不動産売買契約書とは?記載内容と確認ポイント
不動産会社から渡された売買契約書には、物件の表示、売買代金、手付金の額、引渡し時期、契約不適合責任(けいやくふてきごうせきにん・引き渡した物件が契約内容と異なっていた場合の売主の責任)の期間といった条項がすでに印字されており、署名と実印だけを待つ形で目の前に置かれています。
売買契約書は宅地建物取引業法37条に基づいて交付される書面で、売主と買主の権利義務を定める法的な効力を持ちます。内容に署名・捺印した時点で契約は成立し、後から「知らなかった」では済まされないため、交付された段階で記載内容を一つずつ確認する必要があります。
本記事では売買契約書に書かれる取引条件、手付金や契約不適合責任の条項、売買契約書の印紙代の金額、署名前に確認すべきポイントを解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 子どもの独立を機に自宅を売ることを決めた45歳会社員で、契約書に何が書かれているのか事前に知っておきたい方
- 初めて不動産を売るため契約書の特約や引渡し条件の確認漏れが不安で、署名する前に一度立ち止まりたい方
- 仲介業者から示された契約書の内容を自分の言葉で説明できず、後で不利な条項に気づくのを避けたい方
不動産売買契約書とは|法的効力と役割
不動産売買契約書とは、売主と買主が合意した取引条件を書面にまとめ、双方が署名・捺印することで契約を成立させる書類です。宅地建物取引業法37条では、宅地建物取引不動産会社が売買の仲介をした場合、契約が成立したら遅滞なくこの書面を交付するよう義務づけています。
書面には宅地建物取引士の記名があり、物件の表示や代金、引渡し時期といった取引の骨格がすべて明文化されます。口頭で合意した内容と契約書の記載が食い違っていた場合、契約書の記載が優先されるため、サインの前に自分の理解と一致しているかを照らし合わせる作業が欠かせません。
口頭での説明と契約書の文言が違うと感じたら、その場で質問し、修正してから署名してください。
売買契約書に書かれる物件情報と取引条件
物件の表示と売買代金
契約書の冒頭には、登記簿上の所在地・地番・家屋番号・面積といった物件の表示が記載されます。マンションの場合は専有部分の面積や敷地権の割合も含まれ、登記簿謄本(登記事項証明書)の記載と一致しているかを確認します。あわせて売買代金とその内訳、公租公課(固定資産税・都市計画税)の精算方法も明記されます。
手付金・支払いスケジュール
手付金は売買代金の5〜10%程度を契約時に授受することが一般的で、残代金は決済日に一括で支払われます。支払いの時期と金額が契約書に明示されているため、残代金の決済日までに買主の住宅ローン実行が間に合うかどうかも、この欄から分かります。
登記簿上の面積と実際の面積が異なることもあるため、数値は登記事項証明書と照合してください。
手付金・解除・契約不適合責任の条項を確認する
手付解除とローン特約
契約書には、買主が手付金を放棄すれば契約を解除できる「手付解除」と、売主が手付金の倍額を返せば解除できる「手付倍返し」の条項が設けられます。多くの契約書では手付解除ができる期限が定められており、その期限を過ぎると違約金が発生する契約に切り替わります。買主が住宅ローンを利用する場合は、ローン審査が通らなければ契約を白紙解除できる「住宅ローン特約」の有無と期限も確認が必要です。
契約不適合責任の期間
引き渡した物件に雨漏りやシロアリ被害などの不具合があった場合、売主が負う責任を契約不適合責任と呼びます。2020年施行の改正民法により、旧来の瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)という呼び方から契約不適合責任に改められ、個人間売買では引渡しから3ヶ月程度に責任期間を限定する契約も多く見られます。この条項の内容と期間は、不動産の売買契約書に関する手付金と契約不適合責任で詳しく解説しています。
手付解除の期限とローン特約の期限は別物のため、2つの日付を取り違えないよう注意してください。
売買契約書の印紙代(印紙税)はいくらかかるか
不動産の売買契約書は印紙税法上の課税文書にあたり、契約書に記載された金額に応じた収入印紙を貼付して消印する必要があります。軽減措置により、不動産売買契約書の印紙税は本則より軽減されており(軽減の割合は契約金額帯によって異なります)、2026年9月時点では次の金額です。
| 契約金額 | 印紙税額 |
|---|---|
| 500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
| 1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 3万円 |
| 1億円超5億円以下 | 6万円 |
出典:国税庁「印紙税額一覧表」(2026年9月時点)をもとに作成
