戸建て住み替えの進め方|資金計画とタイミング
戸建てに10年、20年と住み続けたあと、子の独立や親の介護をきっかけに住み替えを考える家庭は少なくありません。築年数の古い戸建ては住宅ローンが残っている場合も多く、売却代金だけで残債を完済できるかどうかが最初の分かれ道になります。不動産売却と購入のどちらを先に進めるかは住宅ローンの残債と自己資金の額で決まり、民間の金融機関が扱う「住み替えローン」を使えば残債を新しい借入にまとめることも可能です(2026年9月時点)。本記事では、戸建て住み替えの進め方と資金計画、売却と購入のタイミングの決め方を解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 親の介護のため実家近くへ移る決断をしたが、築30年の戸建てをどの順序で売却・購入すればよいか分からず不安な方
- 資金繰りに不安があり住み替えの資金計画を立てたいが、売却と購入のどちらを先に進めるべきか判断できずにいる方
- 子の独立を機に夫婦二人用の住まいへ住み替えたいと考えているが、査定に出すと売却を強制される気がして踏み出せない方
戸建て住み替えの基本的な流れと進め方
戸建ての住み替えは、現在の家を売る作業と新しい家を買う作業が同時並行で進むため、マンションの買い替えより調整が複雑になります。一般的な流れは、まず戸建ての査定を依頼して売却相場をつかみ、不動産会社と媒介契約を結んでから売却活動を始め、買主が見つかったら売買契約を結び、並行して新居探しを進めて引渡しと引越しの日程をそろえる、という順序です。
この一連の流れの中で、戸建て売却の決済日と新居の引渡し日をどう組むかが資金計画を左右します。次の図解で、査定から引越しまでの手順を確認しておきます。
匿名査定や公的データで目安を把握
住宅ローンの残高証明書で残債を把握
売り先行・買い先行の方針もここで相談
内覧対応と新居の内覧スケジュールを調整
新居の引渡し日とできるだけ近づける
仮住まいの有無はこの段階で確定
上から下へ進むほど決める事柄が具体的になり、3番目の媒介契約の時点で売り先行か買い先行かの方針を決めておくと、後半のスケジュール調整がしやすくなります。
戸建ての住み替えは媒介契約を結ぶ段階で方針を固めておくと、後の予定が組みやすくなります。
売り先行と買い先行|戸建て住み替えのタイミングの決め方
戸建て住み替えでは、今の家を先に売る「売り先行」と、新居を先に買う「買い先行」のどちらを選ぶかで資金の流れが大きく変わります。
売り先行で進める場合
先に戸建てを売却して資金を確定させてから新居を探す方法です。売却代金で新居の購入資金をまかなえるため、二重のローン負担を避けられます。一方で、売却後に新居が決まらないと仮住まいが必要になり、引越しが2回になる場合があります。
買い先行で進める場合
先に新居を契約してから、今の戸建てを売却する方法です。仮住まいを挟まずに済みますが、新居の購入時点で戸建てがまだ売れていないと、住宅ローンの返済と新居の返済が一時的に重なります。この負担を一時的に埋める手段として「つなぎ融資」が使われることがあります。
仮住まいの費用を払いたくない方は買い先行を選びがちですが、ローンの二重払いが続く期間を事前に確認してください。
住み替えの資金計画|売却代金と住宅ローンの残債
戸建ての資金計画は、売却代金と住宅ローンの残債のどちらが大きいかで考え方が変わります。
住宅ローン残債と売却代金の関係
売却代金が住宅ローンの残債を上回れば、決済時に残債を一括返済して抵当権(ていとうけん、金融機関が住宅ローンの担保として設定する権利)を抹消できます。反対に残債が売却代金を上回る状態は「オーバーローン」と呼ばれ、自己資金で差額を埋めるか、新居の住宅ローンに残債を組み込む方法を検討する必要があります。
住み替えローンとつなぎ融資の違い
住み替えローンは、戸建ての売却で返しきれなかった残債を、新居の住宅ローンに上乗せして借り入れる仕組みです。審査では新居の購入価格に対する借入額の割合や年収が見られ、金融機関ごとに条件が異なります。制度の詳しい仕組みと審査の考え方は住み替えローンの審査基準で解説しています。一方のつなぎ融資は、買い先行で新居の決済を先に済ませる際、売却代金が入るまでの短期間だけ借りる融資で、住宅ローンより金利が高めに設定されるのが一般的です。
オーバーローンかどうかは、残高証明書と査定額を並べればすぐに分かります。早い段階で確認しておいてください。
戸建て売却の査定方法と売却相場の調べ方
戸建ての査定を依頼すると、不動産会社の担当者から連絡が来るため「査定に出すと売却を断れなくなる気がする」と感じる方もいます。ですが査定はあくまで売却価格の目安を知るための手続きで、査定後に売却を見送っても問題はありません。
不動産の査定には、個人情報を入力せずに概算額を知れる匿名査定と、複数社へ一括で依頼する一括査定があり、営業電話を受けたくない段階では匿名査定が向いています。両者の違いは匿名査定と一括査定の違いで解説しています。
戸建ては土地と建物をそれぞれ評価する必要があり、マンションに比べて匿名査定の精度が出にくいという特性もあります。戸建て特有の評価の難しさは戸建ての匿名査定の精度で解説しています。建物の評価方法としては、同程度の建物を新築した場合の価格から経過年数分の価値を差し引く原価法が使われることが多く、この考え方は原価法による戸建て評価で解説しています。
