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使用貸借契約とは?無償で貸す場合の注意点とリスク・解除方法も紹介

親から譲り受けた土地に家族が無償で住んでいたり、相続した実家を兄弟へ家賃を取らずに貸していたりする状態は、民法上の使用貸借契約(しようたいしゃくけいやく、対価を受け取らずに物を貸し借りする契約)にあたります。書面を交わさないまま何年もそのまま続いているケースも珍しくありません。

使用貸借は賃貸借と違って借地借家法の保護を受けられず、貸主は民法598条の定めに沿って返還を求められる契約です。期間や使用目的を定めていなければ、貸主はいつでも解約を申し入れられます。

本記事では使用貸借契約の基本的な仕組みと、無償で貸すときの注意点・リスク、解除の方法までを解説します。

この記事はこんな方に向いています

  • 親の土地に無償で家を建てて住んでいる状態から住み替えを考え、使用貸借の解除方法を知りたい方
  • 相続した実家を兄弟に無償で貸している状況で、後々のトラブルを避けるための注意点を確認したい方
  • 介護のため実家を親族に貸す約束をしたが、書面を交わさず口約束のままでリスクが心配な方

使用貸借契約とは|不動産を無償で貸すときの基本的な仕組み

使用貸借契約とは、民法593条に定められた契約で、一方が無償で物を使わせ、相手方がそれを使ったあとに返還することを約束する契約です。2020年4月施行の改正民法により、使用貸借は当事者の合意だけで成立する諾成契約(だくせいけいやく、物の引き渡しがなくても合意で成立する契約)として整理されました。不動産では、親の土地に子が無償で家を建てる場合や、実家を家賃なしで親族に貸す場合がこれにあたります。

賃貸借契約との違い

賃貸借契約は家賃という対価を伴い、借地借家法によって借主の居住が強く保護されます。これに対して使用貸借は無償であるため借地借家法の対象外となり、貸主が比較的容易に契約を終わらせられる点が大きな違いです。固定資産税相当額程度を負担してもらっている場合でも、地代としての対価性が弱ければ使用貸借と判断される余地があります。

「使用賃借とは」という表記について

検索やメモの中で「使用賃借とは」という表記を見かけることがありますが、民法上の正式な名称は使用貸借です。「賃借」は賃貸借契約で使われる語であり、無償の貸し借りを指す場合は使用貸借と書くのが正確です。

無償だから何でも許されるわけではなく、民法上の契約として扱われる点をまず押さえておきましょう。

実家や親の土地で使用貸借契約が結ばれる具体的な場面

不動産における使用貸借は、家族間・親族間のやり取りの中で自然に発生していることが多く、当事者が契約と意識していないことも珍しくありません。代表的な場面としては、親名義の土地に子が自分の費用で家を建てて住む場合、相続で取得した実家を兄弟のひとりが無償で使い続ける場合、介護のために実家を親族へ貸す場合などが挙げられます。

これらに共通するのは、家賃や地代に相当する対価のやり取りがないことです。固定資産税や修繕費の一部を負担している程度であれば、賃貸借ではなく使用貸借と扱われる可能性が高くなります。契約書がなくても、口約束や黙示の合意によって使用貸借は成立するため、本人同士が気づかないうちに法的な権利義務関係が生じています。

固定資産税だけ負担してもらっている関係でも、口約束のままなら使用貸借とみなされることが多い点に注意してください。

土地や建物の使用貸借契約で注意したいリスクと口約束の危うさ

使用貸借契約の最大のリスクは、書面を交わさずに始めてしまうことです。「いつまで貸すつもりだったのか」「返してほしいと言えるのか」という点が曖昧なまま年月が経つと、貸主と借主の双方が自分に都合の良い理解をしたまま話が進んでしまいます。

さらに貸主に相続が発生すると、土地や実家を引き継いだ次の相続人が「そんな約束は知らない」と返還を求め、親族間のトラブルに発展することもあります。借主が土地の上に自分の建物を建てている場合は、使用貸借の終了にあわせて建物の取り壊しと土地の明け渡しを求められるおそれもあり、住まいを失うリスクに直結します。将来その土地や実家を売ろうとしても、借主がすぐに立ち退けなければ買主を見つけにくくなる点も見落とされがちです。

相続発生後にもめやすい典型例なので、使用貸借の存在と終了時期は家族間で早めに共有しておきましょう。

民法598条から見る土地・建物の使用貸借契約の解除方法

使用貸借の終了のしかたは、契約で何を定めていたかによって変わります。契約の中身を確認し、どの段階にあたるのかを見極めることが解除の第一歩です。

期間や使用目的を定めている場合

使用期間を定めていれば、その期間が満了した時点で使用貸借は終了します。期間は定めていなくても使用目的を定めている場合は、借主がその目的に沿った使用収益を終えたとき、または目的を達成するのに足りる期間が経過したときに、貸主は返還を請求できます。たとえば「子が独立するまで住まわせる」という目的であれば、独立したタイミングが一つの区切りになります。

期間も目的も定めていない場合(民法598条2項)

期間も使用目的も定めていない使用貸借については、民法598条2項により、貸主はいつでも契約の解約を申し入れることができます。親族間で「とりあえず住んでいいよ」という形で始まった使用貸借の多くはこのパターンにあたり、書面がなくても法律上は解約の申し入れが可能です。ただし、借主の生活への影響が大きい場合は、一定の猶予期間を設けるなど実務上の配慮が必要になります。

