家の名義変更の仕方|相続・売却前の手続き解説
実家の固定資産税の通知書は父が亡くなったあとも毎年届き、法務局で登記簿を確認すると名義はまだ祖父のままだと分かります。2024年4月1日から相続登記は義務化され、不動産登記法により相続の開始と所有権取得を知った日から3年以内に登記する必要があります。正当な理由なく期限を過ぎると、10万円以下の過料(かりょう/刑事罰である罰金とは異なる行政上の秩序罰)が科される場合もあります。本記事では、家の名義変更の仕方を、相続と売却前の手続きに分けて解説します。
名義が祖父のまま何世代も放置された実家は、相続人の数が増えるほど手続きが複雑になります。兄弟との分け方が決まっていない状態で時間が経つと、選べる方法そのものが狭まっていきます。
この記事はこんな方に向いています
- 父から相続した地方の実家の名義がまだ祖父のままだと分かり、何世代分の手続きが必要か見当がつかず困っている方
- 兄弟で実家を分ける前に自分名義に変更しておきたいが、法務局への申請書の書き方が分からず後回しにしている方
- 売却前に名義変更が必須と知り、固定資産税を払い続けながら平日に休みを取って役所を回る余裕がないと悩んでいる方
家の名義変更が必要になる場面|相続と売却前の手続き
家の名義変更が必要になる場面は大きく2つあります。1つは親や祖父母が死亡し、家を相続で受け継いだとき、もう1つは相続した不動産を売却する前です。2026年9月時点で、相続によって家の所有権を取得した人は、不動産登記法の規定により法務局で相続登記をする義務を負っています。
父が死亡した段階で、家の所有権は自動的に長男や長女に移るわけではなく、相続人全員で分け方を決め、法務局に登記を申請して初めて名義が変わります。名義を変えないままでは、固定資産税の支払いはできても、家を売ったり担保に入れたりすることはできません。相続登記の義務化の内容は相続登記の義務化と過料の仕組みで解説しています。
相続登記の義務化は2024年4月1日より前に相続した家も対象です。古い相続ほど先に確認してください。
名義変更をしないまま家を放置するリスク
名義変更をしないまま実家を放置すると、固定資産税は請求され続けるのに、家を自由に動かせない状態が続きます。空き家のまま庭の手入れができなければ、近隣からの苦情や行政からの指導につながることもあります。
さらに時間が経つほど、相続人のうちの誰かが死亡して次の世代に権利が移り、関係者の数が増えていきます。相続人の1人が認知症になって判断能力を失うと、分け方の話し合い自体が進められなくなる場合もあります。放置する年数が長くなるほど、家の名義変更にかかる手間と時間は増える一方です。
空き家の管理が負担になっている場合は、分け方を決める前に売却査定の相場だけ先に確認しておくと話が進みやすくなります。
祖父の名義のまま残っている実家の相続登記の仕方
実家の登記簿を確認したら名義が祖父のままだったという場合、祖父から父へ、父から自分や兄弟へという2段階の相続が同時に起きている状態です。これを数次相続(すうじそうぞく)と呼び、通常の相続登記よりも関係者の確定に手間がかかります。
数世代にわたる相続人の確定
祖父が死亡した時点での相続人は父とその兄弟姉妹です。父がさらに死亡していれば、父の取り分は高橋さん自身とその兄弟が受け継ぎます。父やその兄弟姉妹という子の世代の相続人が存在する場合、祖父の兄弟姉妹やその子ども(いとこ)は相続人には含まれませんが、誰が相続人に当たるかを戸籍で1人ずつ確かめる必要があります。
必要な戸籍謄本と集め方
相続登記の申請には、祖父と父それぞれの死亡から出生までの一連の戸籍謄本、相続人全員の現在の戸籍謄本、相続人全員の住民票または戸籍の附票が必要です。本籍地が転籍を重ねている場合、複数の市区町村役場に取り寄せを依頼することになり、郵送でのやり取りだけで1〜2か月かかることもあります。
戸籍の収集が複雑なケースほど、司法書士に依頼した方が結果的に時間も費用も抑えられることがあります。
祖父から父、父から高橋さんと兄弟へという相続の流れを図にすると次のようになります。
登記簿上の名義人(故人)
未登記のまま死亡
現在の相続人(共有)
祖父から現在の相続人まで、死亡のたびに相続が1回ずつ発生しており、それぞれの段階で関係者を確定させる必要があると分かります。
兄弟との分け方を決める前に単独名義にする方法
実家を誰が継ぐか決まっていない間、ひとまず兄弟全員の共有名義にしてしまうケースがありますが、これは後々の負担につながりやすい選択です。
共有名義のリスク
共有名義の家は、将来その家を売却するときに共有者全員の同意が必要になります。兄弟の誰かが遠方に住んでいたり、連絡が取りにくくなっていたりすると、家の売却の話を進めるだけで時間がかかります。共有者の1人が死亡すると、その人の持分がさらに次の世代に相続され、関係者が増えていきます。
遺産分割協議書の書き方
実家を高橋さん1人の名義にするには、相続人全員で誰が家を継ぐかを話し合い、その内容を遺産分割協議書にまとめます。協議書には不動産の所在・地番・家屋番号を正確に記載し、相続人全員が署名し実印を押します。各相続人の印鑑証明書も添付書類として必要です。他の兄弟には預貯金を多く分けるなど、家以外の財産で調整する方法もよく使われます。
遺産分割協議書は1字でも不動産の記載が誤っていると登記が受け付けられません。登記簿どおりの表記で書いてください。
