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不動産売却の瑕疵保証とは?契約不適合責任との違いと注意点を解説

築25年の自宅を引き渡した数か月後、買主から「雨漏りがする」という連絡が届き、修繕費の請求書を受け取る売主がいます。

この請求にどこまで応じる義務を負うかは、2020年4月に施行された民法改正で定められた契約不適合責任(けいやくふてきごうせきにん)と、売買契約書に記載する瑕疵保証(かしほしょう)の条項によって決まります。民法566条は、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければ責任を問えないと定めており、宅地建物取引業法第40条はこの期間を引渡しから2年以上とする特約以外は無効としています(2026年9月時点)。

本記事では、瑕疵保証とは何か、契約不適合責任との違い、保証期間や免責特約の決め方、そして瑕疵が見つかったときの対応の流れを解説します。

この記事はこんな方に向いています

  • 築25年の自宅を売却する契約で、雨漏りが後から見つかった場合の保証範囲がどこまでか分からず不安な方
  • 住み替え先の購入資金を確保するため自宅を売るが、契約不適合責任と瑕疵保証の違いを理解できずに契約書を前に固まっている方
  • 実家を相続後すぐに売却予定だが、床下の腐食が見つかった場合に自分がどこまで責任を負うのか判断できず困っている方

不動産売却における瑕疵保証とは|雨漏りや床下腐食の保証範囲

瑕疵保証とは、不動産売却の売買契約書の中で、引渡し後に見つかった欠陥について売主がどこまで責任を負うかを定めた条項のことです。法律上の正式な用語ではなく、不動産業界で使われてきた慣用表現ですが、契約書には今も「瑕疵保証」「物件状況の保証」といった見出しで残っているケースが多く見られます。

保証の対象になる欠陥

雨漏り、構造部分(土台・柱・梁)の腐食やシロアリ被害、給排水管の故障、建物が建築基準法に違反している場合などは、保証の対象になりやすい欠陥です。これらは買主が生活するうえで直接の支障になるため、契約書に明記されていなくても契約不適合と判断される可能性があります。

保証の対象にならない欠陥

経年劣化による壁紙の変色や建具の立て付けの悪さ、買主が契約前の内見で確認して承諾した不具合、契約書に「現状のまま引渡す」と明記して除外した部分は、原則として保証の対象外です。どこまでを除外できるかは後述する免責特約の範囲にかかわります。

契約書の「瑕疵保証」という見出しだけで判断せず、本文に書かれた保証範囲を必ず確認してください。

契約不適合責任との違い|不動産売却で2020年の民法改正が変えたもの

2020年4月の民法改正より前は、売主が負う責任は「瑕疵担保責任」と呼ばれていました。改正後は「契約不適合責任」という名称に変わり、買主が請求できる内容も広がっています。瑕疵保証という言葉は今も現場で使われますが、その法的な根拠は民法562条から564条に定める契約不適合責任です。

改正後の民法では、買主は欠陥の修補を求める履行の追完請求(民法562条)、代金を減らす代金減額請求(民法563条)に加え、損害賠償請求(民法415条)や契約の解除(民法541条・542条)も状況に応じて選べます。民法564条は、これらの損害賠償請求・解除権の行使が追完請求や代金減額請求と併存できることを確認する規定です。旧法では解除や損害賠償に限られていた場面もあったため、売主が応じなければならない選択肢は改正によって実質的に増えました。

「瑕疵担保責任」という古い言葉が残った契約書を見かけますが、適用される規定は現行の契約不適合責任です。

マンション売却と戸建て売却で変わる保証対象の範囲

瑕疵保証の対象になりやすい欠陥は、マンション売却と戸建て売却で傾向が異なります。

マンション売却で保証の対象になりやすい部分

マンションの場合は専有部分の給排水管の故障や漏水、床の遮音性能の不備などが対象になりやすい欠陥です。構造部分や共用部分の不具合は管理組合の責任範囲に入ることが多く、売主個人の保証対象から外れる場合があります。

戸建て売却で保証の対象になりやすい部分

戸建ての場合は雨漏り、構造部分の腐食、シロアリ被害、地盤の不具合が対象になりやすい欠陥です。築年数が古い戸建てほど床下や屋根裏の状態を売主自身が把握していないことも多く、把握していなかったことが免責の理由にならない点に注意が必要です。

マンションか戸建てかで保証の対象は変わるので、管理規約や過去の修繕記録も契約前に確認しておきましょう。

相続した実家を売却するときの瑕疵保証と注意点

相続した実家を売却する場合、売主自身がその家に長く住んでいないため、床下の腐食やシロアリ被害といった欠陥を把握していないことが多くあります。契約不適合責任は売主の故意・過失を問わない性質が強く、知らなかったという事情だけでは責任を免れないため、相続した実家を売却するときは、物件状況確認書(付帯設備表とあわせて提出する書類)に分かる範囲の不具合をすべて記載し、不明な点は「不明」として明記しておくことが、後のトラブルを避ける基本の対応になります。

相続や転勤、離婚など売却を急ぐ事情があっても、この情報開示を省略することはできません。離婚にともなう不動産売却で査定書が必要になる場合の注意点は離婚で不動産の査定書が必要なときの取り方と注意点で解説しています。