匿名査定の金額は幅が出やすいため、資金計画の第一段階の目安として使い、正式な金額は訪問査定で確認してください。
新居探しと購入のタイミング|内覧から契約までの注意点
新居探しは、戸建ての売却活動と同時に始めるケースが多く見られます。売り先行であれば決済日が見えてから新居の契約時期を決められますが、買い先行の場合は新居の引渡し希望日を先に不動産会社へ伝え、戸建ての売却活動のスピードと合わせる調整が必要になります。
新居が中古戸建てや中古マンションの場合、引渡しまでの期間が短く済むことが多い一方、新築住宅の場合は完成までの期間が長くなるため、仮住まいの必要性もあわせて検討してください。
新居の引渡し希望日は、売却の決済日が固まってから伝えるより先に共有した方が、不動産会社も調整しやすくなります。
費用と税金の特例|戸建て住み替えにかかるお金
戸建ての売却では仲介手数料がかかり、売却価格が400万円を超える場合は「売却価格×3%+6万円+消費税」で計算するのが一般的な速算式です。このほか抵当権抹消の登記費用や、売却益が出た場合の譲渡所得税も発生する可能性があります。
戸建てのマイホームを売却して譲渡益が出た場合でも、戸建てなどの居住用財産を売却したときの3,000万円特別控除を使えば、一定の要件のもとで譲渡所得から3,000万円を差し引いて税額を計算できます。買い替えの場合には、譲渡益への課税を将来へ繰り延べる「特定の居住用財産の買換えの特例」という制度もありますが、この特例は2025年(令和7年)12月31日までに売却したマイホームを対象とする時限措置です。2026年9月時点では本特例が延長されているかどうかを国税庁の最新情報で確認する必要があり、延長されていない場合はこの特例を利用できない点に注意してください。延長の有無を含め、どちらの特例を使えるかで納税額が変わるため、適用には細かい要件もあることから、国税庁の最新情報か税理士での確認が必要です。
特例は併用できない組み合わせもあるため、売却前に税理士か税務署へ確認してから進めてください。
進め方の注意点|戸建て住み替えで起こりやすい失敗
戸建ての住み替えでつまずきやすいのは、売却と購入のスケジュールを別々に考えてしまう点です。新居の契約を先に決めてしまい、戸建ての売却活動が長引いてローンの二重払いが続く例や、反対に売却を急いで売却相場より安い価格で決めてしまう例があります。
不動産会社を選ぶ際は、戸建ての売却実績があるかどうかと、住み替えのスケジュール相談に応じてくれるかどうかを確認してください。複数の不動産会社に査定を依頼して、提示価格だけでなく売却活動の進め方も比較することが、住み替え全体の計画を崩さないための対策になります。
複数社の査定額に大きな差があるときは、根拠を質問してから不動産会社を選んでください。
よくある質問
戸建ての住み替えは売却が先ですか、購入が先ですか
自己資金に余裕がある場合は買い先行、資金に余裕がなく二重ローンを避けたい場合は売り先行が選ばれる傾向にあります。どちらが向くかは自己資金の額と仮住まいの可否で変わります。
戸建ての査定に出すと必ず売却しなければなりませんか
不動産の査定は売却価格の目安を知るための手続きであり、査定を受けたあとに売却を見送っても問題ありません。匿名査定であれば担当者とのやり取りも最小限で済みます。
住宅ローンが残っていても戸建ての住み替えはできますか
残債が売却代金を下回れば決済時に一括返済できます。残債が上回るオーバーローンの場合は、自己資金での補填か住み替えローンの利用を検討する必要があります。
戸建ての売却にはどのくらいの期間がかかりますか
媒介契約から引渡しまでの期間は物件の条件や立地によって幅があり、数か月から半年以上かかる場合もあります。早めに査定を依頼し、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。
買い替え特例はどのような場合に使えますか
特定の居住用財産の買換えの特例は、戸建てのマイホームを売却して新たなマイホームに買い替える際、一定の要件を満たせば譲渡益への課税を将来へ繰り延べられる制度です。ただし本特例は2025年(令和7年)12月31日までの売却を適用期限とする時限措置であり、2026年9月時点では延長されているかどうかを国税庁の最新情報で確認する必要があります。延長されていない場合は利用できないため、適用要件も含めて国税庁の最新情報か税理士での確認が必要です。
戸建て住み替えの進め方を踏まえて計画を立てる
戸建ての住み替えは、売却と購入のどちらを先に進めるかで資金の流れが変わり、住宅ローンの残債次第では住み替えローンやつなぎ融資の利用も選択肢に入ります。不動産の査定で売却相場をつかみ、残債と自己資金を照らし合わせたうえで、不動産会社とスケジュールをすり合わせることが、二重ローンや仮住まいの負担を抑える近道になります。ぜひ本記事の戸建て住み替えの進め方を参考に、資金計画とタイミングを早めに固めて行動してください。
出典
- 国土交通省「宅地建物取引不動産会社の媒介報酬額について」
- 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例(3,000万円特別控除)」
- 国税庁「No.3355 特定の居住用財産の買換えの特例」
- ノムコム 不動産税金ガイド「特定の居住用財産の買い換え特例」(適用期限についての確認)
- 法務省「不動産登記の申請手続」
