マンション売却を業者買取で行う際の注意点
マンションを仲介で売りに出しても問い合わせが途絶え、内覧の予定も入らないまま、査定サイトの検索結果だけが積み上がっていくことがあります。こうした状況で選択肢に入るのが、不動産会社自身が買主になる「不動産買取(不動産会社買取)」です。仲介のように購入希望者を探す必要がなく、不動産会社が直接マンションを買い取るため、契約から引き渡しまで数週間から1か月程度で現金化できるケースがあります。
ただし買取価格は仲介で売るより低くなるのが一般的で、価格とスピードのどちらを優先するかによって判断が分かれます。本記事では、マンション売却を不動産会社買取で進める際の手順と、契約前に確認したい注意点を解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 親の介護のため急いで現金化したいマンションがあり、業者買取のスピードと価格差のバランスに悩んでいる方
- 築25年のマンションを仲介で3か月売れず、業者買取に切り替えるべきか判断材料を探している方
- 初めて売却する物件で契約不適合責任の扱いが業者買取だとどう変わるのか、注意点を事前に知りたい方
マンション売却における業者買取とは|仲介との違いを理解する
マンション売却には大きく分けて「仲介」と「買取(不動産会社買取)」の2つの方法があります。仲介は不動産会社が間に入り、購入希望者を探して契約を成立させる方法で、買主は一般の個人が中心です。これに対して不動産買取は、依頼した不動産会社そのものが買主になり、マンションを直接購入する仕組みです。
買主を探す期間が不要なため、売却までの流れが短くなり、仲介手数料もかからない点が特徴です。一方で、不動産会社は買い取ったマンションをリフォームや再販売してから利益を得る必要があるため、買取価格は仲介で売却する場合より低く設定されるのが一般的です。
仲介と買取は「誰が買うか」が違うだけでなく、価格の決まり方そのものが異なります。
売却価格とスピード|マンション売却買取業者に依頼した場合の変化
売却価格はどの程度下がるのか
不動産買取の価格は、不動産会社がマンションを再販売する際の利益や、リフォーム費用、転売までの保有リスクを差し引いて算出されるため、仲介による売却価格より低くなる傾向があります。具体的な下落幅は物件の立地や築年数、修繕状況によって差が大きく、一律の数字では語れません。複数の不動産会社に査定を依頼し、仲介での想定価格と買取価格の両方を提示してもらったうえで比較することが欠かせません。
売却までの期間はどれくらい短くなるのか
仲介によるマンション売却は、購入希望者が見つかるまでの期間が読めず、築年数が古い物件や修繕積立金の滞納があるマンションでは、数か月売れないケースもあります。不動産買取であれば、不動産会社が自社の判断で購入を決めるため、査定から契約、引き渡しまでを数週間から1か月程度で終えられることがあります。急な転勤や相続の手続きに合わせて現金化したい場合は、この期間の短さが大きな判断材料になります。
価格だけで判断せず、いつまでに現金化したいかを先に決めてから査定額を比較してください。
不動産会社買取が向いているマンションと向いていないマンション
不動産会社買取が向いているのは、築年数が古く仲介では買い手が付きにくいマンション、修繕積立金の滞納や管理組合の運営に課題があるマンション、相続した不動産を早く現金化したい場合などです。相続した不動産を売却する流れや税金の扱いは、相続した不動産を売却する流れ|手続き・税金・注意点で解説しています。
反対に、立地が良く築浅のマンションや、周辺の取引価格の売却相場が高いエリアの物件は、時間をかけて仲介で売却したほうが、最終的な手取り額が大きくなる可能性があります。不動産売却を急ぐ事情がないのであれば、まず仲介での査定額を確認してから、不動産会社買取と比較する順番が無難です。
築25年を超えていても、立地によっては仲介で十分に買い手が付くこともあるので、最初から買取に絞らないでください。
不動産買取の手順と流れ|査定から引き渡しまで
マンション売却を不動産会社買取で進める場合、まず匿名査定や複数社への査定依頼で、おおよその買取価格の目安をつかみます。営業電話を受けずに売却相場を把握したい場合の査定方法の違いは、匿名査定と一括査定の違い|営業電話なしで相場を知る使い分けで解説しています。
その後、不動産会社の担当者が現地を訪問して建物の状態を確認し、買取価格が正式に提示されます。提示額や引き渡し時期の条件を確認したうえで売買契約を結び、残代金の決済と同時に鍵を引き渡して売却が完了します。
物件情報から大まかな買取価格の目安を把握
不動産会社の担当者が室内・共用部の状態を確認
引き渡し時期や特約の条件もあわせて確認
契約不適合責任の特約など契約条項を確認
残代金の受け取りと同時に鍵を引き渡して完了
各ステップにかかるおおよその日数を把握しておくと、仲介でマンションを売却した場合の所要期間との差を比較しやすくなります。
契約から引き渡しまでの日程は不動産会社によって幅があるため、契約前に具体的な日数を確認してください。
