名寄帳とは?取得方法と売却前の活用法を解説
実家の土地や建物をまとめて売ろうとしても、固定資産税の通知書だけでは自分がどの市区町村に何件の不動産を所有しているか分かりません。地方税法387条に基づき市区町村が備える「名寄帳(なよせちょう)」を取得すれば、固定資産課税台帳(登録事項は地方税法381条で定められています)を所有者ごとに一覧化した形で、同一市区町村内にある不動産を地番や住所ごとにまとめて確認できます。
名寄帳は所有者本人であれば市区町村の資産税課や固定資産税課の窓口で申請でき、郵送での取得に対応している自治体も多くあります。
本記事では、名寄帳の取得方法と、不動産売却前に名寄帳を活用する方法を解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 介護のため実家をまとめて売却する準備を始め、市区町村ごとに所有する不動産を一覧で確認できる名寄帳の取得方法を知りたい45歳会社員の方
- 複数の土地を所有しているが正確な物件数を把握できておらず、売却前に名寄帳で漏れなく確認したい方
- 固定資産税の通知だけでは全体像が分からず、売却対象を整理するために名寄帳の活用法を知りたい方
名寄帳とは|不動産を市区町村単位でまとめた固定資産課税台帳
名寄帳とは、同じ市区町村内にある不動産を所有者ごとにまとめた固定資産課税台帳の一覧表です。固定資産税の課税のために市区町村が管理する固定資産課税台帳は、本来は土地や建物(物件)ごとに作られていますが、名寄帳はこれを所有者単位で束ね直したものです。地番や住所、地目、地積、固定資産税評価額などの項目が、所有している不動産の数だけ並んで記載されます。
名寄帳はあくまで固定資産税のために市区町村が作る資料であり、不動産売買契約の対象そのものを確定する公的な証明書ではありません。
名寄帳に記載される評価額は不動産売却の取引価格の目安ではなく、固定資産税の算定基準額です。
固定資産税の通知書だけでは分からない所有不動産の全体像
固定資産税の通知書に漏れやすい不動産
固定資産税の納税通知書は、同じ市区町村内の不動産であっても共有名義や非課税地(私道など)になっていると、代表者宛てにしか届かなかったり、送付自体が省略されたりすることがあるため、通知書だけを見て所有している不動産の全体像を判断すると、見落としが生じます。
名寄帳で分かること
名寄帳を取得すると、同一市区町村内で所有者本人の名義になっている不動産が、地番や住所の単位で一覧として表示されます。実家の土地に隣接する畑や、昔から所有している空き地など、普段忘れがちな不動産も含めて確認できる点が、固定資産税の通知書との違いです。
共有名義の不動産は代表者宛てにしか通知書が届かないため、名寄帳で他の共有者の分も確認しておくと安心です。
取得方法と申請先|名寄帳を取るときに必要な書類
申請できる人と窓口
名寄帳は、不動産が所在する市区町村の役場にある資産税課や固定資産税課の窓口で申請します。申請できるのは原則として所有者本人のほか、委任状を持つ代理人や、相続人、法定代理人です。東京23区内の不動産であれば、各区ではなく都税事務所が窓口になります。
申請に必要な書類
申請には、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)と認印が必要になる自治体が多くあります。代理人が申請する場合は委任状、相続人が申請する場合は戸籍謄本など相続関係を示す書類が追加で求められます。郵送で取得する場合は、返信用封筒と切手を同封します。
名寄帳の取得は、申請先の確認から受け取りまで次の5つの手順で進みます。
不動産の所在地ごとに窓口が異なるため最初に確認
本人確認書類・委任状・戸籍謄本など
窓口受付時間や郵送先を事前に確認
窓口なら当日、郵送なら定額小為替などで送付
記載された不動産の件数と範囲を確認
申請先の確認から名寄帳の受け取りまで、窓口でも郵送でも同じ順番で進みます。
郵送申請は返信までに数日かかることがあるため、不動産売却の準備を始めたら早めに申請しておくと安心です。
発行費用と注意点|名寄帳を取得するときに確認したいこと
名寄帳の発行費用は自治体によって異なり、1件あたり数百円程度に設定されていることが多いです。正確な金額や必要書類は自治体ごとに決められているため、2026年9月時点の情報として、申請前に不動産が所在する市区町村の窓口やウェブサイトで確認してください。
名寄帳には、所有者が亡くなった後に相続登記が済んでいない不動産が、亡くなった人の名義のまま記載されることがあります。相続した実家をまとめて不動産売却する前提で名寄帳を取得する場合は、相続登記の状況も併せて確認しておく必要があります。
相続登記が未了のままでも売買契約自体は可能ですが、登記名義の整理や遺産分割協議など手続きが複雑になりやすいため、名寄帳で名義も確認しておきましょう。
不動産売却前に名寄帳を活用する3つの場面
名寄帳は固定資産税のための資料ですが、不動産売却の準備段階でも役立つ場面があります。
分散した不動産を一覧で確認する場面
複数の土地を長年所有していると、どこに何件の不動産があるか本人でも把握しきれなくなることがありますが、名寄帳を取得すれば、同一市区町村内の土地や建物を地番単位で一覧として確認でき、不動産売却の対象から漏れている物件に気づけるうえ、売却相場の感覚を先につかみたい場合は、匿名査定・AI査定の精度と使い方も参考になります。
