住宅ローン完済後に必要な抵当権抹消の費用と手続きの流れを解説
住宅ローンを完済した証明書が金融機関から届いても、法務局の登記事項証明書には抵当権の記載がそのまま残っています。親から引き継いだ土地を確認したとき、この食い違いに気づく人は少なくありません。
住宅ローンの完済は抵当権(ていとうけん)を自動的には消しません。抵当権とは、借りたお金が返せなくなったときに金融機関が不動産を処分できる権利のことで、不動産登記法に基づき抵当権抹消登記を申請して初めて記録が消えます。登録免許税は不動産1個につき1,000円で、土地と建物の両方に設定されていれば合計2,000円が目安です。
本記事では、住宅ローン完済後に必要な抵当権抹消の費用と手続きの流れ、親から引き継いだ土地で注意したい点を解説します(2026年9月時点)。
この記事はこんな方に向いています
- 住宅ローンを完済した親の土地を引き継いだ62歳で、抵当権抹消の手続きが未了だったと気づき対応に迷っている方
- 共有名義の不動産のローン完済後、抵当権抹消にかかる費用と流れが分からず司法書士に相談する前に把握したい方
- 境界未確定の土地に古いローンの抵当権が残っており、完済済みなのに抹消していなかった事実に慌てている方
住宅ローン完済後も不動産に抵当権が残る理由
住宅ローンを組むとき、金融機関は貸したお金を回収できなくなった場合の担保として、土地や建物に抵当権を設定します。この抵当権は登記簿に記録され、完済しても金融機関側が自動で記録を消してくれるわけではありません。登記は原則として当事者からの申請がなければ変わらない仕組みのため、完済後も抵当権抹消登記という別の手続きを行う必要があります。
親が住宅ローンを完済していても、本人が抵当権抹消登記を済ませずに亡くなっていると、土地や建物を引き継いだ相続人がこの状態に気づくことになります。登記事項証明書を取得して確認すると、完済済みのはずの抵当権が残っていることが分かります。
親名義の土地を引き継いだら、まず登記事項証明書を取って抵当権の記載があるか確認してください。
住宅ローンと抵当権抹消の関係|抹消登記とは
抵当権とは何か
抵当権は、住宅ローンを貸す金融機関が土地や建物に設定する担保の権利です。返済が滞ったときに金融機関がその不動産を競売にかけ、売却代金から回収できるようにするための仕組みで、登記簿の「乙区」と呼ばれる欄に記録されます。
抹消登記とは何か
抹消登記は、登記簿に記録された権利を削除する手続きです。抵当権抹消登記では、住宅ローンを完済した事実と金融機関の同意を示す書類をそろえ、法務局に申請することで初めて登記簿から抵当権の記載が消えます。申請しない限り記録は半永久的に残ります。
抵当権抹消登記には申請期限がありません。だからこそ後回しになりやすく、相続時に見つかるケースが目立ちます。
抵当権抹消にかかる費用と必要書類
登録免許税と司法書士報酬の目安
抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。土地と建物のそれぞれに抵当権が設定されている場合は合計2,000円になります。司法書士に申請を依頼する場合は、この登録免許税に加えて司法書士報酬がかかり、1万円〜2万円程度が目安です。自分で法務局に申請すれば司法書士報酬はかかりません。
金融機関から届く必要書類
住宅ローンを完済すると、金融機関から抵当権解除証書、登記識別情報(またはそれに代わる書類)、金融機関の委任状、資格証明書などが送られてきます。これらの書類が手元にあるかどうかを、まず確認してください。
| 項目 | 内容 | 目安額 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 不動産の個数×1,000円 | 土地+建物で2,000円程度 |
| 司法書士報酬 | 書類作成・申請代行 | 1万円〜2万円程度 |
| 必要書類の取得費用 | 登記事項証明書など | 数百円〜1,000円程度 |
出典:財務省「登録免許税法」、日本司法書士会連合会「司法書士の報酬に関するアンケート結果」をもとに作成
現在は会社法人等番号を申請書に記載すれば資格証明書の添付は原則不要です。番号が提供されない場合は発行から3か月以内の資格証明書が必要で、放置すると再発行が必要になります。
抵当権抹消の手続きの流れ|自分で行う場合と司法書士に依頼する場合
自分で法務局へ申請する場合
金融機関から届いた書類をもとに、抵当権抹消登記申請書を自分で作成し、不動産がある地域を管轄する法務局に提出します。窓口のほか、郵送やオンライン申請でも受け付けられ、申請から登記完了まで1〜2週間程度が一般的です。書類の不備があると法務局から訂正を求められ、その分時間がかかります。
司法書士に依頼する場合
書類の読み方や申請書の作成に不安がある場合は、司法書士に依頼する方法もあります。金融機関から届いた書類と本人確認書類を渡せば、申請書の作成から法務局への提出まで代行してもらえます。相続した不動産で、親名義のまま抵当権が残っているケースでは、相続登記と抵当権抹消登記を同時に進められるかどうかも含めて相談すると手間が減ります。
相続登記と抵当権抹消登記はまとめて1回の相談で済ませたほうが、書類の準備が一度で終わります。
親から引き継いだ土地で起きやすい権利関係の問題
