個人間で行う土地売買の流れ|手続きと必要な準備
親から相続した土地を、不動産会社を通さず親族間で直接売買したいと考えて、契約書のひな形や登記の手続きをインターネットで調べても、断片的な情報しか見つかりません。個人間の土地売買は宅地建物取引業法の規制対象外のため、売主と買主が自分たちで売買契約書を作成し、法務局で所有権移転登記を申請すれば成立します。ただし境界が未確定の土地や共有名義の土地では、測量や共有者全員の合意といった準備が別途必要になります。本記事では、個人間で土地売買を進める際の流れと必要な準備、登記や税金の注意点を解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 62歳、親から相続した土地を仲介を通さず親族間で個人売買したいが、手続きの流れが分からず不安な方
- 境界未確定のまま個人間で土地を売買することになり、必要な準備を法律用語なしで理解したい方
- 共有名義の兄弟間で土地を譲り渡すにあたり、専門家に頼む前に基礎的な流れを把握したい方
個人間の土地売買で確認したい土地の権利関係
土地の個人間売買を始める前に、まず確認するのは土地の所有者と権利関係です。登記事項証明書を法務局で取得すると、現在の所有者の名義、抵当権や地上権の有無が分かります。登記事項証明書は、書面請求の場合は600円、オンライン請求で郵送を選ぶ場合は520円、オンライン請求で窓口交付を選ぶ場合は490円で取得でき、オンライン請求も利用できます(令和7年4月1日時点の登記手数料)。
相続した土地を売る場合は、相続登記が済んでいるかどうかも確認してください。不動産登記法第76条の2により、相続による所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務付けられており、怠ると10万円以下の過料の対象になります。名義が亡くなった親のままでは、買主への所有権移転登記も進められません。
個人間の土地売買では、売主から買主へ代金と引き換えに所有権が移る関係を整理しておくと手続きの全体像がつかみやすくなります。
土地の所有権
登記で取得する所有権
図は、売主が土地の所有権を手放し、買主が代金の支払いと引き換えに登記上の所有権を取得する流れを示しています。
相続登記が未了のままでは買主への所有権移転登記ができないため、売買の前に名義を確認してください。
境界未確定の土地は個人間売買できるか|筆界と地積測量図
筆界(ひっかい、隣接する土地との境界を示す公的な区切り線)が未確定のままでも、土地の個人間売買自体は可能です。ただし売買契約書に面積や境界の現況を明記せず進めると、引き渡し後に隣地所有者との境界紛争に買主が巻き込まれる可能性があります。
境界の有無を確認する手がかりは、法務局で取得できる地積測量図と公図です。地積測量図が備え付けられていれば境界が確定している可能性が高く、備え付けられていない古い土地では未確定のまま相続・売買が続いていることも珍しくありません。登記事項証明書の交付手数料は書面請求600円、オンライン請求・送付520円、オンライン請求・窓口交付490円で、地積測量図・土地所在図の写しの交付手数料は1事件500円です(令和7年4月1日時点)。
境界を確定させたい場合は、土地家屋調査士に依頼して隣接地所有者の立ち会いのもとで境界確定測量を行います。測量の規模や隣接地の数によって必要な期間や費用が変わるため、見積もりの段階で確認してください。
境界未確定のまま契約書に「現況有姿」とだけ書くと、後日の紛争で売主側が不利になることがあるため注意してください。
土地の個人間売買に必要な準備と書類
個人間で土地売買を進める場合も、売主が用意する書類は仲介を使う場合とほとんど変わりません。登記事項証明書、公図、地積測量図(あれば)、固定資産税評価証明書、本人確認書類、実印と印鑑証明書などをそろえます。必要書類の詳しい取得先と取得方法は土地売却に必要な書類一覧で解説しています。
買主側も代金の支払い能力を証明する書類や本人確認書類を準備します。親族間売買では省略されがちですが、後の税務調査で代金授受の実態を問われることがあるため、振込記録を残すなど資金の流れを明確にしておくことが大切です。
親族間売買でも代金は銀行振込で授受し、通帳に記録を残しておくと後のトラブルを防げます。
売買契約書の作成から代金決済までの流れ
売買契約書に記載する項目
個人間の土地売買契約書には、土地の所在・地番・地積といった物件の表示、売買代金、支払方法と期日、引き渡し時期、契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)の取り扱いを明記します。境界が未確定の場合は、その旨と対応方針も記載しておくと後のトラブルを防げます。
代金決済と引き渡しのタイミング
代金決済は、所有権移転登記の申請と同じ日に行うのが一般的です。買主が代金を振り込んだことを確認してから、売主が登記に必要な書類を引き渡す流れにすると、どちらか一方だけが先に義務を果たすリスクを避けられます。
契約不適合責任の免責特約を入れるかどうかは、土地の状態によって判断が分かれるため専門家に確認してください。
土地の所有権移転登記にかかる手続きと費用
所有権移転登記の申請方法
代金決済が終わったら、土地の所在地を管轄する法務局に所有権移転登記を申請します。売主の登記識別情報(権利証)と印鑑証明書、買主の住民票などを添えて申請し、不備がなければ数日から1週間程度で登記が完了します。
