空き家を売却した時の税金は?種類と計算方法をわかりやすく解説
築30年の空き家の売却が成立し、買主との間で売買契約書を取り交わしました。次に必要になるのは、譲渡所得税(所得税)の確定申告と納付です。住民税については、税額が記載された納税通知書が後日自治体から届きます。空き家の売却でかかる税金は譲渡所得税・住民税・復興特別所得税の3つで、所有期間が売却した年の1月1日時点で5年を超える長期譲渡なら合計税率は約20.315%、5年以下の短期譲渡なら約39.63%です。
この税率は売却益(譲渡所得)にかかるもので、相続した空き家には「3000万円特別控除」という軽減策があり、適用できれば税額が大きく下がります(2026年9月時点)。
本記事では、空き家の売却税金の種類と計算方法、3000万円特別控除の適用条件、確定申告の手続きを解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 築30年の空き家を今年ようやく売却できたが、譜渡所得税や住民税でどれだけ引かれるか分からず手元資金の計算に不安を抱える方
- 確定申告の経験がなく空き家売却で税金の種類や計算式を知らないまま、税務署に相談する時期を逃しそうで焦っている方
- 解体か売却かで悩んだ末に売却を選んだものの、諸費用込みで実際にいくら残るのか見積もれず落ち着かない方
空き家の売却でかかる税金の種類と全体像
空き家を売却したときにかかる税金は、売却価格そのものではなく「売却によって得た利益」である譲渡所得(じょうとしょとく)に対してかかります。譲渡所得に課税される税金は譲渡所得税(所得税)・復興特別所得税・住民税の3つで、合計の税率は所有期間によって変わります。
これらの税金は売却した翌年の確定申告でまとめて計算し、納めます。固定資産税や仲介手数料のように売却時にその場で差し引かれるわけではないため、売却代金が入金されても安心せず、納税資金を別に確保しておく必要があります。空き家の売却税金と諸費用の全体像は、不動産売却にかかる税金と費用の全体像でも解説しています。
固定資産税の精算金と譲渡所得税は別物です。売却代金が入っても、翌年の税金分は使わずに残しておくと安心です。
譲渡所得税の計算方法|空き家売却でかかる税金はいくらか
譲渡所得の計算式と課税譲渡所得の求め方
譲渡所得は「売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)」で求めます。取得費は購入時の価格や当時の仲介手数料などの合計で、購入時の資料が残っていない空き家では、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使うのが一般的です。譲渡費用には、仲介手数料や解体費、測量費などが含まれます。
たとえば3000万円で空き家を売却し、取得費の記録がないため概算取得費150万円(売却価格の5%)、譲渡費用150万円とすると、課税対象となる譲渡所得は2700万円です。特例を使わない場合、長期譲渡の税率20.315%をかけると、税額は約549万円になります。
所有期間で変わる長期・短期譲渡の税率
税率は、空き家を売却した年の1月1日時点での所有期間で決まります。所有期間が5年を超えていれば長期譲渡、5年以下なら短期譲渡として扱われ、短期譲渡の税率は長期譲渡のほぼ2倍です。
| 所有期間 | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡(5年超) | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
| 短期譲渡(5年以下) | 30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
出典:国税庁「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」をもとに作成
先ほどの例(3000万円で空き家を売却・取得費150万円・譲渡費用150万円・長期譲渡・特別控除なし)で、売却価格に対する内訳を示すと次のようになります。
※3000万円で売却・長期譲渡・控除適用なしの概算例(2026年9月時点)
図の通り、税金と諸費用を合わせて売却価格の約23%が引かれ、手元に残るのは約77%という計算です。手取り金額の計算方法は、マンション売却で手元に残る金額の計算方法で紹介している考え方が参考になり、空き家でも売却価格から税額と諸費用を差し引く手順は同じです。
購入時の契約書が見つかれば、概算取得費より有利になることが多いので、処分する前に一度探してみてください。
「3000万円特別控除」で抑える空き家売却の税金
通常のマイホームに使える3000万円特別控除
自分が住んでいた家が空き家になった場合、住むのをやめてから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すれば、譲渡所得から3000万円を差し引ける「マイホームを売ったときの3000万円特別控除」(租税特別措置法第35条)を使える可能性があります。先ほどの例で譲渡所得2700万円に適用すると、課税対象はゼロになり、税額もゼロになります。
相続した空き家に使える特例の適用条件
相続や遺贈で引き継いだ空き家を売る場合は、「空き家の譲渡所得の3000万円特別控除」という別の特例があります。主な条件は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、相続開始直前に被相続人が一人で住んでいたこと、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること、譲渡価額が1億円以下であることなどです。建物を解体して土地だけを売る場合や、売主が売却前に耐震基準を満たすよう改修してから売る場合に適用されますが、令和6年1月1日以後の譲渡については、買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行う場合も特例の対象に加わっています。2026年9月時点では2027年12月31日までの売却が対象になっています。