契約不適合責任の扱いとマンション売却時の注意点
仲介でマンションを個人の買主に売却する場合、引き渡し後に雨漏りや給排水管の不具合などが見つかると、契約不適合責任(けいやくふてきごうせきにん。売買の目的物が契約の内容に適合しない場合に売主が負う責任)を問われる可能性があります。これは民法上の任意規定であり、当事者間の合意で免責にすることができます。
不動産買取では買主が不動産会社であるため、契約書の中で契約不適合責任を免責とする特約が設けられるのが一般的です。宅地建物取引業法には、宅建不動産会社が自ら売主となる場合に通知期間を引渡しから2年未満に制限する特約を無効とする規定がありますが、この規定は売主が宅建不動産会社であるときに適用されるものです。不動産会社買取では個人である売主の側に、この保護規定は及びません。
つまり不動産買取を選ぶと、引き渡し後に不具合が見つかっても責任を問われにくくなる一方で、その分だけ買取価格が抑えられている可能性がある点を理解しておく必要があります。
契約不適合責任が免責になっているかどうか、売買契約書の特約条項を必ず自分の目で確認してください。
買取業者を選ぶときの注意点
宅地建物取引業の宅地建物取引業の免許と行政処分歴を確認する
不動産買取を行う不動産会社も、宅地建物取引業の宅地建物取引業の免許を持つ宅地建物取引不動産会社です。免許番号には更新回数が表示されており、都道府県知事免許は事務所が1つの都道府県内にある場合、国土交通大臣免許は事務所が2つ以上の都道府県にまたがる場合に交付されるもので、いずれも事務所の所在地の違いを示すにすぎず、事業規模の大小を表すものではありません。過去に行政処分を受けていないかは、国土交通省のネガティブ情報等検索システムで確認できます。
複数の買取業者を比較する
1社だけの査定額で契約を決めてしまうと、提示された買取価格が適正なのかを判断できません。マンション売却買取業者は会社ごとに再販売の戦略が異なるため、提示額に差が出やすく、複数社に査定を依頼して価格と条件を比較することが欠かせません。
査定額の高さだけでなく、契約条件や引き渡し時期の柔軟さも合わせて比較してください。
買取価格を少しでも上げる交渉のコツ
買取価格は不動産会社の社内基準で決まりますが、室内の清掃や簡単な修繕を済ませてから査定を受けると、印象が上がり提示額に反映されることがあります。複数社の査定額を把握したうえで、他社の提示額を伝えて交渉する方法も有効です。
仲介手数料が不要な分、不動産会社買取では売買価格×3%+6万円+消費税(売買価格400万円超の場合)という仲介手数料の負担がなくなります。ただし買取価格自体が仲介の想定売却価格より低く設定されているため、最終的に手元へ残る金額で比較することが欠かせません。マンション売却で手元に残る金額の計算方法は、マンション売却で手元に残る金額の計算方法で解説しています。
仲介手数料がかからない分がそのまま得になるわけではないので、最終的な手取り額を必ず計算してください。
よくある質問
マンション売却を不動産会社買取で行うと、必ず仲介より価格が下がりますか
一般的に不動産買取の価格は仲介での想定売却価格より低く設定される傾向がありますが、個別の物件の状況によって差があるため、複数社の査定を比較して判断してください。
不動産会社買取ではリフォームしていないと売れませんか
多くの不動産会社は、リフォームをしていない状態のマンションでもそのまま買い取ります。室内の状態を踏まえて買取価格が算出される仕組みです。
不動産会社買取を選ぶと仲介手数料はかかりませんか
不動産会社自身が買主になるため、仲介手数料は発生しません。ただし買取価格に仲介手数料相当分が織り込まれている場合もあるため、総額で比較してください。
査定を依頼したら、その会社に売却しなければなりませんか
不動産の査定はあくまで価格の目安を知るための手続きであり、査定額に納得できなければ売却を断っても問題ありません。
住宅ローンが残っているマンションでも不動産会社買取は利用できますか
売却代金で住宅ローンの残債を完済できれば利用できます。残債が売却価格を上回る場合は、不動産会社や金融機関への事前の相談が必要です。
マンション売却で不動産会社買取を検討するなら
マンション売却における業者買取は、仲介手数料がかからず、査定から引き渡しまでを数週間から1か月程度で終えられる点が特徴です。一方で買取価格は仲介より低くなりやすく、契約不適合責任も免責の特約が設けられるのが一般的なため、価格・期間・契約条件の3点を併せて確認する必要があります。ぜひ本記事の手順と注意点を参考に、複数の不動産会社を比較しながら、ご自身の事情に合った売却方法を選んでください。
出典
- e-Gov法令検索「民法」
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」
- 国土交通省「ネガティブ情報等検索システム」
- GMO不動産査定「不動産会社の免許番号から分かる2つの情報」
- homes.co.jp「宅建業免許番号とは」
