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抵当権抹消手続きの流れ|不動産売却に必要な書類と費用

親から引き継いだ土地の登記簿を取ってみると、何十年も前に設定された抵当権(ていとうけん=金融機関が不動産を担保に取る権利)がそのまま記載されている、という例は珍しくありません。ローンを完済していても、抵当権は法務局の登記簿から自動的には消えません。

抵当権を消すには、不動産登記法に基づく「抵当権抹消登記」を法務局に申請する必要があります。金融機関から受け取る解除証書などの書類をもとに申請しますが、あわせて必要となる金融機関の資格証明書(代表者事項証明書等)には発行日から3か月程度の有効期限が付くことが多く(会社法人等番号を記載すれば添付を省略できます)、受け取った後は早めに動くことが大切です。

本記事では、抵当権の抹消手続きの流れと必要書類、自分で申請する場合と司法書士に依頼する場合の違い、かかる費用について解説します。

この記事はこんな方に向いています

  • 親から引き継いだ土地に古い抵当権が残っており、62歳で初めて抹消の必要書類や費用の見当がつかず困っている方
  • 境界未確定の土地を相続した際に抵当権抹消の手続きも重なり、司法書士費用の相場を知らずに依頼するのが不安な方
  • 共有名義の不動産に抵当権が付いたままで、権利関係を整理する前にまず自分で流れを理解しておきたい方

不動産に残る抵当権とは|なぜローン完済後も抹消が必要か

抵当権とは、金融機関が住宅ローンなどの融資をする際に、借主が返済できなくなった場合に備えて不動産を担保に取る権利です。ローンを完済すれば抵当権そのものは消滅しますが、登記簿上の「抵当権設定登記」は消えたままにはなりません。登記簿の記載を消すには、所有者の側から抵当権抹消登記という別の手続きを申請する必要があります。

親から引き継いだ土地の場合、数十年前に組んだローンの抵当権が残っていることがあり、当時の金融機関が合併・解散して名称が変わっているケースもあります。この場合、現在の金融機関を特定するところから確認が必要になります。抵当権の基本的な内容は抵当権とは?売却前の抹消費用と確認方法でも解説しています。

金融機関
抵当権者(担保権を持つ側)
←完済で消滅→
所有者(あなた)
土地・建物の所有権

図のとおり、ローンを完済すれば抵当権者である金融機関の権利そのものは消滅しますが、登記簿の記載は残るため、所有者の側から抹消の申請をして初めて記録が消えます。

古い抵当権ほど、金融機関の合併や名称変更で書類の取得に時間がかかります。まずは登記簿の抵当権者名を確認してください。

ローン完済から登記完了まで|抵当権抹消手続きの流れ

抵当権抹消登記は、おおむね次の順序で進みます。

  1. 金融機関からローン完済の通知と抹消に必要な書類一式を受け取る
  2. 法務局で登記簿(登記事項証明書)を取得し、現在の抵当権の記載内容を確認する
  3. 抵当権抹消登記の申請書を作成する
  4. 土地と建物を管轄する法務局へ申請書と添付書類を提出する
  5. 審査を経て登記が完了し、登記完了証と登記識別情報を受け取る

法務局での審査には1〜2週間程度かかることが一般的です。申請書類に不備があると取り下げや再提出が必要になるため、窓口や司法書士に事前相談してから進めると手間を減らせます。

申請書類に記載する不動産の情報は、登記簿の記載と一字でも違うと受理されないことがあります。

抵当権抹消の必要書類|不動産売却前に金融機関から受け取るもの

抵当権抹消に必要な書類は、金融機関から受け取るものと、所有者自身で用意するものに分かれます。

  • 抵当権解除証書(または抵当権放棄証書)
  • 登記済証、または登記識別情報を記載した書面
  • 金融機関の委任状
  • 金融機関の資格証明書(会社法人等番号の確認書類)
  • 所有者の本人確認書類と印鑑
  • 登記事項証明書(法務局で取得)

このうち金融機関の資格証明書(代表者事項証明書等)には発行日から3か月程度の有効期限が付くことが多く、期限を過ぎると金融機関に再発行を依頼することになります。相続した土地の場合、金融機関から受け取る書類の名義が旧所有者(親など)のままになっていることもあるため、相続登記を済ませたうえで抵当権抹消に進む順序を確認しておくと安心です。必要書類と注意点は抵当権抹消とは?家の売却時の書類と注意点でも解説しています。

資格証明書の有効期限が切れると再発行に数日かかる金融機関もあるため、受け取ったらすぐに申請の予定を立ててください。

自分でする抵当権抹消手続きと司法書士への依頼を比べる

自分で申請する場合の手間と注意点

抵当権抹消登記は所有者本人が申請することも可能で、申請書は法務局のホームページに記載例が公開されています。書類が整っていて、不動産の個数が少ないケースでは、自分で申請しても大きな負担にならないことが多いです。一方で、金融機関から受け取った書類の記載と登記簿の記載に相違があったり、申請書の不動産の表示を誤ったりすると、法務局から補正を求められ、再提出に時間がかかります。

司法書士に依頼する場合のメリットと費用感

司法書士に依頼すると、書類の確認から申請書の作成、法務局への提出まで一括して任せられ、不動産売却の引き渡しに合わせて同日中に手続きを完了させることもできます。不動産売却では、買主への所有権移転登記と抵当権抹消登記を同じタイミングで行うのが一般的で、この場合は売主が単独で動くより司法書士を介した方が確実です。

