マイホーム買い替え特例とは?適用条件をわかりやすく解説
マンションや戸建てを売って住み替えるとき、売却代金から譲渡所得税を差し引くと、新居の購入に回せる資金が想定より少なくなります。
「特定の居住用財産の買換えの特例」(措置法36条の2)を使うと、所有期間10年超・居住期間10年以上などの条件を満たす場合に、売却益への課税を新居を手放すときまで繰り延べられます(2026年9月時点の制度内容)。
本記事では適用条件と確定申告の手続き、他の特例との違いを解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 子どもが独立して部屋数が余った家を売り新居に買い替える予定だが、特例の適用条件が複雑で税金面が不安な方
- 築25年の自宅を売って資金を新居購入に充てたいが、買い替え特例を使えるかどうか条件を確認したい方
- 住み替え先の契約時期と売却時期がずれそうで、特例の期限や必要書類を事前に把握しておきたい方
マイホーム買い替え特例とは|家の譲渡所得税を繰り延べる仕組み
マイホーム買い替え特例の正式名称は「特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」で、租税特別措置法36条の2に根拠があります。この特例は家の売却益を非課税にする制度ではなく、課税を先送りにする「繰り延べ」の仕組みです。
買い替え特例を使うと、家を売却した年の確定申告では譲渡所得税がかからず、将来その新居を売却した時点で、繰り延べられた分の譲渡益も合わせて課税されます。つまり税負担が消えるわけではなく、支払うタイミングが先に延びるだけという点を理解しておく必要があります。
「非課税になる特例」と誤解されがちですが、あくまで納税を先送りする制度です。将来の売却計画まで含めて検討してください。
買い替え特例の適用条件|売却する家と購入する家の要件
買い替え特例は、売却するマンションや戸建て(譲渡資産)と購入する家(取得資産)の両方に条件が設けられています。どちらか一方でも外れると適用を受けられません。
売却する家(譲渡資産)に必要な条件
売却するマンションや戸建ては、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が10年を超え、本人の居住期間が10年以上あることが必要です。あわせて、譲渡対価の額が1億円以下であることも条件に含まれます。
買い替え先(取得資産)に必要な条件
新しく取得する家は、建物の床面積が50平方メートル以上、土地面積が500平方メートル以下であることが求められます。取得の時期は、売却した年の前年から翌年までの3年間のいずれかで、取得した家には、売った年かその前年に取得した場合は売却した年の翌年12月31日まで、売った年の翌年に取得した場合は取得した年の翌年12月31日までに居住を開始する必要があります。
所有期間の判定は1月1日基準のため、引っ越しのタイミングが数日ずれるだけで条件を外れることがあります。なお、居住期間は通算期間で判定されるため、1月1日時点の判定ではなく、居住していた期間を合計して10年以上かどうかで判断します。
確定申告手続きと必要書類|売却した家の記録を整理する流れ
買い替え特例は自動的に適用される制度ではなく、確定申告で特例の適用を申告して初めて効果が生まれます。売買契約書の写しや登記事項証明書など、売却した家と新しく取得した家の両方の書類をそろえる必要があります。
家を売却してから新居に入居し、確定申告を終えるまでの流れを図にすると次のようになります。2026年9月時点の手続きの流れです。
売買契約書・引渡しの記録を保管
取得の翌年12月31日までに居住開始
売買契約書の写し・登記事項証明書など
翌年3月15日までに税務署へ提出
新居を将来売却する際に合わせて課税
手続きの中心は確定申告であり、書類がそろわないまま期限を過ぎると、その年の特例の適用を受けられなくなります。
不動産売却と新居取得の書類は別々の年にまたがることが多いため、確定申告前にまとめて保管しておくと手続きがスムーズです。
自宅売却時の3,000万円特別控除・軽減税率特例との違い
家を売ったときの税負担を軽くする制度は買い替え特例だけではありません。3,000万円特別控除や軽減税率の特例と比べ、仕組みが大きく異なります。
| 項目 | 買い替え特例 | 3,000万円特別控除 | 軽減税率の特例 |
|---|---|---|---|
| 税の扱い | 課税の繰り延べ | 譲渡所得から控除 | 税率の引き下げ |
| 所有期間の要件 | 10年超 | 要件なし | 10年超 |
| 居住期間の要件 | 10年以上 | 要件なし | 要件なし |
| 他の特例との併用 | 選択制(併用不可) | 軽減税率の特例と併用可(買換え特例とは併用不可) | 3,000万円控除と併用可 |
出典:国税庁「No.3302」「No.3305」「No.3355」をもとに作成
