不動産売買契約の流れとは?必要書類と注意点をわかりやすく解説
マンションや戸建ての売買契約が近づくと、不動産会社から手付金の金額や当日の持ち物、重要事項説明の日程を次々と知らされます。宅地建物取引士(たくちたてものとりひきし)が読み上げる契約書の条文は専門用語が多く、初めて家を売る人にはその場で理解しきれません。
不動産売買契約は、宅地建物取引業法に基づく重要事項説明を受けたあと、売主・買主・仲介する不動産会社が同席して契約書に署名押印する手続きです。手付金の額や契約不適合責任の範囲、住宅ローン特約の条件は契約書に明記されており、事前に確認しておけば当日の進行に戸惑いません。2026年9月時点の制度をもとに解説します。
本記事では、不動産売買契約を結ぶまでの流れと当日に必要な書類、契約書で確認すべき注意点を解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 自宅を初めて売ることになり、売買契約でどんな書類が必要になるのか分からず戸惑っている方
- 何から始めればいいか順番が分からず、契約の流れを事前に把握して当日焦らないようにしたいと考えている方
- 査定に出したら売却が進んでしまう気がして身構えており、契約時の注意点を先に確認しておきたい方
査定から引き渡しまで|不動産売買契約が成立するまでの流れ
マンションや戸建てを売る手続きは、不動産会社への査定依頼から始まり、媒介契約の締結、売却活動、買主候補との価格交渉を経て、不動産売買契約の締結、決済と引き渡しへと進みます。契約までの期間は物件の条件や交渉の状況によって幅があるため、ここでは契約当日とその前後に絞って手順を確認します。
不動産会社に査定を申し込み、売却相場を把握
専任・専属専任・一般のいずれかを選択
広告掲載や内覧対応で買主候補を探す
価格や引き渡し時期をすり合わせる
重要事項説明を受け、契約書に署名押印
残代金の受領と鍵の引き渡し、登記手続き
査定から引き渡しまでの6段階のうち、不動産売買契約は5番目にあたり、重要事項説明を受けたあとに結ぶ手続きであることが分かります。
契約日が決まったら、重要事項説明の時間も含めて半日はかかる前提で予定を空けておくと安心です。
マンション売却の査定は売買契約にすぐつながるのか
マンションの査定を依頼しても、その結果に納得できなければ売却を見送ってかまいません。不動産の査定は不動産会社が売却相場の目安を示す手続きにすぎず、査定を受けたことを理由に媒介契約や不動産売買契約を結ぶ義務は生じません。
氏名や住所を伏せて売却相場だけを知りたい場合は、匿名査定やAI査定を使う方法もあります。ただし匿名査定は実際の内覧を伴わないため、算出された価格が訪問査定と大きく異なることもあり、匿名査定のデメリットと注意点や匿名査定・AI査定の精度の限界を事前に確認しておくと安心です。
査定額はあくまで目安です。複数社に依頼して価格の根拠を比べてから媒介契約を検討してください。
専任・専属専任・一般|不動産売買の媒介契約の種類と選び方
不動産会社に売却を依頼する際に結ぶ媒介契約には、専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約の3種類があります。契約した不動産会社は、宅地建物取引業法に基づきレインズ(指定流通機構)への登録義務や売主への販売状況の報告義務を負います。
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約は1社だけに依頼する契約で、自分で見つけた買主と直接契約することもできません。不動産会社はレインズへの登録期限が契約から5日以内、売主への販売状況の報告は1週間に1回以上と定められています。
専任媒介契約
専任媒介契約も1社だけに依頼しますが、自分で見つけた買主と直接契約することは認められています。レインズへの登録期限は7日以内、販売状況の報告は2週間に1回以上です。
一般媒介契約
一般媒介契約は複数の不動産会社に同時に依頼できる契約で、レインズへの登録や販売状況の報告は義務付けられていません。会社ごとの販売活動の差が見えやすい一方、どの会社も販売活動に力を入れにくいという面もあります。
複数社に競わせたいなら一般媒介契約、手厚い報告を受けたいなら専任系の媒介契約が向いています。
契約当日に必要な書類と準備するもの|不動産売買契約の持ち物
不動産売買契約の当日は、売主・買主ともに本人確認書類と印鑑を持参し、不動産会社や司法書士が用意した契約書に署名押印します。
売主が準備する書類
売主は、本人確認書類(運転免許証など)、実印、印鑑証明書(発行から3か月以内)、権利証または登記識別情報、固定資産税納税通知書、本人名義の預金通帳(手付金や残代金の振込先)などを準備します。マンションの場合は管理規約や長期修繕計画の書類も求められることがあります。
買主が準備する書類
買主は、本人確認書類、認印または実印、手付金として現金や預金小切手を準備します。住宅ローンを利用する場合は、ローン特約の条件に関わる事前審査の結果を持参するケースもあります。
印鑑証明書に法律上の有効期限はありませんが、不動産登記や金融機関の実務では発行から3か月以内のものを求められることが多いため、契約日の直前に取得すると当日に慌てずに済みます。
