SHARE:

現況測量図とは?取得方法と売却時の活用法

親から引き継いだ土地を売却しようとすると、不動産会社から「現況測量図(げんきょうそくりょうず)はありますか」と尋ねられ、土地に関する書類を探しても見つからないまま、仲介の話が止まります。法務局に保管されている地積測量図も、古い時期に測量された土地では現況と大きくずれていることが少なくありません。

現況測量図とは、境界標や塀など現在の状況をもとに土地家屋調査士が測量して作成する図面で、隣接地の所有者から境界の合意を得た確定測量図とは異なり、法的な境界確定の効力は持ちません。

本記事では、現況測量図の意味と取得方法、公図・地積測量図との違い、不動産売却での活用法を解説します。

この記事はこんな方に向いています

  • 親から引き継いだ土地の境界が未確定で、現況測量図が何を意味するのか分からず基礎から理解したい方
  • 共有名義の土地を売却する前に、専門家へ相談する前段階として測量図の取得方法を自分で確認しておきたい方
  • 法律用語に不慣れなまま土地売却の話が進みそうで、現況測量図の活用法だけでも先に押さえておきたい方

現況測量図とは|不動産売却で提示を求められる図面

現況測量図とは、土地家屋調査士が現在の境界標や塀、建物の位置を測量し、その結果をもとに作成する図面です。登記簿に記録される地積測量図とは別の図面で、法務局への届け出は必要ありません。

不動産会社が土地の売却を仲介する際に現況測量図の提示を求めるのは、買主に土地の形状や面積、隣地との位置関係を具体的に示すためです。境界標が現地に残っていれば、土地家屋調査士はその位置を基準に図面を作成でき、古い土地でも比較的短期間で仕上がります。

現況測量図は境界確定の効力を持たないため、売買契約の段階で確定測量図への切り替えを求められる場合があります。

公図・地積測量図・確定測量図との違い|現況測量図と不動産登記の関係

土地に関する図面には現況測量図のほかにも複数の種類があり、それぞれ作成の目的と精度が異なります。

公図と地積測量図は何を表す図面か

公図は、明治時代の記録を引き継いだ図面で、法務局に保管されています。土地のおおよその形状と位置関係を示しますが、距離や角度の精度は低く、現地の実際の形とずれていることも珍しくありません。地積測量図は、土地を分筆したときや表示登記を行ったときに土地家屋調査士が作成し、法務局に提出される図面です。測量時点での境界が示されますが、作成年によって精度に差があり、古いものは現況と合わないこともあります。

確定測量図との違い|境界が確定しているかどうか

確定測量図は、隣接地の所有者全員と境界の位置を確認し、筆界確認書(ひっかいかくにんしょ)に署名と押印を得たうえで作成する図面です。現況測量図は、この隣地所有者との合意手続きを経ていないため、境界標の位置を示すだけで、法的な境界確定の効力を持ちません。

現況測量図と確定測量図の違いは、隣接地の所有者との関係で見ると分かりやすくなります。

あなた(土地の所有者)
現況測量図を取得
←境界は未確定→
隣接地の所有者
境界への合意なし

図の通り、現況測量図はあなたと隣接地の所有者の間で境界の合意が成立していない状態を示しています。

公図はおおよその形状を示すだけなので、正確な境界の位置は地積測量図や確定測量図で確認してください。

土地の境界・面積・建物配置|現況測量図でわかること

現況測量図には、現地に残る境界標の位置、塀やブロックなどの工作物の配置、建物の位置と形状、そして実際に測量した土地の面積が記載されます。買主や不動産会社は、この図面を見て土地の形状や高低差、隣地との距離を具体的に把握できます。

実測面積と公簿面積のズレ

登記簿に記載されている面積(公簿面積)は、過去に測量した時点の数値のままになっていることが多く、現況測量図で測り直した実測面積とは数値が一致しない場合があります。古い土地では測量技術の違いから実際の面積より小さく、または大きく記録されていることがあり、このズレは売買契約で「公簿売買」と「実測売買」のどちらを選ぶかにも関わります。

実測面積と公簿面積が大きく異なる場合、売買契約の条件に実測面積を反映するかどうかを事前に確認しておきましょう。

法務局で探す土地の記録と新規作成|現況測量図の取得方法

現況測量図を用意する方法は、既存の図面を探す方法と、新たに作成を依頼する方法の2つです。

法務局・不動産会社に残っていないか確認する

地積測量図であれば法務局で取得できますが、現況測量図は法務局に提出する図面ではないため、個人が保管している書類の中から探す必要があります。土地を購入した際の契約書類一式、以前その土地の売却を担当した不動産会社、建物を建てた際の建築会社に、過去の測量図が残っていないか確認する方法があります。

土地家屋調査士に新規作成を依頼する場合

既存の図面が見つからない場合や、境界標の一部が失われている場合は、土地家屋調査士に新規の現況測量図の作成を依頼します。現地での測量と図面作成だけで完了するため、隣接地の所有者との立会いを必要とする確定測量図よりも手続きが少なく済みます。

