重要事項説明書とは?不動産売却での役割を解説
自宅マンションの売買契約が近づくと、不動産会社の担当者から「契約前に重要事項説明を行います」という案内が届き、見慣れない専門用語の並ぶ分厚い書類を渡されます。売主として立ち会う場面もあれば、買主だけが説明を受け、売主は内容を知らないまま契約当日を迎えることもあります。
重要事項説明書は、宅地建物取引業法第35条に基づいて宅地建物取引士が買主に交付し、口頭で説明する義務を負う書面で、35条書面とも呼ばれます。物件の権利関係や法令上の制限、取引条件などが記載され、売主が提供した情報をもとに作成されるため、内容に誤りがあれば契約後のトラブルにつながります。
本記事では、重要事項説明書とは何か、記載される項目や交付のタイミング、売主として契約前に確認しておきたいポイントを解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 自宅の売却契約を控え、重要事項説明書に何が書かれているのか事前に理解しておきたい45歳の方
- 住み替えのため初めて売買契約に立ち会うことになり、説明を受ける際にどこを確認すべきか不安な方
- 資金需要で自宅を売ることになったが、専門用語の並ぶ説明書を読み解けず不利な契約を結ばないか心配な方
重要事項説明書とは|不動産売却で交付される書類の役割
重要事項説明書は、不動産の売買契約を結ぶ前に、宅地建物取引士が買主に対して交付し、内容を口頭で説明するための書面です。宅地建物取引業法第35条で交付と説明が義務付けられているため「35条書面」とも呼ばれます。
買主がどんな不動産をいくらで買うのか理解できないまま契約してしまわないよう、売買の対象になる物件の権利関係や法令上の制限、取引条件を契約前に開示する役割を持っています。説明は宅地建物取引士でなければ行えず、取引士証を提示したうえで書面の内容を一つずつ読み上げながら買主に確認を求めます。
売主にとっては、自分が不動産会社に伝えた情報がどのように書面化され、買主にどう説明されるかを把握できる機会でもあります。記載内容に誤りがあると、契約後に契約不適合責任(かつて瑕疵(かし)担保責任と呼ばれた、売買対象物の欠陥に関する売主の責任)を問われる原因にもなるため、売主も内容を事前に確認しておく必要があります。
重要事項説明書の内容は売主から聞き取った情報がもとになります。曖昧な点は契約前に不動産会社へ伝えておきましょう。
不動産売却における35条書面との違い|宅地建物取引業法での位置づけ
「重要事項説明」と「35条書面」は、同じ制度を指す呼び方の違いです。宅地建物取引業法第35条は、宅地建物取引士が契約締結前に、買主となろうとする者へ書面を交付し、記載事項を説明しなければならないと定めています。この説明という行為を指して「重要事項説明」、交付される書面そのものを指して「35条書面」と呼びます。
説明義務を負うのは不動産会社ではなく、宅地建物取引士という資格を持つ個人です。重要事項説明の際には取引士証の提示も義務付けられており、誰が説明したかが記録に残ります。
不動産の売買取引におけるIT重説(テレビ会議などを使った対面以外の方法での説明)は2021年3月30日から本格運用が始まっており、対面以外の方法で説明を受けられる場合があります。また2022年5月からは、重要事項説明書等の書面を電磁的方法(電子データ)で交付することも認められています。利用できるかどうかは取引の相手方や不動産会社の対応状況によって異なります。
IT重説を使う場合でも書面の内容に変わりはなく、事前に書面を確認してから説明に臨むことをおすすめします。
不動産売却の重要事項説明書に記載される主な項目
重要事項説明書に記載される項目は宅地建物取引業法施行令・施行規則で定められており、大きく物件そのものに関する事項と、取引条件に関する事項に分かれます。
物件に関する事項
- 登記記録に記載された権利関係(所有権、抵当権などの有無)
- 都市計画法・建築基準法などの法令上の制限
- 私道負担の有無
- 上下水道・電気・ガスなどインフラの整備状況
- マンションの場合は管理規約や修繕積立金の状況
取引条件に関する事項
- 代金以外に授受される金銭(手付金等)の額及びその目的
- 契約解除に関する定め(ローン特約、手付解除など)
- 損害賠償額の予定や違約金
- 契約不適合責任の内容
マンション特有の管理費・修繕積立金の滞納の有無も記載対象なので、売却前に管理会社へ確認しておくと安心です。
売却の流れと重要事項説明のタイミング
重要事項説明は、媒介契約の締結から引き渡しまでの一連の流れの中で、売買契約の締結直前に行われます。どの段階で重要事項説明が入るのか、全体の流れで位置を確認しておくと準備しやすくなります。
不動産会社と媒介契約を結び売却活動を開始
価格や引き渡し時期をすり合わせる
不動産会社が登記記録や物件情報をもとに作成
買主へ書面を交付し口頭で説明
双方合意のうえ契約書に署名押印
