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物上保証人とは?売却時に知っておくべき責任

親が事業資金を借り入れる際、所有する土地を担保に差し入れる書類への署名を求められ、実印と印鑑証明書の提出を求められています。この立場は物上保証人(ぶつじょうほしょうにん)と呼ばれ、民法369条1項の規定に基づき、自分の借金ではない他人の債務のために自分の不動産を担保として提供する人を指します。

物上保証人は、担保に入れた不動産の価値の範囲内でのみ責任を負う有限責任であり、自己の全財産で責任を負う連帯保証人とは責任の重さが異なります。債務者が返済できなくなれば担保不動産が競売にかけられる一方、それ以上の財産を差し押さえられることはありません。2026年9月時点の民法に基づく内容です。

本記事では、物上保証人の法的な立場から、担保になった不動産を売却する際の手続き、相続や離婚で物上保証人の立場を引き継いだ場合の注意点までを解説します。

この記事はこんな方に向いています

  • 資金需要から親の土地を担保に融資を受ける話が出て、物上保証人になった場合の責任を初めて調べている45歳会社員の方
  • 相続した不動産に親族が担保として関わっていたことが分かり、売却前に物上保証人の立場を確認したい方
  • 離婚を機に共有していた不動産を整理する必要があり、物上保証の解除手続きが分からず不安な方

物上保証人とは|不動産を担保に入れる人の法的な立場

物上保証人とは、他人が負った借金の担保として、自分が所有する不動産に抵当権を設定することを認めた人のことです。たとえば子どもが事業資金を借りる際、親が所有する土地に抵当権を設定すれば、その親が物上保証人になります。借金をしたのは子どもであり、親は債務者本人ではありません。

ただし、親が所有する土地には抵当権という権利が付き、子どもが返済を怠れば、金融機関はその土地を競売にかけて貸したお金を回収できます。物上保証人は借金をした本人ではないものの、担保に入れた不動産を失う可能性を負う立場です。

署名する書類が「連帯保証」なのか「物上保証(抵当権設定)」なのか、契約書の表題を必ず確認してください。

連帯保証人との違い|物上保証人が負う不動産の責任範囲

物上保証人と連帯保証人は、どちらも他人の借金に関わる立場という点で混同されやすいものの、責任の範囲がまったく異なります。物上保証人は担保に差し入れた不動産の価値の範囲内でしか責任を負わない有限責任であり、それ以上を自分の給料や他の財産から支払う義務はありません。一方、連帯保証人は債務者と同等の立場で全額の返済義務を負う無限責任で、担保となる不動産を持っているかどうかは関係ありません。

物上保証人と連帯保証人の違い
項目物上保証人連帯保証人
責任の範囲担保に入れた不動産の価値まで(有限責任)自己の全財産(無限責任)
債務者本人との関係債務者ではない債務者ではない
財産がない場合不動産がなければ物上保証人になれない財産の有無を問わない
立て替え払い後の権利債務者への求償権(きゅうしょうけん)あり債務者への求償権あり

出典:e-Gov法令検索「民法」(372条・351条)をもとに作成

物上保証人が代わりに返済する代位弁済(だいいべんさい)を行った場合は、負担した金額を債務者に請求する求償権を持ちます。担保になった不動産を手放しても、立て替えたお金が戻ってくる可能性があるという点は覚えておきたいところです。

有限責任とはいえ、担保の不動産を失う結果自体は重いので、引き受ける前に融資額と不動産の価値を見比べてください。

不動産売却を考える前に確認したい物上保証人の立場

物上保証人として提供した不動産を売却しようとすると、まず抵当権が付いたままでは売却が進められないという事実に直面します。買主は通常、抵当権のない状態で不動産を引き渡されることを前提に売買契約を結ぶため、売却の前に抵当権を抹消する必要があります。

抵当権の設定状況を確認する

最初に行うべきは、法務局で不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)を取得し、抵当権がどの金融機関によっていくらの債務のために設定されているかを確認することです。抵当権は一つの不動産に複数設定されている場合もあり、設定順位によって返済の優先順位が変わります。

残債と売却価格のバランスを確認する

次に、債務者本人の残債がいくら残っているかを金融機関に確認し、不動産の売却価格と比較します。売却価格が残債を上回るアンダーローンの状態であれば、売却代金で完済して抵当権を抹消できます。残債が売却価格を上回るオーバーローンの状態では、金融機関の同意や他の資金の用意が必要になり、売却の難易度が上がります。

売却価格の見当をつけるには、匿名査定を使って大まかな売却相場を把握する方法もあります。匿名査定・AI査定の精度と使い方は匿名査定・AI査定はどこまで正確?精度の限界と賢い使い方で解説しています。

残債の正確な金額は、金融機関に「残債証明書」の発行を依頼すると確認できます。

担保不動産を売却する流れ|物上保証人が進める手続き

物上保証人として差し入れた不動産を実際に売却するときの流れを、順番に整理します。

1
抵当権の設定状況を確認する
登記簿謄本で債権額・債権者を把握
2
債権者(金融機関)に残債を確認する
残債証明書の発行を依頼
3
売却価格と残債を比較する
アンダーローンかオーバーローンかを判断
4
買主と売買契約を結ぶ
抵当権抹消を条件に記載
5
売却代金で残債を完済し抵当権を抹消する
金融機関が抹消書類を発行
6
所有権移転登記を行う
買主への引き渡しが完了

