所有権保存登記とは?手続きの流れと費用をわかりやすく解説
親から引き継いだ土地に建つ建物の登記簿謄本を取得すると、表題部(ひょうだいぶ、建物の構造や面積などを記録する部分)しか記録されておらず、権利部の所有者欄が空欄のままになっている場合があります。固定資産税の納税通知書は毎年届いているのに、登記簿には所有者の名前が無いという状態です。
これは所有権保存登記(しょゆうけんほぞんとうき)が済んでいないために起きます。所有権保存登記は、不動産登記法74条に基づき、新築した建物や未登記の建物について所有権を初めて登記簿に記録する手続きで、登録免許税(とうろくめんきょぜい、登記の際に国へ納める税金)は原則として固定資産税評価額の0.4%です(2026年9月時点)。
本記事では、所有権保存登記とはどのような手続きかという基本から、必要になる場面、申請の流れ、かかる費用の目安までを解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 新築した建物や引き継いだ土地に所有権保存登記が必要と知り、手続きの流れが分からず困っている方
- 専門家に依頼する前に、所有権保存登記にかかる費用の目安を自分で把握しておきたいという方
- 権利関係が複雑な不動産を前に、聞き慣れない登記の種類を一つずつ整理して理解したい方
所有権保存登記とは|不動産登記簿での位置づけ
不動産登記簿は、建物や土地の構造・面積などを記録する表題部と、所有者や抵当権などの権利関係を記録する権利部に分かれています。新築した建物やこれまで登記されていなかった建物は、まず表題登記(ひょうだいとうき、建物の存在を登記簿に記録する手続き)によって表題部が作られますが、この段階では権利部に所有者の名前はまだ記録されていません。
所有権保存登記は、この権利部に所有権を初めて記録する手続きです。保存登記とは、簡単に言えば「誰が所有者であるかを登記簿に最初に書き込む手続き」のことで、これが完了して初めて、登記簿上の所有者として第三者に対しても所有権を主張できるようになります。
表題部だけの登記簿を見て「登記済みだから安心」と判断するのは早すぎます。所有者欄の有無を必ず確認してください。
不動産を新築・相続した際に所有権保存登記が必要になる場面
新築した建物を所有するとき
住宅を新築した場合、完成後に表題登記を申請し、続けて所有権保存登記を申請します。金融機関から住宅ローンを借りる場合は融資と同時に抵当権(ていとうけん、借入の担保として不動産に設定される権利)設定登記を行うため、その前提として所有権保存登記を済ませておく必要があります。
相続で未登記の建物を引き継いだとき
親の代から所有権保存登記が済んでいない古い建物を相続した場合も、相続人が直接所有権保存登記を申請できます。表題部に記載された所有者が亡くなっている場合は、相続人であることを示す戸籍謄本や法定相続情報一覧図を添えて申請する形になります。
未登記のまま何十年も放置された建物は相続人が増えて手続きが複雑になりやすいため、早めの対応をおすすめします。
所有権移転登記や抵当権設定登記と所有権保存登記の違い
所有権保存登記は、権利部にまだ何も記録されていない不動産に初めて所有権を記録する登記です。これに対し、所有権移転登記は売買や相続によって所有者が変わるときに申請する登記で、抵当権設定登記は住宅ローンなどの担保として新たな権利を付けるときに申請する登記です。
相続した土地や建物を売却する場合、建物が未登記のままでは買主への所有権移転登記ができません。所有権保存登記を済ませたうえで、買主への所有権移転登記を行う順番になります。
売買契約自体は保存登記がなくても締結できますが、買主への所有権移転登記を行うには先に保存登記を済ませておく必要があるため、売却を考えているなら先に確認しておきましょう。
建物の表題登記から所有権保存登記までの手続きの流れ
所有権保存登記に必要な書類
所有権保存登記の申請には、登記申請書のほか、建物が自分の所有であることを示す書類が必要です。新築の場合は建築を行った工事会社が発行する工事完了引渡証明書や建築確認書類、相続の場合は相続関係を示す戸籍謄本や法定相続情報一覧図、固定資産税評価証明書などを添付します。
法務局への申請
申請先は、建物が所在する地域を管轄する法務局です。窓口への持参だけでなく、オンラインでの申請も可能で、書類に不備が無ければ申請から登記完了まで1〜2週間程度が目安です。
書類に不備があると法務局から補正の連絡が入り完了まで時間がかかるので、事前の確認が大切です。
登録免許税や司法書士報酬など所有権保存登記にかかる費用
所有権保存登記の登録免許税は、原則として固定資産税評価額の0.4%です。一定の条件を満たす新築住宅については軽減税率が適用される場合があり、2026年9月時点では0.15%程度まで下がるケースがあります。適用条件や期限は改正される可能性があるため、最新の情報は法務局や司法書士に確認してください。