3,000万円特別控除は譲渡所得をその場で減らせる一方、売った年の前年および前々年に同じ特例を受けていないことが条件です。買い替え特例は控除ではなく繰り延べであるため、将来の税負担まで見込んで選ぶ必要があります。どちらが有利かはケースごとに異なるため、買い替え特例とは?わかりやすく税負担を解説もあわせて確認しておくと判断しやすくなります。
3つの特例は同時に使えず選択制のため、申告前にどれを選ぶか決めておく必要があります。
住み替えを成功させる不動産会社選びと査定の進め方
買い替え特例の条件を満たせるかどうかは、家の売却額や取得のタイミングによって変わります。制度の条件を確認する前に、売却相場をつかんでおくと計画が立てやすくなります。
複数社への査定依頼で売却相場をつかむ
マンションや戸建ての査定の申し込みは、1社だけでなく複数の不動産会社に依頼すると、売却相場の幅が分かります。営業電話を増やしたくない場合は匿名査定を使う方法もあり、匿名査定と一括査定の違い|営業電話なしで相場を知る使い分けで使い分け方を解説しています。
売却と購入のタイミングを合わせる
買い替え特例は取得資産の取得時期が売却した年の前年から翌年までの3年間と定められているため、売却と新居購入のタイミングがずれすぎると条件から外れます。媒介契約を結ぶ前に、新居の購入計画と照らし合わせたスケジュールを不動産会社に伝えておくと調整しやすくなります。
新居の契約時期が先に決まっている場合は、売却のスケジュールを逆算して不動産会社に相談してください。
使う際の注意点|買い替え特例のリスクと売却のタイミング
買い替え特例は税負担を先送りできる反面、いくつかの注意点があります。
買い替え特例と住宅ローン控除は選択制で、同時に適用を受けられません。新居で住宅ローン控除を受ける予定がある場合は、どちらを選ぶかによって手取りの税負担が変わります。また、新居の購入価格が売却価格より低い場合、その差額部分には課税が生じる仕組みになっており、繰り延べられる金額には上限があります。将来の売却時に家の価格が下がっていた場合の損失については、買い替え特例とは別の制度であるマイホームを売って損したら|譲渡損失の特例と繰越控除で扱う内容が関係してくるため、あわせて確認しておくと安心です。
住宅ローン控除との選択は金額の大小だけでなく、将来の資金計画も踏まえて決めてください。
制度の適用期限と最新情報の確認方法
買い替え特例は時限立法として定められており、これまで適用期限が税制改正のたびに延長されてきました。2026年9月時点でも適用は継続していますが、所有期間や譲渡対価の上限といった条件が改正で変わる可能性があります。
家の売却や新居の購入を具体的に計画する段階では、国税庁のウェブサイトで最新の適用期限を確認するか、税理士など専門家に相談してから手続きを進めることをおすすめします。
税制は毎年のように見直されるため、売却を具体的に進める前に最新の条件を確認してください。
よくある質問
買い替え特例と3,000万円特別控除はどちらが得ですか
譲渡益の金額や将来の売却予定によって有利な制度が変わります。買い替え特例は課税を先送りするだけなので、将来取得したマンションや戸建てを売却する計画まで含めて比較することが必要です。
住宅ローン控除と併用できますか
買い替え特例と住宅ローン控除は選択制で、同時に適用を受けることはできません。新居で住宅ローン控除を受けたい場合は、買い替え特例を使わない選択も検討してください。
新居の購入価格が売却価格より低い場合はどうなりますか
差額部分については、その年の譲渡所得として課税の対象になります。繰り延べられる金額は新居の取得価額の範囲内にとどまる仕組みです。
特例の適用期限はいつまでですか
時限立法であり、これまで複数回延長されてきました。最新の期限は国税庁のウェブサイトや税理士への相談で確認してください。
確定申告をしなかった場合はどうなりますか
買い替え特例は申告しなければ自動的には適用されません。確定申告の期限を過ぎると、原則としてその年分の適用を受けられなくなります。
マイホーム買い替え特例を活用した住み替えのまとめ
マイホーム買い替え特例は、所有期間10年超・居住期間10年以上などの条件を満たせば、家の売却益への課税を新居を手放すときまで繰り延べられる制度です。非課税になるわけではなく、将来の税負担まで含めて計画する必要があります。3,000万円特別控除や軽減税率の特例とは選択制であり、売却額や取得のタイミング次第で有利不利が変わります。ぜひ本記事の適用条件と手続きの流れを参考に、住み替え計画を立ててください。
出典
- 国税庁「No.3355 特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」
- 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
- 国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
- e-Gov法令検索「租税特別措置法第36条の2」
- 国税庁 措置法第36条の2関係通達 36の2-2(居住期間の判定)
