SHARE:

契約不履行とは?不動産売却でのリスクと対処法を解説

住み替え先の引き渡し日に合わせて自宅マンションの売買契約を結んだのに、買主からの残代金が期日までに振り込まれません。離婚に伴う自宅売却では、元配偶者が売買契約書への署名に応じず、引き渡しの手続きが止まったままになっています。

このような状態は民法上の契約不履行(債務不履行)に当たり、民法第541条・第542条に基づく履行の催告や契約の解除、第415条に基づく損害賠償の請求を検討できます。

本記事では、不動産売却における契約不履行とはどのような状態を指すのか、住み替え・離婚・相続の場面で起こりやすいケースと、実際に起きたときの対処手順を解説します。

この記事はこんな方に向いています

  • 住み替え先の引き渡し日に合わせて自宅を売却する契約を結んだが、買主の支払いが遅れて契約違反にならないか心配な方
  • 離婚に伴う自宅売却の契約後、元配偶者が署名や引き渡しに協力してくれず契約が進まず困っている方
  • 相続した実家の売買契約中に、買主から契約内容と異なる要求が出され対応方法が分からず不安になっている方

不動産売却における契約不履行とは|民法上の意味と基本

契約不履行とは、売買契約で定めた義務を当事者の一方が果たさない状態を指します。民法上は「債務不履行」と呼ばれ、期日に支払いや引き渡しをしない「履行遅滞」、約束した引き渡しそのものができなくなる「履行不能」、内容と異なる状態で引き渡す「不完全履行」の3タイプに分かれます。

民法第415条は債務不履行による損害賠償請求を、第541条・第542条は契約解除の要件を定めています。不動産の売買契約書には通常、手付解除・違約金条項・引渡し期限などの特約が盛り込まれ、これらの条項が契約不履行が起きたときの対応を左右します。

契約不履行かどうかは契約書の特約次第で判断が変わるため、まず契約書の条項を確認しましょう。

住み替え・離婚・相続の売買契約で契約不履行が起こりやすい場面

住み替えで自宅を売る場合、買主の住宅ローン本審査が通らず決済が延期されるケースがあります。離婚に伴う自宅売却では、共有者である元配偶者が署名や引き渡しへの協力を拒むことで履行が止まる場合があります。相続した実家の売買契約では、相続人の間で名義変更(登記)や換価分割(かんかぶんかつ)の合意が整わないまま契約を結び、後から履行が滞ることも少なくありません。

契約を結ぶ前の段階で不動産売却の流れを把握しておくと、どの時点で契約不履行が起きやすいか見当がつきやすくなります。また、契約条件が適正かどうかを判断する材料として、匿名査定で売却相場をあらかじめ確認しておくことも役立ちます。

契約前の段取りを把握しておくと、どの時点で履行が止まったのか見極めやすくなります。

不動産売買契約で買主が契約不履行になるケース|残代金と引き渡し

残代金の支払いが期日に行われないケース

売買契約では手付金の支払い後、残代金の支払いと所有権移転登記・引き渡しを同時に行う「決済」の期日を定めます。買主の住宅ローン本審査が通らなかったり資金移動の手続きが遅れたりすると、決済期日に残代金が振り込まれないことがあります。この場合、売主は相当の期間を定めて履行を催告(さいこく)し、その期間内に支払いがなければ民法第541条に基づき契約を解除できます。

登記・引き渡しへの協力が得られないケース

買主が決済後に必要な書類の提出や手続きに応じないケースも契約不履行に当たります。この場合は、売買契約書に記載された違約金条項に基づき、買主へ違約金を請求できる場合があります。

催告書を送る際は内容証明郵便を使うと、送付した事実と日付を後から証明できます。

売主側が契約不履行とみなされるケース|離婚や相続での署名トラブル

離婚に伴う自宅売却では、名義人である元配偶者が売買契約書への署名や引き渡しに協力しないと、売主側の契約不履行とみなされる可能性があります。相続した実家の売買契約では、相続人全員の合意や登記が整わないまま契約を結ぶと、同様に履行が滞ります。買主から契約内容と異なる要求が出された場合も、契約書に明記された内容を基準に対応を判断する必要があります。

契約を結ぶ前に、相続登記や共有者全員の意思確認を済ませておくことで、こうした契約不履行のリスクを減らせます。

相続や離婚が関わる売却は、契約前に名義と合意状況を整理しておくことが何よりの予防策です。

契約不履行が疑われたときの対処手順|不動産売却の相談先

契約不履行が疑われたときは、感情的に対応する前に、次の手順で状況を確認すると対応の優先順位が整理できます。

1
契約書・特約を確認する
違約金条項・手付解除・引渡し期限の記載を確認
2
仲介担当者に相談する
相手方への連絡や事実確認を依頼
3
内容証明郵便で催告する
期限を定めて履行を求める書面を送付
4
契約解除・違約金請求を検討する
催告期間内に履行がなければ解除を判断
5
損害の内容を整理する
管理費・税負担や再販売にかかる期間を記録
6
弁護士に相談する
相手方が応じない場合は法的対応を検討