空き家特例は共有で相続した場合、控除額の上限が人数によって変わります。共有者がいる場合は早めに税務署へ確認してください。
相続した空き家売却時の税金の注意点
相続した空き家の取得費は、被相続人が購入した当時の価格を引き継ぎます。購入時の契約書や領収書が見つからない場合は、前述の概算取得費(売却価格の5%)を使うしかなく、譲渡所得が大きくなって税額が増える点に注意が必要です。
相続登記が済んでいないと、そもそも空き家を売却できません。2024年4月から相続登記は義務化されており、引渡し(所有権移転登記)までに登記簿上の所有者を売主本人に変更する必要があります。相続から売却までの具体的な流れは、相続した不動産を売却する流れ|手続き・税金・注意点で解説しています。
相続登記が未了のままでは、買主への所有権移転登記ができず売却を完結できません(引渡しまでに相続登記を完了させる必要があります)。相続人が複数いる場合は、早めに話し合いを進めておくと手続きが滞りません。
空き家を売る時の税金以外にかかる諸費用
税金のほかに、空き家の売却では仲介手数料・登記費用・解体費用などの諸費用がかかります。仲介手数料は売却価格の3%+6万円(税別)が上限で、3000万円の売却なら96万円程度が目安です。
老朽化した空き家は、解体してから土地として売却したほうが買主を見つけやすいケースもありますが、解体費用は数十万円から200万円程度かかることが多く、解体後は固定資産税の住宅用地の軽減が外れて税額が上がる点も含めて判断する必要があります。
解体費用は不動産会社によって差が大きいので、複数の見積もりを取ってから判断すると安心です。
空き家売却後の確定申告の流れとすべき手続き
空き家を売却して譲渡所得が出た場合、売却した翌年の2月16日から3月15日までに確定申告が必要です。3000万円特別控除などの特例を使う場合も、申告をしなければ適用されません。
必要な書類は、譲渡所得の内訳書、売買契約書の写し、登記事項証明書、取得費や譲渡費用が分かる領収書などです。相続した空き家の特例を使う場合は、被相続人が一人で住んでいたことを示す書類や耐震基準を満たすことを示す証明書も必要になります。
申告をしなければ特例が使えず、譲渡所得があるのに申告しないままでいると、無申告加算税や延滞税が発生する可能性もあります。
必要書類は売却が決まった時点から集め始めると、確定申告の時期に慌てずに済みます。
税理士や不動産会社に相談するタイミング|空き家売却の税金計算
空き家の売却税金は、所有期間の数え方や特例の適用条件によって税額が大きく変わるため、売買契約を結ぶ前に一度、税理士や税務署の相談窓口で見積もりを取っておくと安心です。
不動産会社には譲渡所得税そのものの相談はできませんが、売却価格の見通しや必要書類の取得、解体の判断などは不動産会社が窓口になる場面が多く、税理士と不動産会社の両方に早い段階で声をかけておくと、確定申告の時期に慌てずに済みます。
税額の見積もりは、売買契約を結ぶ前に出してもらうと、価格交渉の判断材料にもなります。
よくある質問
空き家を売却して赤字でも確定申告は必要ですか?
譲渡所得がマイナス(赤字)の場合、税金は発生しないため確定申告の義務はありません。ただし、ほかの所得と損益通算できる特例を使う場合は申告が必要になることがあるため、該当するか税務署や税理士に確認してください。
3000万円特別控除と他の特例は併用できますか?
相続した空き家の3000万円特別控除は、ほかの譲渡所得の特例と重複して使えない場合があります。併用の可否は特例ごとに条件が異なるため、適用前に税務署か税理士に確認することをおすすめします。
空き家の売却税金はいつ、どこに払いますか?
所得税と復興特別所得税は、確定申告の期限である3月15日までに税務署へ納めます。住民税は、確定申告の内容にもとづいて、翌年6月以降に自治体から送られる納税通知書で分割して納付します。
相続した空き家を解体してから売ると税金は変わりますか?
解体費用は譲渡費用に含められるため、譲渡所得を減らす効果があります。一方で、解体して土地だけにすると固定資産税の住宅用地の軽減がなくなり、売却までの間の固定資産税が上がる点には注意が必要です。
税金の計算を自分でできない場合、誰に相談すればいいですか?
譲渡所得の計算や特例の適用判断は、税理士に依頼すると確実性が高まります。国税庁や税務署でも無料相談を受け付けているため、確定申告の時期が近づく前に相談の予約を取っておくと安心です。
空き家売却税金の仕組みを理解して納税資金を準備する
空き家の売却税金は、譲渡所得に対して所得税・復興特別所得税・住民税が課され、所有期間が5年を超えるかどうかで税率が大きく変わります。相続した空き家であれば3000万円特別控除が使えるかどうかで税額の差も大きくなるため、売却前に条件を確認しておく価値があります。ぜひ本記事の計算方法と特例の条件を参考に、売却後の確定申告までの流れを早めに準備してください。
出典
- 国税庁「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
- 国税庁「No.3223 譲渡所得の税額の計算」
- 国税庁「空き家の譲渡所得の3000万円特別控除」(令和6年1月1日以後の譲渡に関する要件拡充を含む)
- 国税庁「No.3155 譲渡所得の申告のしかた」
- 国税庁「申告と納税」
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 調布市公式サイト「相続した空き家に係る譲渡所得3,000万円の特別控除の手続に必要な確認書の発行」
- 公益財団法人不動産流通推進センター「遺産分割前の相続物件の媒介方法について」
- iekon.jp「不動産は相続登記せずに売却できる?」