土地売却と同時に抹消する場合は、買主側の司法書士が手続きを担うことも多く、自分で探す必要がないこともあります。

登録免許税と司法書士費用の内訳|抵当権抹消登記の費用

登録免許税の計算方法

抵当権抹消登記には、登録免許税法に基づき不動産1個につき1,000円の登録免許税がかかります。土地と建物にそれぞれ抵当権が設定されている場合は、2個分で2,000円となります。登録免許税の仕組みは登録免許税とは?不動産売却時の抵当権抹消費用でも解説しています。

司法書士費用の相場

司法書士に依頼する場合は、登録免許税に加えて司法書士への報酬が発生します。日本司法書士会連合会の報酬アンケートによると、抵当権抹消登記1件あたりの報酬は1万円台から2万円程度が目安とされています。これに登記事項証明書などの取得費用が数百円から1,000円程度加わります。

抵当権抹消登記にかかる費用の目安(2026年9月時点)
項目内容金額の目安
登録免許税不動産1個につき1,000円
司法書士費用代理申請を依頼する場合1万円〜2万円程度
必要書類の取得費用登記事項証明書など数百円〜1,000円程度

出典:日本司法書士会連合会「司法書士の報酬に関する統計」、e-Gov法令検索「登録免許税法」をもとに作成

司法書士費用は事務所ごとに差があるため、複数の見積もりを取って比較することをおすすめします。

相続した土地に古い抵当権が残っているときの注意点

相続した土地に古い抵当権が残っている場合、まず相続登記で所有者を自分の名義に変更したうえで、抵当権抹消登記を申請する順序になります。共有名義で相続した場合でも、抵当権抹消登記は不動産の保存に関する行為とされ、共有者のうち1人からでも申請できることが一般的です。

また、境界が未確定の土地を売却する場合は、抵当権抹消登記とは別に境界確定測量が必要になることがあります。抵当権の抹消だけで売却準備が終わるとは限らない点に注意してください。境界確定測量の費用と期間は境界確定測量とは?売却時の費用と期間で解説しています。

相続登記と抵当権抹消登記は同時に申請できる場合もあり、司法書士に一括で依頼すると手間が減ります。

売却のタイミングと抵当権抹消の関係

不動産売却では、抵当権が残ったままの不動産を引き渡すことは実務上避けられます。売却代金でローンの残債を完済し、同じ日に抵当権抹消登記と買主への所有権移転登記を行うのが一般的な流れです。土地売却にかかる税金や費用全体の見通しは不動産売却にかかる税金と費用の全体像|いくら手元に残る?で解説しています。

土地売却で利益が出た場合は、確定申告が必要になることもあります。抵当権抹消の手続きとは別の話ですが、売却の年には合わせて確認しておくと手続きが漏れません。確定申告の必要書類と期限は不動産売却の確定申告とは?必要書類と期限で解説しています。

売却代金で完済する場合は、引き渡し日の前に金融機関と司法書士の両方に日程を伝えておくと手続きがスムーズです。

よくある質問

抵当権抹消は自分で申請できますか?

所有者本人が法務局に申請することは可能です。法務局の窓口では申請書の記載方法について相談できますが、書類の不備があると補正や再提出が必要になるため、時間に余裕を持って進めてください。

金融機関から抵当権抹消に必要な書類をもらえないときはどうすればよいですか?

合併や統合で金融機関の名称が変わっている場合、現在の担当部署を調べるまでに時間がかかることがあります。登記簿に記載された当時の金融機関名を伝えて、現在の承継先を確認してもらってください。

抵当権抹消登記に申請期限はありますか?

法律上、抵当権抹消登記そのものに申請期限は定められていません。ただし金融機関の資格証明書(代表者事項証明書等)には発行日から3か月程度の有効期限が付くことが多く(会社法人等番号を記載すれば添付を省略できます)、期限を過ぎると再発行の手間が発生します。

相続した土地の抵当権抹消は相続人全員の同意が必要ですか?

抵当権抹消登記は不動産の保存に関する行為とされ、共有者のうち1人からでも申請できることが一般的です。ただし相続登記が済んでいない場合は、先に相続人を確定させる手続きが必要になります。

抵当権抹消をしないまま不動産を売却できますか?

登記上は抵当権が付いたままでも売買契約を結ぶこと自体は可能ですが、買主にとって不利な状態が残るため、実務では売却代金で残債を完済し、引き渡しと同時に抵当権抹消登記を行うのが一般的です。

抵当権の抹消手続きを早めに進めるために

抵当権抹消手続きは、ローン完済後に金融機関から受け取る書類をもとに、法務局へ抵当権抹消登記を申請することで完了します。必要書類には有効期限があり、登録免許税は不動産1個につき1,000円、司法書士に依頼する場合は1万円台から2万円程度の報酬が加わります。相続した土地では、相続登記や境界確定測量が別途必要になることもあるため、全体の順序を押さえておくことが欠かせません。ぜひ本記事の抵当権の抹消手続きの流れと費用の目安を参考に、早めに金融機関と司法書士へ相談してください。

出典

  • 法務局「不動産登記の申請手続について」
  • e-Gov法令検索「不動産登記法」
  • e-Gov法令検索「登録免許税法」
  • 日本司法書士会連合会「司法書士の報酬に関する統計」
  • e-Gov法令検索「不動産登記令」第17条第1項・第7条第1項第1号
  • 法務省「不動産登記令等の改正に伴う添付情報の変更について」
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