土地の売買契約で確認すべきポイントと注意点
親から引き継いだ土地を売ろうとすると、境界が確定していない、名義が親族との共有のまま、あるいは借地権が絡んでいるなど、契約書を前にして手が止まる方は少なくありません。筆界(ひっかい、登記上の土地の境界線)が未確定の土地でも、売買契約そのものは結べます。ただし契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任。引き渡した土地が契約内容と異なるときの売主の責任)のリスクが残るため、どこまで確定させてから契約するかが実務上の分かれ目になります。本記事では土地の売買契約で確認すべき条項と、境界・共有名義・借地権が絡む場合の注意点を解説します(2026年9月時点の制度に基づきます)。
この記事はこんな方に向いています
- 親から相続した土地を売却する契約を控え、境界未確定のまま契約してよいか法律用語が難しく不安な方
- 共有名義の土地を売る契約書に持分割合をどう記載すべきか、専門家に頼る前に自分で確認しておきたい方
- 借地権付きの土地を売却するにあたり、契約書の特約条項で見落としがないか事前に把握したい方
土地の売買契約とは|不動産売買契約の基本的な流れ
土地の売買契約は、売主と買主が代金と引き渡し条件に合意し、宅地建物取引業法に基づく重要事項説明を経て契約書に署名・押印する手続きです。マンションや戸建ての売買契約と異なり、建物部分の設備や性能に関する条項がない代わりに、境界・地目・地積といった土地固有の項目が契約書の中心になります。
重要事項説明から引き渡しまでの3段階
手続きはおおむね3段階に分かれます。まず不動産会社が宅地建物取引士を通じて重要事項説明を行い、土地の権利関係や法令上の制限を買主に伝えます。次に売買契約を締結し、手付金を授受します。最後に残代金の決済と同時に所有権移転登記を申請し、土地を引き渡します。この一連の流れを事前に把握しておくと、契約書のどの条項が何のためにあるのか理解しやすくなります。
重要事項説明は宅地建物取引士しか行えません。説明の場に立ち会う人の資格証を確認しておくと安心です。
境界未確定の土地は売却できるのか|筆界確定測量との関係
筆界が未確定の土地でも、売主と買主が合意すれば売買契約は成立します。ただし契約後に隣地との境界をめぐって争いが起きると契約不適合責任を問われる可能性があるため、多くの不動産会社は、契約の前か引き渡しまでの間に土地家屋調査士へ筆界確定測量を依頼するよう勧めます。
測量には数週間から数か月かかることがあり、隣地所有者の立ち会いと同意も必要です。登記事項証明書や地積測量図を事前に取得して現況を確認しておくと、測量の見積もりや交渉がスムーズに進みます。これらの書類は法務局の窓口やオンライン請求で入手できます。法務局窓口交付の場合、登記事項証明書は1通600円、地積測量図などの図面情報(地図等情報)は1通500円です(2025年4月1日時点)。土地の評価額の目安を自分で確認したい場合は、路線価の調べ方で解説しています。
測量費用は隣地の数や筆界の争いの有無で大きく変わります。見積もりは契約前に取っておきましょう。
共有名義の土地における売買契約の持分割合の書き方
共有名義の土地を売却する場合、共有者全員の同意がなければ契約は成立しません。民法上、共有物全体を処分する行為には共有者全員の合意が必要とされているためです。契約書には各共有者の持分割合を登記事項証明書の記載どおりに正確に記入し、売買代金の受け取りも持分に応じて分配する旨を明記します。
共有者の一部が遠方に住んでいる、あるいは連絡が取りにくいといった事情があると、契約書への署名・押印だけで手続きが数か月遅れることもあります。代理人を立てる場合は委任状と印鑑証明書を揃え、代理権の範囲を契約書に明記しておくと後のトラブルを防げます。
共有者の中に認知症や未成年の方がいる場合は、法定代理人や成年後見人の選任が必要になることがあります。
借地権付き土地の売却で見落としやすい特約条項
借地権が設定された土地を売る場合、売主が所有しているのは借地権であり、底地(土地そのものの所有権)は地主が持っています。借地権を第三者に譲渡するには、地主の承諾が必要になる契約が一般的です。承諾を得ずに契約を進めると、地主に対抗できず、背信的行為と認められる場合には地主から借地契約を解除されるおそれがあります。
契約書には、地主の承諾が得られることを契約の条件とする特約(停止条件付き特約)を盛り込むのが実務上の標準です。承諾料の負担者、承諾が得られなかった場合の契約解除と手付金の返還についても明記しておくと、後の紛争を防げます。
地主の承諾書は口頭だけで済ませず、必ず書面で取得して契約書に添付しておくことをおすすめします。
契約書に記載すべき重要事項と契約不適合責任
土地の売買契約書には、代金額と支払時期、引き渡し時期のほかに、境界の明示方法、測量費用の負担者、契約不適合責任の期間と範囲を明記します。これらの条項は、後から境界や地中埋設物の問題が見つかったときに、どちらがどこまで責任を負うかを決める根拠になります。
境界明示義務と測量図の添付
