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瑕疵担保責任とは?売却時のリスクと対策を解説

築35年の自宅を売る準備を進めるなかで、売買契約書に「瑕疵担保責任」という文字を見つけ、何を約束させられるのか分からないまま署名の予定が近づいているという方は少なくありません。2020年4月に施行された民法改正により、この言葉は「契約不適合責任」という名称に変わり、売主が負う責任の範囲と買主が行使できる権利は民法第562条から第566条に定められています。

家の引渡し後に雨漏りやシロアリの被害など、契約で伝えていなかった不具合が見つかった場合、買主は売主に対して修補請求・損害賠償・契約解除・代金減額請求のいずれかを求めることができます。これが瑕疵担保責任(契約不適合責任)の中身です。

本記事では、瑕疵担保責任(契約不適合責任)の内容と、不動産売却でトラブルを避けるための具体的な対策を解説します(2026年9月時点の民法に基づきます)。

この記事はこんな方に向いています

  • 家の老朽化を理由に築35年の自宅を売ることにした45歳会社員で、引き渡し後にどんな責任を負うのか把握していない方
  • 床下や屋根の状態を正確に伝えていないまま契約し、後から損害賠償を請求される可能性に気づいて不安な方
  • 売却時のリスクを減らす具体的な対策が分からず、専門家に相談する前に基礎知識だけ先に押さえたい方

瑕疵担保責任とは|不動産売却で引渡し後に問われる責任

瑕疵(かし)とは、通常期待される性能や品質に欠けている状態を指します。瑕疵担保責任とは、不動産売却において、引渡し後に発見された家や土地の欠陥について、売主が買主に対して一定の責任を負う制度のことです。2020年4月の民法改正前は、この言葉が条文上の正式名称として使われていました。

現在は契約不適合責任という名称に変わっていますが、実務上は「瑕疵担保責任」という呼び方も広く使われています。中古マンションや戸建ての売却では、床下の腐食、雨漏り、給排水設備の故障、土地の土壌汚染など、売買契約の時点では見えていなかった不具合が後から見つかるケースがあり、そのたびに売主の責任がどこまで及ぶのかが問題になります。

「瑕疵担保責任」という言葉自体は古い契約書や解説記事に今も残っているので、混乱したら契約書の条文番号を確認してください。

契約不適合責任への変更|2020年民法改正と不動産売却への影響

2020年4月の民法改正で、瑕疵担保責任は契約不適合責任という考え方に置き換わりました。従来の瑕疵担保責任は、買主が売主の過失の有無を問わず責任を追及できる無過失責任で、権利の内容も損害賠償と契約解除に限られていました。

これに対して契約不適合責任は、引渡した家や土地が売買契約の内容に適合していないことを理由に責任を問う仕組みです。買主が行使できる権利は、修補請求(直してもらう)、代替物請求、損害賠償請求、契約解除、代金減額請求の5種類に広がっており、不動産売却では主に修補請求・損害賠償・契約解除・代金減額請求の4つが実際に使われます。

名称だけでなく権利の範囲も広がったため、売主側の負担が小さくなったわけではないという点に注意が必要です。

民法改正後は代金減額請求が新設されたため、全額の損害賠償でなく一部返金で解決する例も増えています。

マンションや戸建ての売却で問題になる瑕疵の種類|瑕疵担保責任の対象になるケース

不動産売却で問題になる瑕疵は、性質によって大きく3つに分かれます。どのタイプに当たるかによって、確認すべき方法と開示の仕方が変わります。

物理的瑕疵|雨漏り・シロアリ・給排水の不具合

建物や土地そのものの欠陥で、雨漏り、シロアリによる木部の腐食、給排水管の老朽化、土地の地盤沈下などが当たります。築年数が古い戸建てやマンションほど発生しやすく、売主が知らないまま進行している場合もあります。

法律的瑕疵|建築基準法違反・接道義務

建築基準法や都市計画法に違反している状態を指し、建て替えの際に接道義務(道路に一定幅で接していないと建築できない規定)を満たせない土地などが該当します。

心理的瑕疵|事故物件・近隣トラブル

過去にその家や部屋で事件・事故があった場合や、近隣に騙しごとやトラブルのある住民がいる場合など、買主が心理的に抵抗を感じる事情を指します。売却価格に直接影響しにくくても、告知義務の対象になることがあります。