相続した実家と土地をまとめて整理する場面
介護などを理由に実家をまとめて不動産売却する場合、固定資産税の通知書に記載されない私道や隣接する畑なども含めて、所有している不動産の全体像を名寄帳で確認しておくと、不動産会社に査定を依頼する際の対象物件を正確に伝えられ、不動産売却の進め方全体は査定から引き渡しまでの7ステップで解説しています。
共有名義の不動産を確認する場面
共有名義の不動産は、代表者以外の共有者には固定資産税の通知書が届かないことがあるため、名寄帳を取得して共有名義の不動産を把握しておくと、不動産売却を進める際に必要な共有者全員の同意を漏れなく確認でき、仲介で売るか買取で売るかの違いは仲介と買取の比較で解説しています。
不動産会社に査定を依頼する前に名寄帳で対象物件を確定しておくと、やり取りがスムーズになります。
名寄帳に載らない不動産|共有名義や非課税地の扱い
名寄帳は、申請した市区町村内にある不動産しか記載されません。実家が複数の市区町村にまたがって不動産を所有している場合は、それぞれの市区町村で別に名寄帳を取得する必要があります。
また、道路や水路として使われている私道の一部など、固定資産税が非課税になっている不動産は、名寄帳に記載されない自治体もあります。非課税地も不動産売却の対象になることがあるため、法務局で登記事項証明書(登記簿)を取得して、所有している不動産をもう一段階細かく確認しておくと安心です。
複数の市区町村に不動産を持つ場合は、名寄帳もそれぞれの窓口で取得する必要があります。
固定資産評価証明書との違い|売却でどちらを使うか
名寄帳と似た書類に、固定資産評価証明書があります。どちらも市区町村が管理する固定資産課税台帳をもとにした書類ですが、使う場面が異なります。
| 項目 | 名寄帳 | 固定資産評価証明書 |
|---|---|---|
| 記載内容 | 所有者が持つ不動産の一覧 | 1件ごとの固定資産税評価額 |
| 主な使い道 | 所有不動産の把握・漏れの確認 | 価格交渉や登記手続きの資料 |
| 取得する場面 | 不動産売却準備の初期 | 媒介契約締結後から契約直前 |
不動産売却を具体的に進める段階になると、不動産会社や司法書士から固定資産評価証明書の提出を求められることが多く、媒介契約を結ぶ前後で取得するケースが一般的です。媒介契約の種類と選び方は専属専任・専任・一般の違いで解説しています。
固定資産評価証明書は名寄帳とは別の書類なので、媒介契約の段階で改めて取得が必要です。
よくある質問
名寄帳は本人以外でも取得できますか?
委任状を持つ代理人や、相続人、または親権者・成年後見人などの法定代理人であれば取得できます。代理人が申請する場合は委任状、相続人が申請する場合は戸籍謄本など相続関係を示す書類が必要です。
名寄帳を取得すればすべての不動産が分かりますか?
申請した市区町村内にある不動産しか記載されません。複数の市区町村に不動産を所有している場合は、それぞれの市区町村で別に名寄帳を取得する必要があります。
名寄帳に記載された評価額で不動産売却の価格は決まりますか?
名寄帳の評価額は固定資産税の算定基準額であり、不動産売却の取引価格の目安にはなりません。売却価格の目安を知るには、不動産会社の査定や匿名査定を利用します。
名寄帳の発行にはどれくらい時間がかかりますか?
窓口で申請すればその日のうちに発行される自治体が多く、郵送の場合は数日から1週間程度かかることがあります。発行までの時間は申請先の市区町村に確認してください。
相続した実家の名寄帳に亡くなった人の名前が残っている場合はどうすればいいですか?
相続登記が済んでいないと、名寄帳に亡くなった人の名義のまま記載されます。相続登記が未了のままでも売買契約自体は可能ですが、買主への所有権移転登記(引き渡し)までに相続登記を済ませておく必要があります。
「名寄帳とは」を踏まえた不動産売却前の確認ポイント
名寄帳とは、同一市区町村内にある不動産を所有者ごとに一覧化した固定資産課税台帳であり、固定資産税の通知書だけでは見落としがちな不動産を確認できる資料です。取得は市区町村の窓口や郵送で申請でき、相続や共有名義が絡む不動産売却では、対象となる不動産を漏れなく把握するために役立ちます。ただし、記載される評価額は固定資産税の算定基準額であり不動産売却の取引価格の目安にはならない点と、申請した市区町村内の不動産しか記載されない点には注意が必要です。ぜひ本記事の取得方法と活用法を参考に、不動産売却前の不動産の棚卸しを進めてください。
出典
- e-Gov法令検索「地方税法」
- 総務省「固定資産税制度の概要」
- 法務省「不動産登記の案内」
- 税務研究会「地方税法第387条 土地名寄帳及び家屋名寄帳」
- 川口市「固定資産税に関する証明書の申請について」
- 宝塚市「固定資産税の証明書は誰が取得できますか」
- LIFULL HOME4U「不動産売却の基礎知識」(相続人と法定代理人の違いについて)
- 弁護士広場「相続に関する用語解説」
- 司法書士法人リーガル・プラス「遺産分割前の相続物件の媒介方法について」
