質権とは?不動産売却前に確認すべきポイント
自宅の登記事項証明書を取り寄せると、所有権の欄の下に「質権」という文字が記載されている場合があります。見慣れない言葉に驚き、売却の手続きが止まってしまう方は少なくありません。質権(しちけん)とは、民法第342条に定められた担保の一種で、お金を借りた際の担保として不動産や権利に設定されるものです。抵当権(ていとうけん)と似ていますが、権利の内容や不動産売却への影響は異なります。本記事では、質権の基本的な仕組みと、不動産売却前に確認すべきポイントを解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 離婚に伴い自宅を売却する予定だが、過去に借入の担保として質権が設定されていないか契約前に確認したい45歳会社員の方
- 相続した実家を売る前に権利関係を整理する必要があり、質権という聞き慣れない言葉の意味を知りたい方
- 住み替え資金の融資を受ける際に質権と抵当権の違いが分からず、専門家に相談する前に基礎を知りたい方
質権とは何か|不動産売却前に知っておきたい権利の基本
質権とは、借入をする際に不動産や動産、権利などを担保として提供し、債務者が返済できなくなった場合に債権者がその担保から優先的に弁済を受けられる権利です。民法第342条で「質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する」と定められています。
不動産に質権が設定される場合は「不動産質権」と呼ばれ、不動産登記法に基づき登記することで第三者に対抗できる権利になります。不動産質権の大きな特徴は、質権者がその不動産を占有できる点です。これは抵当権には無い性質で、所有者が住み続けながら担保に入れる一般的なローンとは仕組みが違います。実務上、不動産質権が設定されるケースは多くありませんが、古い相続不動産や過去の借入が残る物件では、登記簿上に記載が残っていることがあります。
不動産質権は実務でほとんど見かけませんが、登記簿に残っていると売却契約が止まるため、早めの確認が重要です。
質権と抵当権の違い|不動産売却でよくある誤解
質権と抵当権はどちらも担保の一種ですが、不動産売却の場面では混同されやすい権利です。それぞれの性質を分けて確認すると、登記簿の記載の意味が理解しやすくなります。
質権の特徴
質権は担保物を質権者が占有することが原則で、不動産質権の場合も質権者が使用・収益できます。また民法第360条により、不動産質権の存続期間は10年を超えることができません。10年を超える特約をしても、法律上は10年に短縮されます。
抵当権の特徴
一方の抵当権は、担保物を所有者が使用し続けながら設定できる権利で、住宅ローンの大半はこの抵当権の仕組みを使っています。存続期間の制限もありません。不動産を売るときに登記簿で目にする担保権は、ほとんどが抵当権であり、質権はごく例外的な存在です。
登記簿に「抵当権」と「質権」どちらが記載されているかで、その後の手続きが変わるため見分けが欠かせません。
不動産に質権が設定されるケースと確認方法
不動産質権は一般的な住宅ローンの担保としては使われませんが、個人間の借入や一部の事業者向け融資で設定される場合があります。相続した実家や離婚に伴って売却する自宅では、過去の借入の経緯が分からないまま権利が残っていることもあるため、売却前の確認が欠かせません。
確認方法は、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、乙区欄に「質権設定」の記載があるかを見ることです。記載があれば、質権者の氏名または法人名、債権額、設定日が分かります。権利関係が複雑な場合は、売却を依頼する不動産会社や司法書士に登記簿の読み方を確認してもらうと確実です。不動産会社選びの基本は媒介契約の種類|専属専任・専任・一般の違いと選び方で解説しています。
登記事項証明書は法務局窓口のほか、オンライン申請でも取得できます。記載内容が古い場合は専門家に相談してください。
質権付き不動産を売却する手順
質権が設定された不動産は、権利が残ったままでは買主への所有権移転登記ができません。不動産売却を進めるには、事前に質権の抹消手続きを済ませる必要があります。おおまかな流れを示すと次のとおりです。
乙区欄の記載内容と質権者を把握する
抹消に必要な条件と残っている債務額を照会する
質権解除証書や登記費用の見積りを準備する