この図は、抵当権が付いた不動産でも、残債の完済と抹消手続きを順に踏めば売却できることを示しています。

不動産売却を依頼する不動産会社を選ぶ際には、どの媒介契約を結ぶかによって売却活動の進み方が変わります。

抵当権抹消書類は金融機関から発行されますが、受け取りから登記まで時間がかかるので、引き渡し日の調整に余裕を持たせてください。

相続で物上保証人の立場を引き継いだときの不動産売却

親が物上保証人として土地を担保に入れたまま亡くなった場合、その土地を相続した人は、担保が付いた状態の不動産を引き継ぎます。物上保証人という立場も、担保が付いた不動産を相続することで引き継がれ、抵当権が設定された不動産を相続する以上、債務者が返済できなければその不動産が競売にかけられるリスクを引き継ぐことになります。

相続した不動産を売却する際は、登記簿謄本で抵当権の有無を確認し、債権者である金融機関に残債の状況を照会する手順が欠かせません。相続人自身が借金をしたわけではないため、戸惑う方が多いものの、担保として設定された権利は不動産そのものに付いているため、所有者が変わっても消えない点に注意が必要です。

遺産分割協議の前に、相続する不動産に抵当権が付いていないかを確認しておくと、後の売却手続きが滞らずに進みます。

離婚で共有不動産を整理するときの物上保証の解除

夫婦のどちらかが親族の借金のために自宅や土地を担保に入れていた場合、離婚で共有不動産を整理する際にその物上保証が足かせになることがあります。たとえば夫の親が事業資金を借りる際、夫婦の共有名義の自宅を担保に入れていたようなケースです。

この場合、不動産を売却したり、どちらかの単独名義に変更したりするには、担保となっている債務を完済するか、債権者の同意を得て別の担保に差し替える必要があります。抵当権が付いたままでは、離婚後の名義変更も売却も進められないため、まず債権者に連絡し、完済の見通しや担保差し替えの可否を確認することが先に必要な手順です。

不動産の売却価格で残債を完済できない見通しが立つ場合は、仲介での売却だけでなく、買取という選択肢も含めて検討の幅を広げておくと判断がしやすくなります。

離婚協議書に不動産の担保状況を明記しておくと、後日の売却や名義変更のトラブルを防げます。

抵当権抹消までの道筋|物上保証人を外れる方法

物上保証人としての立場そのものを終わらせるには、設定した抵当権を抹消する必要があります。抹消の方法は、債務が完済されるかどうかで分かれます。

完済による抵当権抹消

最も一般的な方法は、債務者が借金を完済するか、不動産の売却代金で残債をすべて返済することです。完済が確認されると、金融機関から抵当権抹消に必要な書類が発行され、法務局で抹消登記を行うことで物上保証人としての責任は消滅します。

債権者との交渉で抹消する場合

完済が難しい場合でも、物上保証人の不動産を担保から外し、別の担保や保証に差し替える交渉が成立すれば抵当権を抹消できる場合があります。ただし、これは金融機関側の判断に依存するため、交渉がまとまらなければ担保提供を続けざるをえない状況が続きます。いずれの方法でも、物上保証人側の意思だけでは抹消できず、債権者である金融機関の協力が必要です。

担保の差し替え交渉は金融機関によって対応が分かれるため、早めに窓口へ相談してください。

よくある質問

物上保証人になった後、その不動産を売ることはできますか?

抵当権が設定されたままでは買主への引き渡しが難しいため、原則として残債を完済し抵当権を抹消したうえで不動産を売却します。残債が売却価格を上回る場合は、金融機関への相談が必要です。

物上保証人は連帯保証人と同じように請求を受けますか?

物上保証人が負うのは担保に入れた不動産の価値の範囲までで、それ以上の財産を差し押さえられることはありません。これに対し連帯保証人は全財産で返済義務を負うため、責任の重さが異なります。

物上保証人として提供した不動産を相続した場合、責任も引き継ぎますか?

物上保証人という立場も、担保が付いた不動産を相続することで引き継がれますが、抵当権が付いた不動産を相続すれば、債務者が返済できないときにその不動産が競売にかけられるリスクは引き継ぎます。

離婚で共有不動産の物上保証を解除するにはどうすればいいですか?

担保となっている債務を完済するか、債権者の同意を得て別の担保に差し替える必要があります。まず債権者である金融機関に連絡し、完済の見通しや差し替えの可否を確認してください。

物上保証人が代位弁済した場合、債務者に請求できますか?

できます。物上保証人が立て替えて返済した金額については、債務者本人に対する求償権を持ち、後から返済を求めることができます。

物上保証人とは何かを理解して不動産売却を進めるために

物上保証人は、他人の借金のために自分の不動産を担保として提供する立場であり、責任は担保に入れた不動産の価値までにとどまります。それでも担保となった不動産を売却するには、残債の確認と抵当権の抹消という手順を避けられません。相続や離婚で物上保証人の立場が絡む不動産を整理する場合も、まず登記簿謄本で抵当権の有無を確認し、債権者である金融機関に状況を照会することが出発点になります。ぜひ本記事の手順と確認事項を参考に、担保が付いた不動産の売却を進めてください。

出典

  • e-Gov法令検索「民法」(第351条・第369条・第372条)
  • 法務省「登記手続きに関する案内」
  • home4u.jp「物上保証人が亡くなった場合、物上保証人の地位も相続される」
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