仮登記とは?本登記との違いと注意点を解説
親から引き継いだ土地の登記簿を取得すると、所有権の欄に「仮登記」の記載が残っていることがあります。仮登記(かりとうき)は不動産登記法105条で定められた登記で、本来登記に必要な書類や条件が整わないとき、または将来の権利変動の請求権を保全するために付けられるものです。
仮登記だけでは所有権の移転や抵当権の設定といった効力は生じず、第三者に対抗する力もありません。本登記に切り替えた時点で、仮登記をした順位にさかのぼって権利を主張できる「順位保全効(じゅんいほぞんこう)」が働く点が、仮登記と本登記の決定的な違いです。
本記事では仮登記と本登記の違い、仮登記が付いた土地を売却できるかどうか、抹消の手続きと費用について解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 親から引き継いだ土地の登記簿に仮登記の記載があり、本登記との違いが分からず不安を抱えている方
- 62歳で法律用語に不慣れなまま、仮登記が残ったままの土地を売却できるか専門家に相談する前に確認したい方
- 共有名義の土地に仮登記が付いていると知り、売却手続きに影響しないか気になっている方
不動産の登記簿に「仮登記」が記載されているとき、何が起きているのか
不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)を取得すると、権利部に「仮登記」という文字とともに受付年月日が記載されている場合があります。仮登記は不動産登記法105条に基づく登記で、権利の変動そのものではなく、将来の権利変動に備えて順位をあらかじめ押さえておくための仕組みです。
仮登記には大きく2つの種類があります。1号仮登記は、所有権移転などの申請に必要な書類がまだ整っていない場合に、とりあえず順位を確保するために付けられます。2号仮登記は、売買予約や将来の請求権を保全するために付けられるもので、土地の仮登記では2号仮登記が使われる場面が多く見られます。
親から引き継いだ土地にこの記載が残っている場合、過去の売買予約や担保設定の交渉が本登記に進まないまま時間が経過したケースが少なくありません。
登記簿に仮登記の記載があっても、それだけで所有権が移転しているわけではありません。まず記載内容を確認しましょう。
土地の仮登記と本登記の違い|効力はどこまで及ぶか
対抗力の有無
本登記が完了すると、その不動産の権利を第三者に対抗できる力(対抗力)が生まれます。一方、仮登記の段階では対抗力が認められておらず、仮登記だけを根拠に第三者へ所有権や抵当権を主張することはできません。
順位保全効とは
仮登記のあと本登記に切り替えると、本登記の順位は仮登記をした時点にさかのぼります。この効果を順位保全効と呼び、仮登記から本登記までの間に別の権利が登記されていても、仮登記のほうが優先されます。土地の仮登記と本登記の違いは、効力が発生しているかどうかと、この順位の確保にあります。
こうした仮登記義務者・仮登記の権利者・第三者の関係を図にすると次のようになります。
仮登記の義務者
仮登記の権利者
より後の権利者に優先
図のとおり、仮登記をした時点の順位が本登記まで保たれるため、後から登記した第三者より仮登記の権利者が優先されます。
仮登記は権利そのものではなく順位を確保する登記だと理解しておくと、登記簿の記載が読みやすくなります。
売買予約・相続・担保設定|仮登記が付く主な場面
売買予約や財産分与に基づく仮登記
土地の売買予約を結んだ際、買主の請求権を保全するために2号仮登記が使われることがあります。離婚に伴う財産分与請求権を保全するために仮登記が付けられるケースもあり、この場合は財産分与の協議が整った時点で本登記へ切り替えます。共有名義の土地が離婚を経緯に生まれているときの査定書の取り方は離婚で不動産の査定書が必要なときの取り方と注意点で解説しています。
相続や担保設定に伴う仮登記
相続による所有権移転の仮登記は、戸籍の収集など登記に必要な書類が整わない間に順位を確保する目的で使われます。抵当権設定の仮登記は、融資の実行前に順位を押さえておく目的で付けられることが多く見られます。
仮登記の目的は受付番号や原因日付からおおよそ推測できますが、正確な事情は当事者への確認が必要です。
仮登記が残った土地でも売却できるか
仮登記が付いたままでも土地の売却自体は可能ですが、買主にとっては権利関係が不透明に見え、売買契約が成立しにくくなる傾向があります。金融機関も仮登記が残った土地への融資に慎重になることが多く、買主がローンを利用する場合は引き渡し前に仮登記を抹消しておくことが前提になるケースが一般的です。
仮登記の権利者と連絡が取れる場合は、土地の売却を進める前に抹消の同意を得ておくと交渉がスムーズになります。連絡が取れない、または協力を得られない場合は、司法書士や弁護士に相談しながら手続きを進める必要があります。土地の売却にかかる税金や費用の全体像は不動産売却にかかる税金と費用の全体像で解説しています。
仮登記付きの土地を売る場合は、抹消を済ませてからの引き渡しが前提になることを早めに不動産会社へ伝えておきましょう。