親の土地を相続した場合、所有権は相続によって引き継がれますが、抵当権抹消登記は別の手続きとして残ります。この関係は次の図のように整理できます。
住宅ローン完済済み
土地の所有権を引き継ぐ
登記記録から抵当権を消す
親の代で完済した住宅ローンの抵当権は、相続で引き継いだ所有権とは別の手続きで消す必要があり、申請しなければ法務局の記録に残り続けます。
親から引き継いだ土地では、抵当権の問題に加えて共有名義や境界未確定が同時に見つかることもあります。共有名義の不動産では、相続人全員が共有者になっている場合、抵当権抹消登記自体は相続人のうち1人からの申請も可能なケースがありますが、売却を前提とするなら共有者全員の意思確認が必要です。また、境界未確定の土地は抵当権抹消とは別に、土地家屋調査士による筆界(ひっかい、土地と土地の境界線のこと)の確認が必要になります。将来の売却を考えている場合は、土地の査定書を取る段階で境界や権利関係の確認を合わせて進めると手間が減ります。相続した不動産の査定書を取る手順は相続で不動産の査定書が必要なときの取り方で解説しています。
共有名義の土地は、抵当権抹消の前に共有者の人数と連絡先を一度確認しておくと手続きが早く進みます。
抵当権抹消を放置するリスク
抵当権抹消登記に申請期限はありませんが、放置すると手続きが複雑になります。ただし、申請情報に会社法人等番号を記載すれば資格証明書の添付は省略できます。番号が提供されない場合に受け取る資格証明書は発行から3か月以内という期限があり、期限を過ぎると再発行の手間がかかります。また、住宅ローンを借りた金融機関が合併や解散をしていると、必要書類の取得そのものに時間がかかることがあります。
相続が発生すると、抵当権抹消登記の申請者が本人ではなく相続人に変わり、相続人が複数いる場合は書類の準備や署名の調整が必要になります。住宅ローンの返済が難しくなって売却を検討する人の事情とは別の問題ですが、完済前にローンが払えなくなって家を売却するケースについては住宅ローンが払えない場合に家を売って完済する方法で解説しています。
金融機関が合併している場合は、現在の名称と連絡先を先に確認しておくと書類の取得がスムーズです。
抵当権抹消後に不動産売却を考えるときの注意点
不動産を売却するには、原則として抵当権抹消登記が完了している必要があります。買主や買主側の金融機関は、抵当権が残った不動産をそのまま引き受けることを避けるためです。実際の取引では、売買の決済と同じ日に抵当権抹消登記の申請を行う「同時申請」が多く、売却代金の一部を抵当権抹消にかかる費用に充てる流れになります。
抵当権抹消にかかる登録免許税や司法書士報酬は、不動産売却にかかる費用の一部として見積もっておく必要があります。売却時にかかる税金や費用全体の内訳は不動産売却にかかる税金と費用の全体像で解説しています。
土地売却を考えているなら、抵当権抹消登記を先に済ませておくと、売買契約の段取りがスムーズになります。
よくある質問
住宅ローン完済から何年経っていても抵当権抹消登記はできますか?
できます。抵当権抹消登記に申請期限はなく、完済から何年経っていても手続きが可能です。ただし年数が経つほど必要書類が見つかりにくくなったり、金融機関の合併で確認に時間がかかったりすることがあります。
抵当権抹消登記に期限はありますか?
法律上の申請期限はありません。ただし、申請情報に会社法人等番号を記載すれば資格証明書の添付は省略できます。番号が提供されない場合に受け取る資格証明書には発行から3か月以内という期限があるため、できるだけ早く申請することをおすすめします。
相続した土地で抵当権者の金融機関が合併・解散していた場合はどうすればいいですか?
合併した金融機関の場合は、現在の名称を確認して必要書類を取得します。解散している場合は、法務局や司法書士に相談し、清算法人の情報や法務局での手続き方法を確認する必要があります。
共有名義の不動産の抵当権抹消登記は共有者全員の署名が必要ですか?
抵当権抹消登記そのものは、共有者の1人から申請できる場合があります。ただし売却を前提とする場合は、共有者全員の同意や署名が必要になるため、早い段階で他の共有者に連絡しておくことをおすすめします。
抵当権抹消登記を自分で行う場合、法務局はどこに申請しますか?
不動産がある場所を管轄する法務局に申請します。管轄が分からない場合は、法務局のホームページで不動産の所在地から検索できます。
住宅ローン完済と抵当権抹消をスムーズに進めるために
住宅ローンを完済しても、抵当権抹消登記を申請しなければ登記簿の記録は消えません。登録免許税は不動産1個につき1,000円で、司法書士に依頼する場合は報酬が1万円〜2万円程度加わります。親から引き継いだ土地では、相続登記や共有名義、境界未確定の問題が同時に見つかることもあるため、登記事項証明書で現状を確認したうえで、必要に応じて司法書士や土地家屋調査士に相談する流れになります。ぜひ本記事の費用と手続きの流れを参考に、住宅ローン完済後の抵当権抹消を進めてください。
出典
- 法務省「不動産登記法」
- 財務省「登録免許税法」
- 日本司法書士会連合会「司法書士の報酬に関するアンケート結果」
- 法務省「不動産登記令等の改正に伴う添付情報の変更について(平成27年11月2日施行)」