この軽減措置は2027年3月31日までの契約書に適用される時限措置のため、適用期限が延長されるかどうかは国税庁の最新情報で確認が必要です。印紙代は売主・買主それぞれが自分の保有する契約書分を負担するのが一般的で、契約書を2通作成して売主・買主それぞれが印紙を貼付するか、1通のみ作成し一方が原本(印紙あり)、他方がコピー(印紙不要)を保有する形を取るかは不動産会社との事前確認で決まります。より詳しい納め方は不動産の印紙税と売買契約書の納め方で解説しています。
電子契約の場合は印紙税がかからないケースがあるため、紙と電子のどちらで契約するかを事前に相談してください。
署名前にチェックしたい特約と引渡し条件
契約書の後半には、物件ごとの事情に応じた特約条項が記載されます。境界が未確定な土地であれば境界確定の時期と方法、エアコンや給湯器といった設備を現状のまま引き渡すのか撤去するのか、固定資産税の起算日をいつにして日割り精算するのかといった取り決めです。これらは物件によって内容が大きく異なるため、ひな形のまま読み飛ばすと、引渡し後に「聞いていた話と違う」という事態につながります。
違約金の条項も確認が必要です。契約解除の際に支払う違約金は売買代金の10〜20%程度に設定されることが多く、金額が大きいため、解除の条件と金額の両方を確認してから署名します。
設備の引渡し状況は「設備表」という別紙で確認できることが多いので、契約書とあわせて見てください。
重要事項説明書と売買契約書の違い
売買契約書と混同されやすい書面に重要事項説明書があります。重要事項説明書は宅地建物取引業法35条に基づき、契約を結ぶ前に宅地建物取引士が物件の権利関係や法令上の制限などを説明するための書面で、売買契約書は契約が成立したことを証明する37条書面です。順番としては、まず重要事項説明を受けてから、その内容に納得した上で売買契約書に署名するという流れになります。
2つの書面は記載内容が重なる部分もありますが、重要事項説明書は契約前の情報提供、売買契約書は契約内容の確定という役割の違いがあります。両者の違いと家の準備については重要事項説明とは?売買契約書との違いと家の準備で解説しています。
重要事項説明の内容に疑問があれば、その場で契約書への署名を保留してもかまいません。
売買契約から引渡しまでの流れ
売買契約書に署名する前後で、手続きはどのような順序で進むのでしょうか。全体の流れを把握しておくと、今どの段階にいて次に何を確認すべきかが分かります。
匿名査定も活用しながら売却相場を把握し、不動産会社と媒介契約を結ぶ
買主から購入申込書を受け取り、価格や引渡し時期を調整
宅地建物取引士から物件の権利関係や法令上の制限の説明を受ける
売買契約書に署名・捺印し、買主から手付金を受け取る
買主の住宅ローン審査の完了を確認し、決済日を調整
残代金の受領と同時に鍵を引き渡し、所有権移転登記を申請
契約書に署名する4番目のステップは、全体の折り返し地点にすぎず、その後も残代金決済と登記手続きが残っている点が分かります。
売却相場を事前に把握しておくと、提示された売買代金が契約書に反映される段階で違和感なく確認できます。査定方法の精度については匿名査定・AI査定の精度の限界と賢い使い方で解説しています。
契約から決済までは1〜2ヶ月かかることが多いため、転居のスケジュールは余裕を持って組んでください。
よくある質問
売買契約書とは誰が作成するものですか
仲介を担当する不動産会社が作成し、宅地建物取引士が記名します。売主・買主それぞれに1通ずつ交付されるのが一般的です。
売買契約書に印紙を貼らないとどうなりますか
印紙税法上の課税文書にあたるため、印紙を貼らずに契約すると過怠税が課される場合があります。契約書を2通作成する場合は、原則として両方に印紙が必要です。
契約後に買主都合でキャンセルされることはありますか
手付解除の期限内であれば、買主が手付金を放棄して契約を解除できます。住宅ローン特約の期限内にローン審査が通らなかった場合は、白紙解除となり手付金も返還されます。
契約不適合責任の期間はどれくらいに設定されますか
契約書の特約で自由に定められますが、個人間売買では引渡しから3ヶ月程度に限定する契約が多く見られます。新築住宅の場合は別の法律で最低期間が定められています。
重要事項説明と売買契約は同じ日に行いますか
同じ日に続けて行う場合と、別の日に分けて行う場合の両方があります。いずれの場合も、重要事項説明を受けてから契約書に署名する順序は変わりません。
不動産売買契約書の確認ポイントを押さえて契約に臨む
不動産売買契約書は、物件の表示や売買代金、手付金、契約不適合責任の期間、印紙代の負担方法まで、取引の条件すべてを書面にした契約書です。署名すれば法的な効力が生じ、後から条項を変更することは原則できません。ぜひ本記事の確認ポイントを参考に、署名の前に一つずつ条項を照らし合わせてください。
出典
- 国税庁「印紙税額一覧表」
- 国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
- 国土交通省「宅地建物取引業法に基づく37条書面・35条書面について」
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」
- e-Gov法令検索「民法(契約不適合責任に関する規定)」