抹消の手続きと必要書類|土地の仮登記を消すには
仮登記の権利者と義務者による共同申請
仮登記を抹消する原則的な方法は、仮登記の権利者と土地の所有者(仮登記義務者)による共同申請です。必要になる書類は、仮登記の権利者の実印と印鑑証明書、仮登記識別情報または登記済証、抹消に同意する旨の書面などです。
仮登記の権利者が協力しない場合の単独申請
不動産登記法110条では、仮登記の登記名義人(仮登記の権利者)の承諾を得たうえで、登記上の利害関係人(仮登記義務者を含む)が単独で抹消を申請できることが定められています。ただし、仮登記の権利者が協力しない、または所在が分からず承諾を得られない場合は、仮登記義務者の側から単独で抹消することはできず、原則として訴訟(抹消登記手続請求)などの裁判手続きによって抹消を求める必要があり、時間と費用がかかります。
仮登記の権利者と連絡が取れないケースは司法書士でも対応に時間がかかるため、早めの相談をおすすめします。
仮登記の抹消にかかる費用と期間の目安
仮登記の抹消にかかる登録免許税(とうきにかかる国税)は、登録免許税法の規定により不動産1個につき1,000円が原則です。これに司法書士へ依頼する場合の報酬が加わり、書類がすべて揃っていれば法務局への申請から完了まで1〜2週間程度で終わることが多いですが、仮登記の権利者の協力を得るまでの交渉に時間がかかる場合は、全体で数か月を要することもあります。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 登録免許税(抹消登記) | 不動産1個につき1,000円 |
| 司法書士報酬 | 2万円〜5万円程度 |
| 完了までの期間(書類が揃っている場合) | 1〜2週間程度 |
出典:登録免許税法をもとに作成(2026年9月時点)
司法書士報酬は依頼先によって差があるため、見積もりを複数取って比較することをおすすめします。
共有名義の土地に仮登記がある場合の注意点
共有名義の土地では、共有者のうち一人の持分だけに仮登記が付いている場合があります。この場合、土地全体を売却するには仮登記が付いた持分についても抹消の手続きを済ませる必要があり、他の共有者だけの合意では売却を進められません。
土地の売却を検討する前におおよその売却相場を把握しておきたい場合は匿名査定を使う方法もありますが、匿名査定には実際の取引価格と差が出やすいという注意点もあります。匿名査定のメリットと注意点は匿名査定のデメリットと注意点で解説しています。
共有名義の土地は、仮登記の抹消と共有者全員の同意という2つの手続きを同時に進める必要があります。
仮登記を放置した場合のリスク
仮登記をそのまま放置しても、登記簿の記載が自動的に消えることはありません。仮登記の権利者が亡くなり相続が発生すると、抹消に必要な関係者が増え、手続きがさらに複雑になります。相続した土地の権利関係を次の世代に持ち越す前に、仮登記の内容と抹消の可否を確認しておくことが、将来の土地売却をスムーズに進める土台になります。
仮登記を放置する期間が長くなるほど、関係者の特定が難しくなります。早い段階で確認しておきましょう。
よくある質問
仮登記が付いた土地でも売却できますか
売却自体は可能ですが、仮登記を抹消しないと買主が決まりにくく、融資も付きにくい傾向があります。抹消の見通しを立てたうえで売却活動を進めることが現実的です。
仮登記を放置するとどうなりますか
登記簿の記載は自動的には消えず、仮登記の権利者が亡くなるなど関係者が増えると、抹消の手続きがさらに複雑になります。
仮登記の抹消は自分で申請できますか
仮登記の抹消に必要な書類がすべて揃い、仮登記の権利者の協力が得られる場合は自分で申請することも可能ですが、不動産登記法110条による単独申請や裁判手続きが必要になる場合は、司法書士や弁護士への相談をおすすめします。
仮登記を本登記に切り替えるにはどうすればいいですか
原則として仮登記の権利者と義務者が共同で本登記の申請を行います。協力が得られない場合は、本登記を求める訴訟を起こして確定判決を得る方法があります。
仮登記と予告登記は同じものですか
予告登記は2005年の不動産登記法改正によって廃止された制度で、現在は仮登記とは別の扱いになります。登記簿に予告登記の記載が残っている場合は、法務局や司法書士への確認をおすすめします。
仮登記とは何かを理解して土地売却に備える
仮登記は不動産登記法105条に基づき、将来の権利変動に備えて順位を確保しておく登記で、本登記とは異なり対抗力を持ちません。土地の売却を控えて仮登記の記載に気づいた場合は、仮登記の種類と権利者を確認し、抹消の手続きと費用の見通しを立てることが欠かせません。共有名義の土地では、共有者全員の同意と仮登記の抹消を同時に進める必要があり、時間がかかることも想定しておきたいところです。ぜひ本記事の仮登記と本登記の違い、抹消の手続きを参考に、専門家への相談を進めてください。
出典
- 法務省「不動産登記法」
- e-Gov法令検索「登録免許税法」
- e-Gov法令検索「不動産登記法第110条」