代金受領と同時に鍵と書類を引き渡す
重要事項説明は売買契約の締結直前に行われるため、内容の確認や訂正は契約後ではなく契約前に済ませる必要があります。
どの媒介契約を選ぶかによって不動産会社とのやり取りの頻度も変わるため、契約の種類を知っておくと準備の見通しが立ちやすくなります。媒介契約の種類と選び方のほか、売却全体の流れは不動産売却の流れ|査定から引き渡しまでの7ステップで解説しています。
重要事項説明から契約締結までの時間は短いことが多いため、気になる点はその場で質問しておきましょう。
売主が事前に確認すべき重要事項説明書のポイント
境界・越境に関する記載
重要事項説明書には、隣地との境界標の有無や、塀・庇(ひさし)などの越境物の有無が記載されます。測量図が古い、あるいは存在しない場合は現況との食い違いが生じやすく、売主が把握していない越境があると引き渡し後に隣地所有者とのトラブルにつながります。
契約不適合責任の範囲
雨漏りやシロアリ被害、設備の故障など、契約不適合責任の対象となる事項と責任を負う期間の定めが記載されます。売主が把握している不具合は、物件状況報告書に正確に記入し、重要事項説明書の内容と食い違わないようにしておく必要があります。
境界や設備の不具合を伝え忘れると、引き渡し後に契約不適合責任を問われる可能性があるため、気づいた点は早めに不動産会社へ共有してください。
売買契約書との違い|重要事項説明書が担う役割
重要事項説明書は契約前に交付される書類で、宅地建物取引業法第35条に基づく「35条書面」です。これに対して売買契約書は、契約成立後に取り交わす書類で、同法第37条に基づく「37条書面」に当たります。
記載される項目には重なる部分もありますが、重要事項説明書は「契約前に買主へ情報を開示するための書面」、売買契約書は「成立した契約の内容そのものを記録する書面」という役割の違いがあります。重要事項説明書と売買契約書を見比べる具体的なポイントは、重要事項説明とは?売買契約書との違いと家の準備で解説しています。
重要事項説明書と売買契約書で記載内容が食い違っていないか、契約前に見比べておくと安心です。
説明内容に誤りや不足があった場合のトラブルと対処
重要事項説明書に記載漏れや誤りがあった場合、買主から契約不適合責任や説明義務違反を理由に、損害賠償や契約解除を求められる可能性があります。宅地建物取引士が説明を怠ったり、売主から聞いた情報を正確に反映しなかったりしたことが原因であれば、不動産会社や取引士の責任が問われることもあります。
売主としての対処は、物件状況報告書に把握している不具合や越境、過去の修繕履歴を正確に記入し、不動産会社に伝えた情報と重要事項説明書の内容に食い違いがないか契約前に確かめることです。疑問点があれば、契約当日ではなく事前に宅地建物取引士へ質問し、必要に応じて書面へ反映してもらってください。
説明内容に不安が残る場合は、契約前に不動産会社や宅地建物取引士へ質問し、書面に反映してもらいましょう。
よくある質問
重要事項説明とは誰が行うものですか?
宅地建物取引士のみが行えます。取引士証を提示したうえで、重要事項説明書の内容を一つずつ買主に説明する決まりです。
重要事項説明書と35条書面は同じものですか?
同じ制度を指す呼び方の違いです。説明という行為を「重要事項説明」、交付される書面を「35条書面」と呼びます。
重要事項説明は売主も受ける必要がありますか?
法律上の説明義務は買主に対するものですが、売主が同席して内容を確認しておくと、自分が伝えた情報との食い違いに気づきやすくなります。
重要事項説明書の内容に誤りがあった場合どうなりますか?
契約不適合責任や説明義務違反の問題として扱われ、買主から損害賠償や契約解除を求められる可能性があります。
IT重説とは何ですか?
テレビ会議などを使って対面以外の方法で重要事項説明を受ける仕組みです。不動産の売買取引では2021年3月30日から本格運用が始まっており、利用できるかは不動産会社の対応状況によって異なります。
重要事項説明書とは何かを理解して不動産売却の契約に備える
重要事項説明書は、宅地建物取引業法第35条に基づいて宅地建物取引士が買主に交付し説明する書面で、物件の権利関係や法令上の制限、取引条件が記載されます。売主にとっては、自分が伝えた情報が正確に反映されているかを確かめる機会であり、境界や契約不適合責任の記載を事前に見ておくことで、引き渡し後のトラブルを防ぎやすくなります。ぜひ本記事の重要事項説明書とはという視点を参考に、契約前の書面確認を進めてください。
出典
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」第35条・第37条
- 国土交通省「IT を活用した重要事項説明(IT重説)について」
- 国土交通省 報道発表資料「不動産の売買取引に係る『オンラインによる重要事項説明』(IT重説)の本格運用について~令和3年3月30日より開始します~」