法務局への申請書の書き方と必要書類
相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局に登記申請書を提出して行います。申請書には不動産の表示、申請人の氏名・住所、登記の原因(相続)などを記載します。
- 被相続人の死亡から出生までの一連の戸籍謄本
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書
- 固定資産評価証明書
- 相続人(新しい名義人)の住民票
申請は窓口のほか郵送やオンラインでも受け付けられています。書類に不備があると法務局から補正の連絡が入り、平日に役所へ出向く手間が追加で発生することもあります。
オンライン申請は平日に役所へ行く回数を減らせますが、戸籍謄本などの原本提出が必要な書類は郵送で送る必要があります。
相続登記でかかる家の名義変更の費用と期間
相続登記にかかる費用の中心は登録免許税(不動産の名義変更時に課される国税)で、固定資産税評価額の0.4%です。司法書士に依頼する場合は、戸籍の収集代行や書類作成を含めて別に報酬がかかります。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産税評価額の0.4% |
| 戸籍謄本・住民票などの取得費 | 数千円〜1万円程度 |
| 司法書士への依頼費用 | 数万円〜十数万円程度 |
出典:法務局「不動産登記の申請手続について」(2025年確認時点)をもとに作成
書類の収集から登記完了まで、相続人の数が少なく話し合いがまとまっている場合でも1〜2か月程度かかります。祖父の代からの数次相続や兄弟間の話し合いが難航するケースでは、半年以上かかることもあります。
登録免許税は固定資産税評価額が高いほど増えるため、評価証明書を先に取得して概算しておくと見通しが立ちます。
売却前に済ませる家の名義変更の手続き
2026年9月時点で、相続した家を売却するには、売却前に名義を相続人自身に変更しておくことが前提です。登記簿上の所有者が祖父や父のままでは、不動産会社も買主も売買契約を結ぶ相手として認められません。
相続した空き家を売却する場合、租税特別措置法に基づく空き家の譲渡所得に係る3,000万円特別控除を使える可能性があります。昭和56年5月31日以前に建築された家屋であることなど一定の要件を満たし、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡する必要があり、この特例の適用期限は2027年12月31日までとされています。期限や要件は改正される場合があるため、売却を検討する段階で専門家か国税庁の情報で最新の内容を確認してください。
相続した不動産を売却するまでの具体的な流れは相続した不動産を売却する流れ|手続き・税金・注意点で解説しています。不動産売却を進める前の査定書の取り方は相続で不動産の査定書が必要なときの取り方で解説しています。
3,000万円特別控除は申告しなければ適用されません。売却後の確定申告で忘れずに手続きしてください。
よくある質問
家の名義変更は死亡からいつまでにすればいいですか?
不動産登記法により、相続の開始と所有権取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料が科される場合があります。
名義変更をしないまま家を売却できますか?
できません。登記簿上の所有者が売主と一致していないと、不動産会社も買主も売買契約を結べないため、売却前に相続登記を済ませる必要があります。
相続人が複数いる場合、誰の名前で名義変更すればいいですか?
相続人全員で話し合い、遺産分割協議書で誰が家を継ぐかを決めてから、その人の単独名義にするのが一般的です。決まらない間は相続人全員の共有名義になります。
相続登記にかかる費用はどれくらいですか?
登録免許税は固定資産税評価額の0.4%が目安です。戸籍謄本などの取得費が数千円〜1万円程度、司法書士へ依頼する場合はさらに数万円〜十数万円程度の報酬がかかります。
名義変更の手続きは自分でできますか、司法書士に頼むべきですか?
戸籍の収集や申請書の作成を自分で行うことは可能ですが、祖父の代からの数次相続や兄弟間の話し合いが絡む場合は、司法書士に依頼した方が手続きの不備や手戻りを避けやすくなります。
早めに動くための家の名義変更の仕方
家の名義変更は、相続登記の義務化によって3年以内という期限が明確になり、放置するほど数世代分の戸籍収集や相続人間の調整が増えていきます。売却前には名義変更が必須であり、空き家の3,000万円特別控除にも期限があるため、分け方の話し合いと並行して進める必要があります。ぜひ本記事の家の名義変更の仕方を参考に、戸籍の収集と兄弟との話し合いを早めに進めてください。
出典
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
- 国税庁「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」
- 法務局「不動産登記の申請手続について」
- 不動産登記法164条(相続登記の申請義務に係る過料)
- 民法887条、889条、890条(法定相続人の順位)
- e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第五編第二章
