根抵当権とは?抵当権との違いと不動産売却時の抹消手続き
親から引き継いだ土地の登記簿を取得すると、「根抵当権」という文字が記載されている場合があります。根抵当権(ねていとうけん)とは、極度額(きょくどがく)と呼ばれる上限の範囲内で、借入れを何度でも借りたり返したりできる担保の仕組みです(民法398条の2)。
通常の抵当権(ていとうけん)は1本の借入れだけを担保しますが、根抵当権は極度額の範囲内なら担保する借入れの件数や種類が変わっても効力が続く点が異なります。土地や家を売却する際は、売却代金で残っている借入れを完済したうえで、法務局に抹消登記を申請する必要があります。
本記事では、根抵当権と抵当権の違い、土地や家を売却できる条件、抹消の手続きと費用、相談先までを解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 親から引き継いだ土地の登記簿に根抵当権の記載があり、通常の抵当権との違いが分からず戸惑う方
- 62歳で法律用語に不慣れなまま、根抵当権が付いた土地を売却できるか専門家に相談する前に確認したい方
- 共有名義の土地に根抵当権が設定されていると知り、抹消の手続きが必要か気になっている方
不動産売却でよく見る「根抵当権」とは?抵当権とのわかりやすい違い
根抵当権(ねていとうけん)とは、あらかじめ決めた極度額(きょくどがく)という上限の範囲内で、借入れを何度でも借りたり返したりできる担保の仕組みです。民法398条の2で定められており、事業資金の融資や継続的な取引の担保としてよく使われます。
親や祖父母が事業を営んでいた土地では、金融機関との継続的な取引のために根抵当権が設定されていることが多く、登記簿を取得してはじめて気づく方も少なくありません。根抵当権と抵当権の違いを理解しておくと、土地や家の売却を進める際の見通しが立てやすくなります。
「根抵当権」という言葉だけで不安になる方が多いですが、まずは抵当権との違いを知ることが第一歩です。
繰り返しの借入れに対応する根抵当権の仕組み|不動産の抵当権との違い
抵当権と根抵当権は、どちらも不動産を担保にする権利ですが、担保する借入れの範囲が異なります。それぞれの仕組みを比べると、違いがはっきりします。
1本の借入れを担保する抵当権
抵当権は、住宅ローンなど1本の借入れに結びついた担保権です。借入れを完済すると抵当権の効力はなくなり、法務局で抹消登記をすれば登記簿から記載が消えます。
繰り返し利用できる根抵当権
根抵当権は、極度額の範囲内であれば借入れを完済しても権利が消えず、再び融資を受けるたびに同じ根抵当権で担保できます。事業者が金融機関と継続的に取引する場面で使われることが多く、借入れの件数や残高が変わっても登記の手続きをやり直す必要がありません。
| 項目 | 抵当権 | 根抵当権 |
|---|---|---|
| 担保する借入れ | 1本の借入れのみ | 極度額の範囲内で複数の借入れ |
| 登記簿の記載 | 借入金額 | 極度額 |
| 完済後の扱い | 権利は消滅(抹消登記は必要) | 元本確定後も登記は残る(抹消登記が必要) |
| 主な利用者 | 個人の住宅ローンなど | 事業者と金融機関の継続的な取引 |
出典:民法第369条・第398条の2をもとに作成
事業用の融資で使われることが多く、個人の住宅ローンではほとんど見かけない点も覚えておきましょう。
極度額と元本確定とは|登記簿で確認する根抵当権の内容
根抵当権の登記簿には、極度額と元本確定という2つの用語が出てきます。この2つを理解すると、登記簿に書かれている内容の意味が分かります。
極度額とは
極度額とは、根抵当権で担保される借入れの上限額です。登記簿の「極度額〇〇万円」という記載は、その範囲内であれば何度借入れを繰り返しても担保され続けることを示しており、実際に残っている借入れの金額とは一致しません。
元本確定とは
元本確定とは、それ以上新たな借入れを担保しないと確定させる手続きです。元本確定の請求をすると、その時点で残っている借入れだけが担保の対象として固定され、以後は抵当権と同じように完済すれば権利が消滅します(民法398条の19・398条の20)。土地や家を売却する前には、金融機関に元本確定の手続きと残っている借入れの金額を確認する必要があります。
登記簿の「極度額」は借入れの上限であり、実際の残債務とは一致しない点に注意してください。
土地や家に根抵当権が付いていても売却できるか
根抵当権が付いた土地や家であっても、売却自体は可能です。ただし、買主に権利を引き渡す前に、根抵当権を抹消しておく必要があります。
実務では、売却代金で残っている借入れを完済し、金融機関から抹消に必要な書類を受け取って、所有権移転登記と同じタイミングで抹消登記を申請する流れが一般的です。残っている借入れの金額が売却代金を上回る場合は、自己資金で不足分を補うか、金融機関と相談しながら土地や家の売却を進める必要があります。