心理的瑕疵は売主自身が「大したことではない」と判断して黙ってしまいやすいので、迷ったら開示する方向で検討してください。

売主が負う責任の範囲|瑕疵担保責任における損害賠償・解除・修補(不動産売却時の対応)

契約不適合責任で買主が行使できる権利のうち、不動産売却で実際に使われるのは主に4つです。修補請求は、不具合を直すよう求める権利で、雨漏りの補修などが当たります。損害賠償請求は、不具合によって買主が被った損害を金銭で求める権利です。

契約解除は、不具合の程度が大きく契約の目的が果たせない場合に、売買契約そのものを解除する権利で、代金減額請求は、不具合の分だけ売買代金を減らすよう求める権利です。どの権利を使うかは買主の判断によりますが、売主側は売買契約書に記載した内容と実際の家の状態が一致しているかを常に基準に問われます。

契約解除まで進むケースは実際には少なく、修補か代金減額で収まることが多いです。

売却後にトラブルになりやすい場面|雨漏り・シロアリ・境界

不動産売却後のトラブルは、引渡し直後に設備の不具合が見つかる場合と、数年経ってから境界や法令違反が判明する場合の2つのパターンに分かれます。

引渡し後に発覚する設備や雨漏りの不具合

給湯器の故障や雨漏りは、季節が変わって初めて気づかれることが多く、梅雨や台風の時期に発覚するケースが目立ちます。売主が知っていて黒塗りしていた場合はもちろん責任を問われますが、知らなかった場合でも契約不適合責任は原則として及びます。

境界や法令違反に関するトラブル

土地の境界が不明確なまま引渡した場合や、増築部分が建築基準法に適合していなかった場合は、買主が住宅ローンの借り換えや建て替えの段階で初めて問題に気づくこともあります。発覚までの期間が長くなるほど、話し合いが難しくなる傾向があります。

境界トラブルは測量図の有無で解決の早さが大きく変わるので、手元にあるか早めに確認してください。

売却前に瑕疵担保責任のリスクを減らす対策

売却前にできる対策は、不具合を直すことと、不具合を正確に伝えることの2つに分けられます。すべての欠陥を修繕してから売るのは現実的ではないため、まずは現状を正確に把握し、正直に開示する姿勢が重要です。

既存住宅状況調査(インスペクション)を利用すると、専門の建築士が床下や屋根裏、給排水管の状態を確認し、報告書として残すことができます。インスペクションの結果を物件状況報告書や付帯設備表に記載し、不動産会社を通じて買主に正確に伝えておくことで、引渡し後に「知っていたのに黒塗りした」と判断されるリスクを減らせます。

不動産会社選びも結果に影響します。媒介契約の種類によって調査や報告の体制が変わるため、媒介契約の種類と選び方で解説している内容を事前に確認しておくと、不動産会社とのやり取りで漏れが出にくくなります。また、匿名査定やAI査定だけで売却価格の目安を決めてしまうと、物件の個別事情が反映されないまま話が進むこともあるため、匿名査定・AI査定の精度の限界も併せて確認しておくと安心です。

インスペクションの費用は数万円程度かかりますが、後から請求される損害賠償の額と比べれば小さい負担です。

免責特約で契約不適合責任を減らせる範囲|不動産売却時の注意点

売買契約の特約で、契約不適合責任の一部または全部を免除する取り決めをすることは可能です。個人間の不動産売却では「瑕疵担保責任(契約不適合責任)を免除する」といった特約を結ぶ例もあります。

ただし民法第572条により、売主が知っていながら買主に告げなかった不具合については、免責特約があっても責任を免れることはできません。特約を結んでいても、知っていた瑕疵を黒塗りしていた場合は責任を問われる点に注意が必要です。

不動産会社による買取では、契約不適合責任を免除する特約を結ぶのが一般的で、個人の買主に仲介で売る場合とは負担の重さが異なります。仲介と買取のどちらを選ぶかで責任の範囲が変わるため、仲介と買取の違いとメリット・デメリットも参考にしながら検討してください。