登記にかかる費用
登記の際には登録免許税がかかるほか、司法書士に手続きを依頼する場合は報酬が別途必要になります。税率や軽減措置は改正されることがあるため、申請前に法務局か司法書士に最新の内容を確認してください。
登記は自分で申請することもできますが、添付書類の不備で差し戻されることが多く、司法書士への依頼が結局近道になるケースが目立ちます。
個人間の土地売買で発生する税金とみなし贈与のリスク
譲渡所得税の計算
売主には、土地を売った代金から取得費や譲渡費用を差し引いた譲渡所得に対して譲渡所得税がかかります。譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える長期譲渡所得は税率20.315%、5年以下の短期譲渡所得は税率39.63%です(いずれも復興特別所得税を含む、2026年9月時点)。
みなし贈与とみなされるケース
親族間の土地売買で特に注意したいのが、売買価格を時価より著しく低く設定した場合です。時価との差額が実質的な贈与とみなされ、買主に贈与税が課される可能性があります(相続税法第7条)。親族間だからと代金を低く抑えるのではなく、周辺の取引価格の売却相場を踏まえた金額で契約することが重要です。
売却相場をつかめないまま代金を決めると、みなし贈与と指摘されるリスクが高まるので、売却相場の確認は欠かせません。
共有名義の土地を親族間で売買するときの注意点
兄弟間で相続した土地が共有名義になっている場合、土地全体を売買するには共有者全員の同意が必要です。自分の持分だけを売買する場合は単独でも手続きできますが、買主が土地全体を利用できるわけではないため、実際の取引では話し合いがまとまらず進まないこともあります。
共有状態を解消する方法としては、ほかの共有者の持分を買い取る、あるいは土地を売却した代金を持分に応じて分ける換価分割(かんかぶんかつ、遺産を売却して得た代金を共有者の持分に応じて分配する方法)などがあります。どの方法を選ぶかで必要な手続きや税金の扱いが変わるため、早い段階で共有者全員の意向を確認しておくことをおすすめします。
共有者の一人でも連絡が取れないと売買全体が止まるため、早めに全員の連絡先と意向を確認しておいてください。
個人間売買で専門家に依頼すべき場面
境界が未確定な土地や共有名義が複雑な土地は、土地家屋調査士に境界確定測量を、司法書士に契約書のチェックと登記申請を依頼すると手続きの抜け漏れを防げます。価格設定に不安がある場合は、不動産会社の匿名査定で売却相場のおおまかな水準を把握しておく方法もあります。匿名査定の精度と使い方は匿名査定・AI査定はどこまで正確?で解説しています。
個人間売買ではなく不動産会社に買取を依頼する選択肢もあり、仲介との違いは土地の買取とは?仲介との違いと売却の流れで解説しています。土地売却全体の費用や税金の流れを確認したい場合は不動産売却の完全ガイドで解説しています。
専門家への依頼費用を惜しんで手続きを誤ると、登記のやり直しや税務上の指摘で余計な出費につながることがあります。
よくある質問
個人間の土地売買に仲介手数料はかかりますか?
不動産会社を介さないため仲介手数料はかかりません。ただし契約書の作成や登記を司法書士に依頼すると、その報酬が別途発生します。
境界が未確定のままでも売買契約は成立しますか?
成立します。ただし面積や境界の状況を契約書に明記しないと、引き渡し後に隣地所有者との境界紛争に買主が巻き込まれるおそれがあるため、現況を正確に書き残すことが大切です。
親族間で土地を安く売ると贈与税がかかりますか?
売買価格を時価より著しく低く設定すると、差額が贈与とみなされて買主に贈与税が課される可能性があります。周辺の取引価格の売却相場を踏まえた金額で契約することが重要です。
相続登記が済んでいない土地でも売買できますか?
名義が被相続人のままでは買主への所有権移転登記ができないため、売買の前に相続登記を済ませる必要があります。相続登記は義務化されており、怠ると10万円以下の過料の対象になります。
契約書は自分で作成しても有効ですか?
当事者間で合意した内容であれば、自分で作成した契約書でも有効です。ただし記載項目の漏れがトラブルの原因になりやすいため、作成後に司法書士へ内容を確認してもらうことをおすすめします。
土地売買の流れを個人間でも押さえて準備を進める
個人間の土地売買は、権利関係の確認、境界の確認、契約書の作成、代金決済、所有権移転登記という流れで進み、仲介を使う場合と大きな違いはありません。違いは、これらをすべて自分たちで準備しなければならない点にあり、特に境界未確定の土地や共有名義の土地、親族間でのみなし贈与のリスクには注意が必要です。ぜひ本記事の個人間での土地売買の流れを参考に、必要な準備を一つずつ確認してから手続きを進めてください。
出典
- 法務省「不動産登記法」
- 法務省「登記手数料令」
- 法務省「登記手数料について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/TESURYO/)
- 法務局「地図,地積測量図等の写し交付の郵送請求について」
- 国税庁「土地や建物を売ったときの税金」
- 国税庁「贈与税がかかる場合(相続税法第7条)」
- 三井不動産リアルティ「譲渡所得の計算方法(税金の手引き)」
- 税経ホームページ「譲渡所得を計算するときの基本のキ」
- 税理士法人チェスター「換価分割とは」
- 公認会計士事務所コラム「換価分割と代償分割の違い」