相続した家は床下や屋根裏を見ていない期間が長いほど、記載漏れが起きやすいので注意してください。

瑕疵保証の保証期間と免責特約|不動産売却で負う責任をどこまで絞れるか

瑕疵保証の条項には、保証期間と免責特約という2つの決め事があります。

保証期間の決め方

個人間の不動産売買では、引渡しから3ヶ月程度を保証期間とする慣行が広く見られます。一方、不動産会社が自ら売主となる場合は、宅地建物取引業法第40条により、引渡しの日から2年以上とする特約以外は買主に不利な特約として無効になります。個人が売主になる売却では、この2年という下限は適用されません。

免責特約で外せる範囲と外せない範囲

「雨漏りについては保証しない」のように特定の欠陥を免責特約で除外することはできますが、売主が欠陥を知っていながら黒塗りして告げなかった場合は、免責特約があっても責任を免れません。免責特約は「知らなかった欠陥」を想定した取り決めであり、「知っていて隠した欠陥」には及ばない点が改正後の民法でも変わっていません。

免責特約は万能ではなく、知っていて告げなかった欠陥には効きません。契約前の自己申告が一番の対策です。

瑕疵が見つかったときの不動産売却対応フロー

引渡し後に買主から欠陥の連絡が入ったとき、売主がどの順番で動くべきかを整理すると、次のようなフローになります。

1
買主からの通知を受け取る
いつ・どこで・どのような欠陥かを書面で確認
2
売買契約書の保証条項を確認する
保証期間内か、免責特約で除外した欠陥でないかを照合
3
不動産会社に状況を共有する
媒介した不動産会社を通じて現地確認の日程を調整
4
対応方法を話し合う
修補・代金減額・損害賠償・契約解除のいずれかを検討
5
合意内容を書面に残す
金額や対応範囲を明文化し、後日の争いを防ぐ

この図は、欠陥の通知から合意までの5段階を示したものです。保証期間内かどうかの確認(ステップ2)を飛ばして交渉に進むと、後から保証対象外だったと分かり話が長引くため、順番を守ることが重要です。

自己判断で修補を約束する前に、必ず契約書の条項を確認してから回答してください。

売却前に備えるトラブル防止策|インスペクションと情報開示

瑕疵保証のトラブルは、売却前の情報開示を丁寧に行うことで多くを防げます。国土交通省は「既存住宅インスペクション・ガイドライン」で、専門家による建物状況調査(インスペクション)の実施を推奨しており、調査結果を買主に示すことで、引渡し後に欠陥の有無をめぐって争いになる場面を減らせます。

一方で、匿名査定やAI査定は建物内部の状態までは把握できません。売却相場の目安を調べる段階で使う分には有効ですが、瑕疵の有無を判断する手段にはならない点は押さえておく必要があります。匿名査定の限界については匿名査定・AI査定はどこまで正確?精度の限界と賢い使い方で解説しており、利用時の注意点は匿名査定のデメリットと注意点でも取り上げています。

インスペクションの費用は数万円程度かかりますが、引渡し後のトラブル対応にかかる時間や費用と比べれば小さな負担です。

よくある質問

瑕疵保証と契約不適合責任は別の制度ですか

別の制度ではありません。瑕疵保証は契約書上の慣用的な見出しで、その法的な根拠は民法562条から564条に定める契約不適合責任です。

築年数が古い家でも瑕疵保証の責任を負いますか

築年数に関わらず、契約書に記載した保証範囲と保証期間の中であれば責任を負います。古い家ほど把握していない欠陥が多いため、物件状況確認書への記載を丁寧に行うことが重要です。

「現状有姿」で売却すれば責任を免れますか

「現状有姿」や「現状のまま引渡す」という特約があっても、売主が知っていて告げなかった欠陥については責任を免れません。免責特約は知らなかった欠陥を想定した取り決めです。

保証期間が過ぎた後に欠陥が見つかった場合はどうなりますか

契約書で定めた保証期間を過ぎた後に見つかった欠陥については、原則として契約不適合責任を問われません。ただし、売主が欠陥を知っていて意図的に告げなかった場合は、期間を過ぎていても責任を問われる可能性があります。

インスペクションを受けなくても瑕疵保証の契約はできますか

インスペクションを受けなくても契約自体は可能です。ただし、調査を受けずに不動産を売却すると欠陥の有無を客観的に示す資料がなく、引渡し後に争いになった際の説明が難しくなります。

瑕疵保証とは何かを理解して不動産売却を進めるために

瑕疵保証とは、契約不適合責任を契約書の中で具体的に取り決めた条項であり、保証期間・免責特約・対象になる欠陥の範囲を事前に確認しておくことで、引渡し後のトラブルを大きく減らせます。相続した実家や築年数の古い戸建てを売却する場合は、把握していない欠陥が多い分、物件状況確認書への記載とインスペクションの活用が特に重要になります。ぜひ本記事の瑕疵保証と契約不適合責任の違い、保証期間の決め方を参考に、売買契約書の条項を確認してください。

出典

  • 法務省「民法の一部を改正する法律(債権関係)の概要」
  • e-Gov法令検索「民法」第415条・第541条・第542条・第562条・第563条・第564条・第566条
  • e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」第40条
  • 国土交通省「既存住宅インスペクション・ガイドライン」
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