多くの契約書では、売主が引き渡しまでに境界標を設置し、確定測量図を買主に交付する義務を負う形で条項を定めます。測量が間に合わない場合は、引き渡し後一定期間内に実測し、実測面積との差額を精算する「実測清算」の特約を入れるケースもあります。
契約不適合責任の範囲と期間
土壌汚染や地中埋設物など、引き渡し後に発覚した不具合について、売主が責任を負う期間を契約書で定めます。個人間の売買では「引き渡しから3か月以内」といった期間を設けることが多く、期間を過ぎると買主が責任を追及できなくなる点に注意が必要です。
契約不適合責任を免除する特約を結ぶこともできますが、買主が不利益を被らないよう価格面での調整が必要です。
土地の売買契約に関わる人と権利の関係は、契約前に整理しておくと見落としが減ります。
土地の所有権(共有名義なら共有者全員の同意が必要)
所有権移転登記を取得
共有名義や借地権が絡む場合は、図の「売主」の箱の中にさらに共有者全員や地主との関係が加わると考えると、契約前に誰の同意が必要かを把握しやすくなります。
土地の引き渡しまでの流れと必要書類
契約締結後、引き渡しまでには登記事項証明書、固定資産税評価証明書、境界確認書、印鑑証明書などの書類を揃えます。司法書士が所有権移転登記の手続きを行うため、決済当日までに必要書類をまとめて渡せるよう準備しておくと、当日の手続きが滞りません。
引き渡しと同時に固定資産税・都市計画税の精算を行うのが一般的で、1月1日(または4月1日)を起算日とし、引き渡し日を基準に日割り計算します。仲介を依頼している場合の仲介手数料は、売買価格が400万円を超える場合、「売買価格×3%+6万円」に消費税を加えた額が上限です。土地売却全体の流れと費用については、不動産売却の完全ガイドで解説しています。
固定資産税の精算額は自治体や契約書の起算日の定め方で変わるため、事前に不動産会社へ確認しておくと安心です。
相談先の選び方|司法書士・土地家屋調査士・不動産会社の役割
土地の売買契約に関わる専門家は役割が分かれています。土地家屋調査士は境界の確定測量と筆界の確認を担当し、司法書士は所有権移転登記の手続きを担当します。不動産会社は重要事項説明と契約書の作成・仲介を担当し、税理士は譲渡所得税の申告を担当します。
境界が未確定で共有名義の土地のように複数の問題が重なるケースでは、まず不動産会社に相談し、必要に応じて土地家屋調査士や司法書士を紹介してもらう進め方が現実的です。売却価格の見当を自分でつけたい場合、匿名査定やAI査定を使う方法もありますが、境界未確定地や共有名義の土地は正確な価格を出しにくい傾向があります。精度の限界については匿名査定・AI査定の記事で解説しています。
相談先を一つに絞らず、複数の専門家の見立てを聞くと、見落としていた権利関係に気づけることがあります。
よくある質問
境界が未確定のまま土地の売買契約を結んでも大丈夫ですか?
契約自体は結べますが、契約不適合責任のリスクが残ります。契約書に境界明示義務と測量費用の負担者を明記し、可能であれば引き渡しまでに確定測量を済ませておくことをおすすめします。
共有名義の土地は共有者の一部だけで売買契約を結べますか?
共有名義の土地の売却には共有者全員の同意が必要です。一部の共有者だけの判断で契約を結ぶことはできません。連絡が取りにくい共有者がいる場合は、早めに意思確認を進めておく必要があります。
借地権付きの土地を売る場合、地主の承諾は必要ですか?
借地権を第三者に譲渡するには、一般的に地主の承諾が必要です。承諾を条件とする特約を契約書に盛り込み、承諾が得られなかった場合の手付金返還についても定めておくと安心です。
土地の売買契約を結んだ後にキャンセルできますか?
契約書に手付解除の条項があれば、買主は手付金を放棄し、売主は手付金の倍額を返還することで契約を解除できます。ただし相手方が履行に着手した後は解除できなくなる点に注意してください。
土地の売買契約にかかる税金はいつ・どのくらいかかりますか?
売却益が出た場合、譲渡所得税がかかります。所有期間が5年を超える長期譲渡は税率20.315%、5年以下の短期譲渡は税率39.63%です(復興特別所得税を含みます)。申告は土地を売却した年の翌年に行います。
土地の売買契約を結ぶ前に確認しておきたいこと
土地の売買契約は、境界・共有名義・借地権といった土地固有の権利関係を契約書にどう落とし込むかで、後々のトラブルの有無が大きく変わります。筆界確定測量や共有者全員の同意、地主の承諾といった準備を契約前に進めておけば、契約不適合責任を問われるリスクを抑えられます。ぜひ本記事の土地の売買契約のポイントを参考に、専門家への相談も組み合わせながら契約手続きを進めてください。
出典
- 国税庁「土地建物の譲渡所得の税金」
- 法務省「登記事項証明書等の交付手数料」
- 法務省「登記手数料について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/TESURYO/)および「不動産登記・商業法人登記における主な登記手数料(令和7年4月1日~)」
- 国土交通省「宅地建物取引業法に基づく重要事項説明」
- 民法第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)および最高裁判例(背信的行為の法理)