契約書の確認から弁護士への相談まで段階を飛ばさずに進めることで、不要な争いを避けやすくなります。

自分だけで対応に迷う段階になったら、早めに仲介担当者か弁護士に相談してください。

違約金条項と手付解除|不動産売買契約で契約不履行を防ぐ工夫

手付解除で契約を白紙に戻す方法

契約時に支払う手付金には「解約手付」としての性質があり、買主は手付金を放棄することで、売主は手付金の倍額を返すことで契約を解除できます。ただし、この手付解除が使えるのは相手方が契約の履行に着手する前に限られます。

違約金条項と引渡し期限の明記

契約不履行が起きた場合の違約金の額や、引渡し期限、ローン特約の期限などを契約書に明記しておくと、トラブルが起きたときの対応がスムーズになります。契約内容の説明は媒介契約を結ぶ不動産会社に事前に求めておくとよいでしょう。

違約金の額や特約の内容は契約前に読み合わせ、不明点は仲介担当者に確認しておきましょう。

損害賠償請求の流れと注意点|不動産売却での契約不履行

契約解除後、違約金が損害賠償額の予定として定められている場合は、実際の損害がその額を上回っても、原則として追加の損害賠償請求はできません(民法第420条)。待っている間にかかった管理費や固定資産税の負担、再販売にかかる期間や価格差などは、違約金の額が適正かどうかを検討する際の参考情報として整理しておくとよいでしょう。

損害の立証には時間と費用がかかるため、離婚や相続で早期に不動産を現金化したい事情がある場合は、仲介による再販売ではなく仲介と買取のどちらが合うかを不動産会社に相談しておくことも選択肢になります。

損害賠償の立証には時間がかかるため、早期の現金化を優先するなら買取も選択肢に入れて検討しましょう。

よくある質問

売買契約を結んだあとに買主のローン本審査が否決されたら、契約不履行になりますか?

多くの売買契約には「ローン特約」が定められており、期限内にローン審査が否決された場合は契約不履行ではなく特約に基づく白紙解除となり、買主が手付金の返還を受けられるのが一般的です。契約書のローン特約の条項と期限を確認してください。

契約不履行が起きると手付金はどうなりますか?

買主側の契約不履行であれば、売主は受け取った手付金を返還せずに契約を解除できる場合があります。売主側の契約不履行であれば、違約金条項に基づき違約金を請求されるケースがあります。契約書の違約金条項を確認してください。なお、「手付倍返し」は、相手方が契約の履行に着手する前に解約手付の性質を用いて契約を解除する場合の規定であり(民法第557条)、契約不履行による違約金とは根拠が異なります。

元配偶者が署名に応じない場合、買主から契約を解除されますか?

名義人である元配偶者の協力が得られず引き渡しや登記ができない状態が続くと、買主から契約解除や違約金を請求される可能性があります。契約前に共有者全員の同意を確認しておくことが重要です。

契約不履行による違約金はどのように決まりますか?

違約金の額は契約書の特約で個別に定められ、不動産会社や契約条件によって設定の基準が異なります。契約を結ぶ前に、違約金条項の金額や発生条件を確認しておきましょう。

契約不履行のトラブルは自分だけで解決できますか?

契約書の条項確認や催告書の送付までは自分で対応できる場合もありますが、相手方が応じない場合や損害の算定が必要な場合は、弁護士や仲介を担当した不動産会社に相談することをお勧めします。

不動産売却の契約不履行とはを理解し、トラブルを早期に収める

不動産売却における契約不履行とは、売買契約で定めた義務を当事者の一方が果たさない状態を指し、民法第415条・第541条・第542条に基づいて催告・解除・損害賠償を検討できます。住み替え・離婚・相続のいずれの場面でも、契約前に名義や合意状況を整理しておくことがトラブルの予防につながります。ぜひ本記事の対処手順を参考に、契約書の内容を確認しながら落ち着いて対応してください。

出典

  • e-Gov法令検索「民法」(第415条・第541条・第542条・第545条)
  • e-Gov法令検索「民法」第557条
  • 全日本不動産協会「手付倍返しによる売買契約の解除」(zennichi.or.jp)
  • REDS「手付解除と違約解除の違い」(reds.co.jp/p113104)
  • e-Gov法令検索「民法」第420条
  • 不動産流通推進センター「不動産売買契約条項に定められた違約金が減額されることはあるか」(retpc.jp/archives/22542)
  • 三井住友トラスト不動産「違約金とは何か」(smtrc.jp)
あなたへのおすすめ