手付金と契約不適合責任|不動産売買契約書で確認したい注意点
不動産売買契約書には、金額や引き渡し時期のほかに、手付金・契約不適合責任・住宅ローン特約など、トラブルを防ぐための条項が並びます。
手付金の性質と解除できる期限
手付金は一般に解約手付として扱われ、買主は手付金を放棄すれば、売主は手付金の倍額を返せば、相手方の履行着手前であれば契約を解除できます。解除できる期限は契約書に明記されるため、事前に確認します。
契約不適合責任の範囲
契約不適合責任(けいやくふてきごうせきにん)とは、引き渡した不動産が契約の内容に適合しない欠陥を抱えていた場合に、売主が買主に対して負う責任です。契約書には責任を負う期間や範囲が記載されており、個人間売買では免責や期間短縮の特約を結ぶことも多くあります。
住宅ローン特約の確認
住宅ローン特約は、買主が住宅ローンの審査に通らなかった場合に、違約金なしで契約を白紙に戻せる条項です。適用される融資の種類や審査の期限が契約書に定められているため、期限内に結果が出るかどうかも確認しておきます。
契約不適合責任の期間や範囲は売主に不利な特約になりやすいため、署名前に宅地建物取引士へ質問してください。
決済から引き渡しまで|不動産売買契約が完了するまでの流れ
不動産売買契約を結んだあと、買主の住宅ローンの本審査が通れば、決済日に残代金の受け渡しと引き渡しを同時に行います。決済当日は、買主が残代金を売主の口座へ振り込み、売主は抵当権の抹消登記と所有権移転登記の手続きを司法書士に依頼し、鍵と関連書類を買主へ引き渡します。
不動産会社に支払う仲介手数料は、決済日に残代金の受領と合わせて支払うのが一般的です。売買価格400万円超の場合、仲介手数料の上限は宅地建物取引業法で次のように定められています。
| 項目 | 計算式 |
|---|---|
| 仲介手数料の上限 | 売買価格×3%+6万円(+消費税) |
出典:国土交通省「宅地建物取引不動産会社が宅地又は建物の売買等に関して受けることのできる報酬の額」をもとに作成
仲介手数料は契約時と決済時に半額ずつ支払う不動産会社も多いため、支払いのタイミングを事前に確認してください。
高く売るために契約前にできる準備|不動産売却の基本
不動産売買契約の内容は、契約当日ではなく、契約条件を交渉する段階でほぼ固まります。複数の不動産会社に査定を依頼して売却相場の幅をつかみ、販売活動の提案内容を比べてから媒介契約を結ぶ不動産会社を決めれば、契約条件の交渉でも不利になりにくくなります。
不動産売却全体の流れや費用、税金について先に把握しておきたい場合は、不動産売却の完全ガイド|流れ・費用・税金と高く売るコツで解説しています。
契約条件の交渉がまとまってから契約書の文言を直すのは難しいため、価格交渉の段階で疑問点を解消しておくと安心です。
よくある質問
査定を依頼したら、売却しなければなりませんか?
いいえ。不動産の査定は売却相場を把握するための手続きで、結果に納得できなければ売却を断ってかまいません。媒介契約を結ぶかどうかは査定を受けたあとに判断できます。
手付金はいくら用意すればいいですか?
手付金の額は契約ごとに異なり、法律で一律の金額は定められていません。不動産会社との交渉を通じて契約書に明記された金額を事前に確認してください。
契約してからクーリング・オフはできますか?
クーリング・オフは、宅地建物取引業者が自ら売主となる取引において買主を保護するための制度です。個人の売主であるご自身がこの制度を利用することはできません。クーリング・オフは買主側の権利であるため、売却を進めるご自身には適用されない点にご注意ください。
住宅ローンの審査に落ちたら契約はどうなりますか?
契約書に住宅ローン特約が盛り込まれていれば、期限内に審査が通らなかった場合、違約金なしで契約を白紙に戻せます。特約の適用条件は契約書で確認しておく必要があります。
契約から引き渡しまではどのくらいかかりますか?
買主の住宅ローンの審査状況や引っ越しの準備によって幅があり、一律の期間は決まっていません。契約時に売主・買主双方で引き渡し希望日をすり合わせ、契約書に明記します。
不動産売買契約の流れを押さえて準備を進めよう
不動産売買契約は、査定と媒介契約を経て、重要事項説明を受けたあとに結ぶ手続きです。当日は本人確認書類や印鑑証明書などの持ち物をそろえ、契約書では手付金の扱いや契約不適合責任の範囲、住宅ローン特約の条件を確認しておけば、決済・引き渡しまで落ち着いて進められます。ぜひ本記事の不動産売買契約の流れと注意点を参考に、契約当日までの準備を整えてください。
出典
- 国土交通省「宅地建物取引不動産会社が宅地又は建物の売買等に関して受けることのできる報酬の額」
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」第37条の2(クーリング・オフ)
- e-Gov法令検索「民法」
- 法務局・登記実務解説「印鑑証明書の有効期限」(https://hojyokin-concierge.com/media/2025/09/04/inkansyoumeisyo_yukoukigen)