免責特約があるからと安心して黙っていた瑕疵が、後から大きな負担になる例があるので注意してください。

査定から引き渡しまで�|瑕疵の確認はいつ行うか

瑕疵担保責任(契約不適合責任)のリスクを減らすには、不動産売却の流れのどの段階で何を確認するかを把握しておくことが欠かせません。

1
家の状態を自己チェック
雨漏り・シロアリ・設備の不具合を書き出す
2
既存住宅状況調査を依頼
建築士による床下・屋根裏・給排水の確認
3
不動産会社へ正確に伝える
把握している不具合をすべて共有
4
物件状況報告書・付帯設備表に記載
買主への開示として書面に残す
5
売買契約で免責特約の範囲を確認
契約不適合責任をどこまで負うか明記
6
引渡し後も一定期間は責任が継続
契約で定めた期間内は請求を受ける可能性

自己チェックから引渡し後の責任継続まで、6つの段階でそれぞれ確認すべきことが異なる点を押さえておいてください。全体の不動産売却の流れそのものは、不動産の査定から引き渡しまでの7ステップで解説しています。

物件状況報告書は口頭で伝えた内容と食い違いがないよう、書面の文言を自分でも確認してください。

よくある質問

瑕疵担保責任と契約不適合責任は同じものですか

基本的には同じ制度を指す呼び方の違いです。2020年4月の民法改正前は瑕疵担保責任という名称でしたが、改正後は契約不適合責任に変わり、買主が行使できる権利の種類も広がりました。

知らなかった不具合でも責任を負いますか

原則として負います。契約不適合責任のうち、修補請求・代金減額請求・契約解除は売主の過失の有無を問わないため、知らなかったことを理由に責任を免れることはできません。ただし損害賠償請求については、民法第564条により第562条・第563条の規定が第415条による損害賠償請求の行使を妨げないとされており、売主に帰責事由(過失)がある場合に限られます。知っていて黒塗りした場合は、免責特約があっても責任を免れられません。

契約不適合責任はいつまで問われますか

民法上は買主が不具合を知った時から1年以内に通知する必要がありますが、個人間売買では引渡しから3ヶ月程度に期間を限定する特約や、免責とする特約を結ぶことが一般的です(宅建業者が売主の場合は宅建業法40条により2年以上とする必要があります)。契約書に記載された期間を確認してください。

中古マンションでも契約不適合責任はありますか

あります。給排水管の不具合や共用部分の問題など、戸建てと同様にマンションでも契約不適合責任の対象になる瑕疵があります。管理組合の記録や修繕履歴を確認しておくと、売却時の開示がしやすくなります。

買取で売る場合も契約不適合責任を負いますか

不動産会社による買取では、契約不適合責任を免除する特約を結ぶのが一般的です。ただし、知っていて告げなかった不具合については、免責特約があっても責任を免れられない点は仲介の場合と同じです。

瑕疵担保責任(契約不適合責任)を理解して不動産売却のリスクに備える

瑕疵担保責任は2020年の民法改正で契約不適合責任という名称に変わり、買主が行使できる権利は修補請求・損害賠償・契約解除・代金減額請求に広がりました。不動産売却で引渡し後に不具合が見つかった場合、売主が知らなかったことは責任を免れる理由にならず、知っていて黒塗りした場合は免責特約があっても責任を問われます。インスペクションの活用と正確な開示が、トラブルを避けるもっとも現実的な方法です。ぜひ本記事の瑕疵担保責任(契約不適合責任)の内容と対策を参考に、安心できる形で不動産売却を進めてください。

出典

  • e-Gov法令検索「民法」第562条〜第566条、第572条
  • e-Gov法令検索「民法」第415条(損害賠償請求における帰責事由)
  • 国土交通省「既存住宅インスペクション・ガイドライン」
  • 国土交通省「宅地建物取引業法」第40条
  • テンプレックス「不動産売買契約書における契約不適合責任の規定」(https://www.templex.jp/articles/fudousan-baibai-keiyakusho-futekigou)、三井住友トラスト不動産「不動産取引における素朴な質問Q&A」(https://smtrc.jp/useful/qa/baibai_trouble/qa-baibai_trouble_11.html)
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