古い測量図が見つかっても、境界標の位置が現地と合っているか土地家屋調査士に確認してもらうと安心です。

作成費用と期間の目安|土地の現況測量図を取得する場合

現況測量図の作成費用と期間は、土地の面積や境界標の有無、依頼する土地家屋調査士によって幅があります。確定測量図のように隣接地の所有者との境界確認や立会いの調整を伴わないため、確定測量図より費用を抑えられ、期間も短くて済む傾向があります。

確定測量図では、隣地所有者との日程調整や協議に数週間から数か月かかることがありますが、現況測量図は現地測量と図面作成の工程だけで進められるため、境界標が明確に残っている土地であれば比較的短期間で仕上がります。正確な金額と期間は土地の状況によって異なるため、依頼前に複数の土地家屋調査士に見積もりを取って確認してください。

見積もりは土地の形状や境界標の有無で大きく変わるため、複数の土地家屋調査士に相談することをおすすめします。

不動産売却における現況測量図の活用法

現況測量図は、不動産売却の仲介を依頼する不動産会社に土地の形状や面積を正確に伝える資料として使えます。買主に対しても、境界標の位置や隣地との距離を示す説明資料として提示でき、口頭の説明だけよりも土地の状態を具体的に伝えられます。

土地売却を急いで概算の価格を知りたい段階では、匿名査定・AI査定で売却相場の目安をつかむ方法もありますが、こうした査定は測量図がない状態の概算にとどまります。実際に売買契約へ進む段階では、買主や不動産会社から現況測量図の提示を求められる場面が多く、売買契約書に「実測面積に基づいて売買代金を確定する」といった条件が付くこともあります。

測量図の提示が遅れると売買契約の進行が止まることがあるため、売却を決めたら早めに準備を進めましょう。

共有名義・借地の土地を売る前に確認したいこと

親から引き継いだ土地が共有名義になっている場合、現況測量図があっても、土地の売却自体には共有者全員の同意が必要です。共有名義の不動産の持分だけを売却できるかについては別記事で解説していますが、測量図の作成自体も共有者の協力を得て進める方が、後のトラブルを避けやすくなります。

土地が借地(しゃくち)で、建物だけを所有している場合は、土地の測量や境界に関わる判断は地主の権利にも影響するため、借地権者が単独で現況測量図の作成を進められないことがあります。借地権付き建物の売却に地主の承諾が必要になる条件は別記事で解説しているので、測量を依頼する前に地主への相談を済ませておくと手続きが進めやすくなります。土地の一部が農地として登記されている場合も、農地の売却に農地法の許可が必要になる場面と合わせて確認しておくと安心です。

共有者や地主との関係が整わないまま測量を進めると、後で合意が得られず図面が使えなくなることもあります。

よくある質問

現況測量図がない土地でも売却できますか?

現況測量図がなくても土地の売却はできますが、買主や不動産会社から境界や面積を示す図面の提示を求められることが多く、売買契約までの間に作成を依頼するケースが少なくありません。

現況測量図と確定測量図、どちらを不動産会社に求められますか?

まず現況測量図で土地の形状や面積の概要を確認し、売買契約の条件によって、より精度の高い確定測量図への切り替えを求められる場合があります。境界トラブルの可能性が低い土地では、現況測量図だけで取引が進むこともあります。

現況測量図の有効期限はありますか?

現況測量図そのものに法律上の有効期限は定められていません。ただし作成から年数が経つと境界標の移動や工作物の変化が反映されていない可能性があるため、古い図面は現地の状況と見比べて確認してください。

現況測量図を自分で作ることはできますか?

土地の測量と図面作成には測量の専門知識と機器が必要で、個人がそのまま作成した図面は不動産会社や買主に測量図として認められないことが一般的です。現況測量図の作成は土地家屋調査士に依頼してください。

隣地所有者が協力してくれない場合、現況測量図は作れますか?

現況測量図は隣地所有者の立会いや合意を必要としないため、協力が得られない場合でも、現地に残る境界標をもとに作成を進められます。ただし境界について隣地所有者と争いがある場合は、確定測量図への切り替えや専門家への相談を検討してください。

現況測量図の取得と売却での使い方のまとめ

現況測量図は、現地の境界標や建物の位置をもとに土地家屋調査士が作成する図面で、隣地所有者の合意を前提とする確定測量図とは異なり、法的な境界確定の効力を持ちません。既存の図面が見つからない場合は土地家屋調査士への新規作成の依頼が必要で、共有名義や借地など権利関係が絡む土地では、測量を進める前に関係者への確認が欠かせません。ぜひ本記事の取得方法と活用法を参考に、土地の売却を進める前に現況測量図の有無を確認してください。

出典

  • 法務局「登記所が保管する図面について」
  • 国土交通省「地籍調査Webサイト」
  • 日本土地家屋調査士会連合会「測量図の種類と役割」
  • 土地家屋調査士法(第1条・第3条)
  • 法務省「登記簿及び図面等について」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00519.html)
あなたへのおすすめ