根抵当権が設定された土地の売却では、土地の所有者と金融機関の関係を整理しておくと手続きの見通しが立てやすくなります。
根抵当権設定者
根抵当権者(極度額の範囲で担保)
図のとおり、土地の所有者が金融機関に土地を担保として提供し、金融機関が極度額の範囲内で根抵当権を持つ関係になっています。
対象の土地が借地権付きの建物や農地である場合は、売却の条件がさらに複雑になります。借地権が付いた建物を売却する条件や、農地にあたる土地の売却条件は、それぞれ別の確認が必要です。
売却前に金融機関へ残債務の額を確認しないと、抹消登記に必要な資金が分からず売却が止まってしまいます。
共有名義の土地に根抵当権が付いている場合の売却
親から引き継いだ土地が共有名義になっている場合、根抵当権は共有者全員の持分にまとめて設定されていることが多く、共有者の1人だけの持分を外すことはできません。
共有名義の土地を売却するときは、根抵当権の抹消と共有者全員の合意の両方が必要になります。共有者のうち1人が事業資金のために根抵当権を設定していた場合は、その共有者が残っている借入れを完済しない限り、土地全体の売却も持分だけの売却も進められません。
自分の持分だけを売却できるかどうかは、共有名義の不動産全体の仕組みを踏まえて判断する必要があります。
共有名義の土地では、誰が根抵当権を設定したのか登記簿で確認することがまず必要です。
根抵当権を抹消する手続きと不動産売却にかかる費用
根抵当権を抹消するには、まず元本確定の手続きを済ませたうえで、残っている借入れを完済する必要があります。完済が終わると、金融機関から抹消登記に必要な書類(解除証書・登記識別情報など)が渡されます。
抹消登記を法務局に申請する際の登録免許税(登記手続きにかかる税金)は、不動産1件につき1,000円です(登録免許税法別表第一、2026年9月時点)。税額は法改正によって変わる可能性があるため、最新の金額は司法書士や法務局に確認してください。司法書士に手続きを依頼する場合は、報酬として数万円程度かかることが一般的で、売却にかかる他の費用と合わせて準備しておく必要があります。不動産売却全体の費用については不動産売却にかかる税金と費用の全体像で解説しています。
抹消登記の登録免許税は安くても、元本確定の手続きを忘れると抹消できない点に注意してください。
司法書士や不動産会社に相談するタイミング|根抵当権付き土地の売却
根抵当権が付いた土地や家の売却を進める際は、金融機関・司法書士・不動産会社の3者に、それぞれ異なるタイミングで相談する必要があります。
金融機関には残っている借入れの金額と元本確定の手続きを確認し、司法書士には抹消登記の進め方を相談します。不動産会社には、根抵当権が付いたままでも売却の相談や査定の依頼ができるため、残っている借入れの金額が分かった段階で早めに相談先を確保しておくと、売却までの時間を短縮できます。
司法書士と不動産会社では役割が違うため、早い段階で両方に相談先を確保しておくと安心です。
よくある質問
根抵当権と抵当権の違いを一言で教えてください
抵当権は1本の借入れだけを担保しますが、根抵当権は極度額の範囲内であれば借入れを繰り返しても担保され続ける点が違います。
根抵当権が付いた土地はそのまま売れますか
そのままでは売れません。売却代金で残っている借入れを完済し、根抵当権の抹消登記を済ませたうえで買主に引き渡す必要があります。
共有名義の土地に根抵当権が付いている場合、自分の持分だけ売却できますか
根抵当権が共有者全員の持分にまとめて設定されている場合、抹消しないまま土地の持分だけを売却することは難しく、共有者全員の状況を確認する必要があります。
元本確定の手続きはどこに申し込みますか
根抵当権を設定した金融機関に申し込みます。元本確定が済んでいないと、残っている借入れを完済しても根抵当権が消滅しないため、売却前に確認しておく必要があります。
抹消登記は自分でできますか
書類をそろえれば自分で申請することも可能ですが、元本確定の手続きや金融機関とのやり取りが複雑なため、司法書士に依頼する方が多いです。
根抵当権をわかりやすく理解して不動産売却を進めるために
根抵当権は、極度額の範囲内で借入れを繰り返し担保できる仕組みで、1本の借入れだけを担保する抵当権とは性質が異なります。土地や家を売却する際は、元本確定の手続きと残っている借入れの完済を済ませたうえで、抹消登記を申請する必要があります。共有名義の土地では、共有者全員の状況を確認しないと持分だけの売却も進められません。ぜひ本記事で解説した根抵当権と抵当権の違いや抹消の手続きを参考に、金融機関や司法書士、不動産会社への相談を早めに進めてください。
出典
- e-Gov法令検索「民法」(第369条、第398条の2、第398条の19、第398条の20)
- e-Gov法令検索「登録免許税法」(別表第一)
