地役権とは?不動産売却への影響と確認方法をわかりやすく解説
隣地との間に敷かれた古い通路について、仲介会社から「地役権が設定されています」と告げられ、聞き慣れない言葉に戸惑う場面があります。地役権は民法280条に定められた物権で、自分の土地の利便のために他人の土地を通行や引水などの目的で利用できる権利です。利益を受ける側の土地を要役地(ようえきち)、利用される側の土地を承役地(しょうえきち)と呼びます。
登記簿に地役権の記載があれば、不動産売却を進める際にその内容を買主へ告知する義務が生じます。地役権があるからといって売却できなくなるわけではありませんが、価格や買主の印象に影響することがあります。
本記事では、地役権の仕組みと不動産売却への影響、登記簿での確認方法をあわせて解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 通勤の変化で自宅を売却したいが、隣地との間に古い通行のための地役権が設定されていて売却への影響が気になる方
- 仲介業者から地役権の存在を指摘され、初めて聞く言葉に戸惑い契約前に確認方法を知りたい45歳会社員の方
- 資金需要から土地の一部売却を考えているが、地役権があるままで買主が見つかるのか不安な方
地役権とは|不動産売却前に知っておきたい基本の仕組み
地役権とは、民法280条に定められた物権で、自分の土地の利便のために他人の土地を利用できる権利です。利益を受ける側の土地を要役地、利用される側の土地を承役地と呼び、通行や引水、電線の架設など目的はさまざまです。戦前から続く古い通路の権利が、登記簿の中に今も残っているケースも少なくありません。
地役権は当事者どうしの設定契約によって生まれるほか、長期間にわたり通路として使われ続けた結果、時効によって取得されることもあります。設定された地役権は登記をすることで、新しく土地を買った第三者にも主張できるようになります。逆に登記がなければ、売却後の買主との間でトラブルになりやすい点に注意してください。
地役権は土地の履歴とともに引き継がれる権利なので、自分が設定した記憶がなくても登記簿に残っていることがあります。
要役地と承役地|不動産売却に関わる2つの立場
地役権を理解するうえで欠かせないのが、要役地と承役地という2つの立場です。どちらの土地を売却するかによって、確認すべき内容や買主への説明の仕方が変わります。
要役地とは何か
要役地は、地役権によって利益を受ける土地です。たとえば隣の土地を通って道路に出ている場合、その土地が要役地にあたります。要役地を売却するときは、通行などの利益が新しい所有者にも引き継がれるかどうかを確認してください。
承役地とは何か
承役地は、通行などの目的で利用される側の土地です。不動産売却を検討している土地が承役地に該当する場合、買主は自分の土地の一部を他人が通行する状態を引き継ぐことになります。この点を理解しないまま売買契約を進めると、引き渡し後のトラブルにつながります。
要役地と承役地の関係は、下の図のように整理できます。
通行などの利益を受ける土地
通行などを提供する土地
図のとおり、通行などの利益を受ける要役地と、その利益のために利用される承役地は対になっており、売却する土地がどちらにあたるかで確認すべき内容が変わります。
自分の土地がどちら側か分からない場合は、登記簿の乙区を見れば「要役地」「承役地」のどちらとして記載されているか確認できます。
マンションや土地の売却における地役権の影響
地役権があるからといって、マンションや土地の売却そのものができなくなるわけではありません。ただし、承役地にあたる土地を売却する場合、買主は通路部分を自由に使えない制約を引き継ぐため、価格交渉の材料にされることがあります。
分譲マンションでも、敷地内の通路や隣接地との間に古い地役権が残っているケースがあります。管理組合の資料や過去の重要事項説明書で、地役権の有無が記載されているかを確認してください。売却相場を大まかに把握したい場合は匿名査定で価格感をつかむ方法もありますが、地役権のような個別事情は匿名査定だけでは反映されにくい点に注意が必要です。精度の限界は匿名査定・AI査定の精度と使い方で解説しています。
価格への影響は土地の形状や通行の頻度によって幅があるため、訪問査定で実際の状況を見てもらうと判断材料が増えます。
登記簿謄本で確認する地役権の有無|売却前の必須チェック
地役権の有無は、法務局で取得できる登記事項証明書(登記簿謄本)の乙区欄で確認できます。乙区には所有権以外の権利が記載され、地役権が設定されていれば「地役権設定」の文字とともに、要役地・承役地の表示や目的が載っています。
地役権が設定された範囲は、登記簿だけでなく地役権図面で確認できる場合もあります。測量図や境界確認書とあわせて、どの部分が通行の対象になっているかを把握しておくと、不動産会社への説明や買主への告知がスムーズになります。不明な点は司法書士や土地家屋調査士に確認してください。
登記簿は誰でも法務局で取得できますが、地役権図面は備えていない登記所もあるため、事前に窓口へ確認してください。