自分で申請すれば登録免許税だけで済みますが、司法書士に依頼する場合は別途報酬がかかります。
| 費用の種類 | 目安 |
|---|---|
| 登録免許税(原則) | 固定資産税評価額の0.4% |
| 登録免許税(新築住宅の軽減措置適用時) | 固定資産税評価額の0.15%程度 |
| 司法書士に依頼する場合の報酬 | 3万円〜6万円程度 |
出典:国税庁「登録免許税の税額表」(2026年9月時点)をもとに作成
軽減税率の適用には期限や条件があるため、最新情報は法務局か司法書士に確認してください。
相続した土地・家屋が未登記かどうかを確認する方法
相続した土地に建つ建物が所有権保存登記を済ませているかどうかは、法務局で登記事項証明書を取得すれば確認できます。固定資産税の納税通知書に記載された建物と、登記簿上の表題部の記載を照らし合わせ、権利部に所有者の名前が記録されているかどうかを見れば判断できます。
未登記の建物から所有権保存登記を経て所有者が記録されるまでの関係は、次の図のとおりです。
表題部のみ記録
権利部に所有権が記録される
表題部だけが記録された状態から、所有権保存登記によって権利部に所有者の名前が記録される流れを示しています。
登記事項証明書は法務局の窓口やオンラインで誰でも取得できるので、まずは現状を確認してみてください。
司法書士に依頼するか自分で登記するか|所有権保存登記の頼み先
新築住宅のように権利関係が単純な場合は、自分で所有権保存登記を申請することも可能です。一方、相続が複数回重なって共有名義になっている不動産では、戸籍謄本の収集や相続人の特定が複雑になり、司法書士に依頼するのが現実的な選択になります。
建物の構造や面積を登記簿に記録する表題登記は土地家屋調査士が担当し、所有権保存登記や所有権移転登記は司法書士が担当するという役割分担があります。依頼先を誤ると余計な手間がかかるため、どちらの手続きかを確認してから相談先を選んでください。
所有権保存登記を済ませた不動産を将来売却したり、相続人同士で分割したりする場合には、査定書の作成方法を知っておくと話し合いがスムーズになります。遺産分割協議書に添える査定書の作成方法は遺産分割協議書用の査定書の作成方法で解説しています。離婚に伴って共有名義の不動産を分ける場合の査定書は離婚協議書用の査定書の作成方法で解説しています。売却時にかかる登録免許税以外の税金や費用の全体像は不動産売却にかかる税金と費用の全体像で解説しています。
表題登記は土地家屋調査士、保存登記は司法書士と役割が分かれているため、依頼先を間違えないようにしましょう。
よくある質問
所有権保存登記と表題登記は何が違いますか?
表題登記は建物の構造や面積といった物理的な情報を登記簿の表題部に記録する手続きで、所有権保存登記は権利部に所有者を記録する手続きです。表題登記を済ませたあとに所有権保存登記を申請する順番になります。
所有権保存登記をしないとどうなりますか?
登記簿上に所有者が記録されないため、第三者に所有権を主張できず、建物の売却や住宅ローンの抵当権設定もできません。相続が重なると手続きが複雑になるため、早めに済ませておくことをおすすめします。
所有権保存登記は自分で申請できますか?
新築住宅など権利関係が単純な場合は自分で申請することも可能です。相続が複数回重なっている不動産では戸籍謄本の収集や相続人の特定が複雑になりやすく、司法書士への依頼が現実的です。
相続した未登記の建物の所有権保存登記は誰が申請できますか?
表題部に記載された所有者が亡くなっている場合、相続人が申請できます。相続関係を示す戸籍謄本や法定相続情報一覧図を添付して、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。
所有権保存登記にかかる期間はどのくらいですか?
必要書類に不備が無ければ、申請から登記完了まで1〜2週間程度が目安です。相続人の特定に時間がかかる場合は、戸籍謄本の収集だけで数週間から数か月かかることもあります。
所有権保存登記とは何かを理解し、早めに手続きを進める
所有権保存登記は、不動産登記法74条に基づき、建物の所有権を初めて登記簿の権利部に記録する手続きです。新築した住宅だけでなく、親から引き継いだ未登記の建物を相続した場合にも必要になり、登録免許税は固定資産税評価額の0.4%が原則です。権利関係が単純なら自分で申請することもできますが、相続人が複数いる場合は司法書士への依頼を検討する価値があります。ぜひ本記事の手続きの流れと費用の目安を参考に、未登記のまま放置している不動産があれば早めに所有権保存登記を進めてください。
出典
- e-Gov法令検索「不動産登記法」
- 国税庁「登録免許税の税額表」
- 法務省「不動産登記の手続きについて」
- 財務省「登録免許税に関する資料」