法律上は解約できても、借主の引っ越し先の確保には時間がかかるため、早めに意思表示をしておくと話が進めやすくなります。

使用貸借中の土地は売却できるのか|権利関係と手続き

使用貸借の土地や家は、借主がいる状態でも所有者である貸主がその不動産を売却すること自体は可能です。ただし賃借権と異なり使用貸借には対抗力がないため、買主は借主の立場を当然に引き継ぐわけではなく、実務では使用貸借を解除して更地や空き家の状態にしてから売却する、あるいは借主の事情を踏まえて親族間売買として譲る、という流れになることが多くなります。

借主がすぐに退去できない事情がある場合は、立ち退きを前提とした一般の不動産売却よりも、現況のまま買い取ってもらえる方法が検討されることもあります。不動産売却全体の流れは不動産売却の完全ガイドで解説しています。借主の退去時期が読めず仲介での売却が難しい場合は、土地の買取とはで仲介との違いを確認しておくと検討しやすくなります。

使用貸借を解除せずに売却を進めると買主が見つかりにくくなるため、解除のタイミングを先に決めておきましょう。

貸主と借主、そして土地の権利関係を整理すると次のようになります。

貸主(地主)
土地・建物の所有権
←無償で貸借→
借主
使用権(対抗力なし)

借主は建物を使う権利を持ちますが、その権利は貸主以外の第三者には対抗できないため、土地が売却されると買主との関係であらためて調整が必要になる、と分かります。

土地や建物の使用貸借契約書を作成するときの記載ポイント

使用貸借は口約束でも成立しますが、将来のトラブルを避けるためには契約書を作成しておくことが有効で、最低限次の内容を記載しておくことが望まれます。

  • 当事者(貸主・借主)の氏名と続柄
  • 対象となる土地・建物の所在地と範囲
  • 使用目的(居住用・資材置き場など)
  • 使用期間、または期間を定めない旨
  • 固定資産税や修繕費の負担者
  • 増改築・転貸の可否
  • 返還の条件(更地にして返す、建物ごと返すなど)

将来その土地や家を売却する可能性があるなら、使用貸借契約書とあわせて権利証や登記事項証明書などの準備も必要になります。必要書類の詳細は土地売却に必要な書類一覧で解説しています。

口約束で始めた使用貸借でも、あとから契約書を取り交わすことはできるので、気づいた時点で書面化しておきましょう。

相続税評価や遺産分割に影響する使用貸借と相続の関係

貸主が亡くなった場合、使用貸借上の貸主の地位は原則として相続人に引き継がれ、それだけで使用貸借が終了するわけではありません。一方で借主が亡くなった場合は、使用貸借は借主の死亡によって終了するとされており、貸主側の相続とは扱いが異なります。

相続税の計算では、使用貸借によって貸し付けられている土地は、借地権のような評価減の対象にならず、原則として更地に近い評価になる取り扱いがあります。遺産分割の場面では、実家を無償で使っている相続人がいると、他の相続人との間で「その分を考慮すべきか」という話になりやすく、使用貸借の存在自体を事前に共有しておくことが協議をスムーズにします。

相続税評価は個別の事情で変わるため、使用貸借が絡む土地は税理士に早めに相談しておくと安心です。

よくある質問

使用貸借と賃貸借の違いは何ですか

対価の有無が最大の違いです。賃貸借は家賃という対価を伴い借地借家法で借主が保護されますが、使用貸借は無償のため同法の保護が及ばず、貸主が比較的容易に返還を求められます。

「使用賃借とは」という言葉を見かけましたが、使用貸借と同じ意味ですか

同じ趣旨で使われていることが多い表記ですが、民法上の正式名称は使用貸借です。無償の貸し借りについて調べる際は「使用貸借」で検索・確認するのが確実です。

使用貸借契約書がなくてもトラブルになりますか

契約書がなくても使用貸借自体は成立しますが、期間や返還条件が曖昧なままだと、貸主・借主の認識の違いから返還時期をめぐるトラブルになりやすくなります。

親が亡くなったら使用貸借はどうなりますか

貸主である親が亡くなっても、使用貸借はそれだけで終了せず、貸主の地位は相続人に引き継がれます。今後どうするかは相続人同士で話し合う必要があります。

使用貸借の土地を第三者に売却することはできますか

所有者である貸主が売却すること自体は可能ですが、借主の使用権には対抗力がないため、買主との間で借主の処遇をあらためて調整する必要が生じます。

使用貸借契約とは何かを踏まえた不動産の無償貸し借りの進め方

使用貸借契約とは、家賃という対価を伴わずに不動産を貸し借りする民法上の契約であり、民法598条の定めに沿って貸主からの解除が認められやすい反面、書面がないまま続けると相続や売却の場面で親族間のトラブルにつながります。期間・目的・返還条件を契約書に残し、将来の売却や相続の可能性まで見据えて準備しておくことが欠かせません。ぜひ本記事の使用貸借契約の仕組みと解除方法を参考に、無償で貸し借りしている不動産の権利関係を見直してください。

出典

  • e-Gov法令検索「民法」(第593条、第598条ほか)
  • 国税庁「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」
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