売却を進める前に知っておきたい地役権付き土地の注意点
地役権がある土地を売却するときは、不動産会社を通じて買主へその内容を説明する義務があります。宅地建物取引業法35条に基づく重要事項説明では、登記されている権利関係として地役権の有無と内容を伝える必要があります。説明が不十分なまま売買契約を結ぶと、引き渡し後に契約不適合責任を問われるおそれがあります。
媒介契約を結ぶ前の段階で、地役権の存在を不動産会社へ伝えておくことも大切です。権利関係を把握した不動産会社であれば、価格設定や買主への説明の進め方について、早い段階からアドバイスを受けられます。
重要事項説明に記載する内容は不動産会社が作成しますが、説明不足を防ぐために売主側も登記内容を事前に確認しておきたいところです。
解消や移転は可能か|地役権と不動産売却の関係
地役権を解消してから売却したいと考える方もいますが、承役地の所有者の都合だけで一方的に解消することは原則としてできません。
当事者の合意で解消する方法
要役地の所有者と話し合い、地役権を不要とする合意が得られれば、地役権の抹消登記を行うことで解消できます。長年通路として使われていない場合でも、まずは要役地側との話し合いから始めることになります。
地役権が時効によって消滅する場合
民法166条2項では、地役権のような所有権以外の財産権は20年間行使されない場合に時効によって消滅すると定められています(起算点は民法291条に規定)。ただし、実際に通行が続いているかどうかの判断は個別の事情によるため、消滅の主張が認められるとは限りません。解消を急ぐ場合は、専門家に相談したうえで進めてください。
解消交渉に時間がかかりそうな場合は、地役権を残したまま買主を探す進め方も選択肢に入れておくと計画が立てやすくなります。
不動産会社選びと媒介契約|地役権がある売却で失敗しないために
地役権がある不動産の売却では、権利関係の説明や登記簿の読み方に慣れた不動産会社を選ぶことが、スムーズな取引につながります。不動産会社に査定を依頼する時点で地役権の存在を伝え、説明資料や重要事項説明の準備をどう進めるか相談しておくと安心です。
媒介契約には専属専任・専任・一般の3種類があり、それぞれ不動産会社との関わり方が異なります。権利関係が複雑な不動産ほど、1社としっかり連携できる専任系の媒介契約が向いている場合があります。媒介契約の違いは媒介契約の種類と選び方で解説しています。また、売却全体の流れを先に把握しておきたい方は不動産売却の流れもあわせて確認してください。
権利関係の説明は不動産会社によって慣れの差があるので、過去に地役権付き物件を扱った実績があるか聞いてみてください。
よくある質問
地役権があると住宅ローンの審査に影響しますか?
影響する場合があります。通路部分の利用制限などが担保価値の評価に関わるため、金融機関によっては審査で地役権の内容を確認します。
地役権の設定登記がない場合、効力はありませんか?
登記がなくても当事者間では有効ですが、第三者である新しい買主に対抗するには登記が必要です。未登記の場合はトラブルの原因になりやすいため、売却前に登記状況を確認してください。
マンションの敷地にも地役権は設定されますか?
分譲マンションの敷地や通路に地役権が設定されているケースもあります。管理組合の資料や過去の重要事項説明書で確認できます。
承役地の所有者が一方的に地役権を解消できますか?
原則できません。地役権は要役地の所有者のための権利なので、解消するには要役地側の同意や、民法166条2項の時効消滅(起算点は291条)などの要件を満たす必要があります。
地役権がある土地は仲介より買取のほうが売りやすいですか?
買主を自分で探す仲介に比べ、不動産会社が直接買い取る買取なら権利関係の調整を会社側が引き受けるため話が早く進むことがありますが、価格は仲介より低くなる傾向があります。仲介と買取の違いは仲介と買取の違いで解説しています。
まとめ|地役権とは何かを理解して不動産売却を進める
地役権とは、自分の土地の利便のために他人の土地を利用できる民法上の権利で、要役地と承役地という2つの立場があります。地役権があっても不動産売却そのものはできますが、登記簿での確認と買主への告知が欠かせません。解消できるかどうかは要役地側との話し合いや時効の要件によるため、焦らず専門家や不動産会社に相談しながら進めてください。ぜひ本記事の地役権とは何かという基本と確認方法を参考に、落ち着いて不動産売却の準備を進めてください。
出典
- e-Gov法令検索「民法」
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」
- 法務省「登記事項証明書の交付請求について」
- Wikibooks「民法第291条」(https://ja.wikibooks.org/wiki/民法第291条)、クレアール行政書士講座「民法第166条」(https://www.crear-ac.co.jp/shoshi/takuitsu_minpou/minpou_0166-00/)