引き渡し前に質権抹消登記を完了させる
質権抹消と同日に所有権移転を行うのが一般的
この図は、質権が残った不動産を売却するまでの手続きの順序を示しています。抹消登記を引き渡しより前、または同日に完了させる点がポイントです。
登記事項証明書の確認で分かること
質権者の名称、設定日、債権額が分かれば、残っている債務のおおよその規模が把握できます。質権者が既に存在しない法人や個人である場合は、抹消手続きに時間がかかることもあります。
質権者への連絡で確認すべきこと
残債務の有無、完済済みであれば抹消に必要な書類(質権解除証書や委任状)、完済していない場合は返済方法と抹消のタイミングを確認します。売却全体のスケジュールは不動産売却の流れ|査定から引き渡しまでの7ステップで解説しています。
質権者と連絡が取れない場合は、司法書士を通じて調査する方法もあるので、早い段階で相談してください。
質権が残ったまま不動産売却を進めるリスク
質権が抹消されないまま売買契約を結ぶと、買主への所有権移転登記が完了できず、契約が白紙に戻る可能性があります。質権者が占有権を持つ不動産質権の場合は、質権者の同意なく物件を自由に使えないケースもあり、内覧や引き渡しにも影響します。
買主側の不動産会社は、売買契約前に登記事項証明書を確認するため、質権の存在を隠したまま契約を進めることは実質的にできません。権利関係が複雑な物件は、仲介より買取のほうが手続きを早められる場合もあり、仲介と買取の違いは仲介と買取どっちがいい?違いとメリット・デメリットで解説しています。
質権の抹消が難しい物件は、売却方法そのものの選択肢を広げて検討すると進めやすくなります。
質権の抹消にかかる費用と期間
質権抹消登記にかかる登録免許税は、不動産1件につき1,000円です(2026年9月時点)。司法書士に手続きを依頼する場合は、別途数万円程度の司法書士報酬がかかります。質権者との交渉が円滑に進めば、必要書類が揃ってから1〜2週間程度で抹消登記が完了することが多いですが、質権者の特定が難しい場合はさらに時間がかかります。
マンションの売却相場を把握する段階から並行して質権の有無を確認しておくと、売買契約の直前で手続きが止まる事態を避けられます。査定の進め方は匿名査定・AI査定はどこまで正確?精度の限界と賢い使い方で解説しています。
登録免許税自体は少額ですが、司法書士費用や交渉の期間を見込んで余裕を持った売却スケジュールを組んでください。
よくある質問
質権と抵当権はどちらが不動産売却に多く関係しますか
一般的な住宅ローンの担保は抵当権がほとんどで、不動産質権が設定されている物件は多くありません。登記事項証明書で記載を確認し、不明な場合は司法書士に相談してください。
質権が設定されていることに気づかずに売却の話を進めてしまいましたが問題はありますか
売買契約の前に登記事項証明書を確認する不動産会社がほとんどのため、途中で判明することが多いです。見つかった場合は抹消手続きを進めてから契約を結びます。
質権者と連絡が取れない場合はどうすればよいですか
質権者が法人の場合は法人登記の情報から所在を調べる方法があり、個人の場合は司法書士や弁護士に調査を依頼する方法があります。時間がかかることもあるため早めの対応が必要です。
質権の抹消登記は自分で申請できますか
必要書類が揃っていれば本人でも申請できますが、質権者からの解除証書の取得や書類の準備に専門知識が必要なため、司法書士に依頼するケースが一般的です。
質権付きの不動産でも仲介で売却できますか
抹消手続きを売買契約の前後に完了させれば仲介での売却は可能です。手続きに時間がかかりそうな場合は、不動産会社に早めに相談し、買取も含めた選択肢を検討してください。
質権とは何かを理解して不動産売却の準備を進める
質権とは、借入の担保として不動産や権利に設定される権利で、不動産質権は質権者が占有できる点や存続期間が10年を超えられない点が抵当権と異なります。不動産売却の前には登記事項証明書で質権の記載を確認し、残っていれば質権者への連絡と抹消手続きを進める必要があります。抹消登記を済ませておけば、買主への所有権移転もスムーズに進みます。ぜひ本記事の質権とは何かという基本と確認手順を参考に、売却前の権利関係の整理を進めてください。
出典
- e-Gov法令検索「民法第342条、第356条、第360条」
- 法務省「不動産登記法に基づく登記事項証明書の交付について」
- 国税庁「登録免許税の税額表」
