書
- 贈与者の登記識別情報(権利証)
- 贈与者の印鑑証明書(発行から3カ月以内)
- 固定資産評価証明書
- 受贈者の住民票
売買・贈与とも、登記識別情報を紛失している場合は、司法書士による本人確認情報の作成か、法務局による事前通知制度の利用が必要になり、自分だけで完結させるのが難しくなります。
権利証を紛失したまま申請日が決まっている場合は、通常より日数がかかるため早めに専門家へ確認してください。
法務局への登記申請の流れと提出方法
必要書類がそろったら、不動産の所在地を管轄する法務局に登記を申請します。
- 法務局ホームページから登記申請書の様式をダウンロードし、必要事項を記入する
- 管轄の法務局を確認する(法務局ホームページの管轄一覧で検索できます)
- 窓口持参・郵送・オンライン(登記・供託オンライン申請システム)のいずれかで提出する
- 書類に不備があれば法務局から補正の連絡が入るため、指示に沿って修正する
- 登記完了後、登記識別情報通知(新しい権利証に当たる書類)を受け取る
申請から完了までは、窓口・郵送のいずれも1〜2週間程度かかるのが目安です。繁忙期や書類の不備が重なると、さらに日数が延びることがあります。
オンライン申請は電子証明書の準備が必要なので初めてなら窓口か郵送が無難です。
登録免許税など不動産名義変更の費用目安
不動産の名義変更には、必要書類の取得費用のほかに、法務局へ納める登録免許税がかかります。税率は原因ごとに登録免許税法で定められています。
| ケース | 税率 | 計算例 |
|---|---|---|
| 相続 | 固定資産評価額の0.4% | 4万円 |
| 財産分与・贈与 | 固定資産評価額の2% | 20万円 |
| 売買(土地・軽減措置適用時) | 固定資産評価額の1.5% | 15万円 |
| 売買(建物) | 固定資産評価額の2% | 20万円 |
出典:国税庁「登録免許税の税率一覧」、租税特別措置法(2026年9月時点)をもとに作成。土地の軽減措置は適用期限が定められているため、最新の要件は法務局か税理士に確認してください。
必要書類の取得費用は、戸籍謄本や印鑑証明書を合わせても数千円程度で収まることがほとんどです。司法書士に依頼する場合は、この登録免許税に加えて5万円から10万円程度の報酬がかかるのが一般的です。
登録免許税は現金納付か収入印紙で納めます。評価額が高い不動産ほど自分で試算して用意しておいてください。
自分で進める際に不動産名義変更で注意したい点
自分で不動産の名義変更を行うと司法書士報酬を抑えられますが、いくつか注意したい点があります。
まず、戸籍謄本の収集に時間がかかる点です。被相続人の本籍地が転籍を繰り返している場合、令和6年(2024年)3月1日に始まった戸籍証明書等の広域交付制度により、相続人本人であれば最寄りの市区町村窓口でまとめて取得できるようになりました(郵送や代理人による請求はできません)。ただし窓口の混雑状況によっては、そろうまでに数週間かかることがあります。
書類の不備で法務局から補正の連絡が来ると、申請の完了が先延ばしになる点にも注意が必要です。遺産分割協議書の押印が実印でなかったり、印鑑証明書の有効期限が切れていたりすると、受理されません。
相続人が複数いて不動産を共有名義のまま登記すると、将来その不動産を売却する際に共有者全員の同意が必要になる場面が出てきます。自分の持分だけを売却できるかどうかは、共有名義の不動産、自分の持分だけ売れる?で解説しています。
名義変更を終えたあとに売却を考えている場合は、おおまかな売却相場を自分で調べる方法を不動産を自分で査定する方法|相場の調べ方と限界で解説しています。まずは価格感だけをつかみたい場合は、匿名で申し込める査定という方法もあり、匿名査定・AI査定はどこまで正確?精度の限界と賢い使い方で解説しています。
書類をそろえる時間を取れない場合は、無理に自分で進めず部分的に司法書士へ依頼する方法も検討してください。
よくある質問
不動産の名義変更は自分でできますか?
必要書類をそろえて法務局へ正しく提出すれば、専門家に依頼せず自分で手続きできます。ただし戸籍謄本の収集や書類の不備対応に時間がかかりやすく、平日に法務局や市区町村役場へ出向く手間も発生します。
必要書類に有効期限はありますか?
印鑑証明書は発行から3カ月以内のものを求められるのが一般的です。戸籍謄本や住民票には明確な有効期限はありませんが、相続開始後に取得したものを使うのが基本です。
登記識別情報(権利証)を紛失した場合はどうなりますか?
司法書士による本人確認情報の作成、または法務局からの事前通知制度を利用する必要があり、通常より手続きが複雑になります。この場合は自分だけで完結させるのが難しく、司法書士への相談が現実的です。
相続登記をしないとどうなりますか?
2024年4月1日以降、相続を知った日から3年以内に相続登記をしないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になります。放置すると相続人がさらに増え、必要書類も集めにくくなります。
名義変更にかかる期間はどのくらいですか?
必要書類がそろっていれば、法務局への申請から登記完了まで1〜2週間程度が目安です。戸籍謄本の収集を含めると、全体では1カ月以上かかることも珍しくありません。
不動産の名義変更を自分で行う際の必要書類まとめ
不動産の名義変更に必要な書類は、相続・財産分与・売買・贈与といった原因によって異なり、法務局へ提出する組み合わせも変わります。戸籍謄本や印鑑証明書、固定資産評価証明書など自分で取得できる書類がほとんどですが、収集に時間がかかる点や書類不備による補正の連絡には注意が必要です。ぜひ本記事の必要書類の一覧を参考に、自分のケースに合った書類をそろえて法務局への申請を進めてください。
出典
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 法務省「登記申請書の様式」
- 国税庁「登録免許税の税率一覧」
- e-Gov法令検索「不動産登記法」
- e-Gov法令検索「民法」
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)」施行期日に関する案内
- 法務省「平成25年4月1日以降の登録免許税に関するお知らせ」
- 法務省「戸籍法の一部を改正する法律について」(戸籍証明書等の広域交付制度、令和6年3月1日施行)
